2016年7月28日 - アリアンツ・グローバル・インベスターズ

Project M #21 MICRO
シネコンでホットなテーマとなる高齢化
米国の約7,600万人のベビーブーム世代はストリーミング視聴よりも映画館での鑑賞を好む
と言います。ハリウッド映画産業は、高齢に伴う恐れや希望、不安で開拓しています。
背が高くてブロンド、50歳を過ぎた私の親友は、空の巣症
候群と不幸な結婚生活に苦しんでいます。末っ子が学生
アパートに引っ越したところで、もうじきご主人がリタイアす
る予定です。「一日中一緒にいるなんで、彼を殺してしまい
そう」と言っています。
結婚生活のフラストレーションは感じなくなった一方、人生
が終わってしまうような怖れを抱いた彼女は新しいことに
挑戦しました。最近、一人で豪華なスパを予約し、そこで30
歳のアドニスと知り合いました。彼と夜中の2時にホテルの
プールで「ティーンエイジャーのような激しいセックス」をし
たそうです。
彼女が戻ってきてから、私たちは一緒に『間奏曲はパリで』
を観に行きました。年を取ったとはいえ、まだまだ魅力的な
イサベル・ユペール演じるミッドライフ・クライシス(中年の危
機)に直面する女性が主役です。ユペールは農場経営者の
妻で、隣家のパーティーで知り合った若い青年に会いにパリ
に行きます。彼女は結局その青年を拒絶し、別のもっと年上
の男性と一夜をともにするのですが、彼女はもう一度若い気
分に浸りたかったのだろうと私たちは解釈しました。
色あせないスターたち
ユペールは『Valley of Love』(2015年)でもジェラール・ドパ
ルデューと主役を演じています。これは夫婦が息子の自殺
(次ページに続く)
後再会するというもっと暗いテーマの映画です。以前と違っ
て、今の50代以上のベビーブーム世代にとって、自分の人
生が投映された映画は数多くあります。1970~90年代のス
ターで現在もベビーブーム世代の気持ちに近い心情(孤独
感、中年期の欲望、夫婦関係の悪化、そして特に50歳代以
上が常に抱える不安であるアルツハイマー病)を演じてい
る俳優としては、シャーロット・ランプリング、ダスティン・ホフ
マン、ジュリー・クリスティ、ロバート・レッドフォード、スーザ
ン・サランドンなどがいます。
以前の世代における高齢のスターと違って、こうした俳優た
ちはベビーブーム世代(1946~1964年生まれ)のために作
られた映画の中で主役を演じています。脚本家で映画監督
であるジャスティン・ザッカムは、ベビーブーム世代向け映
画の草分け的存在の一人です。ザッカム氏の作品である
『最高の人生の見つけ方』(2007年)は、ジャック・ニコルソ
ンとモーガン・フリーマン演じる2人のがん患者の老人男性
が病院を抜け出して最後の冒険に出る話です。この映画の
後、ベビーブーム世代から「私たちの世代の映画をもっと作
ってください」と言われたと、ザッカム氏はUSAトゥデイに述
べています。ザッカム氏が監督した『グリフィン家のウェディ
ングノート』(2013年)は、まさにその映画と言えます。離婚
したカップルが、息子の結婚式で今も結婚している振りをす
る話です。あるシーンでダイアン・キートン(花婿の母親役)
が台所に入ると、ロバート・デ・ニーロ(元夫役)がスーザン・
サランドン(その恋人役)と抱き合っているところに出くわす
シーンがあります。
「私には既に定年退職した70歳代の親しい友人がいます。
その友人とはセックスも含め、何でも話す仲です。60~70
代の人は今も互いに性欲を抱くことを描きたかったのです」
(ザッカム氏)。
昔の映画で本当に高齢世代に焦点を当てた映画は片手で
数えるほどです。その一つとして、スウェーデン人の映画監
督イングマール・ベルイマンの『野いちご』(1957年)があり
ます。これは78歳の医者が人生を評価し直すことを迫られ
る話です。ハリウッドでザッカム氏のようなベビーブーム世
代を扱う映画製作者が増えたのはここ15年間のことです。
『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(2011年)とその続
編(2015年)は、インドに来た欧州人の定年退職者の話で
す。いずれも「どうやって幸せな熟年期を過ごすか」というベ
ビーブーム世代の普遍のテーマに迫っています。『セルフ・
レス』では、ベン・キングズレーが健康で若い肉体に意識を
乗り換える瀕死の不動産王を演じています。
往年の映画スターが出演する高齢をテーマにした映画
エマニュエル・リヴァ(1927年生まれ):『アムール』(2012年)
ジャン=ルイ・トランティニャン(1930年生まれ):『アムール』(2012年)
マギー・スミス(1934年生まれ):『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(2015年)
モーガン・フリーマン(1937年生まれ):『RED/レッド』(2010年)
ベン・キングズレー(1943年生まれ):『セルフ・レス』(2015年)
ヘレン・ミレン(1945年生まれ):『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015年)
シャーロット・ランプリング(1946年生まれ):『45 Years』(2015年)
スーザン・サランドン(1946年生まれ):『殺人の啓示~死を誘う男』(2014年)
ジェラール・ドパルデュー(1948年生まれ):『Valley of Love』(2015年)
リチャード・ギア(1949年生まれ):『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(2015年)
イサベル・ユペール(1953年生まれ):『Valley of Love』(2015年)
ケビン・コスナー(1955年生まれ):『McFarland』(米国)(2015年)
観客を投影する
「私たちは今もブーム世代です。老いぼれではありませ
ん」と、ケビン・コスナーは2015年2月にハリウッドの映画
製作者や俳優が総立ちで拍手喝采する中、こう断言しま
した。それはコスナー氏が「大人のための映画賞」で生
涯功労賞を受賞した場でした。これは、全米退職者協会
(AARP)のAARPマガジンが2002年より主催しているもの
で、50歳以上の観客にとって「大人による大人のための」
映画の脚本や演技、映画製作で功績のある人に贈られ
る賞です。2015年の主演女優賞には、若年性アルツハイ
マー病にかかった言語学教授についての映画『アリスの
ままで』で主役を演じたジュリアン・ムーアが選ばれまし
た。最優秀映画賞は、スティーブン・ホーキング博士を扱
った『博士と彼女のセオリー』が受賞しました。最優秀監
督賞には、ある少年が成人に達するまでの12年間を撮
った『6才のボクが、大人になるまで』のリチャード・リンク
レーター監督がノミネートされました。
この賞がその2週間後に開催されるアカデミー賞と違うの
は、ベビーブーム世代と強く結びついているということで
す。『ナイトクローラー』での配役で助演女優賞にノミネー
トされた女優のレネー・ルッソは、「史上最高にクールな
世代」から選ばれてとても喜んでいると話しています。
ベビーブーム世代向け映画の製作者は、個人的または
クリエイティブな理由で映画を作っています。その一つで
賛否両論となった『パラダイス:愛』のウルリヒ・ザイドル
監督は醜さに惹かれています。この映画は中年の欧州
人女性たちが買春のためにケニアに行くという、近年増
えている現象を描いており、『間奏曲はパリで』や、『ジゴ
ロ・イン・ニューヨーク』(2013年)とともに中年女性の性欲
というマイナーなテーマを扱っています。
しかし、メットライフ財団による2011年の調査「アメリカが
考えていること」によると、この世代に最もインパクトを与
えるのは、アルツハイマー病に関する映画でした。アル
ツハイマーはこの世代にとってがんに次ぐ健康に対する
脅威です。米国ではHIV感染症や脳卒中、心臓疾患、乳
がんといった死因は減少していますが、アルツハイマー
病はまだ治療法が確立していません。
活動家のマリア・シュライバー(『アリスのままで』の共同
製作総指揮者でもある)とアルツハイマー協会による
2014年10月の調査、「女性の国、アルツハイマー病に挑
戦」によると、「ベビーブーム世代が60代半ばにさしかか
る頃には、アルツハイマー病患者が押し寄せるだろう。
患者数は2050年までに現在の3倍の1,600万人に達する
見込み」とのことです。
需要と供給
オーストリアの映画監督ミヒャエル・ハネケは『アムール』
(2012年)でアルツハイマー病を扱っており、その描写は
他の作品同様、容赦なく、感情を打ちのめす内容です。
この映画では、徐々に衰えていく愛妻(エマニュエル・リ
ヴァ)に向き合うジャン=ルイ・トランティニャンが演じる
80代の男を描いています。この2人の偉大な俳優は「演
技を超え」、「2人とも自分も近い将来このような状況に関
わるおそれがあることを知っていました。」と、ハネケ氏
(次ページに続く)
はザ・ガーディアン紙に語っています。 2012年に、『アムー
ル』は欧州の映画賞を総なめにし、2013年にはアカデミー
外国語映画賞を受賞しました。2015年、ジュリアン・ムーア
は『アリスのままで』で主演女優賞を獲得しました。ムーア
氏と共同製作総指揮者のシュライバー氏はいずれもアルツ
ハイマー病患者とその家族を精力的に擁護しています。
「私たちはアルツハイマー病を自分の時代で根絶したいと
考えています」とムーア氏はMGA主演女優賞を受賞した後
に述べています。しかし、ベビーブーム世代向けの映画が
ブームとなっている最大の理由は、おそらく彼らが魅力的な
新しい市場であるからです。若者はストリーミング配給やデ
ジタル機器でのダウンロードを好みますが、ベビーブーム
世代はまだ映画館に足を運びます。
「統計的にベビーブーム世代は映画ファンであり」、「映画
産業は想像力よりも経済によって支えられています。こうし
た分野の映画が儲かるとなると、さらに多くの映画が出てく
るのです。」と、スーザン・サランドンはUSAトゥディに語って
います。高齢者はシネコンから熱い視線を注がれるように
なったのです。
【ご留意事項】
• 本資料は、アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン(以下、当社)のグルー
プ会社であるAllianz SEが作成したProject Mを当社が翻訳したものです。本資料のお
取り扱いは御社内限りでお願いいたします。
• 本資料は、金融について情報を提供するものであり、当社の戦略等の勧誘を行うもの
ではありません
• 本資料の内容には正確を期していますが、必ずしもその完全性をAllianz SE及び当社が
保証するものではありません
• 本資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、そ
れらは資料作成時における当社またはAllianz SEの見解であり、将来の動向や結果を保
証するものではありません
• 本資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更
される場合があります
• 最終的な投資の意思決定は、商品説明資料等をよくお読みの上、お客様ご自身の判断
と責任において行ってください
• 本資料には、当社がAllianz SEから対外秘扱いで入手した情報が含まれていますので、
Allianz SEまたは当社の事前の承諾なく第三者に開示すること、当該資料の一部または
全部の使用、複製、転用、配布等はご遠慮ください
アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長 (金商) 第424 号
一般社団法人日本投資顧問業協会 加入