学校給食費の無償化と公会計化について 伊藤久雄(認定NPO法人まちぽっと理事) 1.文科省の報告と通知 これまで、給食費の未納や教職員の私費会計への不正などが問題視されてきた。その問 題の改善策のひとつとして「学校徴収金の公会計化」が提起されてきた(中村文夫氏など)。 そして今、新しい局面を迎えている。文科省は、2016 年 6 月 13 日、「次世代の学校指導 体制にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース」による報告書「学 校現場における業務の適正化に向けて」を出し、同月 17 日には周知等を促がす通知を各都 道府県に送った。この中で給食費等の学校徴収金に関して公私費どちらでもよいとして長 く混乱を招いてきた 1957 年行政実例に代わって、「地方自治体が自らの業務として行う」 との文科省の新たな見解が示されたのである。 新たな見解を具体化する財源も明らかにされた。文科省は、第2次教育振興計画(2013‐ 2017 年度)にある統合型校務支援システム等整備にかかる経費(単年度 1678 億円、1 校当 たり小学校費 564 万円、中学校費 563 万円)から公会計化実施の費用を自治体判断で活用 できると明言している。 (以上、中村文夫氏のコラムから) 2.自治体の動向 ① 世田谷区 学校給食費の収納を公会計に移行 世田谷区のお知らせから 現在、世田谷区の小・中学校(太子堂調理場から給食を提供している中学校を除く。)で は、学校ごとに給食費の徴収・管理などを行っています(私会計で管理)。 この給食費を中学校は平成29年4月から(玉川中学校、芦花中学校は親子調理方式の 親校が小学校のため平成30年4月から)、小学校は平成30年4月から区の歳入・歳出予 算として管理する仕組みに変更します(公会計で管理)。 このことにより、次のような効果を目指しています。 ○教育委員会事務局が一括して給食費の徴収・管理を行うことにより、各学校における教 員の事務負担を軽減し、教育にかかわる時間の確保につなげていきます。 ○保護者の皆様が指定する口座からの振替納付が可能になります。 など ※公会計に移行しても、お支払いいただく給食費の金額は変わりません。 ⇒詳しくはチラシ参照(PDF) ② 横須賀市教委中学校で完全給食実施に向け方針を決定 (2016 年 7 月 4 日 教育新聞) 神奈川県横須賀市教委はこのほど、 「中学校の昼食のあり方について」の基本方針・行動 計画を決定した。7 月 8 日に行われる総合教育会議で市長と教委が協議し、これまで家庭か らの弁当持参を原則としていた中学校での昼食を完全給食に改める方針が、正式に決定す る運び。 取り組むべき行動計画としては、現在、中学校で昼食時間が短いとの課題があるので、 「生 徒の昼食時間を確保する」が計画に挙げられている。また完全給食が実施されれば、給食 費未納への対応など、教職員の負担が増えると予想されるので、給食費を公会計化して徴 収業務を市が行うなどの「教職員の負担軽減策を講じる」が挙げられる。こうした行動計 画が 7 つ示された。(下線、伊藤) ■文部化科学省資料 学校現場における業務の適正化に向けて(平成 28 年6月 13 日 次世代の学校指導体制 にふさわしい教職員の在り方と業務改善のためのタスクフォース) PDF http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/__icsFiles/afieldfile/201 6/06/13/1372315_03_1.pdf 学校現場における業務の適正化に向けて(通知)(平成 28 年 6 月 17 日 文部科学省生涯 学習政策局長等) 文科省ホームページ http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1373128.htm <参考資料> 中村文夫『子どもの貧困と公教育』 (明石書店) (給食費の無償化や公会計化の Q&A も添付されている)
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