フィリピン法律実務 第 3 回 『優遇措置の確認』

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桃尾・松尾・難波法律事務所
弁護士
上村
真一郎
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フィリピン法律実務
第3回
『優遇措置の確認』
御社の検討している業種がフィリピンに進出可能な業種であった場合には、更に進出に向
けた検討を進められることとなりますが、進出を検討するに当たっては、優遇措置の適用
があるかどうかどうかも検討した方がよいでしょう。というのも、優遇措置を受けること
ができれば進出後の収支改善に役立つのみならず、手続面でも事業の滑り出しに役立つ者
が準備されているからです。フィリピンとしては外資による投資は歓迎していますので、
数々の投資優遇措置が定められていますが、概して日本企業が適用を受ける可能性のある
ものとしては 2 種類あるといえますので、個々ではその 2 種類に限定してお話ししようと
思います。
1.
IPP
IPP(投資優先計画)は、フィリピン政府が策定するもので、政府として優先的に投資
してもらいたい分野を定め、これに該当する企業の進出の場合には数々の優遇措置を与え
ています。現在有効なものは 2014 年版のIPPであり、そこでは以下を優先投資分野とし
て定めています。
(1) 製造業
a. 自動車(オートバイ、電動バイクおよびゴルフカートは除く)および自動車部品
b. 造船
c. 航空宇宙部品
d. 化学
e. 紙パルプ
f. 銅線および銅線材
g. 鉄鋼
h. 金型およびダイ
(2) 農業ビジネスおよび漁業
(3) サービス業
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a. 集積回路設計
b. クリエイティブ業界
c. 船修理
d. 電気自動車用チャージステーション
e. 飛行機の修理
f. 産業廃棄物対応
(4) 経済的かつ低コストの住宅
(5) 病院
(6) エネルギー
(7) 公的インフラストラクチャーおよび物流
(8) PPP
これらの優遇措置を受けるためには、BOI(投資委員会)に対して申請を行い、許可を
受ける必要があります。この許可を受けると、以下を含む、様々な優遇措置を受けること
が可能となります。
(1) 法人税の免税
(2) 関税・VAT の免税
2.
経済特区の登録(PEZA 登録)
フィリピン国内に数多く設けられている経済特区に進出する一定業種の企業に対しては、
様々な特典の適用があります。日本企業が多く進出しているのは PEZA 庁が管轄する経済
区域(2015 年 5 月時点で 300 箇所を超えています)ですので、ここでは PEZA の登録につ
いてご説明します。
PEZA 登録とは PEZA 庁が設定した経済区域への進出を希望する企業が PEZA 庁への登録
を行うことを指します。この経済区域はいわゆる工業団地だけではなく、たとえばマカテ
ィなどの中心地のビルなどが指定されていることもあります。原則的には、フィリピン国
内で生産した商品を海外に輸出することを目的としている企業が対象となりますが、製造
業のみならず、IT サービスなどについてもその対象となります。以下に対象となる業種を
示します。
(1) 輸出製造業
(2) IT サービス輸出業
(3) 観光業
(4) 医療観光業
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(5) 農業輸出製造業
(6) 農業バイオ燃料製造業
(7) ロジスティックス及び倉庫業
(8) 特別経済区開発・運営業
(9) 施設提供企業
(10)
特別経済区公共事業企業
なお、上記の業種に該当するとしても、優遇を受けるためには条件がありますので、確認
が必要です(たとえば、輸出製造業の場合には、商品の最低 70%が輸出されることが条件
となっています。
)
。
また、仮に PEZA 登録が受けられた場合には、以下を含む優遇措置を受けることが可能で
す。なお、優遇措置の内容は業種により異なりますので、主なものを挙げさせていただき
ます。
(1) 法人税の免税(4 年または 6 年。条件を満たすことにより更に 3 年間の延長が可能)
(2) 法人税免税期間終了後は、総所得の 5%を納付することと引き替えにすべての国税及び
地方税の免除
(3) 原材料、設備・機器等の輸入免税
現実的な問題としては、PEZA 登録を受けることのできる地域又は建物の人気が高いために、
賃料などが PEZA 登録を受けることができない地域又は建物に比べて高いという場合もあ
り、実際には PEZA 登録のメリットが少ないというケースもあるようです。更に、進出後
の業態の変化により、優待を受けることのできる条件を満たすことができなくなることも
ありますので、注意が必要です。
冒頭でも触れましたが、これらの他にも数多くの優遇措置がありますので、進出の検討に
際しては専門家に相談されることをおすすめいたします。