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Park 方程式を考慮した自家発電設備のシミュレーション
E97063 中嶋 康雄
1.
はじめに
近年,電力需要増加にともない,限りあるエネル
ギー資源で,確実な電力の供給をしなければならな
らなくなった。また, CO2 の増加など,地球環境問題
なども深刻になってきている。このため,新型の発
電システムとして,風力発電,太陽光発電,燃料電
池のような小型の分散型発電システムや,ガスエン
ジン,ガスタービンなどを用いた中小規模のコジェ
ネレーションシステムなどが,効率よくクリーンで
環境負荷の軽い発電システムとして開発され,実用
化されている。
このような,小規模の電力システムでは,回転機
の動特性が系統の全体に与える影響が大きい。それ
だけに制御系を含めた回転機の特性が,シミュレー
ションをする上でいかに忠実に再現できるかが重要
なファクターとなる。
本研究では,自家用発電設備と電力系統との連系
を考え,より詳細な発電機モデル,軸モデルも取り
入れた自家用発電システムの解析,シミュレーショ
ンを行うことで,確立されたプログラムの構築を目
的としている。
2.
解析手順
<2・1> 軸ねじれ現象
発電機は電気を発生する電気回路部分と,回転子
に回転力を与える回転機械部分に分けられる。回転
機部分は発電機の回転子と外部駆動機関と両者をつ
なぐ軸から構成される。
発電機の回転子外部駆動機関の慣性は異なるため,
外乱発生時には両者の回転速度に差が生じ,軸がね
じられる振動現象が発生する。これを軸ねじれ振動
現象という。
本研究の流れとして,図 1 に示す 7 質点系軸モデ
図1
研究手順
指導教員 藤田 吾郎
ルを使用し,それぞれ次のように解析を行った。
stage.1:2 質点
stage.2:7 質点での定常状態の解析
stage.3:Park の方程式を考慮しない平衡故障の解析
stage.4:Park の方程式を考慮した平衡故障の解析
stage.5:軸トルクの調査
ここで,軸ねじれによる各質点に及ぼすトルクは
次の式で表される。
∆T1 = K1 (∆δ 2 − ∆δ1 )
∆T2 = K1( ∆δ1 − ∆δ 2 ) + K 2 (∆δ 3 − ∆δ 2 )
∆T3 = K 2 (∆δ 2 − ∆δ 3 ) + K3 (∆δ 4 − ∆δ 3 )
∆T4 = K 3(∆δ 3 − ∆δ 4) + K 4(∆δ 5 − ∆δ 4)
∆T5 = K 4 (∆δ 4 − ∆δ 5 ) + K5 ( ∆δ 6 − ∆δ 5 )
∆T6 = K5 (∆δ 5 − ∆δ 6 ) + K 6 (∆δ 7 − ∆δ 6 )
∆T7 = K 6 (∆δ 6 − ∆δ 7 )
K :ばね定数 δ :位相角
<2・2> Park の方程式
図 2 は本研究で使用した系統モデルであり,自家
用発電機は同期機を想定している。
Park の方程式は,Park によって導かれた同期機の
基本方程式である。同期機内部では以下の恒等式を
満たしている。
・d 軸回路
ed = pΨ d − ωΨ q − Raid
0 = pΨ fd + R fd i fd
0 = pΨ kd + Rkd ikd
・q 軸回路
eq = pΨ q + ωΨ d − Ra iq
0 = pΨ fq + R fqi fq
0 = pΨ kq + Rkqikq
なお, p =
図2
1 d
,
ω 0 dt
ω 0 = 2πf とする。
自家用発電機シミュレーションモデル
また,次の微分方程式により同期機内部の磁束が
決定し,
トルクも以下のように求めることができる。
・微分方程式
Ψ fd = ω 0 ∫ (e fd − R fd i fd )dt
Ψ kd = ω 0 ∫ (− Rkd ikd )dt
Ψ fq = ω 0 ∫ (− R fq i fq ) dt
Ψ kq = ω 0 ∫ (− Rkqikq )dt
・トルク
図 3 は,Park の方程式を考慮せずにシミュレーシ
ョンし,図 4 は考慮した結果である。図 3,4 の結果
から解るように,トルクの最大値を取る上では,両
方とも結果がほぼ一致しており,Park の方程式を考
慮しなくても良い。
しかし,図 4 の結果より,Park の方程式を考慮す
ることで,制動させる成分が考慮され,より詳細な
変動まで検出できるようになったことが得られた。
Te = Ψ d iq −Ψ qid
5. まとめ
Park 方程式を考慮することによって、同期機内部
の過渡現象を考慮できるようになり、より詳細なシ
ミュレーションが可能となった。
3.
検討事項
本研究のシミュレーションでは,MATLAB を使用
した。図 1 に示したように自家用発電機のシミュレ
ーションを進め,stage.3,stage.4 では,図 2 の系統
モデルで,下記の流れのように平衡故障を起こす。
0.01 秒後:step.1 地絡事故,0.1 秒後:step.2 事故点
遮断,0.2 秒後:step.3 一般負荷解放とし,シミュレ
ーションを行う。
4.
Park の方程式を考慮することで,より詳細なシミ
ュレーション結果が得られるようになった。今後も
軸トルクの調査を行い,遮断タイミングの最適化を
図っていこうと思う。
文献
[1]
[2]
東電ソフトウェア社内技術資料
雨谷昭弘 他:
「電力システムのパソコンシミュレーション
EMTP 版 入門編」
,オーム社(1998-9)
[3]
Yao-Nan Yu:“Electric Power System Dynamics”, Academic
Press Inc., London, 1983
シミュレーション結果
タービン - ジョイントA
1
タービン - ジョイントA
1
0.5
0.5
0
0
-0.5
-1
0
0.05
0.1
0.15
1
0.2
0.25
0.3
ジョイントA - ジョイントB
0.35
0.4
0.45
0.5
-0.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
ジョイントA - ジョイントB
0.35
0.4
0.45
0.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
ジョイントB - シェアピンA
0.35
0.4
0.45
0.5
0
0.05
0.1
0.15
0.35
0.4
0.45
0.5
1
0.5
0.5
0
0
-0.5
-1
0
0.05
0.1
0.15
1
0.2
0.25
0.3
ジョイントB - シェアピンA
0.35
0.4
0.45
0.5
-0.5
1
0.5
0.5
0
0
-0.5
-1
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
0.4
0.45
0.5
シェアピンA - シェアピンB
1
-0.5
0.25
0.3
シェアピンA - シェアピンB
1
0.5
0.2
0.5
0
0
-0.5
-1
0
0.05
0.1
0.15
1
0.2
0.25
0.3
シェアピンB - 発電機
0.35
0.4
0.45
0.5
-0.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
シェアピンB - 発電機
0.35
0.4
0.45
0.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
発電機 - 励磁器
0.35
0.4
0.45
0.5
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.35
0.4
0.45
0.5
1
0.5
0.5
0
0
-0.5
-1
0
0.05
0.1
0.15
0.02
0.2
0.25
0.3
発電機 - 励磁器
0.35
0.4
0.45
0.5
-0.5
0.02
0.01
0.01
0
0
-0.01
-0.01
-0.02
0
図3
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
time [s]
0.3
0.35
0.4
0.45
Park 方程式を考慮しない軸トルク
0.5
-0.02
図4
0.25
time [s]
0.3
Park 方程式を考慮した軸トルク