2735 ワッツ - 日本ベル投資研究所

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2735 ワッツ
~ワッツブランドの本格展開による事業再構築が進展~
2016 年 7 月 20 日
東証 1 部
ポイント
・ファッション性を考慮した店舗づくり、プロダクトミックスの見直し、生産性の向上に
向けた POS の活用などが、これから効果を上げてこよう。ワッツ店への集中投資で、2016
年 8 月期の 3Q までは減益が続いたが、2017 年 8 月期から回復に転じよう。
・2015 年 2 月から始まった‘ワッツ’ブランドの 100 円ショップは、白を基調にしたき
れいな店で、新店とリニューアルを含めて昨年 8 月末までに 15 店出店した。直営の委託
販売でも、Watts with(ワッツウィズ)というブランドで、新しい店舗づくりを開始した。
従来のミーツ、シルクという店舗ブランドとすみ分けながら、競争力を確保しよう。2016
年 8 月期は、これらワッツタイプが、新規と改装を合わせて 100 店を超えてこよう。
・当社は 100 円ショップで業界 4 位ながら、徹底した低コストの出退店と店舗オペレー
ションで効率を上げてきた。ワッツセレクトと銘打ったお買い得品も店舗ロイヤルティ
を高めてきた。しかし、この 2 期は円安の影響や店舗の小型化で、収益性が低下した。同
業他社との競争上、きれいな店舗に改装することや、商品の機動性を高めるために POS(販
売時点情報管理システム)を導入し、ビジネスフォーマットの見直しを進めてきた。
・ナチュラル系のファッション雑貨のブォーナ・ビィータの収益性改善や、均一価格ショ
ップの海外事業にも弾みがついている。日本から現地への卸売も、次第にボリュームが増
え、収益性は好転している。さらに、新たなオープンイノベーションとして、デンマーク
のソストレーネ・グレーネと組んで、北欧雑貨のスペシャリティストアに参入する。1 号
店が 10 月末表参道にオープンしよう。
・①新店の継続的な積極出店、②ワッツブランドの再構築による既存店の底上げ、③海外
事業・新業態の黒字化が効果を発揮してくれば、経常利益で 20 億円に戻すことができよ
う。2016 年 8 月期は先行投資の影響で前期並みの業績にとどまろうが、2017 年 8 月期は
増益基調に復帰しよう。3 ヵ年計画では、経常利益 18 億円、ROE10%への回復を目指して
いるが、その力は十分有しているので、新ブランドの波及効果に注目したい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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目 次
1.特色
規模では業界 4 位ながら、低コスト経営で小回りがきく存在
2.強み
迅速な出退店と独自の店舗オペレーションで収益力を発揮
3.中期計画
4.当面の業績
5.企業評価
ワッツブランドによる店舗フォーマットの転換が本格化
2017 年 8 月期から増益に転換
収益源の多様化に挑戦
企業レーティング B
株価(16 年 7 月 20 日) 1007 円
PBR 1.49 倍
ROE 8.4%
時価総額 141 億円(13.96 百万株)
PER 17.7 倍
配当利回り 1.5%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2008.8
33141
1044
987
412
28.9
5.0
2009.8
33074
1116
911
564
45.6
5.0
2010.8
34634
1325
1542
726
58.7
10.0
2011.8
38188
1817
1985
1018
81.9
12.5
2012.8
40759
2056
2055
1177
93.3
15.0
2013.8
41725
2074
2075
1123
88.6
17.0
2014.8
43573
1784
1799
948
70.0
17.0
2015.8
44462
1257
1263
700
51.7
17.0
2016.8(予)
46100
1290
1280
770
56.8
15.0
2017.8(予)
48000
1500
1500
930
68.6
16.0
(16.5 ベース)
総資本 18368 百万円
純資産 9130 百万円
自己資本比率
49.7%
BPS 673.9 円
(注)ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。2013 年 3 月 1 日で 1:2 の株式分割。それ
以前の EPS、配当は修正ベース。2013.8 期、2014.8 期の配当は、東証 2 部、1 部への変更記
念配 2 円、2015.8 期の配当は創業 20 周年の記念配 2 円を含む。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の可
能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要する、
D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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1.特色
規模では業界 4 位ながら、低コスト経営で小回りがきく存在
100 円ショップが 1000 店を超える
ワッツは 100 円ショップを全国に展開している。規模ではダイソー(大創産業)、セリア、
キャンドゥに次いで、業界 4 位である。ダイソーが圧倒的なガリバーで品揃えも豊富、海外
展開も積極的である。セリアはおしゃれな店作りで、ショッピングセンター(SC)への展開に
力を発揮している。これに対して、当社は品揃えを絞り、生活に役立つものを割安で提供し
ている。店作りも居抜きをできるだけそのまま活用する。割安になる仕組みを作って、小回
りを利かせ機動力がある。
その機動力を活かしつつ、2015 年 2 月から新しい店舗展開をスタートさせた。ワッツ
(Watts)ブランドの白を基調としたきれいな店舗である。主力の従来型店舗は、平均売り
場面積 230 ㎡、商品アイテム数は 6000~7000 である。
「ミーツ(meets.)」、
「シルク」という
店名で店を出し、定番商品と季節商品を組み合わせている。これに対して、ワッツ店は従来
の店舗が 70~80 坪とすれば、100 坪を超えるやや大きい店として展開している。
実生活に役立つ定番商品では食卓、台所、家庭用品、事務文具用品(ステーショナリー)
の雑貨などがある。季節商品としては、夏の季節では涼を演出する扇子・すだれ・風鈴や、
夏休みを彩る海・プール用品、虫取りアミ・虫カゴなど、冬の季節では鍋物商品、ふわふわ
手袋やひざ掛けの冬物衣料などでアクセントをつけている。
当社は 1995 年に設立され、100 円ショップで急成長を遂げてきた。2006 年に大黒天物産
と合弁でバリュー100 を設立、2007 年に同業のオースリーを M&A、2010 年に輸入インテリ
アと生活雑貨を扱うあまの(AMANO)を、2013 年には中国地方の同業の大専を買収し、事業
を広げてきた。海外においても、2009 年にタイ、2012 年中国、2013 年マレーシア、2014 年
ベトナム、2015 年ペルーと、着実に販路を拡大している。
100円ショップ大手4社比較
業界順位
売上高(億円) 店舗数(国内)
特 長
ワッツ
4位
450
1030
・小規模店舗
・実生活雑貨
・スーパー、SCに
テナント出店
・低コスト経営
・海外出店を積極化
上 場
東証1部
(注)数字は最近の概数
ダイソー
1位
3880
2900
(海外1400)
セリア
2位
1200
1300
キャンドゥ
3位
650
930
・大型店舗
・100円均一商材
にこだわらず、豊
富なバラエティ感
・新興国にも多店
舗展開
非上場
・ファッション性の
高いカラーザデイズ
を多店舗展開
・SC出店好調
・商品開発にPOS
を徹底活用
ジャスダック
・取引先の絞り込
みで、スケールメリ
ットを活かし、100
円均一へ回帰
・大型店を出店
東証1部
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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実質 2 代目の平岡社長がリーダーシップを発揮
ワッツは 2015 年 8 月期に創業 20 周年を迎えた。平岡史生社長(55 歳)は、創業者である
平岡亮三氏の娘婿である。中学校の社会科の教師を 12 年ほど勤めていたが、38 歳の時、教
師から転身し、会社創立 3 年目の当社に移った。そして、5 年後に社長に就任した。
100 円ショップはもともと催事から始まった。食品スーパーやショッピングセンターの空
きスペースや軒下に期間限定で店を出して、そこで商品を売るというパターンである。創業
者の平岡亮三氏(2006 年死去)は 60 歳でこのビジネスを始めた。それまでは小さい会社の財
務担当であったが、独立し、新しい仕事として当時伸び始めていた 100 円ショップを始め
た。人材をうまく集めて立ち上げに成功したが、大きく発展させるに当たって、娘婿の平岡
社長をスカウトした。平岡社長は上場後間もなく社長になり、そこから着実に会社を成長に
導いてきた。
業界 4 位で差別化を追求
店舗数を最近の概数でみると、ダイソー2900 店(外に海外 1400 店)、セリア 1300 店、キ
ャンドゥ 930 店、ワッツ 1030 店である。ワッツは 1 店当たりの規模が小さいので、売上ベ
ースでは業界 4 位である。
ダイソーは大型店を主力に、ファッション性も高めている。ブラジル、中国などへの展開
にも力を入れている。国内物流を強化しつつ、SPA(製造小売業)志向も強めようとしている。
セリアはファッション性を軸に好調である。キャンドゥは大手に対応して、新しいブランデ
ィングによる店作りを行いつつ挑戦を続けている。その中で当社は基本的に上位 3 社とは
できるだけ競争をしない差別化戦略をとっている。
事業部門別売上高構成比
(億円、%)
2013.8
(構成比)
売上高
100円ショップ 直営(ミーツ、シルク、ワッツ)
卸売(FC向け)
小計
海外事業
直営
卸売
小計
国内事業
2014.8
2015.8
(構成比)
売上高
売上高
(構成比)
350
40
390
83.9
9.6
93.5
370
40
410
85.0
9.3
94.2
375
38
413
84.2
8.6
92.8
4
0
4
1.0
0.1
1.1
1
4
5
0.3
0.9
1.2
4
7
11
0.8
1.5
2.4
23
5.4
20
4.6
21
4.8
合 計
417
100.0
435
100.0
445
(注)海外事業のうち、タイワッツは合弁事業化により、2014.8期より直営から卸売に変更。
100.0
おしゃれ雑貨(ブォーナ・ビィータ)
食品スーパーとの合弁(バリュー100)
輸入雑貨卸(あまの)など
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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M&A を通して規模を拡大
ワッツの 100 円ショップは小規模である。標準的店舗の商品点数は他社の半分以下であ
り、パート、アルバイトで運営できるようにしてある。店舗は 2016 年 5 月末現在、国内で
1027 店、大阪からスタートして全国に展開している。
同業の買収を何度か実施している。2005 年の三栄商事(埼玉)に次いで、2007 年に大手
のオースリー(埼玉)を買収し、売上規模を倍増させると共に、仕入れコストの低減を実現
させた。同時に店舗運営の統一により運営コストの節減を果たし、収益性の改善に成功した。
ミーツという店名はもともとワッツのショップであり、シルクはオースリーのショップで
あった。現在は一体化が進み、100 坪(330 ㎡)以上の売り場サイズをシルク、それ以下をミ
ーツと、規模で分けてきた。
2011 年に北海道へ展開した。当社のビジネスモデル(フォーマット)は、①出店にコス
トをかけない、②店舗運営にコストをかけない、ということなので、小さい売上高でも利益
が十分出せる仕組みをもっている。大阪に本社がある音通(おんつう、コード 7647)の 100
円ショップ、
「FLET'S」
(フレッツ)北海道の 7 店舗を営業譲受した。これを軸に多店舗化
を図った。
また、2013 年に大専を買収した。大専は岡山県、広島県を中心に 100 円ショップ(「100
円ランド」
、
「Randez100」)を 20 店ほど展開し、年商は 10 億円程度であった。その後、2014
年には 100 円ショップを担当するワッツオースリー販売の中国、四国エリアを分社化し、大
専に承継させた。販社が一体となった経営の効率化を図った。
100 円ショップの販売子会社を再編 ~ ワッツ東日本、ワッツ西日本の体制へ
100 円ショップの運営主体を今年 9 月より再編する。北海道エリアの黒字化、大専との統
合ができたことで、次の展開に向けた再編を行うことにした。
従来のワッツオースリー販売、その子会社のワッツオースリー北海道、中四国を担ってい
るワッツオースリー中四国を 2 つに再編して、ワッツ東日本販売、ワッツ西日本販売と分け
る。東は北海道から東海まで、西は近畿地区から九州までを分担する。
これまでいくつもの会社を合併しており、その特性を活かしてきたが、スピードと効率の
向上を目指して、東日本と西日本に集約して収益性の向上を図ることにした。ワッツ東日本
および西日本の社長は、現在のワッツオースリー販売の社長である勝田取締役が兼務する。
ワッツは 100 円ショップ以外の業態にも展開
ワッツ(Watts)の社名の由来は、
“面白いことを「ワッ」とやろう”にある。いろんな事業
に挑戦していく社風をもっており、100 円ショップ以外も育てていこうと挑戦している。
ナチュラル雑貨販売のブォーナ・ビィータ(Buona Vita)は、心地よい生活をテーマに少
しプライスの高い雑貨を 22 店展開(2016 年 5 月末現在)している。ブォーナ・ビィータは、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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オースリーのファッション雑貨が発展したものである。100 円でのファッション雑貨は難し
かったので、もう少し高額な商品の店作りをした。ここのナチュラルテイストは今うけてい
る。ファッション雑貨は食器などをはじめ、より専門的なものを扱う方向にある。他の専門
店よりは安く、1000 円内外のものをベースにしている。
2010 年に、高額のファッション雑貨の輸入卸を手掛ける「あまの」を買収した。あまの
は、創業社長が高齢で引退し、黒字企業であったが、これを引き受けることにした。あまの
は取扱商品を増やしており、海外展開を拡大する時にはあまのがもつ輸入雑貨機能を活か
せよう。輸入型なので、ここ数年の円安の進行でやや苦戦している。
生鮮スーパーとのコラボ(協業)であるバリュー100 は、大黒天物産(コード 2791)との合
弁(大黒天物産 60%、ワッツ 40%の出資)で、安定的に収益を上げている。
海外事業は直営及び FC 店舗合わせてタイ、マレーシア、ベトナム、中国、ペルーに 2016
年 5 月末現在 57 店展開している。この内、タイのセントラルグループと組み、合弁及び FC
事業で KOMONOYA(
「こものや」)として同 30 店出しているタイと、FC 事業で同 9 店出してい
るベトナムが、海外戦略のコアとなっている。
新規事業の主な店舗数
(店)
2008.8 2009.8 2010.8 2011.8 2012.8 2013.8 2014.8 2015.8 2016.5
国内
ブォーナ・ビィータ
10
11
14
13
13
17
28
23
22
バリュー100
1
1
1
1
1
1
1
1
1
海外
こものや(タイ)
0
1
4
6
8
8
15
22
30
こものや(マレーシア)
3
4
6
小物家园(中国)
2
2
4
8
こものや(ベトナム)
3
9
こものや(ペルー)
2
4
合 計
21
22
31
23
24
28
49
59
80
(注)2008.8期~2012.8期の合計にはかつて展開した花祭り(花)やほろよい党(立ち飲み)を含む。
ブォーナ・ビィータの事業を子会社として独立 ~ ワッツ・コネクション
今年 3 月にブォーナ・ビィータ事業を本体から独立させ、100%子会社ワッツ・コネクシ
ョンを設立した。ワッツ・コネクションの年商はまだ 8 億円程度であるが、これが 20 億円
レベルに上がってくれば、利益貢献もかなり期待できる。ファッション雑貨なので、ブラン
ド作りと立地に合った商品戦略が鍵を握る。子会社に独立させた効果が 1~2 年でスムーズ
に立ち上がってくるかどうかが注目される。
ワッツ・コネクションの社長は、ワッツ本体の衣笠副社長が担当する。衣笠副社長は、オ
ースリーの創業者であり、ワッツと経営統合した後もブォーナ・ビィータを始め、新規事業
のマネジメントを担当してきた。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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コーポレートガバナンスへの対応 ~ 監査等委員会設置会社へ
2014 年 3 月に東証 1 部へ指定替えした。1 部上場企業になって以来、知名度は上がって
いる。ビジネスの案件提案の持ち込みも増えている。
2013 年 3 月に 1:2 の株式分割を行い、個人株主の獲得に向けて、株主優待制度を導入し
た。3 年前の株主数は約 1800 人だったが、自社株の売り出しで 8.9 億円ほどファイナンス
した効果もあり、2014 年 8 月末の株主数は約 4800 人、その後も 2015 年 8 月期末で 6200 人
に増えている。
コーポレートガバナンスについては、2015 年 8 月期より監査等委員会設置会社へ移行し
た。これによって、取締役会における社外役員の発言はこれまでにも増して活発になってい
る。小売業界出身、銀行出身、会計士の 3 名が監査等委員を務めている。
2.強み
迅速な出退店と独自の店舗オペレーションで収益力を発揮
100 円均一ショップの優位性
100 円ショップとファッション雑貨のビジネスモデルは全く違うので、直接競合するとい
うことはない。
国内の経済情勢が厳しい時、100 円ショップ業態にはそれがプラスに働いた。所得が伸び
ない中で、お買い得な生活雑貨は顧客に受け入れられる。国内の経営環境が厳しいと、撤退
する小売業が出てくるので、居抜き出店のチャンスも増える。
当社の 100 円ショップはパート、アルバイトで運営されている。正社員 1 人で 7~8 店を
担当するので、店が年間 50 店純増しても、社員は 6~7 人で十分対応していける。一方、近
年 FC は減っており、3 年前の 122 店が現在は半分以下の 49 店になった。当社にとっては、
直営の方が収益性は高くコントロールも利くので、直営に力を入れている。
また、かつての円高は仕入れコストの抑制という点でプラスに働いた。一方、円安になる
と、商品や価格の見直しが必要になっている。その時でも当社はローコストなので他社に比
べて一定の競争力を発揮している。
ファッション性のあるホビー商品、DIY 商品も人気
100 円ショップでは、ホビー商品も手軽に手に入る。手芸などの材料も 100 円でいろいろ
揃う。若い女性や主婦が自分で作り上げるファッション性のある DIY 商品も人気が高い。生
活雑貨と共に、おしゃれで、ちょっとした創作や装飾ができるようなものをいかに揃えるか
が集客のカギとなっている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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規模は小さいが一定の収益は確保
当社の 100 円ショップの顧客 1 人当たり購入金額は 360 円程度である。また、1 店当たり
の月商は平均すると 400 万円を下回り、規模は小さい。居抜きで行う出店は基本的に内装に
はあまり手を入れないので、自社で用意するのは商品、什器、看板と少なく、1000 万円も
かからず店がすぐ出来る。出店コストが安くすむ分は、商品のよさにお金をかけている。
大手とはボリュームが違うので仕入れコストが必ずしも安くなるわけではないが、店舗
運営コストが安いので、十分カバーすることができる。顧客にとっては、実際の生活に役に
立つ商品が、お得に手に入るので、店舗ロイヤルティが高くなる。
100円ショップ直営店の地域別販売
期末店舗数
2014.8 2015.8
北海道
45
51
東北
38
44
関東
231
251
中部
145
152
近畿
196
191
中四国
139
144
九州
114
125
直営合計
908
958
純増数
2014.8 2015.8
12
6
2
6
16
20
12
7
14
-5
-1
5
5
11
60
50
販売額
2014.8 2015.8
1181
1337
1206
1227
11729
11806
5782
5763
9019
9171
4442
4327
3656
3815
37018
37450
(店、百万円)
1店当たり月商
2014.8 2015.8
2.19
2.18
2.65
2.32
4.23
3.92
3.32
3.16
3.83
4.00
2.66
2.50
2.67
2.54
3.40
3.26
(注)期末の店舗数、純増数は同期間の出店数-閉店数。
店舗の標準化が決め手
出店費用も安いが、退店費用も安い。赤字が 3 ヶ月続いた段階で退店を視野に入れて検
討し、改善の見込みがなければ機動的に撤退する。アルバイトやパートで店舗運営(オペ
レーション)ができるように、店の標準化に力を入れた。
2002 年のジャスダック上場後、店舗数が 200 店を越えてきた。数の増加で、従来のよう
にきめ細かく店舗をみることができなくなった。そこで、平岡社長は店舗の標準化に取り組
み、これが多店舗経営の基本となった。チェーンストア理論を勉強したが、そのまま当ては
めるのではなく、自社に合うように理論のいいとこ取りをした。3 年を要して、現在の形が
できた。
当社の目標は、いい商品を安く売る仕組み作りにある。常に改善を続けており、3 つの点
に力を入れている。①商品アイテムを絞り込み、単品当たりの販売量を増やすことで商品調
達力を上げ、消耗雑貨のカテゴリーキラーになる。②ローコストオペレーションを作る。パ
ート、アルバイトで総てを運営できるように標準化、マニュアル化し、店舗の運営費を下げ
る。③ローコストの出退店を迅速に行う。建物は造らず、出店コストを安くし、スピードを
速める。
この仕組みを他の業態へも応用しようとしている。市場の成熟が進み、大型店で利益を稼
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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げるような余地は少なくなっている。しかし、当社のような小型店での出店は十分可能であ
る。そこで利益を出すには、相対的に小ロットでの仕入れ原価が高くなる分、運営費を下げ
ることによって、トータルの原価を抑える必要がある。このやり方は、他の物販、飲食でも
通用するはずであると考え、いろいろトライしてきた。
100 円ショップにおける今後の基本戦略
当社は 100 円ショップで業界 4 位であるが、これまでは小型店舗で実用性の高い生活雑
貨を中心として、徹底したローコストオペレーションで、一定の収益を確保しつつ成長を遂
げてきた。今後はどのようにポジショニングをしていくのか。ダイソー、セリア、キャンド
ゥといかに差別化していくのかが改めて問われている。
当社は 3 つの戦略をとっている。第 1 は、新規出店に当たって、ファッション性を取り入
れたきれいな店作りのフォーマットを作り、Watts 店として展開している。これは、大手に
真っ向から勝負するという作戦ではないものの、攻めるべき立地は取りに行く。立地競争に
あたって、このフォーマットを持つことで、既存店の契約更新やリニューアルにもノウハウ
を活かしていくことができる。
第 2 は、既存店の競争力強化である。国内小売市場の回復の遅れなどにより、若干苦戦す
る既存店について、店舗改装や POS システムの導入などのハード面、パート・アルバイトの
働き方の見直し、接客力の向上などのソフト面の両面から改善を図っていく。
第 3 は、ファッションテイストを入れていくとしても、ローコストオペレーションは守っ
ていく。当社は規模の小さい分店舗にお金をかけないという仕組みで、独自の収益構造を確
保してきた。この路線は崩さずに堅持する。
ワッツ100円ショップの出退店数
(店、百万円/月)
2015.8 2016.8 (予)
2008.8
2009.8
2010.8
2011.8
2012.8
2013.8
2014.8
直営
出店
退店
期末店舗数
102
56
521
98
45
574
102
49
627
99
42
684
120
39
765
131
48
848
123
63
908
113
64
958
100
70
988
FC
出店
退店
期末店舗数
13
39
214
5
26
193
4
33
164
1
43
122
0
65
57
1
5
53
0
2
51
0
1
50
0
2
48
全店舗数
735
767
791
806
822
901
959
1008
1036
直営1店当たり
売上高
3.88
3.67
3.62
3.71
3.64
3.51
3.40
3.26
3.09
(注)直営1店当たり売上高は期末店舗数ベース
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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POS を導入して効率改善
POS レジは 5 月の 3Q 末で 313 店(前期末 113 店)まで増えており、2016 年 8 月末で 340
店、2017 年 8 月末で 400 店以上に入れていく。
ファッション性を上げていくと、売れ筋商品の的確かつ迅速な把握が求められる。今まで
は IT にコストをかけるよりも、現場のパートにまかせて十分対応することができた。しか
し、オペレーションの効率アップや在庫削減を考えて、POS を導入した。
POS に関しては、2015 年 2 月以降順次導入している。POS レジ・本部システムを合わせて、
投資額は 3 年間で約 4 億円を見込んでいる。これによってデータを活かして、店舗の商品
陳列のレベルを上げ、在庫を削減し、パート、アルバイトの仕事の効率と接客レベルを上げ
ることに活かす。
季節商品や定番商品の中のファッション性のあるものについて、今までよりもマネジメ
ントのレベルを上げることができよう。おしゃれな生活を提案する商品の開発という点で
は、企画機能を高めてデータ分析の活用が求められよう。
POS の導入が遅いという見方もあろうが、当社は常に実利主義で本当に使い勝手を納得し
てから手を打つ。形から入らないところが当社のローコストオペレーションの強みである。
100円ショップ上場企業比較(3社)
社名
コード
市場
ワッツ
2735
セリア
2782
キャンドゥ
2698
東1
JQ
東1
業界順位
店舗数 (店)
売上高 (億円)
経常利益(億円)
売上高経常利益率 (%)
4位
1008
445
13
2.8
2位
1248
1183
106
9.0
3位
927
652
15
2.3
株価 (7/20) (円)
時価総額 (億円)
PBR (倍)
ROE (%) PER (倍)
配当利回り (%)
1007
141
1.49
8.4
17.7
1.5
7910
2999
7.89
18.9
41.7
0.4
1703
286
2.53
7.3
35.4
0.9
(注)売上、利益について、ワッツは2015.8期、セリアは2015.3期、
キャンドゥは2015.11期ベース。ROE、PER、配当利回りは直近予想ベース。
3.中期計画
ワッツブランドによる店舗フォーマットの転換が本格化
100 円ショップの存在
100 円ショップ業態は大丈夫か。デフレ、円高時代が終わり、マイルドインフレ、円安時
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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代に入ると、100 円ショップという業態は特色を失っていくのではないか、という見方があ
る。この問いに対して、収益性を改善しつつ成長していける、と平岡社長は考えている。ワ
ッツブランドの再構築というビジネスモデルへの転換が進めば、成果が出てこよう。その動
きが本格化しつつある。
大手はファッション性を活かし、立地とボリュームでこれを乗り切ろうとしている。もし
100 円という均一価格のもつ訴求力が、コストと商品の魅力のバランスから離れていくなら
ば、業界は衰退に向かおう。
しかし、ここからが工夫のしどころである。ファッション性を付加しつつも、消耗品を軸
とした生活雑貨という領域で特色を出し続けることは十分できよう。但し、今後の為替の変
動をどう乗り切っていくかという点で、まだ課題は残している。
出店は順調ながら小型化
新規出店は順調である。2015 年 8 月期は当初計画した出店 90、退店 55 に対して、実績は
出店 113、退店 64 で、49 店の純増となった。ただ、テナントタイプの出店が少なく、委託
販売型の出店が多くなった。また、1 店あたりの売上高が少なくなるので、全体の伸びも鈍
いものとなった。
スーパーマーケット業界は厳しい局面にある。店舗を閉めるというところもあるので、そ
こに出店していると、当社の委託販売も影響を受ける。一方で、生活雑貨についてはアウト
ソーシングするという動きも活発である。この委託販売型 100 円ショップでは当社のロー
コスト経営が活きており、当社への出店要請も強い。この分野に関しては業界でトップクラ
スなので、出店は十分できよう。現在 100 円ショップ 1000 店のうち、ミーツ、シルクによ
る委託販売は約半数を占める。
‘ワッツ’ブランドによるきれいな店舗の出店を本格化
2015 年 2 月からワッツブランドによる店舗の展開をスタートし、昨年 8 月までに改装で
8 店、新規で 7 店の計 15 店を出店した。改装後の売上は大きく伸びており、好調である。
ワッツブランドの 100 円ショップは、新しいタイプのきれいな店であるが、その狙いは 3
つある。1 つは、契約更新期がくる既存の大型店舗を守ることである。2 つ目は、新規出店
に当って、大手と正面から戦うことはしないが、当社の存在を示して一定のポジションを確
保できるようにする。3 つ目は、新しい店舗で扱う商品は従来よりも趣味、嗜好品のウェイ
トが上がるので、こうした商品のマーチャンダイジングに POS を活かして、既存店も含めた
100 円ショップ全体の品揃えを改善することである。
ワッツブランドの店舗のコンセプトは「
“いつも”によりそう 100 円ショップ」である。
実生活に役立つ雑貨が当社の強みであるから、ここははずさない。
新しい発注支援システムも導入していく。棚を埋めるのではなく、売れないものは減らし、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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店舗オペレーションの負荷を下げて、顧客へのサービスに時間を振り向けていく。
Watts 店に加えて、Watts with(ワッツウィズ)店も展開
当社の直営店は、テナント型と委託販売型に分けられる。委託販売型とは、例えばスーパ
ーの中の衣料品の脇に当社の雑貨が一定の店舗コーナーを構えているという形である。当
社が在庫を負担する店舗なので直営店ではあるが、レジや現金管理などの販売業務をその
スーパーに委託している形である。
この委託販売型の直営店についても、少しきれいな店に変えつつある。その店舗名をミー
ツではなく、ワッツウィズ(Watts with)と名付けた。Watts with 店も、今後かなり増え
ていこう。品揃えも変化していくので、売れ行きへのプラス効果が期待される。
Watts店の店舗数
(店)
2015.8
2016.8
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
Watts店
0
1
7
15
43
47
58
改装
0
1
1
8
26
29
33
新規
0
0
6
7
17
18
25
Watts with店
0
0
0
0
4
10
33
改装
0
0
0
0
0
1
6
新規
0
0
0
0
4
9
27
合計
0
1
7
15
47
57
91
(注)期末店舗数。Watts with店は直営の中の委託販売におけるワッツタイプの新しい店舗。
4Q
ワッツタイプの出店ペース
2016 年 8 月期の 3Q 末で、ワッツ店は改装で 33 店、新規で 25 店、合計 58 店となった。
また、ワッツウィズ店は改装で 6 店、新規で 27 店、合計 33 店と、急ピッチで増えている。
両社を合わせて、ワッツタイプの店舗は 91 店となっている。
ショッピングモールや駅ビルに 100 円ショップが普通に店舗をおけるようになった。当
社も今まで以上にここへ入っていくことができる。今後どんなペースになるかは、状況を見
ながら決めていく方針であるが、加速する方向にある。
基本はテナントタイプの出店の時にワッツ店を出していく。委託販売タイプの場合は順
次ワッツウィズ(Watts with)というサブブランドに切り替えていく。ワッツ店もフォーマ
ットを進化させて、それぞれの立地状況にあった店作りを行っていく。全体として、1000 店
に対してワッツタイプの店は早晩 400~500 店という水準になることが想定されよう。
商品開発や店舗投資も変化
ワッツ店に合った商品開発も進めていく。1.5 万アイテムだった取扱品目に加え、2000 ア
イテム程度の新しい嗜好品、趣味の商品を導入した。
店舗への投資は従来タイプが 1 店 1000 万円以下とすれば、ワッツ店は現状ではその 1.5
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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~2 倍はかかる。その分出店コストは上がってくるが、ワッツ店の売上も伸びてくるので十
分吸収していくことができる。店舗の収益性は改善されてこよう。また、仕様の変更等によ
ってコストを抑制した出店モデルの構築も実践している。店作りに複数のグレードを持た
せ、立地の状況を見て判断して行く。100 円ショップのブランディングとローコスト経営の
バランスをどう図るか。当社の腕の見せ所である。
中期3ヵ年計画とKPI(重要業績指標)
(百万円、%、店)
2014.8 2015.8 2016.8 (計) 2017.8 (計) 2018.8 (計)
43573 44462
46100
48000
50300
1784
1257
1360
1510
1800
4.1
2.8
3.0
3.1
3.6
1799
1263
1370
1510
1800
948
700
870
970
1150
2011.8
38188
1817
4.8
1985
1018
2012.8
40759
2056
5.0
2055
1177
2013.8
41725
2074
5.0
2075
1123
ROE
23.4
22.2
16.6
11.8
8.1
9.4
9.7
10.6
100円ショップ増店数
期末店舗数
15
806
16
822
79
901
58
959
49
1008
50
1058
50
1108
50
1158
国内新規事業期末店舗数
新規事業売上比率
17
5.5
16
5.9
18
5.6
28
4.6
24
4.8
23
5.1
23
5.2
26
5.5
海外事業期末店舗数
海外事業売上比率
(注)(計)は会社計画
6
0.4
8
0.6
10
0.9
21
1.2
35
2.4
67
4.0
91
5.6
126
7.4
売上高
営業利益
売上高営業利益率
経常利益
当期純利益
いずれブランドは統一化
創業の頃を辿ると、店名は「百円村」、次に「安價堂」(あんかどう)
、その後ミーツとな
った。将来に向け、時間をかけてミーツ、シルクをワッツに替えて、ブランドの統一を図っ
ていく。
店(ショップ)のデザインとロゴマークを一新し、新商品の投入を図り、接客サービスの
向上にも努めている。POS レジを入れて、生活雑貨を中心としつつもファッション性を高め
ておしゃれな生活を提案するアイテムを増やしていく。
ワッツ店の進化を図る
ワッツタイプの新しい店舗は今後さらに進化させて、収益性を高めていく方針である。当
社にとっての大型店はワッツ店として、小型のテナントや委託販売では、サブブランドのワ
ッツウィズ(Watts with)を展開するが、今後はこのワッツウィズ店の数が大幅に増えてい
こう。ワッツウィズは店舗の立地や性格に合わせて、いくつかのバージョンを用意していく。
今後数年で全店(1000 店)のうち約 5 割はワッツタイプの店となっていこう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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収益力・資本効率の比較
(%、回、倍)
ROE
ROS
自己資本利益率 売上高純利益率
総資本回転率
レバレッジ
売上高
売上高
総資本/自己資本 営業利益率 粗利益率
売上高
販管比率
セリア
24.8
25.4
22.2
4.89
5.66
5.68
2.39
2.47
2.43
2.13
1.81
1.61
8.5
9.3
8.9
42.2
42.2
42.4
33.7
32.9
33.5
16.6
11.8
8.1
2.69
2.18
1.57
2.53
2.35
2.41
2.44
2.31
2.12
5.0
4.1
2.8
38.3
38.1
37.6
33.3
34.0
34.8
2013.11期
6.3
0.98
2.58
2.47
2.4
36.5
2014.11期
7.1
1.14
2.40
2.59
2.7
36.7
2015.11期
5.3
0.86
2.50
2.46
2.0
36.9
(注)ROE=ROS×回転率×レバレッジ、 売上高営業利益率=売上高粗利率-売上高販管費率
34.1
34.0
34.9
2013.3期
2014.3期
2015.3期
ワッツ
2013.8期
2014.8期
2015.8期
キャンドゥ
新しいポジショニングの中で、基本は変わらず
大手 3 社は、大型店、SC への出店、ファッショナブルなきれいな店を志向しているが、
当社はスーパーの中の 100 円ショップという枠からはみ出さないようにしている。もちろ
ん当社もきれいな店で出られるところには出ていくが、基本的に大手と競合するやり方は
とらない。
100 円ショップの大手 3 社をみると、セリアに対するディベロッパーの評価は高い。ダイ
ソーはセリアに負けないように対抗している。キャンドゥのブランド再構築のレベルは上
がってきている。3 社は好立地の競争をしているが、当社はこの競争に真っ向から入ってい
くものではない。
100 円ショップの M&A はありうるが、大型のものについては今のところ可能性は低い。業
界 5~7 位くらいの 100 円ショップはいずれも食品のウェイトが高いので、当社と組むにし
てもさほどシナジーが出しにくいといえる。
当社の 100 円ショップの食料品の売上比率は、
前年度の 8%から、2016 年 8 月期は 7%以下に下がっている。これは継続的に下げていく。
今後とも低コスト路線は変わらないが、おしゃれな店作りには対応していく。ローカルな
スーパーの中の店舗でも少しおしゃれにするという工夫は追求していく。
中小型店の出店は、1 店当たりの売上高、利益額が減るので、効率はよくない。しかし、
当社はもともと小回りのきく経営を展開してきたので、大手とは一線を画した低コスト経
営に慣れている。同時に小型店舗でも一段と効率が追求できるように、オペレーションのシ
ステム化も進める方向にある。資本効率を比較しても、ポイントは利益率の差にある。どこ
で差別化を強めるか。もう一段の工夫が求められるところである。
ワッツセレクトでメリハリ、PB ブランドも強化
ワッツセレクトは現在 108 品目である。かなり絞り込んでいるが、一方で自社の PB 商品
は 300 品目まで増えている。前々期 120 品目、前期 170 品目から急ピッチで増加させてい
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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る。生活雑貨で PB を増やし、全体の商品ミックスに工夫を加え、採算の向上を図ろうとし
ている。
商品の品揃えは、生活に役立つ雑貨に絞り、その分野でカテゴリーキラーを目指している。
同じような商品でもコストパフォーマンスがよいものを並べて、他社の商品に打ち勝とう
という作戦である。
2010 年から始めたワッツセレクトがその目玉商品で、お買い得な商品を提供している。
同じ商品でも、量が 1.5 倍入っているとか、品質が良いとか、消費者に十分訴求できるよう
に分かり易くしている。これを 2013 年 8 月期は 211 品目に上げた。しかし、2014 年 8 月期
からは、ワッツセレクトの品目数を減らしている。2015 年 8 月期では 140 品目を切る水準
まで減少した。円安の影響により調達コストは上がってきたので、商品を見直してメリハリ
をつけているからである。
このメリハリを上手くやれるかどうかによって、消費者の反応が異なり、既存店への売上
げにも影響が出てこよう。輸入品の原価は上がっているが、当社は 100 円の中でお買い得感
を出していく。そのノウハウはもっている。商品の見直しも進めていく。コストアップへの
対応として、ボリュームやサイズが小さくなっていくということは避けられないが、他社と
比較した時の相対的な「お買い得感」を追求し、競争力を維持する考えである。
バランスシート
(百万円、%)
2010.8
2011.8
2012.8
2013.8
2014.8
2015.8
流動資産
現預金
受取手形・売掛金
商品・製品
8426
2037
869
4032
9930
3039
1951
4363
11247
4086
1812
4633
14281
6280
2320
4961
14862
6714
2318
5225
13467
5149
2052
5634
固定資産
有形固定資産
差入保証金
3535
744
2366
3545
793
2441
3557
777
2450
3895
1001
2474
4115
1120
2536
4469
1225
2532
11962
13476
14805
18177
18977
17877
流動負債
支払手形・買掛金
短期借入金
長期借入金(1年内)
6826
3870
140
1160
7004
4225
140
1318
7438
4433
140
1267
9323
6578
140
957
9645
7170
100
679
7925
5842
100
565
固定負債
長期借入金
1219
873
1680
1243
1550
1102
1158
644
912
403
984
468
資産合計
純資産
3916
4791
5816
7695
8420
8966
自己資本
3902
4788
5816
7695
8420
8966
(自己資本比率)
32.6
35.5
39.3
42.3
44.4
50.2
(注)2014.8期、2013.8期は期末日が休日であったため、現預金、買入債務が膨らんでいる。
2015.8期が平常ベースの水準。
リニューアルに注力
バランスシートとキャッシュ・フロー計算書では、2013 年 8 期、2014 年 8 期の期末が休
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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日であったことで、買い入れ債務の決済が翌月にずれ込んだため現預金が膨らんだが、2015
年 8 月期はそれが正常化した、そのために、一時的に営業キャッシュ・フローがマイナスと
なったが、特に問題はない。2015 年 8 期末のバランスシートが平常状態であるとみてよい。
今後 3 カ年の計画では、出店は年間 100 店ベース、閉店は 50 店として、純増 50 店を基本
とする。無理な出店はしない計画を組んでいる。既存店については、リニューアル効果を含
めて、+2%を目指すことを前提としている。
リニューアルのコストは一定程度かかるが、さほど大きいわけではない。今後の投資額に
ついては、大型の M&A がなければ、通常のキャッシュ・フローで十分賄えるので、ファイナ
ンス上の問題は特にない。
キャッシュ・フロー計算書
2011.8
営業キャッシュ・フロー
1515
税引後当期純利益
690
減価償却
233
のれん償却額
182
売上債権・棚卸資産・買入債務
183
(百万円)
2015.8 2016.8 (予)
-621
820
516
770
281
350
0
0
-1549
-300
2012.8
1927
1226
278
89
93
2013.8
2769
817
237
61
1384
2014.8
1808
1052
255
0
380
-560
-234
38
-381
-542
-256
-81
0
-240
-256
-44
42
-596
-393
-136
0
-687
-507
-180
0
-800
-700
-100
0
955
1385
2529
1211
-1309
20
財務キャッシュ・フロー
長短借入金
自己株式
配当金
50
373
-18
-123
-335
-192
13
-156
-367
-1069
891
-189
-788
-558
0
-229
-279
-49
0
-229
-30
200
0
-230
現金・同等物の期末残高
3039
4086
6280
6714
5149
5139
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産取得
敷金保証金の差入(ネット)
子会社株式の取得
フリー・キャッシュ・フロー
人材の確保と生産性の向上をいかに図るか
パート、アルバイトの人件費が上がっている。この人件費を吸収するには、どのように生
産性を高めるかが鍵であり、今後の大きな課題である。
当社の 100 円ショップの特長は、ローコストオペレーションにある。きれいな店作りは、
ワッツ店でモデルを確立した。一方で、日用雑貨のお買い得感、よりよい商品の提供は基本
である。この両者のバランスをいかに図って、収益性を追求するかが問われる。
オペレーションの再構築では、POS レジを 8 月末までには 3 分の 1 まで入れて、次の発注
支援システムに活かしていく。また、ワッツ店のファッション性のある商品を従来のミーツ、
シルクにも取り入れて、商品の品揃えに工夫と変化をもたらしていく。この 2 つによって、
既存店の生産性向上を図っていく。
人手不足は構造的に続くので、人材の採用と働き易さの工夫、生産性の向上のための戦略
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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は一段と重要性を増やそう。地域限定正社員など人事制度の工夫も求められよう。
ファッション雑貨のブォーナ・ビィータの収益化に目途
ブォーナ・ビィータは、2016 年 8 月期で不採算店の整理が完了するので、翌期からは黒
字化しよう。2016 年 8 月期の赤字も前期に比べれば縮小している。
ブォーナ・ビィータは、2014 年 8 月期に 12 店出店して、立地の多様性についてトライし
たが、思わしくないところも出た。前期は駅前近くをベースに 4 店出店、9 店退店したので、
5 店の純減となった。この期のブォーナ・ビィータは、採算がむしろ悪化してしまった。
ブォーナ・ビィータの平均単価は、従来の 1300~1500 円から最近は 1500~1800 円へ上が
っている。ブォーナ・ビィータのフォーマットは次第に受け入れられている。高崎、水戸に
続いて、池袋の駅ビルに店舗を構えることができた。とりわけ 2015 年 3 月に出店した池袋
店は好調で、ディベロッパーにアピールできる存在となろう。
今後の出店にいい影響があろう。新規出店のコストはかかるが、個店ベースでは、2 年目
からは黒字となってくる。ファッション雑貨なので、立地と商品力を高めて、個性をアピー
ルできれば一定の利益は十分確保できよう。
海外展開の加速 ~ アジアから中南米へ
海外事業が伸びている。売上高に占める海外事業比率も 1.2%から 2015 年 8 月期には
2.4%に上昇し、売上高も 10 億円を超えた。さらに、2016 年 8 月期の上期は、海外売上が
半期で 10 億円弱となり、海外売上比率も 4.2%となった。
海外の店舗数は 2016 年 5 月末で 57 店となった。海外は、黒字化がみえている。タイに続
きベトナムでの事業展開のフォーマットが固まった。中国も好転している。海外ではダイソ
ーが圧倒的であるが、当社も 6 年をかけて地盤を固めつつある。
タイの「こものや」はジャパンテイストを活かしたファッショナブルな店
タイはセントラルグループのマネジメントのもとで出店が拡大している。5 年前にタイの
バンコクで 100 円ショップと同様の均一ショップ「こものや」を始めた。タイの均一ショッ
プは日本と同じではなく、タイの消費者にとって安いわけではない。むしろ高い。日本の製
品だからこそ、その雑貨が少し割高でも新鮮で面白いと受け入れられる。例え中国製であっ
ても、日本仕様・デザインであることで価値が高まっている。
タイの「こものや」はデパートモールに出店している。レベルの高いショッピングセンタ
ーであり、
「こものや」もおしゃれな店として位置付けられる。60 バーツ(現在のレートで
約 180 円)均一というと、現地ではかなり高い。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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海外国別の店舗数
(店)
2015.8 2016.8(予)
タイ(セントラルグループ)
22
33
中国(直営、代理商)
4
11
マレーシア(直営)
4
8
ベトナム(セントラルグループ)
3
10
ペルー(直営)
2
5
合計
8
10
20
35
67
(注)期末ベース。海外事業は合弁を含むので、売上高は卸売となるケースもある。
2012.8
8
2013.8
8
2
2014.8
15
2
3
タイでセントラルデパートと組む
2013 年 5 月にタイワッツにセントラルデパートが 51%の資本参加を行い、当社は 49%の
出資となった。タイで小売業を本格的に展開するには、制度上現地企業がマジョリティを持
つ必要がある。セントラルが 51%所有し、役員も入ってきた。セントラルは立地情報を豊
富に有する。
タイのセントラルグループとの合弁(JV)については、2015 年 4 月からセントラルが出店
やオペレーションなどのマネジメントのリーダーシップを引き継いだ。これによって出店
は加速している。つれて当社の卸売も増えてこよう。
また、セントラルグループのいくつかの業態への委託や卸売も増えてこよう。スーパーの
トップスマーケットにおけるコーナー、ロビンソンデパートでのテナントなどである。
タイでの店舗運営をサポート
主力のタイは伸びてはいるが、3Q に伸びが鈍った要因を分析して手を打っているところ
である。タイについては、セントラルが主導権をもって、店舗展開を図っているが、店のオ
ペレーションがついていかず、既存店でマイナスとなるところが出た。
経営はセントラルが担っているが、ワッツからのサポートを強める必要があるので、人材
を送って、現地での教育をやり直している。商品ミックスの見直し、デリバリーの見直しな
どを図っていく方向である。
タイでも、日本と同じように店の入り口にはファッション性の高い商品を置いて、お客を
引きつけ、中では生活に必要な雑貨をきちんと揃えておくというのが基本である。それを、
売れ筋商品にだけ力を入れていけば、全体のバランスが崩れて、お客への訴求力はおちてし
まう。このあたりを見直していく。どうすればよいかは分かっているので、いずれ効果は出
てこよう。
また、日本で売れているものを持っていくのは当然だとしても、セントラルの担当者が、
それがタイで売れるかを実験してみなければ分からない。最初からタイには合わないと仕
入れなければ、店の鮮度は落ちてしまう。一方で、タイに合う商品の開発にも両社(セント
ラル、ワッツ)で取り組んでいく。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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中国での小売は目途が立つ ~ これからは代理商に注力
中国は直営を増やしてきたが、これからは代理商をどのように増やしていくかがポイン
トである。中国は不採算店の整理で月次で黒字となった。現在直営店が上海、成都、天津に、
蘇州に代理商(中国版 FC)があるが、今後は代理商の増加に力を入れる。
中国については、3 店出店してみてビジネスモデルの方向がみえてきた。日本の商品であ
るということをアピールして、中国でもみられるようになった 10 元ショップに対して、15
元(240 円)ショップで十分対抗していける。顧客は別のものと考えているようで、日本テイ
ストの 15 元ショップでやっていけるということが分かった。
中国でのビジネスは難しい。中国では代理商を使った均一価格ショップがいくつか急拡
大している。
当社がそこと競争して代理商の FC 展開を一気に図ろうというわけではないが、
代理商を使って店舗拡大を目指す方向にある。
平岡社長は、中国市場は大きいので可能性はあるが、競争が激しい国なので、通常のやり
方ではうまくいかないと考えている。100 円ショップの店作りを中国に合ったように手直し
している。中国では手に入らないもの、テイストが違うもの、品質がよいもの、生活をちょ
っと楽しくするもの、といった発想である。ワンランク上の生活を目指す人々が増えてくる
ので生活雑貨への嗜好も変化してくる。
ベトナム、マレーシア、ペルーへ展開
ベトナム、タイは各々年 10 店ペースで増えていこう。ベトナムは既に黒字化している。
ベトナムはセントラルグループの子会社が FC のコアとして、多店舗化を進めている。2015
年 1 月に FC 契約を結んだ。ハノイ、ホーチミンのモールに出ている。
2014 年 1 月にホーチミンで郊外のイオンモールに出店した 1 号店がうまくいっている。
ベトナムの売価は 4 万ドン(約 190 円)で、現地では安くない。むしろ高い価格帯である
が、ジャパンテイストがうけている。外国資本での複数出店は制度上難しいので、タイのセ
ントラルグループである地元企業と組んで FC 展開を図っており、現在 9 店舗を有する。
マレーシアは、2014 年 8 月期に 3 店出店し、基幹店となる 3 店舖目がクアラルンプール
近郊で最大のモールに出店できた。2015 年 8 月期には直営店を 4 店舗まで増やした。FC の
認可が取れたため、今後出店ペースを加速させる。直営を 10 数店、地方は FC でという展開
になろう。しかし、リンギット安で、仕入れコストが高くなり、円換算の売上高が目減りし
てしまうので、全体の採算については見直していく必要がある。
南米ペルーは、リマで KOMONOYA を出店し、順調に推移している。2015 年 3 月に 1 号店出
店後、12 月までに 3 店舗を出した。当社は、2014 年 8 月にペルーに会社を設立した。日本
に対する親和性が高い国から入ることにした。日系移民の多い国がよいと判断した。ペルー
の通貨はソル(ヌエボ・ソル、PEN)
、1 ソルが約 32 円である。ペルーの 100 円ショップは
6 ソルのシングルプライスである。日本円で 190 円程度、現地では必ずしも高いとは受け止
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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められていない。日本の雑貨が 1 個 6 ソルというのは安くはないが、十分受け入れられた。
来客は盛況で、極めて好調である。
ペルーは、ファッションモールでのロケーション確保が難しいが、うまく出店できた。課
題は物流にあるが、そのベースを作っていく。中南米においては今後メキシコ、コロンビア、
チリなど太平洋側の国を対象としていく方針である。
それ以外の海外展開は、商品供給(卸売)も絡めて進める方向だ。卸売については、ミャン
マー、モンゴル、ニュージーランド、豪州、韓国にも拡大している。ミャンマーでは、ジャ
パンストアという店名で当社の商品だけが並んでいる。現地資本の店舗の中にワンプライ
スコーナーがあり、そこへは純然たる商品供給である。
パートナーが決め手
海外展開では、よいパートナーと連携することが大事である。タイでは強い小売業と組む
ことを考えて、セントラルグループに巡り合った。マレーシアでは小売りと卸売の双方が必
要であるが、卸で日本企業と実績のあるハリソンズ(食品、建築資材の卸上場企業)と組む
ことができた。このように構想と戦略を持って活動しているわけである。
海外売上高では、直営の小売りよりも卸売が増えている。タイの店舗は従来 100%子会社
の現地法人だったので、当社の連結決算に入っていた。それが、セントラルグループとの合
弁になり、当社の持分が 49%となったので、持分法適用となった。よって、タイの売上増は
卸売と持分法投資利益として効いてくる。
海外の売上高は、2013 年 8 月期の 4 億円、2014 年 8 月期で 5 億円、2015 年 8 月期 11 億
円が、2016 年 8 月期は 20 億円を超えてこよう。海外売上比率は今期で 4~5%レベルとな
ろう。これを 10%以上になるように力を入れていく。まだ利益貢献は少ないが、将来はかな
り期待できよう。
新たなオープンイノベーションに着手 ~ デンマーク雑貨のスペシャリティストアへ進出
新しく北欧雑貨のビジネスをスタートさせる。日本では、北欧のフライングタイガーがす
でに店舗展開をしているが、それとは別タイプの北欧雑貨のスペシャリティストアである。
デンマークのソストレーネ・グレーネ・ホールディング社と組んで、
「Søstrene Grene(ソス
トレーネ・グレーネ)」という店名で展開する。
5 月に、ワッツが 55%出資し、先方が 45%、株式会社元林が 5%出資して「ヒルマー・ジ
ャパン」を設立した。この会社の事業として、雑貨店ソストレーネ・グレーネがスタートす
る。1 号店は 10 月末に表参道にオープン予定である。
ワッツ、ブォーナ・ビィータとは別に、ソストレーネ・グレーネを展開し、街の一等地に
出ることを狙っている。ワッツにとっては、オープンイノベーションとして、面白い試みで
ある。上手くいけば、グループの立地出店戦略にプラスの効果が出てこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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4.当面の業績
2017 年 8 月期から増益に転換
環境変化への対応 ~ 為替変動への対応
ワッツは熊本県に 100 円ショップを 18 店有する。
そのうち 3 店が一時営業を停止したが、
小規模なので会社全体の業績にはほとんど影響がない。
円安によるコストアップに対しては、2 年かけて手を打ってきた。ここにきて、1 ドル 120
円から 105 円へ、円高が進んでいる。これは、仕入れ価格の見直しという点で、6 カ月単位
でみればプラスに働こう。120 円の円安に対する対応はほぼ完了したので、現状では改善が
見込まれる。
ワッツ店の効果はこれから
当社はセリアと競争するためにワッツ店を展開するわけではない。立地によっては店舗
を守るために、あるいは新しいロケーションを得るための 1 つの戦略としてワッツ店を用
意した。1 号店は相当な投資額だったが、今はそれより大分安価で改装できる。これで売上
高が大幅にアップすれば投資回収目途も立ってくる。
ワッツ店の店舗の規模によって、幾つかのグレードを設定して行く。さらに委託販売型の
店舗はミーツやシルクでなくワッツウィズとして店を出していく予定である。ワッツ店の
狙いは、①新規出店上の競争優位を保つ、②既存店の守りを固める、③売上増で収益性を高
める、という点にあるが、まだスタートしたばかりであり、収益性の向上はこれからである。
ワッツタイプの店は、2015 年 8 月期の 15 店に対して、2016 年 8 月期は 100 店へと拡大
しよう。従来よりもおしゃれな商品を増やしているので、当社の取り扱い品目は 1.5 万点か
ら 1.9 万点に増えている。季節商品もおしゃれなものが増えている。
ブォーナ・ビィータはあと一歩で収益化
前期は採算悪化が響いたが、2016 年 8 月期は改善の目途も立ってきた。ブォーナ・ビィ
ータは 2015 年 8 月期で 4 店出店、9 店閉店で 23 店となったが、今期は 4 店出店し 6 店閉店
するので、21 店となる。既存店は順調であり、とりわけ池袋店は好調である。
海外は順調に拡大し黒字化へ
卸売りの粗利は低いが、一定のボリュームにすると、販管費が下がってくるので、営業利
益率は上がってくる。
海外は、2015 年 8 月末の 35 店が、5 月末で 57 店、8 月末には 67 店となろう。2017 年 3
月期には 70~80 店へ拡大しよう。海外事業の売上比率も 5~6%台に上がっていこう。そう
なると、本社費用も含めて黒字化が十分見込め、次の目標である 10%に向けて前進するこ
とになろう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
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事業部門別売上高と業績予想
2013.8
2014.8
2015.8
2016.8(予)
(億円、%)
2017.8(予)
売上高 (構成比) 売上高 (構成比) 売上高 (構成比) 売上高 (構成比) 売上高 (構成比)
100円ショップ 直営(ミーツ、シルク、ワッツ)
卸売(FC向け)
349
41
83.6
9.9
370
40
85.0
9.3
375
38
84.2
8.6
381
36
82.6
7.8
392
36
81.7
7.5
4
1.1
5
1.2
11
2.4
21
4.6
27
5.6
23
5.4
20
4.6
21
4.8
23
5.0
25
5.2
売上高合計
417
営業利益
20.7
売上高営業利益率
(注)2015.8期よりワッツ店がスタート。
100.0
435
17.8
100.0
445
12.6
100.0
461
12.9
100.0
480
15.1
100.0
海外事業
国内新規事業
おしゃれ雑貨(ブォーナ・ビィータ)
食品スーパーとの合弁(バリュー100)
輸入雑貨卸(あまの)など
5.0
4.1
2.8
2.8
3.1
2016 年 8 月期は出店が集中、業績は横ばい圏にとどまろう
2016 年 8 月期の 3Q 累計は、売上高 34517 百万円(前年同期比+3.6%)
、営業利益 889 百
万円(同-21.4%)
、経常利益 867 百万円(同-23.3%)、純利益 519 百万円(同-20.5%)
と減益であった。
既存店は 100%をオーバーしており、売上高は予定通りであるが、利益面では物足らない
ものとなった。要因は 2 つある。1 つは、ワッツ店の出店を強化しているので、新規、リニ
ューアルとも、従来に比べて初期の出店コストが嵩む。この費用増が響いている。もう 1 つ
は、ワッツ店で新規の商材を強化しているが、これが原価面ではやや高いものなので、季節
商品やファッション性のある商品として売れているが、粗利益への貢献では低いものとな
った。
全社的には、海外卸売が好調に伸びているが、これは粗利率という点では小売よりも低い
ので、
その影響もある。しかしながら、
3Q だけの売上高粗利益率をみると、
前年同期の 37.0%
から 37.4%に改善している。
3Q のワッツ店は、新店が 8 店、リニューアルが 4 店の 12 店であった。ワッツ店のリニュ
ーアルでは、初期コストはかかるものの、いずれ売上増でカバーできるので、1 年後からは
収益貢献を高めてくるとみてよい。ブォーナ・ビィータは 3Q で 2 店出店、2 店閉店で、こ
こも 3Q ではコストアップとなった。首都圏の人手不足は目立っており、パート・アルバイ
トの時給アップも引き続き人件費の上昇に影響している。
2016 年 8 月期の会社計画は、売上高 46100 百万円(前年度比+3.7%)
、営業利益 1360 百
万円(同+8.1%)
、経常利益 1370 百万円(同+8.4%)、当期純利益 870 百万円(同+24.1%)
であるが、売上は予定通りとしても、利益面では下回ることになろう。前期並みにとどまる
ものとみられる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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2017 年 8 月期からワッツブランド、ビジネスモデル再構築の効果が発揮されよう
1)ワッツブランドの店舗が次第に増えてくること、2)委託販売型の出店も順調に拡大す
る、3)そうした効果で既存店はプラスで推移するとみている。
ワッツ店では、月商 1000 万円レベルの店舗が出店できるようになってきたので、一定の
競争力は発揮してこよう。POS システムの活用も進んでくる。これによって、オペレーショ
ンの効率化が見込める。発注支援システムも導入するので、この負荷が下げられる分、店舗
での接客等への対応が進むことになろう。
ブォーナ・ビィータの採算は店舗の入れ替えで進展してくる。ナチュラルエレガントのあ
まのの赤字も、円安に伴う輸入雑貨の採算低下をビジネスモデルの転換により好転しよう。
今後の業績が上向く要因としては、1)ワッツ店が好調である、2)委託販売のワッツウィ
ズ店も立ち上がってきた、3)ワッツ店の商品の品揃えのうち、少しおしゃれな商品を従来
の既存店にも展開して、商品力の向上を図る、4)ブォーナ・ビィータの採算が改善してい
る、5)海外が黒字化してきた、という点にある。
国内の 100 円ショップは、ワッツ店の確立で、店舗展開がし易くなってきた。当社の平均
月商は 360 万円であるが、2016 年 8 月期上期の出店ではワッツ店で月商 1000 万円クラスが
3 店ほど開設できた。今までは年に 1 店というレベルであるからピッチは上がっている。デ
ィベロッパーの評価が上がって、ワッツ店のチャンスは高まっている。
ブォーナ・ビィータは、3 月よりワッツ・コネクションという社名で独立させた。自立の
目途がたったので、今後は出店の加速に向けて、経営の機動力を上げようという狙いである。
ブォーナ・ビィータは、2017 年 8 月期に黒字化してこよう。
海外売上高は直営と卸売を含めて、2016 年 8 月期上期で 966 百万円(前年同期比 2.3 倍)
と急ピッチで伸びている。セントラルグループが展開するタイ、ベトナムの出店が加速して
きている。マレーシアでは FC の認可がとれた。中国は、直営と催事販売で黒字化しており、
今後は代理商を増やしていく。ペルーは新規出店がいずれも好調に立ちあがっている。
この調子でいけば、3 か年計画にある売上高 500 億円、経常利益 18 億円はクリアするこ
とができる。業績の回復に停滞がするとあれば、為替が円安方向に急激にふれて、輸入によ
る仕入れコストがアップする、という外部要因に起因するものとなろう。
今後の収益回復の目標は、売上高 500 億円で経常利益率 4%、経常利益 20 億円、その次
は売上高 600 億円で、経常利益 5%、経常利益 30 億円が 1 つのターゲットであろう。赤字
部門を黒字化し、ワッツ店が効果を上げてくれば、経常利益で 20 億円を出すことは十分で
きる。次のステージに向けたフォーマットはできている。それをいかに迅速に仕上げていく
かが問われている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
5.企業評価
収益源の多様化に挑戦
差別化の追求
中期的な課題は 3 つある。1 つは、ワッツブランドの再構築で、自社の差別的ポジショニ
ングを見直して、そこでのブランドを高めていくことである。これは、既存店のリニューア
ルをベースにかなり効果を上げる余地はある。2 つ目は、ブォーナ・ビィータのファッショ
ン雑貨を収益ビジネスとして確立することである。もう一息のところまできている。3 つ目
は海外ビジネスの収益化である。タイの「こものや」など既に黒字化しているものもあるが、
直営、卸売も含めて、海外全体をみても黒字化してこよう。
海外売上高については、2016 年 8 月期で 21 億円、売上構成比 4.6%が見込まれるが、これ
を次の 3 カ年で 7.4%へ、将来は 10%にもっていくことを狙っている。
当社の戦略は、日本の 100 円ショップではセリアやダイソーと違って、おしゃれ路線を全
面的に追求していないが、ワッツブランドで一定の対応はスタートさせた。小商圏の従来型
店舗は居抜きの実質本位で、生活雑貨中心の 100 円ショップであるという線は崩さない。お
しゃれな生活雑貨はブォーナ・ビィータで展開している。
100 円ショップ業界では、セリアがファッション雑貨の店としてモデルを確立し、順調に
発展している。業界トップのダイソーはファッション的要素を取り入れてはいるが、セリア
ほどではない。キャンドゥは業務の効率化と大型店に力を入れており、新しいブランディン
グも効果を出し始めた。当社は、新しいワッツブランドの投入、小規模のローコストオペレ
ーションで立地、品揃えの差別化を図っていく。この方針に何ら変更はなく、それによって
独自の伸びる余地を作っていくことができよう。
海外展開に弾み
今後 3 カ年でワッツブランドの店舗展開が功を奏してくれば、利益率の改善が期待でき
よう。当社の課題は、100 円ショップの新しいフォーマットで競争力を向上させ、同時に新
規事業の収益性を高めることである。7 年前からスタートさせた海外展開は、ビジネスモデ
ルをある程度作ってきたので、各国での展開によって、全社の 1 割に相当する売上高 40 億
円、税前利益 2 億円程度が見えてくれば、インパクトは出てくる。100 店規模が視野に入る
かどうかがポイントである。連結決算では、主に現地企業との合弁事業としていく戦略とな
るので、商品供給の卸売と持分法利益の貢献が見込めよう。
キャッシュ・フロー上の問題はない。営業キャッシュ・フローで 12~14 億円程度が見込
め、投資キャッシュ・フローは 7~8 億円程度なので、国内ビジネスにさほど資金は必要で
ない。海外事業も合弁で進めるので、大きな投資にはならない。
本業の 100 円ショップで新ブランドの構築に取り組み、今後の成長性を高めるという点
で、海外を含めた新規事業に取り組んでいる。これらの収益向上には一定の努力を要するの
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
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で、当社全体の企業評価はBとする。(企業評価については表紙を参照)
現時点(7/20)の株価でみると、PBR 1.49 倍、ROE 8.4%、PER 17.7 倍、配当利回り 1.5 %
である。このところ ROE が低下傾向にあるので、業績の底入れを確認したい。
配当に関しては、2013 年 8 月期は東証 2 部上場の記念配 2 円、2014 年 8 月期は 1 部上場
の記念配 2 円がついた。2015 年 8 月期の配当については、創立 20 周年記念配を含めて 17
円の配当となった。
2016 年 8 月期の配当については、2 円の記念配がなくなるので、15 円となる予定である。
配当性向については、従来 15~20%を目途としてきたが、現在は 20~30%に変更した。配
当性向は 15 円で 26%、2017 年 8 月期が 16 円として 23%である。
株主優待としては 100~1000 株の株主に対して、1000 円相当の当社商品(10 点詰め合わ
せ)を贈る。100 株の株主にとっては、株主優待 1000 円分も含めて実質配当は 25 円分に相
当する。配当利回りで 2.5%となる。また、1000 株以上もしくは 100~1000 株を 3 年以上保
有している長期的投資家には 20 点の詰め合わせを贈る。
これを含めると実質配当で 35 円、
配当利回りで 3.5%に相当するので魅力が増す。
国内市場の成熟、為替の変動、海外市場への展開など、経営のかじ取りには十分な目配り
が求められる。会社としては安定配当を志向しているが、局面によっては大型の M&A を視野
においており、そのための内部留保も必要である。
大手とは差別化した本業の 100 円ショップで収益力を持続し、新規事業の輪を広げてい
けば、業績は再び拡大できよう。配当性向を高めることで株価の魅力も向上してくるものと
期待される。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
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