技術開発・技術力強化への取組み 業務を執行するとともに、車両、土木構造物、軌道、電力、 信号通信等の様々な設備が有機的に機能することで成 鉄道の研究開発の基本的なサイクル 当社は、世界最高水準の高速鉄道に関する総合的な技術力を活用 フィールドの大量データ取得 海外展開の対象路線 し、海外における高速鉄道プロジェクトへのコンサルティング事業を フィールドによる実証 (営業車・地上設備・試験車両等) 推進しています。高速鉄道システムの海外展開は、高速鉄道市場の (本線試験等) SCMAGLEVの対象路線: 拡大に伴う国内各メーカーの技術・技能の維持強化、資機材の安定供 り立っています。鉄道事業にとって、より一層の安全確保 術力を不断に高めることが重要です。 今後も、さらなる安全性向上、輸送サービスの充実に 理論解析と シミュレーション 向けて、車両および設備などにおいて最新の技術を取り ニューヨーク 組みと考えています。 当社の高速鉄道システムの優位性が発揮されるよう、新線による 試験装置 による検証 テキサス州ダラス∼ヒューストン間 を対象としています。また、知的財産権が確立し、契約の尊厳が社会 通念として定着し、法制度が完備されていること、政情が安定してい ヒューストン であると考えており、現在は米国を主なターゲットとして、マーケティ 実物大の大型試験装置 による実証 コンピュータの活用 による理論解析 ワシントンD.C. ダラス ること、巨大なインフラ投資をする経済力を保有していることも必要 営体制構築につなげていきます。 ボルチモア N700-I Bulletの対象路線: 高速旅客専用線で、 トータルシステムの導入が期待できる国や地域 重 点 施 策・経 営 戦 略 入れた開発を推進し、鉄道事業の低コストで効率的な運 北東回廊(ワシントンD.C.∼ニューヨーク間) 給、鉄道関係機器の技術革新やコストダウンにつながる有意義な取 フィールドにおける 現象の把握 や将来の経営基盤強化のためには、そのベースとなる技 マネ ジメント・レター 鉄道事業は、様々な技術を持つ社員が協力して着実に 高速鉄道システムの海外展開 ング活動に取り組んでいます。 小牧研究施設での技術開発の推進 トータルシステムの海外展開とコンサルティング 当社の将来を支える技術開発の取組みをさらに強化するとともに、技術力の向上と人材の育成を図るため、平成14 (2002) 年7月、愛知県小牧市に 当社は高速鉄道システムの海外展開において、プロジェクトの事業主体とはならず、コンサルティング事業を推進することとしています。土木構 造物・軌道・電力設備・信号設備・車両・運行管理システム・修繕保守等を含めたトータルシステムを海外市場に提案し、プロジェクトが具体化した際 発足からの14年間で試験装置を充実させながら、N700系・N700A車両の開発や東海道新幹線の脱線・逸脱防止対策、新幹線土木構造物の大規模改 には日本の関連企業を取り纏めるとともに、運転・保守に関する各種マニュアルの提供、要員の教育訓練等、高速鉄道が安全・安定的に運行される 修工法や新幹線用次世代架線など、当社独自の技術開発成果を挙げてきました。 ための支援とコンサルティングを行うこととしています。 ESG情報 当社独自の研究施設を開設し、研究開発を推進しています。小牧研究施設の大きな特長は、実物大の試験装置を使って技術開発を行っている点です。 今後も、安全・安定輸送の確保を最優先に、東海道新幹線の次期車両等について、最新の技術を取り入れた開発を推進します。加えて、大規模改修等 の設備の維持更新におけるコストダウンをさらに進めるとともに、検査・保守等における省力化及び輸送サービス等の充実につながる実用技術の研究 開発を推進するとともに、異常気象や大規模自然災害に対するより的確な予測、検知等に係る取組みを推進していきます。 ■ N700-I BulletとSCMAGLEV ■ SiC素子の採用による新幹線車両用駆動システムの小型軽量化 ステムと比べて、約20% (1編成当た SiC素子を採用したCI 半導体素子に次世代半導体である炭化ケイ素 (S iC) を採用した新幹 り10トン程度) の軽量化と、更なる小 線車両用駆動システムを開発し、実用化の目途が立ったため、東海道 型化が可能となるため、車両の機器 新幹線の次期車両への導入を検討しています。 配置の制約が緩和されるなど、設計 この開発は、駆動システムの大幅な軽量化と更なる小型化が実現 の自由度が向上するとともに、 より省 できる、高速鉄道では世界初の画期的なものです。 N700系の駆動シ エネルギーな駆動が実現できます。 SiC素子 約1,000mm 冷却フィン となく施工できる変位抑制工法で、摩擦熱により地震エネルギーを めることに加え、①脱線そのものを防止する 「脱線防止ガードの設 吸収する構造となります。今後は、さらなる低コスト化を図りながら、 置」 、②万が一の脱線後の車両の逸脱を防ぐ 「逸脱防止ストッパ」 、③ 従来のダンパーブ 構造物の大きな変位を抑制する対策、を実施しています。 レース工法では施 小牧研究施設では、③の対策の一つとして、新型制振デバイスに 工困難な箇所など よる新たな高架橋変位抑制対策を開発しました。高架下を事務所・ での展開を進めて 店舗などで利用していても、それらを大掛かりに支障移転させるこ いきます。 新型制震デバイス 鋼板巻補強 新型制震 デバイス これまでに、ロボット技術を活用した脱線防止ガード転換ロボッ たに構築したことにより、検査精度を一層向上させると同時に省力 トや、進歩著しいセンサ技術等を活用した新幹線台車温度検知装 化も図りました。引き続き状態監視技術等を活用し、車両や設備の 置を開発し実用化してきました。この技術開発した装置の導入と 検査・保守における高度化・省力化につながる技術開発に力を入れ 合わせて、車両データを継続的に監視するメンテナンス体制を新 ていきます。 東海旅客鉄道株式会社 2016 北東回廊SCMAGLEVプロジェクト 成した東海道新幹線型のトータルシステムです。SCMAGLEVは、当 ▶ 社が500km/hという高速で営業運転ができる技術にまで引き上げ SCMAGLEVについてはワシントンD.C.とニューヨークを結ぶ北 てきた超電導リニアシステムです。 東回廊を対象路線としており、 まずはワシントンD.C.~ボルチモア間 が日米両政府の協力のもと進められるよう、プロモーション活動を実 テキサスプロジェクト N700-I Bulletの対象路線であるテキサスプロジェクトは、民 施しています。平成27 (2015) 年 フォックス米国連邦運輸長官による には米国連邦運輸長官やメリー 山梨リニア実験線の視察 間事業としてダラスとヒューストンの2大都市間を高速鉄道で結ぼ ランド州知事に山梨リニア実験線 うというものです。その開発主体であるテキサス・セントラル・パー を視察いただいたほか、米国連邦 ▶ トナーズ(TCP)社 が 、事 業 化に向け建 設 資 金 の 調 達や概 略 設 計 政府からメリーランド州政府に対 などの開発活動を本格化させつつあります。当社はプロモーショ する連邦補助金2,780万ドルの ン活動を継続するとともに、 TCP社に対する技術支援を進めます。 交付が決定されるなど、米国側の なお、 TCP社に対する技術支援の実施に向けた準備の一環とし 認知度も向上してきています。 ■ 台湾高鉄への技術コンサルティング 日本型高速鉄道システムを採用している台湾高速鉄道を運営 平成26年(2014)4月より技術コンサルティングを実施してきまし する台灣高速鐵路股份有限公司から技術的な支援の要請を受け、 た。今後も、同社の要請に応じ、可能な範囲で技術支援を行います。 参考資料 脱線・逸脱防止対策としては、地震発生時に新幹線車両を早く止 ■ 状態監視技術等を活用した保守の高度化、省力化 28 Technology Consulting Corporation) を設立しました。 Avoidance (衝突回避) 」 の原則に基づく、N700系車両を中心に構 ■ 新型制震デバイスによる高架橋変位抑制対策 新型制震デバイス て、平成28(2016)年5月に現地子会社(High-Speed-Railway 会社概要 駆動システムの小型軽量化と省エネルギー性向上のため、パワー 当社では、 「 N700-I Bullet」、 「 SCMAGLEV」 と称する高速鉄道 システムを海外市場に提案しています。N700-I Bulletは、 「 Crash 日本型高速鉄道システムを国際的な標準とする取組み 一般社団法人国際高速鉄道協会(IHRA) を通じて、 「 Crash Avoidance(衝突回避)」の原則に基づく日本型高速鉄道システムを国際的な標準と する取組みを継続しています。 東海旅客鉄道株式会社 2016 29
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