『ハリーポッター』シリーズの解説

Harry Potter
専修大学文学部
並木信明
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1.Harry Potter 解説
イギリスの女性作家 J.K.ローリング(J.K. Rowling)が 1997 年から 2007 年にかけて 7 冊発表
した、児童文学、ファンタジー小説シリーズ。
1990 年代のイギリスを舞台に、1 歳の時に両親を失い、母の妹夫婦
に育てられ、11 歳の時にホグワーツ魔法魔術学校(Hogwarts School
of Witchcraft and Wizardry)に入学したハリー・ポッター少年の、親
を殺害した悪魔的魔法使いヴォルデモート (Voldemort)との戦いを
軸に 7 年間にわたって展開する。
1997 年に、まったく無名であったローリングが第 1 作『ハリー・
ポッターと賢者の石』をイギリスの出版社ブルームズベリー社から出
版すると、子供のみならず大人も愛読する大ベストセラーとなる。物
語は1巻で1年が経過し、以下のように全7巻で完結する。
Harry Potter and the Philosopher’s Stone
第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』1997 年 6 月 30 日発売
(原題 Harry Potter and the Philosopher's Stone [アメリカ版は、 Harry Potter and the
Sorcerer's Stone])
第2巻『ハリー・ポッターと秘密の部屋』1998 年 7 月 2 日発売
(原題 Harry Potter and the Chamber of Secrets)
第3巻『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』1999 年 7 月 8 日発売
(原題 Harry Potter and the Prisoner of Azkaban)
第4巻『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』2000 年 7 月 8 日発売
(原題 Harry Potter and the Goblet of Fire)
第5巻『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』2003 年 6 月 21 日発売
(原題 Harry Potter and the Order of the Phoenix)
第6巻『ハリー・ポッターと謎のプリンス』2005 年 7 月 16 日発売
(原題 Harry Potter and the Half-Blood Prince)
第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』2007 年 7 月 21 日発売
(原題 Harry Potter and the Deathly Hallows)
主な登場人物
ハリー・ポッター(Harry Potter)
主人公。1 歳の時に、伯母夫婦に魔法使いの子であることを隠されて、虐げられて育てられる。
ホグワーツに入学してから、知らなかった学生時代の両親や旧友、教師などの過去が次第に明ら
かになり、ハリーは喜び、また失望しながら魔法使いとして成長していく。
ロン・ウィーズリー(Ron/Ronald Weasley)
両親とも魔法使いの血筋の 6 男でハリーの親友。
ハーマイオニー・グレンジャー(Hermione Granger)
両親は人間(魔法界ではマグル Muggle と呼ばれる)だが、自ら進んでホグワーツ魔法魔術学
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校に入学した成績優秀な女子学生。ハリーとロンの友達となり、悪と戦う。
ハグリッド(Hagrid)
巨人族と人間の混血の巨人で、禁断の森(Forbidden Forest)のそばの小屋に住むホグワーツの
鍵の番人。叔母のダーズリー家に育てられていたハリーを、11 歳の時にホグワーツに入学する
手伝いをする。以後、ハリーの相談相手として彼を支える。
ダンブルドア(Dumbledore)
ホグワーツの卒業生で最高の魔法使いに栄誉を持ち、ホグワーツ魔法魔術学校の校長を務める。
ハリーの良き理解者。
スネイプ(Severus Snape)
ホグワーツの「魔法薬学」(Potions)担当の教授で、スリザリン寮の寮監。何かとハリーを目の
敵にする陰険な教師。
マクゴナガル(Minerva McGonagall)
ホグワーツの「変身術」(Transfiguration)担当の教授で、ハリーらのグリフィンドール寮の寮
監。猫に変身することができる。
ヴォルデモート(Voldemort)
ハリーが 1 歳の時に両親を殺害した張本人。ハリーも殺そうとして撃退され、そのためハリー
の額には稲妻のあざが残る。ハリーが命を賭けて戦う悪の権化。
ダーズリー一家(the Dursleys)
ヴァーノン(Vernon)
ハリーの義父で養父。首が見えないほどの肥満体で、ドリル会社の社長。ハリーの魔法使いの
血筋を嫌って隠そうとし、ハリーを物置に閉じ込めて虐待する。
ペチュニア(Petunia)
ハリーの叔母で、詮索好きな痩せた女。夫とともにハリーを虐待するが、後にハリーの魔法使
いの性質を認めるようになる。
ダドリー(Dudley)
ハリーと同い年の従兄弟。父と同様にひどく太ったわがまま息子で、ハリーを仲間とともにい
じめるが、後に怖がるようになる。
映画版
2001 年に第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開されて、大評判となり、全部で8作
品が製作された。全作品を通じ、ハリー役はダニエル・ラドクリフ、ロン役はルパート・グリン
ト、ハーマイオニー役はエマ・ワトソン。
『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001 年)
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002 年)
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004 年)
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005 年)
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007 年)
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(2009 年)
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』(2010 年)
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011 年)
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2.ゴシック建築(Gothic Architecture)
ゴシック建築は、11 世紀末から 16 世紀初頭にかけて、パリ、ランス、アミアンなどの北フラン
スを中心にイギリス、スペイン、ドイツなどに広まった、中世を代表する大聖堂・修道院などの
建築様式。西正面の高い塔、暗く高い天井とそれを支える大木のような柱の列、赤・青・緑など
の色ガラスでほの暗い堂内を照らす細長いステンドグラス、さらに先のとがったアーチ、交差ボ
ールト天井、外壁を支える飛び梁(とびばり)などの構造で
知られる。代表的なゴシック大聖堂として、パリのノートル
ダム大聖堂、ロンドンのウエストミンスター聖堂、ミラノの
大聖堂などがある。
17,18 世紀に廃れるが、19 世紀に再評価され、ゴシック・リ
ヴァイヴァルという建築様式が流行する。ロンドンの国会議
事堂がその代表。
フランス・アミアン大聖堂(撮影筆者)
3.ゴシック小説(Gothic Romance/Fiction)
18~19 世紀にかけてイギリスで流行した怪奇小説。1764 年、下院議員であったホレス・ウォル
ポール(Horace Walpole, 1717-97)が匿名で出した、中世南イタリアを舞台にした『オトラントの
城』(The Castle of Otranto)がベスト・セラーとなり、その第 2 版に副題として「ゴシック物語」
("A Gothic Story")とつけたことが「ゴシック小説」の始まりとなる。
ウォルポールはロンドン郊外の別邸ストロベリー・ヒルをゴシック風に
作り変え、中世趣味に耽溺したことが「ゴシック・リヴァイヴァル」
(Gothic Revival)という、建築を中心とした 19 世紀の中世復興運動を導
き出した。
ゴシック小説の代表作としては、この他ウィリアム・トマス・ベックフ
ォード作『ヴァセック』(1786 年)
、メアリー・シェリー作『フランケ
ンシュタイン』
(1818 年)、ロバート・ルイス・スティーヴンソン作『ジ
キル博士とハイド氏』
(1886 年)、そしてブラム・ストーカー作の吸血
鬼小説『ドラキュラ』
(1897 年)などがある。
小説『フランケンシュタイン』の口絵版画