July 29, 2016 No.2016-034 伊藤忠経済研究所 Economic Monitor 主席研究員 武田 淳 主任研究員 石川 誠 03-3497-3676 [email protected] 03-3497-3616 [email protected] 日本 4~6 月期 QE 予想~2 四半期連続の前期比プラス成長ながら 民間需要の停滞続く 4~6 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.2%(年率+0.9%)と 2 四半期連続の前期比プラス成 長になった模様。ただし、公的需要が成長の中心であり、民間需要は総じて低調、日本経済は停 滞局面から脱したとは言えない。デフレ脱却への道のりは遠い。 4~6 月期の実質 GDP 成長率は公的需要の押し上げによりプラス成長を維持 これまで公表された指標から試算すると、8 月 15 日に公表予定の 2016 年 4~6 月期実質 GDP は前期比 +0.2%(年率+0.9%)になったとみられる。この通りとなれば 2 四半期連続の前期比プラス成長となる が、公的需要(1~3 月期前期比+0.5%→4~6 月期+0.6%)の底堅い拡大が成長を支えており、国内民 間需要(+0.2%→+0.1%)は減速、純輸出はマイナス寄与に転じている(GDP 前期比寄与度+0.2%Pt →▲0.0%Pt)。 公的需要では、公共投資(公的固定資本形成)が 1~3 月期の前期比▲0.7%から 4~6 月期は+2.4%へ 4 四半期ぶりのプラス成長に転じ、成長率を押し上げた模様である。一方で、国内民間需要は、住宅投資(1 ~3 月期前期比▲0.7%→4~6 月期+5.8%)が大きく伸びを高めたものの、個人消費(+0.6%→+0.7%) は緩やかな持ち直しにとどまり、設備投資(▲0.7%→▲2.1%)は落ち込みが加速したとみられる。 また、輸出は前期比▲1.6%となり 2 四半期ぶりの減少(1~3 月期は+0.6%)、輸入も▲1.7%と落ち込ん だものの、純輸出(輸出-輸入) 実質GDP成長率の推移(QE予測) の実質 GDP 成長率への寄与度は (前期比・%) 2015 前期比▲0.0%Pt になった模様で ある(1~3 月期は+0.2%Pt)。 1~ 3 実質GDP (年率換算) 内閣府の試算によると、2016 年 1 (前年同期比) 国内需要 ~3 月期の需給ギャップは GDP 比 民間需要 4~ 6 7~ 9 10~ 12 2016 予測 1~ 3 4~ 6 1.3 ▲ 0.4 0.4 ▲ 0.4 0.5 0.2 5.2 ▲ 1.7 1.7 ▲ 1.8 1.9 0.9 ▲ 1.0 0.7 1.8 0.7 0.1 0.8 1.2 ▲ 0.1 0.3 ▲ 0.5 0.3 0.3 1.6 ▲ 0.4 0.5 ▲ 0.6 0.2 0.1 ▲1.1%であるが、4~6 月期の成長 民間最終消費支出 0.2 ▲ 0.8 0.5 ▲ 0.8 0.6 0.7 率が本予測程度にとどまると需給 民間住宅投資 2.1 2.2 1.7 ▲ 1.0 ▲ 0.7 5.8 ギャップは▲1.0%へ縮小するに 民間企業設備投資 3.2 ▲ 1.2 0.8 1.3 ▲ 0.7 ▲ 2.1 民間在庫品増加 とどまる。潜在成長率を 0.3%程度 (内閣府試算)としても、例えば 1%成長を 1 年半続けないと需給 ギャップは解消しないわけであり、 デフレ脱却への道のりは依然とし て遠い。 主な需要動向は以下の通り。 (0.5) (0.3) (▲0.1) (▲0.1) (▲0.1) (▲0.2) ▲ 0.1 0.8 ▲ 0.3 ▲ 0.0 0.5 0.6 政府最終消費支出 0.3 0.4 0.2 0.7 0.7 0.3 公的固定資本形成 ▲ 2.3 2.8 ▲ 2.4 ▲ 3.6 ▲ 0.7 2.4 (0.1) (▲ 0.4) (0.1) (0.1) (0.2) (▲ 0.0) 公的需要 財貨・サービスの純輸出 財貨・サービスの輸出 2.2 ▲ 4.8 2.6 ▲ 0.8 0.6 ▲ 1.6 財貨・サービスの輸入 1.5 ▲ 2.5 1.7 ▲ 1.1 ▲ 0.4 ▲ 1.7 名目GDP 2.0 ▲ 0.2 0.8 ▲ 0.2 0.6 0.3 (年率換算) 8.1 ▲ 0.7 3.0 ▲ 0.7 2.4 1.1 (前年同期比) 2.2 2.2 3.6 2.2 0.9 1.5 3.2 1.4 1.8 1.5 0.9 0.8 デ フ レ ー タ ー (前年同期比) (出所)内閣府、予測は当研究所による 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠経済研 究所が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告 なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。 Economic Monitor 伊藤忠経済研究所 個人消費 個人消費は、1~3 月期の前期比+0.6%から 4~6 月期は+0.7%へ伸びがやや高まったとみられる。サー ビス消費が底堅い拡大を維持する中で、自動車など耐久財消費の持ち直しが続いた。ただ、それでも水準 は 2015 年 1~3 月期と同程度にとどまっており、消費増税前の 2013 年度と比べると 2%以上低い。 住宅投資 4~6 月期の住宅投資は前期比+5.8%と大きく拡大、3 四半期ぶりに増加した模様。先行指標の住宅着工 戸数(季節調整済・年率)は 10~12 月期の 86.8 万戸から 1~3 月期に 94.7 万戸へ、4~6 月期は 100.5 万戸へ増加したことを反映した。着工戸数は特に貸家や分譲で大幅に増加しており、金利の一段の低下が 追い風となったほか、一部には消費増税を睨んだ動きが出ていた可能性もあろう。 設備投資 設備投資は 1~3 月期の前期比▲0.7%から 4~6 月期は▲2.1%へマイナス幅が拡大したとみられる。先行 指標である機械受注(船舶電力を除く民需)は 4~5 月平均の水準が 1~3 月期を 11.4%も下回っており、 設備投資は 4 月以降、急ブレーキが掛かっている模様。機械受注からは、特に製造業で大きく落ち込んで いる様子が窺える(4~5 月平均の 1~3 月期比▲17.2%) 。 公共投資 公共投資は、1~3 月期の前期比▲0.7%から 4~6 月期は+2.4%と 4 四半期ぶりのプラスに転じた見込み。 2015 年度補正予算(2016 年 1 月 20 日成立)に盛り込まれた事業の執行が本格化したことに加え、上期 中(9 月末まで)に今年度予算の 8 割契約を目指した前倒し執行の効果が出始めている模様。 輸出入 4~6 月期の輸出は前期比▲1.6%と 2 四半期ぶりに減少したとみられる。財の輸出が、米国向けの自動車、 中国向けの鉄鋼・自動車部品、EU 向けの船舶・電気機械などを中心に落ち込んだことが主因。サービス輸 出は、金融や情報通信を下支え役にひとまず下げ止まったが、旅行分野の増勢が一服。 財輸入は医薬品や自動車が増加した一方で、 輸入は前期比▲1.7%と 3 四半期連続で減少したとみられる。 原油や LNG などの鉱物性燃料が減少した。サービス輸入は、旅行は増加したが貨物輸送の落ち込みが続 いた。 2
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