宮城県【農業・農村分野】(PDF:2485KB)

食料生産地域再生のための先端技術展開事業
土地利用型営農技術の実証研究
〔分類〕網羅型研究(研究課題名:土地利用型営農技術の実証研究)
〔代表機関〕 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)
〔参画研究機関〕 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構(中央農業総合研究センター、
北海道農業研究センター、野菜花き研究部門、農業技術革新工学研究センター)、
宮城県農業・園芸総合研究所、宮城県古川農業試験場、石川県農林総合研究センター、(株)クボタ、
井関農機(株)、小泉商事(株)、ヤンマー(株)、ヤンマーヘリ&アグリ(株)、スガノ農機(株)、富士通(株)、
日本電気(株)、イーラボ・エクスペリエンス(株)
1
〔研究実施期間〕
平成24年度~平成29年度
研究の背景・課題
東日本大震災から復興し、水田を中心とした食料生産地域を早期に再生するために、地域の
担い手に農地を集積するとともに、圃場区画や経営規模の拡大により、コスト競争力のある水
田農業の発展が期待されている。そこで、本研究では、先端技術を導入し、高能率・安定多収
を実現する低コスト大規模水田農業の実証研究を展開する。
2
研究の目標
 大型機械を用いた大区画圃場での高能率作業による稲-麦-大豆2年3作水田輪作体系の生産コ
スト50%削減
 津波被災農地の圃場環境に対応した中型機械の汎用利用による稲-麦-大豆3年4作水田輪作体
系の生産コスト50%削減
 キャベツ作における生産コストを慣行栽培の30%減、農閑期の労働平準化への貢献。
3 研究の内容
1-1)大区画圃場におけるプラウ耕乾田直播を核とした稲-麦-大豆水田輪作体系
2)高能率な鉄コーティング水稲湛水直播技術の実証
3)地下水位制御、効率的均平技術、直進支援等大区画水田における圃場作業支援技術の実証
2-1)津波被災水田の早期機能再生技術の実証
2)広畝成形播種、乳苗・疎植栽培等中型機械の汎用利用による稲-麦-大豆水田輪作技術の実証
3-1)キャベツ及びタマネギにおける機械化体系の実証
2)水稲育苗用ハウスを利用した野菜栽培技術の実証
4 研究成果概要
 合筆造成した3.4ha圃場(長辺300m)と2.2ha圃場(長辺170m)を用いた2年3作の実証試験の結果、
平均収量は、乾田直播533kg/10a、小麦403kg/10a、大豆226kg/10aであった(図1)。60kg当たり費用
合計は、水稲乾田直播6,903円、小麦7,431円、大豆14,711円で、2010年東北平均に対し、それぞれ
57%、46%、72%であった(図1)。今後、IT利用で収量の向上とコスト削減に引き続き取組(図2)。
 乳苗育苗では、簡易育苗により育苗期間を稚苗育苗の半分以下(12日)に短縮。また、疎植により苗
箱数を従来より半減(8.1箱)し、乳苗+疎植の組み合わせによる省力・低コスト栽培を実証した(図3)。
収量の向上と安定化が課題。
 作土深と土壌電気伝導度をリアルタイムで測定し、それに応じて適正量の施肥を行う土壌センサ搭
載型可変施肥田植機(スマート田植機)を開発し、慣行比30%程度の減肥を達成した(図4)。平成28
年3月より販売開始。
 促成アスパラガスでは、無仮植育苗と2軸ロータリ利用の畝立て、新品種「ウィンデル」の利用により
根株重の目標を達成。キャベツ機械化体系におけるうね内部分施用による施肥量削減、結球部傾き
抑制による機械収穫の効率向上、タマネギの輪作体系、オオムギリビングマルチによる減農薬体系、
水稲育苗ハウスの夏期高温時のトマト簡易養液栽培での利用、暑熱対策等を現地実証。
土地利用型営農技術の実証研究
先端技術を津波被災地域に導入し、稲-麦-大豆の低コスト水田輪作体系と
露地野菜の機械化体系を実証します
低コスト水田輪作体系
<体系の特徴>大区画圃場、水稲直播
<体系の特徴>現行区画、移植含む
1 大区画圃場におけるプラウ耕乾田直播等
を核とした低コスト2年3作水田輪作体系
の実証
2 津波被災農地の圃場環境に対応した中
型機械の汎用利用による低コスト3年4
作水田輪作体系の実証
露地野菜の機械化
3 土地利用型農業への露地野菜導入による低コスト安定生産の実証
1 大区画圃場におけるプラウ耕乾田直播等を核とした低コスト2年3作水田輪作体系
プラウ耕グレーンドリル播種による2年3作体系(図1)
実証圃場
もともと
30a区画
圃場を
H25.3月
に、プラ
ウやレベ
ラーで合
筆造成
 乾田直播533kg/10a、小麦403kg/10a、大豆226kg/10aの収量を実証
(H25~27年平均)。
 60kg当たり利用合計は、東北平均(2010年)に対して、水稲57%、小麦
46%、大豆72%に低減。
問い合わせ先:(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)
TEL: 019-643-3483
無人ヘリによる生育モニタリングと収量コンバインによる収量データの比較(図2)
低
GI値
高
生育指標値(GI値:NDVI×100)
低
収量 高
収量測定値(湿籾重)
無人ヘリによるNDVI(正規化
植生指数)と収量コンバイン
データがFARMS(営農管理
支援ソフトウエア)上で表示
が可能となり、生育状況との
一致が確認できた。翌年の可
変施肥などへの技術展開が期
待できる。
2 津波被災農地の圃場環境に対応した中型機械の汎用利用による低コスト3年4作水田輪作体系の実証
簡易乳苗移植と疎植(図3)
シルバーポリ
簡易育苗による乳苗
疎植
乳苗疎植栽培
 苗箱数は、50~53%、育苗
期間は44~52%と半減で省
力・低コスト化。
 収量は、宮城県平均(当該試験
年)に対して、92~101%。
可変施肥田植機(スマート田植機)の開発と実証(図4)
頻度割合(%)
土壌肥沃度が高い箇所(赤色部分)では、施肥量
を大幅に減らしても生育に支障は出ない!
土壌肥沃度
可変施肥田植機 (スマート田植機)
土壌肥沃度マップ
・作土深と土壌電気伝導度をリアルタイムで測定し、その値に応じて施肥量を調節す
る可変施肥田植機(スマート田植機)を開発、平成28年3月より販売開始。
・平成25年度は、収量はほど同等で30%程度の減肥効果を確認。
問い合わせ先:(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)
TEL: 019-643-3483
3
土地利用型農業への露地野菜導入による低コスト安定生産の実証
促成アスパラガスの導入と安定生産
3000
2000
1000
株重(g)
株重(g)
2000
1000
0
鉢上げ
(128穴)
72穴
0
48穴
慣行
2軸
ロータリの種類
育苗は、無仮植のセルトレイで行う。2
軸ロータリで畝立てを行うことによって
畝の砕土性が高まる。これらの技術に新
品種の「ウィンデル」を組み合わせ、
1600g超の根株が得られ、目標を達成
(耕谷アグリ)。
キャベツおよびタマネギにおける機械化体系
0
土壌表面からの深さ (cm)
0
基肥のうね内部分施用による30%減肥はすでに現地で標準
的な施肥となっている。加工・業務用途を想定した年内~
年明けまでのリレー出荷のための品種選択と生育特性に合
わせた施肥が課題(林ライス)。タマネギ機械化では、秋
まき+春まきの組み合わせと春まき+秋冬どりキャベツと
の輪作が2年目に入った(耕谷アグリ)。
*
1
0
**
10 20 30 40
0
1
2
3
根の本数
根の直径 (mm)
1 2 3 4
*** 浅植え
2
3
4
4
5
5
6
6
7
7
**
深植え
キャベツセル苗を深く定植する
と、浅植えより深い部分で多くの
根が発生し倒伏に対する抵抗も大
きくなり、結球部の傾きや倒伏を
防ぎ、機械収穫適性が向上する。
リビングマルチを利用した露地IPM
春まきタマネギ+オオムギリビングマルチの体系で、スリップス発生
を抑制、化学合成農薬を4成分に抑え、目標を達成(耕谷アグリ)。
水稲育苗ハウスの野菜への高度利用
畑地用地下灌漑システム
(OPSIS)の利用
(左)綿作業着、(右)空調服+小型ファン
水稲育苗ハウスを、夏期を中心に高度利用する。ミニトマトの
ポットレストレイ栽培では、2kg/株の収量を得るなど順調。高
温期の作業者への暑熱軽減対策として、空調服等の利用を検討、
機能性下着との組み合わせが高い効果を示した、
問い合わせ先:(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(東北農業研究センター)
ホウレンソウの増収効果確
認。現地(山元町)での工事
が完了し、実証試験に入る。
TEL: 019-643-3483
食料生産地域再生のための先端技術展開事業
施設園芸栽培の省力化・高品質化実証研究
〔分類〕網羅型実証研究(研究課題名:施設園芸栽培の省力化・高品質化実証研究)
〔研究実施期間〕
〔代表機関〕 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構
〔参画研究機関〕農研機構(野菜花き部門、農村工学部門、食品研究部門、九州沖縄農業研究センター・ 平成23年度~平成29年度
中央農業研究センター)、宮城県農業・園芸総合研究所、宮城県産業技術総合センター、
福島県農業総合センター、東京都農林総合研究センター、 宮崎県総合農業試験場、宮城大学、
千葉大学、慶應義塾大学、近畿大学、イノチオアグリ(株)、カネコ種苗(株)、OATアグリオ(株)、トヨタネ(株)、
パナソニックライティングデバイス(株)、アリスタライフサイエンス(株) 、(株) ジオシステム、日立工機(株)、ポルトプラン(合)、
(株)伊藤チェーン、積水化成品工業(株)、(株)はつらつ、(株)二上、(有)みやぎ保健企画 【普及・実用化支援組織】(株)GRA
1
研究の背景・課題
被災地域におけるイチゴやトマト等の施設園芸の再生にあたっては、単なる復旧にとどまらず、全国
的にも先進的な大規模施設園芸団地として発展していくことが期待されている。このためには、大型施
設を利用した省力・高品質・多収生産技術(環境制御、高品質生産、作業省力化、情報利用、未利用エ
ネルギー利用等)および流通・加工技術を高度化が重要である。
2 研究の目標
トマトおよびイチゴ生産において、大型施設を対象とした省力・高品質・多収生産技術を体系化し、従
来の2倍の収益率を可能とする生産体系を提示する。再生可能エネルギー利用や地下水の除塩技術
の有効性の実証をおこない、新たな農産物加工技術を導入する。これらによって、被災地域の施設園
芸が早期に再生し、最先端の園芸生産モデル基地として発展していくことに貢献する。
3 研究の内容
トマトとイチゴの大型施設を利用した生産方式を高度にシステム化し、総合的病害虫管理(IPM)を実
証する。イチゴでは高設ベンチ養液栽培のクラウン部(株元)温度制御と統合環境制御による高品質
多収を、トマトでは周年供給と高品質化が容易な短期栽培(低段栽培)を実証する。各生産現場の栽培
情報の共有により、産地全体の生産技術向上を支援する。逆浸透膜装置による低コスト地下水脱塩
技術、ヒートポンプによる地中熱利活用技術、再生エネルギーを利用した農業用充電ステーションと電
気自動車の利用技術、地域農産物に最適な一次加工処理・流通技術を実証する。
4
研究成果概要
 宮城県亘理郡山元町に機能集合型の大型実証ハウス(間口90m×奥行80m)を建設し、イチゴとトマ
トの新しい生産技術の実証を行っている (図1) 。
 環境制御システムとして、メーカー間の互換性・拡張性の確保されたユビキタス環境制御システム
(UECS)を設置し、機能向上に取り組んでいる(図2) 。
 イチゴ栽培実証では、クラウン部温度制御(加温・冷却)により、年間収量が6t/10a以上が得られ、高
品質果実はブランド商品として販売している。UV-B蛍光灯によるイチゴの‵うどんこ病’抑制技術では、
直管蛍光灯から電球型に変更することで製品の低コスト化ができた(図3)。
 トマト低段周年栽培では、普通糖度果実で30t/10a以上、高糖度果実(Brix7~8%)で15t/10a以上の
年間収量が得られた(図4)。
 農業用に開発した逆浸透膜装置、地中熱ヒートポンプ、太陽光発電を利用した電気自動車用充電ス
テーションを岩沼市内に設置し、農村地域の未利用資源の利活用を図っている(図5、6)。
 まるごとイチゴ乾燥品の試験販売(図7)とイチゴの簡易包装技術の条件絞込みを行った(図8)。
大規模施設園芸実証ハウス
イチゴ高設ベンチ養液栽培
雨水利用システム
トマト低段密植栽培
イチゴ高設栽培とトマト低段栽培のための大規模施設園芸
実証ハウス(機能集合型、 太陽光利用型植物工場) (図1)
イチゴ栽培室(24a)、トマト
栽培室(17a)に加えて、新技
術実験エリア(2室)、トマト・
イチゴ育苗室、イチゴ夜冷
庫などを装備。
天窓制御装置
温湿度計 カーテン制御装置
気象観測装置
循環扇
インターネット
屋外温湿度計
暖房機
設定コンソール
各種スイッチ
側窓制御装置
UECSの制御ノードBOX(富士通製)
マイコン基盤「USE」
UECSのシステム構成の例
タブレットによるモニタ画面と操作アイコン
UECSのクラウド型のモニタソフト(ワビット製)
ユビキタス環境制御システム(UECS) (図2)
通信規格が公開されメーカー間の互換性
が確保され、拡張性に優れる。
問い合わせ先:(農研機構 野菜花き部門、TEL029-838-6683)
各定植時期のクラウン温度制御による増収効果
((2013年9月~2014年5月))
クラウン温度制御用
チューブ
電球型UV-B照射
ランプ
各定植時期とも、
クラウン温度制御
により、大きな増
収効果が示された。
イチゴの多収生産の実証(クラウン温度制御、統合環境制御、IPM)(図3)
高糖度栽培の区画の草姿
株あたり収量(g)
ブランド販売の
出荷箱
2013年
2014年
トマト低段密植栽培における定植時期別の果実収量
トマトの出荷箱
ハウスを3区画に分けて、1年間に約10回定植する。1つの
区画では1年で約3回栽培する。2013年9月からの一年間で
商品収量は普通糖度トマトで約30t/10aとなった。高糖度トマ
トの周年栽培と高温期の収量向上に取り組んでいる。
トマトの低段密植栽培による多収生産、高糖度トマト生産の取り組み(図4)
問い合わせ先:(農研機構 野菜花き部門、TEL029-838-6683)
逆浸透膜装置(浄水量約25m3)
可搬型逆浸透膜装置(電気自動車積載)
地中熱ヒートポンプおよび循環扇
逆浸透膜装置による地下水脱塩および地中熱ヒートポンプの実証(図5)
電気自動車からの温室への給電
充電ステーション
スーパーマーケットの駐車スペースに
設置された太陽電池パネルと蓄電池
太陽光発電と蓄電池を利用した電気自動車充電ステーション(図6)
マイクロ波減圧乾燥
法による「イチゴまる
ごと乾燥品」は、風
味・食感とも既存品と
異なり、乾燥時間も大
幅短縮。
山元いちご農園で販
売中。
マイクロ波減圧乾燥法によるイチゴまるごと乾燥品(図7)
簡易なバッグシール
包装で包装内ガスが
コントロールされるこ
とを確認(+二酸化炭
素吸着剤+窒素置換
が最も有望)
イチゴのバックシール包装と包装内CO2濃度(図8)
問い合わせ先:(農研機構 野菜花き部門、TEL029-838-6683)
食料生産地域再生のための先端技術展開事業
被災地の早期復興に資する果樹生産・利用技術の実証研究
〔分類〕網羅型研究(研究課題名 被災地における果実生産・流通技術の実証研究)
〔代表機関〕
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(果樹茶業研究部門)
〔研究実施期間〕
平成23年度~平成29年度
〔参画研究機関〕
宮城県農業・園芸総合研究所、(地独)青森県産業技術センターりんご研究所、岩手
県農業研究センター、秋田県果樹試験場、山形県農業総合研究センター園芸試験
場、茨城県工業技術センター、群馬県農業技術センター、神奈川県農業技術セン
ター、島根県農業技術センター、北海学園大学、秋田県立大学、東京農業大学、島根大学
日本電気(株)、(株)髙島屋、 GLO-berry Japan(株)
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(食品研究部門)
1
研究の背景・課題
被災地の早期復興を図るためには、短期間で収益をあげることができ、かつ高い収益性が期待でき
る品目を導入するとともに、被災地の復興を印象づける新たな加工品等を開発することで被災農家の
経営安定、ひいては地域の発展を図ることが重要である。また、被災地は仙台空港に隣接し、外国人
旅行者が高品質な果実を土産として持ち帰りたいという潜在的なニーズがあることから、仙台空港ま
たは日本滞在中に注文・販売できる「個人携行輸出システム」の開発を目指す。
2 研究の目標
 ブドウ「シャインマスカット」を対象に、栽培管理時間を2割削減するとともに、貯蔵可能期間を5ヶ月
間以上に延長することなどにより、収益率2倍以上の生産体系を構築する。
 レッドカーランツ等の小果樹類を対象に、収穫労力を3割削減するとともに、市場性の高い加工品
を開発することなどにより、収益率2倍以上の生産体系を構築する。
 クリ「ぽろたん」を対象に、栽培管理時間を2割以上削減するとともに、収量を3倍以上に向上させ
ることなどにより、収益率2倍以上の生産体系を構築する。
 輸出用リンゴ果実等の生産・流通・販売を一体としたシステムを構築し、外国人旅行者をターゲット
とした「個人携行輸出」を実証する。
3
研究の内容
 ブドウ「シャインマスカット」について、今まで開発した省力・軽労化栽培技術、減農薬技術および収
穫期延長技術を現地実証圃にて実証する。さらに、長期貯蔵技術を活用して、新たに輸送パッケー
ジの開発及び海外輸出を実証する。
 小果樹類について、収穫労力の削減可能な樹形や栽培体系を明らかにするとともに、市場性や機
能性の評価に基づき、付加価値を高める加工技術等を開発する。
 クリ「ぽろたん」について、ジョイント栽培の省力性や収量性を検証するとともに、渋皮が剥けやすい
という特性を活かした加工品を開発する。
 輸出向けリンゴ果実等を対象に、植物検疫基準に対応した病害虫管理や栽培管理技術の開発と実
証を行う。
 個人携行輸出に適した果実の品質保持技術や包装資材を開発し、適切なパッケージデザインを確
立する。
 輸出向け果実のロット管理及びトレーサビリティ情報の付与による安全・安心の保証を行い、外国
人旅行者向けに日本滞在中に注文・販売できる携行輸出対応型システムを検討・構築する。
問い合わせ先:(独)農業・食品産業技術総合研究機構(果樹研究所) TEL:029-838-6461
4
研究成果概要
ブドウ「シャインマスカット」について、省力・減農薬管理技術の導入により、宮城県の慣行栽培に比
べて年間作業時間を約2割削減できた(図1)。また、輸送パッケージを考案するとともに、海外輸出の
実証試験で好評価を得た(図2)。
 レッドカーランツについて、2名の労働力で約 900kg/10a 収穫可能な仕立て法を開発した。また、
収量低下の原因となるスグリ茎枯病の防除技術を検討している。
 レッドカーランツのピューレ、ジュースを試作し、様々な用途で使用できると実需者からの高い評価
を得た(図3)。
 クリ「ぽろたん」について、ジョイント栽培に適した大苗を効率的に育成可能な手法を明らかにすると
ともに、本栽培に適した低コストで施工性に優れた支持支柱を開発した(図4)。
 また、クリ「ぽろたん」の鬼皮付き焼き栗のレトルト化製品を2種類開発した。食味試験の結果、いず
れの製品も多くのモニターから高評価を得た(図5)。
 宮城県内の菓子店で、自社農園にクリ「ぽろたん」を主としたジョイント栽培を平成27年に導入した。
 亘理町の現地実証ほ場で、平成25年3月に定植したクリ苗木の一部が風害や土壌乾燥等により生
育が劣ったことから、平成26年3月に再度定植した(防風網設置、土壌改良等の対策は実施済み)。
 宮城県における病害虫発生動態に適合したリンゴの輸出用統一防除体系を策定・導入し、有袋栽
培では、シンクイガ完全防除、残留農薬ゼロを確認した(図6)。
 また、「ふじ」および「もりのかがやき」で策定した輸出用統一防除体系と乳白一重袋を使用した有
袋栽培で、無袋栽培と同等の品質が得られることを確認した。
 輸送時の果実の回転防止、損傷防止、および低酸素・低二酸化炭素による果実品質保持を可能と
するリンゴ用脱気包装資材、訴求性と運搬性に優れたイチゴパックを開発した(図7)。
 個人携行輸出対応型受発注システムを開発し、仙台空港でタイ人観光客への販売を実証した(図
8)。
図1 宮城県における「シャインマスカット」の栽培実証
着果管理、新梢管理など作業時間の削減が大きな課題!
花穂整形器による花穂整形



現地実証園の根域制限栽培とシートマルチ
現地実証園において、花穂整形器、1新梢2果房利用などによって作業時間を約2割削減
現地実証園のシートマルチ被覆によってチャノキイロアザミウマの被害抑制、年間の農薬
使用量2割削減
宮城県の盆前出荷には、3月中旬の発芽が不可欠であることを解明
問い合わせ先:(独)農業・食品産業技術総合研究機構(果樹研究所) TEL:029-838-6461
図2 輸出パッケージの開発と輸出実証
輸送中の脱粒および損傷の軽減が大きな課題!
 「シャインマスカット」輸送中の脱粒および損傷を軽減
できる包装容器を考案 (特許出願および意匠登録
出願:ブドウ用包装容器,平成28年2月)
長期貯蔵(3ヶ月間)した果房を台北
市へ航空輸出して,デパートにて試
食会とアンケート調査を実施(68名)。
80%以上の人が食味「良」と回答
図3 レッドカーランツの加工品開発
実証経営体で試作したピューレ、ジュース
カーランツのケーキ
試作したカーランツゼリー
活蛸すぐりのドレッシング
鴨のロースト、カーランツソース
マンボウの酢味噌和え
カーランツのジュレ、ソルベ
 ピューレは和洋の料理、デザート、菓子等で使用できると実需者から高い評価
 利益率30%としてピューレ500g単価は 約1,000円と試算された。
図4 クリ「ぽろたん」のジョイント栽培技術
 H27年4月より、県内和菓子店自社農園に「ぽろた
ん」等のジョイント栽培を導入した(13a)。
その他、県内3カ所に計25a導入された。
県内菓子店の「ぽろたん」ジョイント栽培導入園地
問い合わせ先:(独)農業・食品産業技術総合研究機構(果樹研究所) TEL:029-838-6461
図5 クリ「ぽろたん」の加工品の開発
 鬼皮付きぽろたん焼き栗のレトルト化製品の販売が開始された。
http://www.aiki-marron.jp/item/index.html
販売されたぽろたん焼き栗製品のパッケージ(左)と商品説明パンフレット(右)
図6 輸出リンゴ用の植物検疫基準に対応した防除体系の開発
開発した輸出用防除体系下における有袋・無袋栽培での病害虫被害果率
袋かけ果実外観
 有袋栽培により、シンクイガ完全防除、残留農薬ゼロを確認。
 輸出用防除体系+乳白一重袋による有袋栽培で、無袋栽培と同等の品質が得られることを確認。
図7 個人携行輸出に対応したパッケージデザイン
新開発した
リンゴ用包装資材(左)
イチゴパック(右)
図8 個人携行輸出対応型受注システムの実証
個人携行輸出対応型受発注システムを利用したタイ人観光客への実証販売
問い合わせ先:(独)農業・食品産業技術総合研究機構(果樹研究所) TEL:029-838-6461