2016年度入試情報 私立大の定員割れ大学数は再び増加 2016/8/5 日本私立学校振興・共済事業団がこのほど 2016 年度の私立大学・短期大学の入学志願動向の調査結果を発表 した。志願者数は大学で増加、短大で減少した。なお、入学者数が入学定員を下回る定員割れの学校数は、昨 年は大学、短大ともに前年より減少していたが、今春は再び増加に転じた。以下、調査結果から浮かび上がっ た 2016 年度入試の特徴を振り返る。 ■私立大の延べ志願者数は4年連続増加 【表1】私立大入試の実施状況 2016 年 度 の 私 立 大 の 延 べ 志 願 者 数 は 年度 大学数 入学定員 志願者数 受験者数 合格者数 3,629,277 人で、前年より約 11 万6千人増 07 559 445,045 3,023,687 2,908,089 1,077,862 (前年比 103.3%)となった【表1】 。4年 08 565 448,345 3,063,047 2,941,542 1,056,977 連続の志願者増となる。昨日発表された学 09 570 449,819 3,071,570 2,952,654 1,039,316 校基本調査(速報)によると、今春の大学 10 569 450,816 3,178, 078 3,062,895 1,054,804 11 572 452,997 3,210,052 3,091,333 1,079,546 進学率(過年度卒含む)は前年より上昇し、 12 577 455,780 3,198,128 3,074,603 1,117,758 過去最高の 52.0%となっている。また、私 13 576 458,456 3,390,069 3,266,422 1,147,178 立大では近年、複数方式に出願した際の受 14 578 460,251 3,464,428 3,329,843 1,195,738 験料割引や一度の出願で複数学部・学科を 15 579 463,697 3,513,499 3,376,430 1,241,262 577 16 467,525 3,629,277 3,489,798 1,245,863 併願できる仕組みを導入する大学が増加、 ※日本私立学校振興・共済事業団資料より(表2~表6も同様) 受験生一人あたりの受験校数増加につなが っており、これらが私立大の志願者増加の 【表2】私立短大入試の実施状況 年度 大学数 入学定員 志願者数 受験者数 合格者数 要因であろう。 07 365 87,792 131,690 128,778 102,453 今春の合格者数は 1,245,863 人で、前年 08 360 83,102 115,545 113,133 92,355 より約4千6百人増加した(前年比 09 356 79,267 104,567 102,520 85,911 100.4%)。合格者数は昨年までの2年間、 10 344 75,166 105,458 103,552 84,222 11 338 72,369 102,701 100,580 79,858 連続して4万人以上増加していた。今春は 12 330 68,899 96,664 94,681 74,918 増加数が 10 分の1の規模まで減ったこと 13 324 66,564 98,087 96,011 75,077 になる。収容定員4千人以上の定員規模の 14 320 64,664 93,377 91,398 72,672 大きい大学では、今春から補助金不交付に 15 315 62,464 89,349 87,680 71,586 関わる入学定員超過率が厳格化された。合 16 311 61,251 83,116 80,685 67,381 格者数を絞り込む大学が増えたことが、こ の結果につながった。 なお、私立短期大の志願者数は前年 より約6千人減の 83,116 人であった 【グラフ3】私立大 定員割れ学校数の推移 大学数 100%未満の大学数 【表2】。入学者数も約2千8百人減 (大学数) 50%未満の大学数 100%未満の割合 600 の 55,171 人となった。短期大は今春 550 559 565 570 569 572 533 542 521 も4校が募集停止しており、入学定員 508 493 は約1千2百人減少している。入学者 471 500 の減少率はそれを超えており、定員充 410 足率は 2.7%ダウンの 90.1%となった。 400 366 47% 46% ■定員割れ大学は7校増、257 校に 【グラフ3】は私立大の定員割れ学 校数の推移である。 定員割れ大学の割合は 1990 年代後 半から徐々に上昇し、2000 年代前半に は約3割で推移していた。2006 年度か ら再び上昇しはじめ、近年は 40~46% 40% 40% 入学者数 定員充足率 484,915 478,000 479,156 489,030 481,959 474,893 483,957 477,630 487,064 488,209 入学者数 109.0% 106.6% 106.5% 108.5% 106.4% 104.2% 105.6% 103.8% 105.0% 104.4% 定員充足率 79,921 72,740 69,075 68,305 64,862 60,678 61,296 58,561 57,951 55,171 91.0% 87.5% 87.1% 90.9% 89.6% 88.1% 92.1% 90.6% 92.8% 90.1% 577 576 578 579 577 80.0% 70.0% 60.0% 46% 46% 40% 38% 39% 43% 45% 50.0% 40.0% 300 28% 30% 28% 28% 29% 30% 30.0% 200 20.0% 100 10.0% 4% 4% 0.0% 0 '90 '95 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 10 11 12 13 14 15 16 -1©Kawaijuku Educational Institution. (年度) の間で推移している。 今春の定員割れ大学は前年より7校増加し 257 大学に、割合は 45%に上昇した。なお、定員充足率 50%未 満となっている定員割れが深刻な大学の数は、ここ数年ほとんど変わっていない。 私立短期大の定員割れ学校数は昨年より 16 校増加して 208 校となった。これにより定員割れの割合は 5.9% アップし、66.9%となった。3校に2校は定員割れという状況である。 ■定員充足率は-大規模大、都市部でダウン、定員超過率厳格化の影響 【表4】は定員充足率を大学の規模別にみたものである。ここ数年、状況は変わらないが、入学定員8百人 を境に、定員規模の大きい大学群では充足率が 100%を超えている一方で、規模の小さい大学群では定員割れ となっている。とくに1百人以上2百人未満の大学で充足率が低くなっており、学生確保に厳しい状況が続い ている。なお、前述の入学定員超過率の厳格化が影響するのは、入学定員1千人以上の大学である。このうち 1千人以上1千5百人未満の大学で充足率は昨年の 108.9%から 105.5%と大きく下がった。 地域別では、東京で入学者数が入学定員を1割近くオーバーしているほか、東海、京都・大阪など、大都市 圏で充足率が高い【表5】。ただし、これらの地区では昨年に比べ、それぞれ1%ほど充足率がダウンしてい る。前述の定員規模の大きい大学は都市部に多いことが影響している。一方で、北海道、東北、中国、四国な どで充足率は 100%を割り込む。なかでも四国の充足率は 88.5%と1割以上の割り込みとなっている。 【表5】私立大 地域別 定員充足率 【表4】私立大 規模別 定員充足率 100 人未満 100 人以上 200 人未満 200 人以上 300 人未満 300 人以上 400 人未満 400 人以上 500 人未満 500 人以上 600 人未満 600 人以上 800 人未満 800 人以上 1,000 人未満 1,000 人以上 1,500 人未満 1,500 人以上 3,000 人未満 3,000 人以上 31 104 85 63 48 42 43 35 53 50 23 2,253 14,763 20,367 21,688 21,226 22,681 29,065 31,288 66,687 102,392 135,115 2,210 12,967 18,821 20,251 20,007 21,600 28,635 32,344 70,363 113,512 147,499 定員 充足率 98.1% 87.8% 92.4% 93.4% 94.3% 95.2% 98.5% 103.4% 105.5% 110.9% 109.2% 合 計 577 467,525 488,209 104.4% 入学定員規模 大学数 入学定員 入学者数 地域 大学数 北海道 東北 北関東 南関東(東京除く) 東京 甲信越 北陸 東海 京都・大阪 近畿(京都・大阪除く) 中国 四国 九州 合 計 25 32 22 76 113 21 11 62 76 43 36 7 53 577 入学定員 11,035 13,020 10,543 54,256 170,553 5,405 4,886 42,928 76,830 26,691 17,039 4,060 30,279 467,525 入学者数 10,702 12,611 1,0341 55,426 185,914 5,293 4,914 44,202 81,445 26,900 16,318 3,592 30,551 488,209 定員 充足率 97.0% 96.9% 98.1% 102.2% 109.0% 97.9% 100.6% 103.0% 106.0% 100.8% 95.8% 88.5% 100.9% 104.4% ■文系は人気回復で志願倍率上昇、歯学・薬学では定員充足率が 100%を割り込む 学部系統別の状況では、医学の志願倍率 【表6】私立大 学部系統別の入試動向 (29.3 倍)の高さが目を引く【表6】。医学 定員 では、志願者が前年から1千2百人増加した。 学部系統 学部数 入学定員 志願者数 入学者数 志願倍率 充足率 30 3,827 112,082 3,865 29.3 101.0% 医学 東北医科薬科大に医学部が新設されたため 17 2,063 9,656 1,768 4.7 85.7% 歯学 で、入学定員も増加していることから、志願 57 11,595 105,573 11,420 9.1 98.5% 薬学 198 30,330 172,040 31,584 5.7 104.1% 保健系 倍率は前年より 0.6 ポイントダウンとなっ 146 59,108 664,238 62,536 11.2 105.8% 理・工学系 た。このほか理系の学部で、理・工学系(11.2 18 7,515 83,540 8,416 11.1 112.0% 農学系 倍)、農学(11.1 倍)、薬学(9.1 倍)と高倍 240 69,619 525,219 73,092 7.5 105.0% 人文科学系 510 165,013 1,264,473 174,262 7.7 105.6% 社会科学系 率になっている。 75 16,386 78,959 16,252 4.8 99.2% 家政学 定員充足率が 100%を割り込んでいるのは 89 15,891 105,310 16,276 6.6 102.4% 教育学 歯学、薬学、家政学、芸術学である。歯学の 10 4,907 17,760 5,401 3.6 110.1% 体育学 58 14,233 40,047 13,879 2.8 97.5% 芸術学 定員充足率は 85.7%と全学部系統でも飛び 264 67,038 450,380 69,458 6.7 103.6% その他 ぬけて低い。また、薬学は志願倍率が高いに 1,712 467,525 3,629,277 488,209 7.8 104.4% 合 計 も関わらず、定員充足率は 100%を割り込む という結果になった。薬学では国公立大・私 立大ともに志願者が減少しており、系統としての人気は落ち着いてきている。このため、今春は定員割れを起 こした大学が増えたものと推測する。 一方、今春は文系学部が人気となっており、人文科学系、社会科学系のいずれも志願者が増加した。とくに 社会科学系では志願倍率が 0.5 ポイントアップし、7.7 倍まで上昇した。 -2©Kawaijuku Educational Institution.
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