その魅力を再確認『長崎市の夜景』

ト ピ ッ ク ス
Topics
その魅力を再確認『長崎市の夜景』
トピックス
その魅力を再確認『長崎市の夜景』
長崎県はグラバー園など豊富な
長崎ロープウェイ利用者数
観光資源を有するが、その風景や
210,000
(人)
景色にも他地域にはない独特のも
のがある。そのなかの1つが、以
前からその美しさが有名な「長崎
市の夜景」である。
長崎市の夜景は、近年その価値
が再評価されてきており、対外的
な評価の高まりから、代表的な鑑
世界新三大夜景
に認定
190,000
170,000
150,000
176,249
184,145
稲佐山展望台と
ロープウェイゴンドラ
140,660
のリニューアル
運休により
5カ月間の実績
130,000
110,000
96,490
93,548
90,000
72,603
70,000
50,000
30,000
運休により
4カ月間の
実績
(5月現在)
41,545
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(年)
※長崎県「主要観光施設等の利用者数」より当研究所にて作成
賞地である稲佐山山頂に至る長崎
ロープウェイの利用者数が10万人台となる(グラフ参照。なお、2015年5月7日∼2016年2月5
日は耐震化工事、及び待合所建替え工事のため運休)など、訪れる人々を魅了している。
そこで本稿では、長崎市の夜景に関する行政の取組みや外部からの評価を整理し、その魅力を
再確認する。
1.稲佐山山頂展望台とロープウェイゴンドラのリニューアル
2011年、長崎市は夜景観光のさらなる充実を図るべく、夜景鑑賞の中心地・稲佐山山頂展望台
と山頂とを結ぶ長崎ロープウェイのゴンドラのリニューアルを行った。うち、展望台のリニュー
アル(4月)では、展望広場に映画「ローマの休日」のスペイン広場をイメージした階段状の円
形ベンチを配置、夜景鑑賞時の足元の安全を確保するための発行ダイオード(LED)を170個地
面に埋め込み、さらにそれを点滅させることにより、イベント等に合わせた30パターンの光の演
出を可能とした。また、周囲の景色を24時間鑑賞できるよう屋外に螺旋階段を設置したほか、駐
車場を増設したことから山頂まで一般車で行けるようになった。
次いで、ロープウェイのゴンドラのリニューアル(11月)も行った。デザインしたのは、GM
やポルシェ、フェラーリなど数多くのモーターブランドデザインを手掛けてきた世界的工業デザ
イナー、奥山清行氏が率いる“KEN OKUYAMA DESIGN”
。大きな1枚ガラスを使用した全面
ガラス張りデザインを採用し、360度のパノラマビューが楽しめるようになった。
ながさき経済 2016.8
29
2.世界新三大夜景に認定
長崎市の夜景は、2012年10月に開催された「夜景サミット2012 in 長崎」において、モナコと
香港とともに『世界新三大夜景』に認定された。主催したのは、夜景を観光資源として活用する
“夜景観光”の普及・啓発活動を行い、地域活性化及び観光産業全般の発展に貢献することを目
的とする団体「(一社)夜景観光コンベンション・ビューロー」。従来から言われている日本三大
夜景や世界三大夜景などの夜景ブランドの認定経緯が明確でなかったことを踏まえて、全国3,500
人の夜景鑑賞士(夜景検定※資格保持者)による第一次ノミネート作業、世界新三大夜景認定委
員会による第二次ノミネート作業を行い、現地調査を経た上で決定したものである。
※夜景検定は、夜景の魅力を知り、その知識を深めることで日々の生活に潤いをもたらしつつ、夜景の観光的価値
を理解してもらうという趣旨のもと2008年7月に始まった。以降、これまでに全国で9,000名以上が受験し、
約4,800
名にのぼる「夜景鑑賞士」が誕生している。当試験には、単純に夜景を楽しみたい人、観光関連企業へ就職を目
指す人、観光のエキスパートなどが受験する傾向にあり、本年2016年は、「第9回夜景検定」(2級・3級)を11
月に、1級(夜景マイスター)は翌2017年2月に実施予定。
稲佐山から望む美しい長崎市の夜景(写真提供:長崎市)
30
ながさき経済 2016.8
ト ピ ッ ク ス
Topics
その魅力を再確認『長崎市の夜景』
3.日本新三大夜景に認定
2012年の「世界新三大夜景」の認定に引き続き、夜景観光の活性化を図り、新たなブランドと
して国内外へ夜景情報の発信・普及を行うべく、約4,500人の夜景鑑賞士が投票形式で選んだ“日
本のベストオブ夜景”の上位3都市が、2015年10月に開催された「夜景サミット2015 in 神戸」
にて発表され、3位は神戸市、2位札幌市、そして第1位が長崎市であった。
長崎市の夜景は、「世界新三大夜景」に次いで『日本新三大夜景(正式名称:日本新三大夜景
都市)』に認定されたのである。
4.日本百名月にも認定
日本の夜景に欠かせないシンボルともいえるのが「月」である。(一社)夜景観光コンベンショ
ン・ビューローは、日本各地の名月の観光資源化を目指す“日本百名月プロジェクト”を本格始
動させ、
「月」を観光資源に活かしたいと願う行政や民間企業が一堂に会する場「全国名月サミッ
ト」の第1回大会を富山県黒部市の宇奈月温泉にて今年(2016年)の3月に開催した。その会合
において、「世界新三大夜景」と「日本新三大夜景」に続く新たな認定ブランド『日本百名月』
の認定事業をスタートさせており、12都道府県14カ所が後世に残したい月の観賞地『日本百名月』
の認定第一弾として発表された。長崎市の夜景はここでも選出されている(図表参照)。
「日本百名月」第1回認定地
認定登録№
日本百名月
鑑賞地
<認定登録第1号>
宇奈月温泉「宇奈月の月/宇奈月温泉100名月物語」
富山県黒部市
<認定登録第2号>
宇治公園・宇治橋「宇治の月/宇治公園(塔の島)・宇治橋(三の間)」
京都府宇治市
<認定登録第3号>
藻岩山「藻岩山から望む月」
北海道札幌市
<認定登録第4号>
稲佐山「稲佐山から望む月」
長崎県長崎市
<認定登録第5号>
奥比叡ドライブウェイ「奥比叡ドライブウェイから望む月」
滋賀県大津市
<認定登録第6号>
月夜野・指月会(みなかみ町)「月夜野の月/指月会」
群馬県利根郡みなかみ町
<認定登録第7号>
中禅寺湖・戦場ヶ原・奥日光湯元温泉「中禅寺湖・戦場ヶ原・奥日光湯元温泉か
ら望む月」
栃木県日光市
<認定登録第8号>
首里・識名園・福州園「那覇沖縄の月(首里・識名園・福州園)」
沖縄県那覇市
<認定登録第9号>
ハルカス300(展望台)「あべのハルカスから望む月/ハルカス300」
大阪府大阪市
<認定登録第10号>
月あかり花回廊「鬼怒川の月/月あかり花回廊」
栃木県日光市
<認定登録第11号>
松島町「松島にのぼる月」
宮城県宮城郡松島町
<認定登録第12号>
石山寺秋月祭「石山寺の月/石山寺秋月祭」
滋賀県大津市
<認定登録第13号>
江ノ島「江の島から望む月」
神奈川県藤沢市
<認定登録第14号>
妙高山「妙高山にのぼる月」
新潟県妙高市
※(一社)夜景観光コンベンション・ビューローの発表より当研究所にて作成
ながさき経済 2016.8
31
稲佐山から望む月(写真提供:(一社)夜景観光コンベンション・ビューロー)
なべかんむりやま
5.鍋冠山公園展望台のリニューアル
長崎市は、2015年6月から稲佐山に次ぐ夜景鑑賞地・鍋冠山公園展望台のリニューアルに着手
しており、本年4月1日より供用を開始した。その展望スペースは従来の4倍にあたる200㎡と
なり、バリアフリー対応となった。また、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産
紹介パネルの設置やトイレの新設、夜景鑑賞者のための足元照明灯も取り付けている。今後、駐
車場や道路照明の新設にも取りかかる予定であり、2017年2月に全ての工事が完成した暁には、
稲佐山からとは異なる長崎の夜景を快適に楽しむことができるようになる。
6.全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞の受賞
日本商工会議所は、地域の個性が光り、他の模範となる観光振興活動に取り組む商工会議所を
顕彰する「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」(2008年創設)の2016年の大賞に長崎商工
会議所を選出した。この受賞は、“世界一の夜景都市をめざして∼青年部の提言を地域一体で実
現∼”として、2012年の「世界新三大夜景」認定以降に始まった官民一体の夜景に関する活動が
評価された結果である。
32
ながさき経済 2016.8
ト ピ ッ ク ス
Topics
その魅力を再確認『長崎市の夜景』
その活動内容は、2013年に開催された全国高校総合文化祭の開催期間における夜景歓迎プロ
ジェクト「ひかりのおもてなしプロジェクト」を成功させたことや、長崎夜景のテーマ曲の制作
を、世界的バイオリニスト葉加瀬太郎氏に依頼して「長崎夜曲」を作成してもらったことなどが
挙げられる。また、2014、15年には稲佐山電波塔のライトアップを実施、さらに、地元出身歌手・
福山雅治氏のコンサートとのコラボの実現など、長崎市民をはじめ観光客から好評を得て、宿泊
型観光の推進に貢献している。
むすびにかえて
このように、長崎市の夜景は対外的な評価が非常に高く、交流人口拡大の強力なツールである
ことは間違いない。この点については長崎市も強く意識しており、ハード面の整備を積極的に行っ
てきている。今後は、斜面地の灯り対策をはじめとする夜景の美しさの維持と、対外的なアピー
ルをどのように推進するのかが課題であろう。国から3都市しか選出されていない外国人観光客
誘致モデル都市「観光立国ショーケース」に選出された長崎市では、これから多くの外国人観光
客の誘致に取り組まなければならず、夜景も外国人誘客策のポイントの1つになるものと思われ
る。『世界新三大夜景』と、せっかく言葉に“世界”という冠が付く長崎市の夜景について、外
国人の琴線に触れるようなアピール法を編み出して集客につなげたいものである。
(杉本 士郎)
ながさき経済 2016.8
33