広告&マーケティング業界における米国でのニュースやトレンドは、大きく

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広告&マーケティング業界における米国でのニュースやトレンドは、大きく世の中
を動かす事でさえ、ひとつひとつのトピックスだけではその本質は見えてこないこ
とが多い。デジタルインテリジェンス・ニューヨークが毎月お届けする「DI. MAD
MAN Monthly Report」は、ビジネス・経営の視点から、グローバル・マーケター
たちの動き、グローバルエージェンシーの戦略、メディアの新たなチャレンジ動向
の「背後の文脈を紐解き」、独自の解説も交えてニューヨークから提供するレポー
トとする。MAD MAN とは、マーケティング、アドバタイジング、デジタル、メデ
ィア、エージェンシー、ネットワーク、それぞれの頭文字から取ったものである。
本レポートによって、デジタルだけにはとどまらない、現代の『マッドメン』たち
の本当の狙いをつかんでいただきたい。希望、可能性、挑戦、いまできること、こ
れらを追い求めるレポートである。
デジタルインテリジェンス・ニューヨーク 榮枝洋文
<2016 年 7 月、Vol.20>
・日本に上陸間近、IBM が狙う Recurring Revenue
・気になる事象:グローバル企業が女性 CEO を選ぶ理由
・ロケーションデータの大津波、ポケモン GO の次の手は
・欧米のエージェンシーの報酬制度の進化が日本にも
・政府と民間でアドフロードに立ち向かう団体の設立
※『マッドメン』(原題: Mad Men)は、1960 年代のニューヨークの広告業界を描いた、アメリカ合衆国の AMC 製作のテレビドラマシリーズ。(Wikipedia より)
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ロケーションデータの大津波、ポケモン GO の次の手は
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図1:ポケモンユーザーで溢れてしまった、ニューヨークのセントラルパーク付近(7 月中旬)
ポケモン GO の話題が毎日入れ替わり発信されているが、スマホによる「ロケーションデー
タ」と「プラットフォーム・ビジネス」の側面からブランドがどのように対応するのかを考
える。
まず、報道済みの「ポケモン GO」の概要おさらいで、注目しておく点は下記:
・ポケモン GO を開発・配信する主体は、米国ナイアンティック社(Niantic)。任天堂
や、同社が出資するゲーム企画会社のポケモン社は、あくまでポケモン GO の開発に協
力する立場。従ってポケモン GO は、アメリカで開発されたゲームと言える。(任天堂
はオプションとしてウエアラブルデバイスのポケモン GO プラス、を製造発売する)
・ナイアンティックは、グーグルの一部門としてスマホ向けの陣取りゲーム「イングレス」
を 2013 年に開発し、世界 200 カ国にイングレスのユーザーを広げて、2015 年 8 月グ
ーグル(アルファベット)から独立した。翌 9 月に任天堂・ポケモンと提携し、イング
レスの地図情報をベースにした新たなゲーム「ポケモン GO」を開発することを発表。
ナイアンティックは同年 10 月のシリーズ A の出資ラウンドで、グーグル、任天堂、ポケ
モン3社を含めた 8 社から合計 36 億円(当時レート、3,000 万ドル)の出資を調達。
同年 12 月に日本法人設立。
・シリーズ A 時点でのナイアンテックのバリュエーション(pre-money)が約 150 億円
(1.5 億ドル)。ロンチ後に噂されているバリュエーションが 4,000 億円(40 億ドル)
~1 兆円(100 億ドル)。ロンチ後に倍の価値になった株価から計算される任天堂の価
値上昇は現時点で 1.5~2 兆円。上昇率は「バブル」と揶揄される向きもあるが、価値の
落ち着きどころはバブルとも言い切れない高いポイントがありそうだ。
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・ナイアンティックのジョン・ハンケ CEO は Google Earth、Google Map の開発責任者
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であった。
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・ポケモン GO のゲーム内容はオフィシャルサイトにて
http://www.pokemon.co.jp/ex/PokemonGO/
・「画面にはまって歩いていてドブに落ちた」「軍事機密がバレるのではないか」「ダイエ
ットにも効く」等の社会を騒がせている「珍騒動」や、「ツイッターを抜いた」等の公
表データは、各報道に譲る。街中で「フラフラ」スマホを見ながら動く人々がついに日
本に出現してくれた事で、その様子をニューヨークからお伝えする必要も無いだろう。
騒ぐ 10 代 20 代に「教えて」の 30 代という図式が会社内のあちこちで見受けられる。
・ログイン設定がグーグルに連動し、フルアクセスに同意しないとアカウントが開けないの
で(Gmail、生年月日、+カード情報等)大量の個人情報と位置情報を吸い上げる「プラ
ットフォーム帝国」が瞬時に出来上がった事になる。
Sample
図 2:取引の流れ 出典:ヤフージャパン ニュース
柳内啓司氏 作 http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanagiuchikeiji/20160723-00060298/
======= ======= =======
======= =======
■ポケモン GO に対するマーケターの反応
ポケモン GO を遊びだすと、たちまち変化が起こるのが、スマホの映像カメラと地図と
GPS を通信データを使って動かすためにおこる「バッテリーの消耗」と「通信データ使用
量の増大」だ。ベライゾンを始め、テレコム各社はポケモン GO による「棚ボタ」のデータ
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消費の上昇による収入増が見込めるだろうが、米通信キャリアの T-Mobile はこれを逆手に
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取ったキャンペーンを「速攻」で打った(図2)。
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図 2:T-Mobile が発表したポケモン GO のプロモーション。日付に注目。ゲームロンチのほんの数日後だ。
T-Mobile は「T-Mobile 利用者は、向こう 1 年間のポケモン GO アプリを通じてのデータ
通信料を無料にする」と発表した。さらに特典として、車相乗りアプリ「Lyft」の料金を行
き先が「ポケストップ」ならば無料(15 ドルまで)にするタイアップを公表したり、バー
ガーチェーンの Wendy's のフロスティを無料にするサービス※を付けたりと、企画から実
行までわずか 2-3 日と思えるサブスクライバー獲得の「試行」キャンペーンを打っている
(※これらは 1 日限定企画)。さらに T-Mobile の店頭では予備バッテリーやモバイルチャ
ージャーの販売を 50%オフにしている。即決の米国企業の素早いマーケティングの底力を
見た。
他にも、
・家電量販のラジオシャックやテレコム競合の AT&T やスプリントでもモバイルチャージ
ャーの売れ行きが倍増している。スプリントは自社店鋪 2,000 店に指導員「ポケモン GO
エキスパート」を配置するための教材を用意している。
・食べログに似た米国レストラン・アプリの Yelp は、「ポケストップに近いレストラン」
等のフィルターを登場させ、ユーザーにポケモンのロケーション情報を与えている。同様
Sample
な地図サービスは不動産情報アプリの Trulia にも「ポケモン多発地域」地図を登場させ
た。地図を使うアプリはすべて「ポケモン GO に右にならえ」状態である。
・大統領選の演説にもポケモン GO の名前が登場し、ヒラリー・クリントンが述べたジョー
クはタイミング良かった。各陣営での活用もさながら、投票所への若年層誘導の使い方も
考慮されている。
・子供、大衆向け CPG 企業を筆頭に「乗り遅れるな」とばかりに若手とテクノロジー・コ
ンサルを総動員して、打ち手を出す企業とは対照的に、静観している企業もある。例えば
21 歳未満にはメッセージ訴求できないハイネケン等のビール、酒類ブランドには動きは
見えない。
・「ルアー」モジュールを使ってビザ屋が儲かった等の報道があるが、CPC ならぬ「Cost
Per Visit」に近い評価モデルが登場し、小規模リテール(やブランド)にどのような ROI
を示すのかはまだ算定できない。時間や日時を限定してポケモンをおびきだす「ルアー」
を使い、店舗のセールや天候連動の特別サービスアイデアは山ほどでてくる。「ポケコイ
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欧米のエージェンシーの報酬制度の進化が日本にも
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図 1:CRM プラットフォームの例、これらの SaaS(Software –as-a-Service)プラットフォームを使ってサ
ービスを提供するエージェンシーが増えている。CRM だけではなく、SFA(Sales Force Automation)、
MA(Marketing Automation)領域に広がる。
旧来のエージェンシーとは全く別の「新種のエージェンシー」が数多く登場した事によ
り、依頼主(クライアント)とエージェンシーとの取引形態に変化が起こっている。先月の
MAD MAN レポートでメディア取引形態の「ウラ話」「落とし穴」を紹介したが、これも
取引形態に変化が起きている現状の一側面だ。別添特別レポート「日本に上陸間近、IBM
が狙う Recurring Revenue」と連動する、報酬制度の変化について触れる。
まずは「業態が違えば、それぞれにふさわしい報酬系がある」という大前提が存在する。
例えばメディア扱いの無い「デジタル・エージェンシー」と、メディア・バイイングを行な
う「メディア・エージェンシー」と、EC を管理し CRM のプラットフォームを走らせる
「CRM エージェンシー」では報酬システムが違うのは想像つくだろう(図 1 は CRM エー
ジェンシーが駆使する代表的な SaaS プラットフォーム例)。
「コンサル系がエージェンシー業界にやってきた」とか、「M&A が進行する」という変
化の「結果」部分がこれほど溢れてしまうと、何が変化しているのか見えづらくなる。エー
ジェンシー・ランキング表の塗り分け変化も見慣れてしまった。「エージェンシー」の呼び
名も違和感を感じ始める。この変化を見極めるためにエージェンシーの(マーケティング・
Sample
サービスの)「報酬は、どう課金されるのか」という切り口で整理した。
■電通デジタルの報酬モデルはいかに
「電通デジタル」や「博報堂 DY デジタル」の「分社」の登場も、「電通さん」、「博報堂
さん」という風に「ひとくくり」にされてしまう報酬では、サービスが提供できなくなった
が故の出来事だ。本当は「電通」「博報堂」の冠名すらも外したい程の業態の違うサービス
を目指すはずだが、冠名無しであまたある傘下子会社の一つと感じられるのも困る。「電通
+デジタル」、とベタな超汎用用語の組み合わせで言い切った理由は、それほど「基幹」業
務であることの意志表示であろう。
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IMJ がアクセンチュアに株式過半取得を授けたのも、現在のエージェンシー課金には限界
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を感じ、業態の変化を見せるために「IMJ」の冠名をアクセンチュア名に譲って、新たな収
益源を取る判断をしたものだと読み取れる。この一連の流れを見るに国内グループだけで
「閉じた」、「分社」を作るだけで良いのだろうかという課題も見える。
現在、エージェンシー(マーケティングサービス)に見られる報酬系の変化は下記の4つ
に集約される。
1)衰退したと思われたコミッション・ベースの報酬が、デジタル・エコシステムの中で復
活している事。
2)コスト積み上げ(Input)ベースから、バリューベース(Output)への関心移行。
(Fee-for-Service から、Value-Based Reimbursement への移行)
3)インセンティブ(ボーナス)ベースのトライアルの増加。
4)ビジネス結果(OUTCOME)を計測しやすいプラットフォーム・エージェンシーの登場
(MA、SFA・CRM コンサルタント)
以下その詳細を整理する。
■1) 旧態のコミッション・ベースが、プログラマティックのデジタル・バイイング・エ
コシステムで復活
Sample
図 2:IAB による、「プログラマティック・フィー・トランスペアレンシー」計算機。中間コミッション・コスト
を割り出し、正味メディアに投下されたコストを見える化する
http://www.iab.com/guidelines/iab-programmatic-fee-transparency-calculator/
日本でも同様だが、デジタル・メディアのエコシステムの中に関係してくる「スタック企
業群(DSP 企業やデータアグリゲーター等)」は、従量制の課金が多い、そのため
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・(おさらい)広告主のインハウスのトレーディング・デスクの傾向
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この「スタック企業への中間マージン(コミッション)」の不透明性を嫌った大手広告主
が「インハウス(プライベート)」でのトレーディング・デスクを採用し始めた。広告主が
直接スタック側ベンダー企業のテクノロジーを導入し、インハウスでのオペレーションを行
なうのが流行したのが 2013-2014 年頃。代表的な企業では P&G, Unilever, KimberlyClark, Kellogg, L'Oréal, Walmart, Target 等が一斉に動いた。例えば Unilever の場合は
インハウスのトレーディングデスクに DRAW (Digital Reporting Analytics Warehouse)
と名称を付け、独自技術(データ)の蓄積を行っていった。
ところがこれらの動きは、昨年より「振り戻し」現象が起こった。各 CPG 企業に至って
は「やはり、この手の広告メディア運用施策は、自社事業のコア(フォーカス)ではなく、
エージェンシーに任せた方が良い(楽だ)」と気づき始めたのだ。現在ではその戦略を含む
運用オペレーションは、逆にエージェンシーに依頼するケースが増えてきている。
例えばエージェンシー・ホールディング企業の傘下にはエージェンシー・トレーディン
グデスク=ATD(WPP の Xaxis や、オムニコムの Accuen 等※)が存在するが、広告主が
これらを使わずに(敬遠して)、広告主のインハウスの運用部分だけをメディア・エージェ
ンシー(WPP ではマインドシェア、オムニコムでは OMG 等)に任せる流れだ。KimberlyClark の場合はそのオペレーションを WPP のマインドシェアに任す、という運営を行って
いる。この場合はデジタル・メディアの取引でもエージェンシーはコミッションは全くなく
なり、「運用コンサル」フィー、が適応される。
(※余談だが、WPP(Xaxis)もオムニコム(Accuen)もこれらを ATD と呼ばれる事に
は否定的で、自称ではトレーディングデスクではなく、総合メディア投資管理会社だ、とい
う位置づけにしている。http://adage.com/article/datadriven-marketing/package-goodsmarketers-build-private-trading-desks/240374/ )
昨年「メディア・パゾーラ(あるいはメディア・ハルマゲドン)」と言われた「大メディ
ア・エージェンシーの一斉レビューの嵐」に至ったのは、これらの「振り戻し」の取引変更
が重なったためだ。
広告主は、コミッションや中間マージンの従量ベースでのエージェンシー・フィーを削減
しようとインハウスのトレーディング・デスクを作ったものの、結局運用面(戦略面)でイ
ンハウスで対応しきれず、エージェンシーに頼る(運営フィーが発生する)部分が残った。
エージェンシーだけ切り離して観察すれば「運用フィー」という課金にシフトした様に見
えるが、広告主がインハウスで採用しているテクノロジー・ベンダーのレベルで観察すれ
ば、ベンダーが課金しているコミッション(従量課金)が「体内に」残っている状態。さら
に近年はこのテクノロジー・ベンダーに、広告ホールディング企業が資本注入している複雑
な場合がある(MAD MAN レポート 6 月号参照)。
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扱い金額の大きい「メディア・エージェンシー」に関しては、引き続きコミッション・ベ
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ースの報酬系が残りつつ(たとえば、純粋バイイングは数%コミッション等)、戦略や運用
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には人件費フィーモデルを組み合わせる、という方法が残っている。
単純バイイングのコミッション料率の例、相場:
Agency of Record (AOR)
2.0% – 3.0%
Buying, national, all media
2.5% – 3.0%
Buying, TV only, network and spot
1.5% – 2.25% + fees
Buying all media
2.25% + fees
Planning and buying TV network and spot
Planning and buying all media
4.0% + fees
5.0%
http://twohatsconsulting.com/fee-structures-in-advertising/
■2) コスト積み上げ(Input)ベースから、バリューベース(Output)への関心移行
エージェンシー業界の報酬系で旬の話題は「Value Based fee 」や「Performance
based fee」という名称でカテゴライズされる報酬形態だ。上記2つの Fee はどちらも過去
のコスト積み上げ方法(Input ベース)から脱却した、「バリューベース(Output ベー
ス)」の方法である(図3)。
Value/Performance
Base
Sample
Commission
固定プロジェクトフィー
労働時間給フィー
図 3:WFA(世界広告主協会)調査による「グローバルでのエージェンシー報酬の現状」大手の事例だ
けを抽出した資料(2014 年)ここにおける Value-based はコカ・コーラ社(+P&G 社)の数字が反映さ
れていると考えて良い。
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・Value Based Fee
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「バリュー・ベース」という概念は特に新しいものではなく、言葉のお遊びになるがザッ
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クリ例えれば「タレント事務所がつける、タレントの出演料」も、バリュー・ベースのアプ
ローチの一種だ。あるタレントを契約して CM に出演契約するフィーは、タレントを登場さ
せる事でのインパクトや結果(OUTCOME)を予想して決まる価値がある(ただし、インセ
ンティブボーナスを付けるケースは皆無だろうが)。
「バリュー・ベース」の言葉はコカ・コーラが 2009 年に採用、ANA にて発表したこと
で話題になった(理解としては Performance Based の一種と解釈して差し支えない)。
2014 年の発表でコカ・コーラは「70-20-10」ルール、を設け、「70%の作業はこれ
まで通りの Performance Based の基本契約。+20%分についてボーナス考慮対象とし、
10%はエージェンシーが初めて取り組むプロジェクトとして評価する」と、改訂版の
Value Based の考え方を発表した。
仕組みは基本の Performance Base 人件フィーに最高 30%ボーナス乗せるというもの
だ。乗せ幅を 17.65%~22.65%を相場として提供する準備をプールしておく。ちなみに
2013 年のコカ・コーラに関わるエージェンシーが獲得した平均ボーナスは 18.3%と発表
した。例えば、$100 の人件費に$30(30%オン)のボーナスが乗れば、エージェンシーの
利益率は 23%という事になる。17.65%乗せであれば利益率 15%となる意味だ。
http://adage.com/article/agency-news/coca-cola-hikes-agency-bonuses-cuttingedge-work/293067/
Sample
・インセンティブ(ボーナス)を付ける報酬のトライアル増加
これらの査定評価対象の数字を使っての報酬の提供(シェアの仕方)は、およそ 80%以
上の広告主企業で(パフォーマンス)すでにインセンティブ(=ボーナス)を連動させてい
る。逆に言えば、ボーナスインセンティブを付ける効能が浸透したので、そのためのビジネ
ス OUTCOME で評価する軸を各社で試行錯誤している段階だ。
ANA の統計値では広告主全体の 6-7 割がインセンティブが付く報酬制を採用している
のだが、これはインセンティブ評価プロセスを採用する手間がかけられない中小の広告主を
含んでの「平均」6-7 割の企業の導入率だ。実は広告主の規模が小さくなれば、フィーよ
りも簡略なコミッションベースで取引している傾向が増える。これらの中小の広告主を除い
た年間 100 億円規模以上の大予算を持つ広告主に限れば、80%以上が導入している。
報酬制度に完璧なモデルは存在しえないが、パフォーマンス・ベースは、広告主側の計測
(査定)作業が、非常に人的労力と主観を伴う。よって広告主&エージェンシー「双方から
見て」フェアな査定方法を作るのが難しいだけでなく、広告主側から「だけ」で見ても「コ
レで良いのか」という着地点が作りにくい課題は残る。
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■リカーリング・レベニュー
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別添特別レポート「日本に上陸間近、IBM が狙う Recurring Revenue」でも触れているが
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上記の例のようなマーケターのマーケティング活動を全てサービス・プラットフォーム上で
行うエージェントの業態とそのマーケットは増えている。
MA(Marketing Automation)、SFA(Sales Force Automation)、CRM 等の
SaaS(Software-as-a-Service)を提供するプラットフォーマーは、ユーザー当たり単価 X
ユーザーアカウント数で毎月課金していく。これらを「マーケターがインハウスで直接操る
よりも、インサイトを持って操れる人材の集団エージェンシーに委任する傾向」が出てきた
のだ。前出トレーディング・デスクのインハウスからエージェンシーへの振り戻しと同じ傾
向だ。
マイクロソフトがセールスフォースに打ち勝ち、リンクドインを 2.6 兆円(262 億ド
ル)で買収する。IBM がセールスフォースを操るパートナー・エージェンシー(コンサル
ティング)Bluewolf を買収する。ピュブリシスがセイピエントを買収し、セイピエントが
セールスフォースを操るエージェンシーVertiva を買収する。MDC がセールスフォースと
共同出資する。アクセンチュアは Cloud Sherpas を買収する。。。。この様にしてこの具
合にこれらの SaaS 認定のパートナー・エージェンシーは、1つの SaaS 専業ではなく、複
数のプラットフォームに精通し、マーケットを拡充さてている
SaaS 型エージェンシーにも課題はある。これまでのエージェンシーが取引をしている
「宣伝部」では、欧米でも「プロジェクト」ベースにおいてそのプロジェクト都度単位での
課金が多い。エージェンシーはそもそもプロジェクトに対する企画を買ってもらう商売であ
った。新製品が発売されないと、プロジェクトが受注できない受け身であり、だからこそ
「エージェント」であった。宣伝部の「プロジェクト発注」体質では、SaaS 型エージェン
シーは受注が難しい。
しかし今後はマーケティング活動がデジタル上に移行するにつれ、「企画」、「プロジェ
クト」を組み合わせるモデルから、年間フローでマーケティングを分析し、操作・運用する
モデルに移行するのではないかと予想できる。SaaS 型のエージェンシーはそのサービスの
体質上「契約をしたら解約するまでずっと」課金が発生する「リカーリング(繰り返し)レ
ベニュー」が期待できる安定的で魅力的な事業モデルになる。
プラットフォームを操る集団をエージェンシーと呼ぶか、はたまたコンサルタントと呼ぶ
か、議論の分かれどころだ。データと頭脳(AI)の風上を持つ企業がコンサルタントで、
風下の人々に触れる部分のデザイン領域側を持つ企業がエージェンシーというイメージがあ
る。「電通デジタル」は分社したものの、エージェンシーのイメージから脱却してリカーリ
ングの契約が取れるかどうか。昨年発表したオラクルとの提携をいかに操るかが注目だろ
う。
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政府と民間でアドフロードに立ち向かう団体の設立
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図5:TAG の Web サイト。加盟企業は広告関係大手100社程が既に加盟し、米国
政府も共同で動き始めた。
「Ad Fraud」と「Viewable Impression」+「アドブロック」の課題は、日本での状況と
同様に海外でも大きな課題だが、決め手となる対策は未だに無い。無駄になったとされる広
告投資額は年間約 82 億ドル(約 8,200 億円、IAB2015 年発表)に登る。
超大手の広告主は、エージェンシーとプライベートエクスチェンジを組み、外部ベンダー
DSP、アドネットワークを使わないような手法で出稿の品質を保つ動きがあるが、これは例
外的な対策だ。現在のフロード事情の関心は CPM が高く、フロードを仕掛けた側が儲かり
やすい「ビデオ」だ。
■米国トップ企業が結束したアドフロードに立ち向かう団体 Trustworthy Accountability
Group (TAG)の設立
米国ではアドフロードに団結して対抗するために全米広告業協会(4A)、全米広告主協
会(ANA)、インターネット広告協会(IAB)、それぞれの各加盟企業によって、
Trustworthy Accountability Group (TAG) が昨年より結成されている。大手メディア、大
手広告主、Google、Facebook、エージェンシーグループが現在では 100 社近く加盟完了
している。今月には FBI とアメリカ国土安全保障省(DHS)との合同会議も開催している。
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・活動内容は 2 本の柱として、
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1)アドフロードを行わない、関わらない証明企業群を作る "Certified Against Fraud"
★
initiative
広告バイヤー、プラットフォーマー、セラー全てが対象で、経歴調査とレビューを経て認定
されれば"Verified by Tag" seal と固有の ID の発行がつく。この証明加盟には年間(最
低)2 万ドルの費用がかかる。これが活動費用として使われる。
2)資金の流れを止める監視
「payment ID protocol」
広告出稿の全ての Impression ごとに、誰が金銭を受け取るのかを記録・追跡して、フロー
ドからの支払いの流れを防止、監視するシステム。まだ完全ロンチには至っていない。
TAG の現在加盟企業と団体は現在 100 社近くに登っている。ここにかろうじて電通イー
ジスネットワークが加盟しているものの、米国メディアを買っているはずの日本の事業者
(エージェンシーや広告主)の名前はリストの中には見当たらない。国防にも関係する事な
Sample
ので、何かしらハードルがあるのだろう。
有効だと思われるデータ資料 2 件
アドフロードと Viewable Impression に関する数字
http://barnraisersllc.com/2016/02/why-34-clear-facts-on-viewable-impressionsmatter/
2015 年 11 月 IAB レポート
http://www.iab.com/wp-content/uploads/2015/11/IAB_EY_Report.pdf
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