インフルエンザウイルスの光ピンセットによる人為的感染操作

2016/7/26
インフルエンザウイルスの光ピンセットによる人為的
感染操作
本田 文江
日本大学・薬学部
July/16/2016 みちのくウイルス塾
新しいウイルス操作技術により見えた
細胞とウイルスの関係
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インフルエンザウイルスの増殖機構
July/16/2016 みちのくウイルス塾
インフルエンザウイルスとは
 感染により厳しい症状を呈する
 ゲノムはマイナス鎖RNA
 ゲノムは8本に分節している
 ゲノムは約14000塩基から成る
 ゲノムは細胞膜由来の脂質2重膜で覆われている
 ゲノム複製/転写はウイルスが膜に結合後
約60分から開始
 細胞膜への結合は細胞周期特異的である
(Ueda et al, 2013 Plos One)
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ウイルスゲノム構造と遺伝子
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インフルエンザウイルスの転写・複製機構
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バキュロウイルスを利用したRNAポリメラーゼ各サブユニットの精製と再構成実験
から得られたポリメラーゼサブユニットの機能
A
PB2
PA
PB1
PB1
Transcriptase activity
B
Replicase activity
Host factor(s)
PB2
PA
PB1
Transcriptase
PA
PB2
PB1
Replicase
ポリメラーゼ複合体の転写・複製制御には宿主因子が必要である
Honda et at JBC(2001),PNAS(2002)
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電子顕微鏡写真(野田教授)
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酵母2hybridスクリーニング系を用いた
宿主因子探索
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酵母two hybridスクリーニング系を用いた
宿主因子探索
9種類の宿主因子候補を得た.
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酵母two hybridスクリーニング系を用いた
宿主因子探索
9種類の宿主因子候補を得た。
Ebp1 (ErbB3 binding protein 1)
PKM2 (pyruvate kinase M2)
pCLN (protein of chloride channel)
核に局在
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インフルエンザウイルスの生活環
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* Whittaker, 2001 Expert Reviews in Molecular Medicine
vRNPの放出場所の追跡実験
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vRNPの放出場所の追跡実験
• 100倍のレンズでウイルス粒子・vRNPの観察
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ウイルス粒子と細胞の相互関係を理解するために
• 100倍のレンズでウイルス粒子/vRNPの観察
• ウイルス粒子/vRNPの人為的操作
ウイルス粒子/vRNPの蛍光標識
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ウイルス粒子と細胞の相互関係を理解するために
• 100倍のレンズでウイルス粒子/vRNPの観察
• ウイルス粒子/vRNPの人為的操作
ウイルス粒子/vRNPの蛍光標識
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蛍光標識したインフルエンザウイルスの追跡。膜結合から脱核まで
Wang et al PNAS2003
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ウイルス粒子の膜結合から核までの追跡観察結果
ウイルス粒子はエンドソームとして微小管上を核膜近傍まで運搬され、膜融合後
脱核する。
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インフルエンザウイルスの細胞膜
への結合は選択的であるかどうか
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インフルエンザウイルス粒子の蛍光標識と
細胞周期依存的に発現される遺伝子のプローモーター
の下流にGFP遺伝子融合プラスミドの細胞への導入
A
B
B
ウイルス粒子はDiIで蛍光標識
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ウイルス粒子の標識
ウイルス溶液
DiI
DiI 標識ウイルス
室温で30分反応
未反応基質除去のためセファデックス50で遠心
蛍光標識ウイルスの回収
HA価のチェック
HA タイトレーション
DiI
未標識ウイルス
DiI 標識ウイルス
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インフルエンザウイルスはG1期の細胞に結合
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インフルエンザウイルスの結合がG1期特異的であることの
確認実験
方法
• 蛍光標識ウイルスをpFucciを導入した細胞に感染.
• 蛍光標識ウイルスの光ピンセットによる捕捉と搬送
pFucci: 細胞周期SからM期でGFPを発現
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蛍光標識ウイルスの捕捉と搬送方法
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蛍光標識ウイルス捕捉・搬送用システム
レーザー顕微鏡
細胞培養・ウイルス感染用チップ
DIC
チップ内で増殖した細胞
ウイルスタンパク質
チップ内培養細胞に光ピンセットを用いウイルス感染5時間後にウイルスタン
パク質検出
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光ピンセットによる蛍光標識ウイルスの捕捉と搬送
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蛍光標識ウイルスの細胞への結合観察と光ピンセットに
よる人為的感染実験からインフルエンザウイルスはG1期
細胞特異的に結合する
G1期とS/G2/M期細胞は何が異なるか?
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G1期とS/G2/M期の細胞の違いを明らかに
するための実験
•
•
•
•
シアル酸量計測.
脂質組成の解析
エンドソーム形成タンパク質量解析
膜強度解析
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G1期とS/G2/M期細胞に存在するシアル酸量比較
G1期とS/G2/M期細胞の分取:FACSを利用
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a2,3-sialic acid
a2,6-sialic acid
糖タンパク質量はG1期 が
S/G2/M期に比べ多い
Ueda et al 2013 PLoS One
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G1 と S/G2/Mの脂質成分解析
Gb3,Gb4, GlcCerc 量は
G1に比べS/G2/Mが高い
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細胞膜強度計測
方法
コラーゲンコートしたビーズ(直径2 mm) を光ピンセットで細胞膜に
搬送し膜上で動かし必要とされる力を計測する。
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コラーゲンコートしたビーズによる膜強度計測法
直径2 mm のビーズをコラーゲンでコートし、 光ピンセットで細胞膜に設置し、
光ピンセットで動かす.
ビーズ
collagen
Out of the cell
membrane
collagen
integrin
integrin
cytoplasm
actin
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結果
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膜強度はG1期がS/G2/M期より弱い
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結論
分裂期細胞
静止期細胞
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ウイルス感染による細胞膜変化
ウイルス感染細胞・非感染細胞での膜強度解析
コラーゲンコートビーズ(直径2 mm)作成
解析法
光ピンセットでER領域の細胞膜上で引き・放す
コラーゲン
Fcell
Ftrap
細胞膜
インテグリン
タリン
細胞質
ビンキュリン
アクチン繊維
Membrane stiffness (nN/mm)
フィブロネクチン
30
25
20
15
10
5
0
hpi
0
2
4
6
8
ウイルス感染4時間後から膜強度が弱くなる
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インフルエンザウイルス増殖を理解する
• To observe virus particle/genome under the x100 objective
• 光ピンセットによるウイルス粒子/vRNPの操作
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ウイルスゲノム局在を明らかにする
ウイルスゲノムの蛍光標識
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vRNP の蛍光標識
方法
LDS751染色ウイルスRNP
ウイルス溶液
Syto21溶液
室温で反応
スピンカラムで遠心
Brij58でウイルス
粒子の破壊
50000 rpm で1hr
遠心
蛍光標識 vRNPの
回収
ウイルス粒子
vRNP
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核内のvRNPの観察
ウイルス
infection
LDS 標識 vRNP
N
cytoplasm
核内でのvRNP 捕捉と搬送
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結論
vRNP は核内の構造物に結合している.
光ピンセットで出る力ではその結合を外す
ことはできない.
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謝辞
法政大学
中部大学
上田竜太
粂 慎一郎
Steven Larsen
奈良先端技術大学院大学
三好秀明
杉浦忠男
平松宏昭
鈴木康夫
理研
長塚靖子
平林義男
名古屋大学
市川明彦
新井史人
福田敏雄
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