臨時レポート(トルコ情勢について)

情報提供資料
MYAM Market Report
トルコ情勢について
作成日 2016年7月19日
クーデター未遂事件でトルコの政治的安定性は一段と高まるとみています。
政治的安定性の高まりについて
経済的な影響について
トルコで7月15日(現地時間)夜、発生したクーデター事件
は、エルドアン大統領が静養先からイスタンブールに戻っ
た翌16日早朝までに事実上、収拾し、17日には関与の疑
いをかけられた軍・司法関係者6,000人が拘束されるとい
うスピード決着の動きとなっています。
エルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)は、昨
年6月の総選挙で過半数割れとなり政権の安定性に一時、
陰りがみえました。しかし、昨年11月の総選挙で単独過
半数を回復した後は、今年5月にエルドアン大統領の側
近を首相とする新内閣が国会の賛成多数で信任されるな
ど、政権基盤は強化されつつあります。今回のクーデ
ター未遂事件をきっかけに、反対勢力の排除が進むとみ
られることから、エルドアン大統領の国内政権基盤は一段
と強化されそうです。
一方で、海外主要メディアは、反対勢力の排除を進める
エルドアン大統領に対し「法の支配を尊重せねばトルコ
は国際的に孤立する」との趣旨の米欧高官の声を報じて
います(注)。
もっともトルコは、(i)国内基地を米軍に提供するなど過激
派組織「イスラム国」対策で戦略的に重要な要衝にあり、
(ii)EU諸国への難民流入問題のカギを握る要衝でもある
ことから、米欧はトルコに一定の配慮をせざるを得ず、国
際的にトルコが孤立する可能性は低いと考えられます。
トルコ・リラは対米ドルで一時3.0リラ台へ急落しましたが、
事態収拾を受け週明け月曜日の18日には約3%、急反
発しています。トルコ経済は、ゆるやかな景気回復が続い
ており、好調な個人消費に支えられ、2016年1-3月期の
国内総生産(GDP)は前年比+4.8%と他の新興国と比べ
堅調です。市場では「今回の事件によるGDP下押しは
0.5%程度」との声が聞かれ、景気面への影響は軽微とみ
られます。またトルコの政治的安定性はプラス材料でもあ
ります。むしろ、先行き米国の利上げを巡る思惑でトルコ・
リラは変動性が高まりやすい局面も見込まれることには留
意が必要と考えられます。
為替(トルコ・リラ)レートの推移
リラ高
40
2.8
38
2.9
36
3.0
34
3.1
対円(左軸)
対ドル(右軸、逆目盛)
リラ安
32
16/1
(注)欧州連合(EU)加盟を目指すトルコは、EUに配慮し死刑制度
を2004年に廃止しています。スピード決着の手際良さに関連し
て、欧州委員会のハーン委員がクーデター前に逮捕者リストが
用意されていた可能性を示唆するなど、反対勢力の排除を進
めるエルドアン大統領の独裁的な政治手法が欧米諸国から警
戒されているようです。
(期間:2016年1月1日~2016年7月18日)
(リラ/米ドル)
2.7
(円/リラ)
42
16/2
16/3
16/4
16/5
3.2
16/7 (年/月)
16/6
トルコの経済成長率(前年比)の推移
(期間:2015年第1四半期~2016年第1四半期)
6
(%)
4
2
0
2015年
1-3月期
2015年
4-6月期
2015年
7-9月期
2015年
10-12月期
2016年
1-3月期
出所:FactSetデータをもとに明治安田アセットマネジメント作成
担当:チーフストラテジスト
杉山 修司
東京大学経済学部卒、ロンドン大学LSE修士
日本銀行為替課ほか、格付会社S&P、ドイチェ・アセット・
マネジメントを経て、2016年から現職(業界経験年数25年)
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