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租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正
目 次
七 無記名公社債の利子等の帰属に関する
一 非課税口座内の少額上場株式等に係る
特則の廃止������������� 219
配当所得及び譲渡所得等の非課税の改正 193
八 先物取引に係る雑所得等の課税の特例
二 未成年者口座内の少額上場株式等に係
等の改正�������������� 219
る配当所得及び譲渡所得等の非課税の改
正���������������� 201
九 特定の取締役等が受ける特定外国新株
予約権の行使による株式の取得に係る経
三 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に
済的利益の非課税等の廃止����� 221
係る所得計算等の特例等の改正��� 208
十 特定中小会社が発行した株式に係る課
四 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算
税の特例の改正����������� 222
及び繰越控除の改正��������� 211
五 障害者等の少額貯蓄非課税制度の改正 212
十一 特定新規中小会社が発行した株式を
取得した場合の課税の特例の改正� 223
六 告知又は告知書等に記載をすべき事項
等の改正�������������� 214
十二 金融機関等の受ける利子所得等に対
する源泉徴収の不適用の改正��� 227
一 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得
等の非課税の改正
内国法人から支払がされるその配当等の支払
1 改正前の制度の概要
に係る基準日においてその内国法人の発行済
⑴ 配当所得の非課税措置の内容
株式又は出資の総数又は総額の100分の 3 以
居住者又は恒久的施設を有する非居住者(以
上に相当する数又は金額の株式(投資口を含
下「居住者等」といいます。
)が、金融商品取
み ま す。) 又 は 出 資 を 有 す る 者( 大 口 株 主
引業者等の営業所に開設した非課税口座に非課
等)がその内国法人から支払を受けるもの以
税管理勘定を設けた日から同日の属する年の 1
外のもの
月 1 日以後 5 年を経過する日までの間に支払を
② 公社債投資信託以外の証券投資信託でその
受けるべきその非課税管理勘定に係る次に掲げ
設定に係る受益権の募集が一定の公募により
る非課税口座内上場株式等の配当等(その金融
行われたもの(特定株式投資信託を除きま
商品取引業者等が国内における支払の取扱者で
す。)の収益の分配
③ 特定投資法人の投資口の配当等
一定のものである配当等に限ります。
)につい
ては、所得税を課さないこととされています
(注 1 )
上記の「非課税管理勘定」とは、居住者
(措法 9 の 8 )。
等が金融商品取引業者等と締結した上場株
① 金融商品取引所に上場されている株式等そ
式等の振替口座簿(社債、株式等の振替に
の他これに類する一定の株式等の配当等で、
関する法律に規定する振替口座簿をいいま
─ 193 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
す。
)への記載若しくは記録又は保管の委託
額(価額)により非課税上場株式等管理契約
(以下「振替記載等」といいます。)に係る
に基づく譲渡があったものとみなして、この
契約に基づき口座に記載若しくは記録又は
非課税措置及び非課税口座年間取引報告書の
保管の委託がされる上場株式等につき、そ
提出(下記⑸③参照)に関する規定その他所
の記載若しくは記録又は保管の委託に関す
得税に関する法令の規定を適用することとさ
る記録を他の取引に関する記録と区分して
れています(措法37の14④)。
行うための勘定で、平成26年から平成35年
イ ⓐ非課税口座から他の上場株式等の振替
までの各年に設けられるものをいいます。
(注 2 )
上記の「非課税口座内上場株式等」とは、
記載等に係る口座(以下「他の保管口座」
といいます。)への移管、ⓑ非課税口座内
非課税上場株式等管理契約(下記⑷③参照)
上場株式等に係る有価証券のその居住者等
に基づき非課税口座に振替記載等がされて
への返還又はⓒ非課税口座の廃止
ロ 贈与又は相続若しくは遺贈
いる上場株式等をいいます。
ハ 非課税上場株式等管理契約において定め
⑵ 譲渡所得等の非課税措置の内容
られた方法に従って行われる譲渡以外の譲
居住者等が、非課税口座に非課税管理勘定を
渡
設けた日から同日の属する年の 1 月 1 日以後 5
(注) このみなし譲渡によって、払出し時の金
年を経過する日までの間に、その非課税口座に
額(価額)で非課税上場株式等管理契約に
係る非課税口座内上場株式等の非課税上場株式
基づく譲渡があったものとみなされること
等管理契約に基づく譲渡をした場合には、その
から、払出し時の金額までの金額に対応す
譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得につ
る損益(取得価額との差額)は非課税又は
いては、所得税を課さないこととされています
ないものとされます。
(措法37の14①)
。
② 払い出された株式の取得価額
一方、非課税上場株式等管理契約に基づく非
上記①イのⓐ他の保管口座への移管、ⓑ有
課税口座内上場株式等の譲渡による収入金額が
価証券の返還又はⓒ非課税口座の廃止による
その非課税口座内上場株式等の取得費及びその
非課税口座内上場株式等の払出しがあった非
譲渡に要した費用の額の合計額又はその譲渡に
課税口座を開設している(又は開設してい
係る必要経費に満たない場合におけるその不足
た)居住者等については、その移管、返還又
額(損失額)は、所得税に関する法令の規定の
は廃止による払出しがあった時に、その払出
適用については、ないものとみなすこととされ
し時の金額をもってそのⓐ他の保管口座への
ています(措法37の14②)
。
移管、ⓑ有価証券の返還又はⓒ非課税口座の
廃止による払出しがあった非課税口座内上場
⑶ 非課税口座から非課税口座内上場株式等の払
株式等の数に相当する数のその非課税口座内
出しがあった場合の取扱い
上場株式等と同一銘柄の上場株式等の取得を
① みなし譲渡
したものとそれぞれみなすこととされていま
次のイからハまでに掲げる事由により、非
す(措法37の14④)。また、上記①ロ及びハ
課税口座からの非課税口座内上場株式等の一
の事由により非課税口座から払い出された非
部又は全部の払出し(振替によるものを含み
課税口座内上場株式等は、その払出し時の金
ます。)があった場合には、その払出しがあ
額で譲渡があったものとみなされるため、上
った非課税口座内上場株式等については、そ
記①イからハまでの事由により非課税口座か
の払出事由が生じた時に、その払出し時の金
ら払い出された上場株式等のその払出し後の
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――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
取得価額は、その払出し時の金額によること
表された払出事由が生じた日における最終
となります。
の売買の価格がない場合には、公表された
③ 払出し時の金額
同日における最終の気配相場の価格とし、
上記の払出し時の金額とは、次に掲げる株
その最終の売買の価格及びその最終の気配
式等の区分に応じそれぞれ次に定める金額を
相場の価格のいずれもない場合には、同日
その株式等の一単位当たりの価額として計算
前の最終の売買の価格又は最終の気配相場
した金額をいうこととされていました(旧措
の価格が公表された日でその払出事由が生
令25の13④)
。
じた日に最も近い日におけるその最終の売
イ 取引所売買株式等(その売買が主として
買の価格又はその最終の気配相場の価格と
金融商品取引所(外国の法令に基づき設立
します。
されたものを含みます。
)において行われ
⑷ 非課税口座の要件等
ている株式等をいいます。
)
金融商品取引所において公表された払出
① 非課税口座の意義
事由が生じた日におけるその取引所売買株
「非課税口座」とは、居住者等が、上記⑴
式等の最終の売買の価格に相当する金額
から⑶までの非課税措置等の適用を受けるた
ロ 店頭売買株式等(店頭売買登録銘柄とし
め、一定の手続に従い、その口座を設定しよ
て登録された株式等をいいます。
)
うとする年の属する勘定設定期間の非課税適
金融商品取引法の規定により公表された
用確認書、非課税管理勘定廃止通知書又は非
払出事由が生じた日におけるその店頭売買
課税口座廃止通知書(以下「非課税適用確認
株式等の最終の売買の価格に相当する金額
書等」といいます。)を添付した非課税口座
ハ その他価格公表株式等(上記イ又はロに
開設届出書を金融商品取引業者等の営業所の
掲げる株式等以外の株式等のうち、価格公
長に提出をして、その金融商品取引業者等と
表者(株式等の売買の価格又は気配相場の
の間で締結した非課税上場株式等管理契約に
価格を継続的に公表し、かつ、その公表す
基づき平成26年 1 月 1 日から平成35年12月31
る価格がその株式等の売買の価格の決定に
日までの間に設定された上場株式等の振替記
重要な影響を与えている場合におけるその
載等に係る口座(その口座において非課税上
公表をする者をいいます。
)によって公表
場株式等管理契約に基づく取引以外の取引に
された売買の価格又は気配相場の価格があ
関する事項を扱わないものに限ります。)を
るものをいいます。
)
いうこととされています(措法37の14⑤一)。
価格公表者によって公表された払出事由
が生じた日における当該その他価格公表株
② 非課税適用確認書等の記載事項
イ 上記①の「非課税適用確認書」とは、居
式等の最終の売買の価格に相当する金額
住者等の申請に基づき税務署長から交付を
(注)
投資信託の受益権の基準価額はこれに
受けた書類で、その者の氏名、生年月日、
勘定設定期間として次の表に掲げる期間の
該当します。
ニ 上記イからハまでに掲げる株式等以外の
いずれかの期間、その勘定設定期間の次に
株式等
掲げる区分に応じそれぞれ次に定める基準
その株式等の払出事由が生じた日におけ
日における国内の住所その他一定の事項の
る価額として合理的な方法により計算した
記載のあるものをいうこととされていまし
金額
た(旧措法37の14⑤三、旧措令25の13⑫、
(注) 上記イからハまでの株式等について、公
─ 195 ─
旧措規18の15の 3 ⑤)。
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
勘定設定期間
提出者からその非課税口座廃止届出書の提
基準日
平成26年 1 月 1 日か
イ ら平成29年12月31日 平成25年 1 月 1 日
までの期間
平成30年 1 月 1 日か
ロ ら平成33年12月31日 平成29年 1 月 1 日
までの期間
平成34年 1 月 1 日か
ハ ら平成35年12月31日 平成33年 1 月 1 日
までの期間
出の日以前の直近に提出を受けた非課税適
用確認書等に記載された基準日における国
内の住所その他一定の事項の記載のあるも
のをいうこととされていました(措法37の
14⑤五、旧措規18の15の 3 ⑦)。
③ 非課税上場株式等管理契約の意義
この非課税措置の適用を受けるために居住
者等が金融商品取引業者等と締結した上場株
式等の振替記載等に係る契約で、その契約書
ロ 上記①の「非課税管理勘定廃止通知書」
において次に掲げる事項が定められているも
とは、金融商品取引業者等の営業所に非課
のをいうこととされています(措法37の14⑤
税口座を開設している居住者等が、その非
二、措令25の13⑥~⑪、措規18の15の 3 ③)。
課税口座に設けられるべき非課税管理勘定
イ 上場株式等の振替記載等は、その振替記
を他の非課税口座に設けようとする場合に、
載等に係る口座に設けられた非課税管理勘
その旨その他一定の事項を記載した金融商
定において行うこと。
品取引業者等変更届出書をその金融商品取
ロ 非課税管理勘定は、その居住者等から提
引業者等に提出し、その金融商品取引業者
出を受けた非課税適用確認書等に記載され
等の営業所の長から交付を受ける書類で、
た勘定設定期間においてのみ設けられるこ
その者の氏名、生年月日、非課税管理勘定
と。
を廃止した年月日、その提出者からその金
ハ 非課税管理勘定は、一定の場合を除きそ
融商品取引業者等変更届出書の提出の日以
の勘定設定期間内の各年の 1 月 1 日におい
前の直近に提出を受けた非課税適用確認書
て設けられること。
等(非課税口座開設届出書に添付して提出
ニ 非課税管理勘定においてはその居住者等
されるものを含みます。以下同じです。
)
の次に掲げる上場株式等(ストックオプシ
に記載された基準日における国内の住所そ
ョン税制(措法29の 2 、旧措法29の 3 )の
の他一定の事項の記載のあるものをいうこ
適用を受けて取得をした上場株式等を除き
ととされていました(措法37の14⑤四、旧
ます。)のみを受け入れること。
措規18の15の 3 ⑥)
。
イ 次に掲げる上場株式等で、その口座に
ハ 上記①の「非課税口座廃止通知書」とは、
非課税管理勘定が設けられた日から同日
非課税口座を開設している居住者等がその
の属する年の12月31日までの期間内に受
非課税口座について本非課税措置の適用を
け入れた上場株式等の取得対価の額(購
受けることをやめようとする場合に、その
入代価、払込金額又は移管に係る払出し
旨その他一定の事項を記載した非課税口座
時の金額(価額)をいいます。
)の合計
廃止届出書をその金融商品取引業者等に提
額が120万円を超えないもの
出し、その金融商品取引業者等の営業所の
ⅰ その期間内にその金融商品取引業者
長から交付を受ける書類で、その者の氏名、
等への買付けの委託(買付けの委託の
生年月日、非課税口座を廃止した年月日、
媒介、取次ぎ又は代理を含みます。)
その廃止した日の属する年分の非課税管理
により取得をした上場株式等、その金
勘定への上場株式等の受入れの有無、その
融商品取引業者等から取得をした上場
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――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
株式等又はその金融商品取引業者等が
次に掲げる金融商品取引業者等の営業所の
行う上場株式等の募集(公募に限りま
長は、それぞれ次に定める事項(以下「提供
す。
)により取得をした上場株式等で、
事項」といいます。
)を、特定電子情報処理
その取得後直ちにその口座に受け入れ
組織(e-Tax)を使用して提供事項を送信す
られるもの
る方法により、その金融商品取引業者等の営
ⅱ その非課税管理勘定を設けた口座に
業所の所在地の所轄税務署長に提供しなけれ
係る他の年分の非課税管理勘定又はそ
ばならないこととされていました(措法37の
の金融商品取引業者等の営業所に開設
14⑨⑬⑯⑲、措令25の13の 2 ④、25の13の
された未成年者口座に設けられた非課
3 ②、旧措規18の15の 3 ⑯⑱⑳、18の15の
税管理勘定から、一定の手続の下で移
4 ③、18の15の 5 )。
管がされる上場株式等
イ 非課税適用確認書の交付申請書の提出を
受けた金融商品取引業者等の営業所の長
ロ 上記イのほか、一定の上場株式等
(注)
上記ニのストックオプション税制のう
……その申請書に記載された事項
ち「特定の取締役等が受ける特定外国新
ロ 非課税適用確認書の提出を受けた金融商
株予約権の行使による株式の取得に係る
品取引業者等の営業所の長……その非課税
経済的利益の非課税等(旧措法29の 3 )」
適用確認書の提出をした居住者等の氏名、
は、適用期限(平成28年 3 月31日)の到
個人番号、基準日及び基準日における国内
来をもって廃止されました。
の住所その他一定の事項
ホ その非課税管理勘定において振替記載等
ハ 金融商品取引業者等変更届出書の提出を
がされている上場株式等の譲渡は、金融商
受けた金融商品取引業者等の営業所の長
品取引業者等への売委託による方法等によ
……その金融商品取引業者等変更届出書を
ること。
提出した者の氏名、個人番号、その金融商
品取引業者等変更届出書の提出の日以前の
へ その他一定の事項
直近に提出を受けた非課税適用確認書等に
⑸ 非課税口座に関するその他の手続等
記載された基準日及び基準日における国内
の住所その他一定の事項
① 非課税適用確認書の交付申請書の提出
非課税適用確認書の交付を受けようとする
ニ 非課税口座廃止届出書の提出を受けた金
居住者等は、その居住者等の氏名、住所、個
融商品取引業者等の営業所の長……その非
人番号及び基準日における国内の住所等を記
課税口座廃止届出書を提出した者の氏名、
載した交付申請書に、基準日における国内の
個人番号、その非課税口座廃止届出書の提
住所を証する住民票の写しその他の書類を添
出の日以前の直近に提出を受けた非課税適
付して、勘定設定期間の開始の日の属する年
用確認書等に記載された基準日及び基準日
の前年10月 1 日からその勘定設定期間の終了
における国内の住所その他一定の事項
の日の属する年の 9 月30日までの間に、これ
ホ 非課税管理勘定廃止通知書又は非課税口
を金融商品取引業者等の営業所の長に提出を
座廃止通知書(非課税口座開設届出書に添
しなければならないこととされていました
付して提出されるものを含みます。以下
(旧措法37の14⑥、旧措令25の13⑬、旧措規
「廃止通知書」といいます。)の提出を受け
た金融商品取引業者等の営業所の長……そ
18の15の 3 ⑨)
。
② 金融商品取引業者等の営業所の長から所轄
の廃止通知書を提出した居住者等の氏名、
個人番号、その廃止通知書に記載された基
税務署長への提供事項の提供
─ 197 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
準日及び基準日における国内の住所その他
その金融商品取引業者等のその非課税口座が
一定の事項
開設されていた営業所の所在地の所轄税務署
長に提出しなければならないこととされてい
ヘ 非課税口座異動届出書(氏名又は個人番
ました(措法37の14、旧措規18の15の 9 ②)。
号の変更に係るものに限ります。
)の提出
④ 未成年者口座の開設者が20歳に到達した場
を受けた金融商品取引業者等の営業所の長
又は非課税口座移管依頼書の提出の際に経
合の非課税口座の自動開設
由した移管前の営業所の長……その非課税
未成年者口座を開設している居住者等が平
口座異動届出書又は非課税口座移管依頼書
成29年から平成35年までの各年(その年 1 月
に記載された事項、その非課税口座異動届
1 日において居住者等が20歳である年に限り
出書又は非課税口座移管依頼書の提出の日
ます。)の 1 月 1 日において金融商品取引業
以前の直近に提出を受けた非課税適用確認
者等の営業所に未成年者口座を開設している
書等に記載された基準日及び基準日におけ
場合には、その居住者等は同日においてその
る国内の住所その他一定の事項
金融商品取引業者等の営業所の長に非課税適
ト 事業の譲渡、法人の合併・分割又は金融
用確認書が添付された非課税口座開設届出書
商品取引業者等の営業所の新設・廃止若し
の提出等をしたものとみなして本非課税措置
くは業務を行う区域の変更により、居住者
が適用されます(措法37の14)。したがっ
等が金融商品取引業者等の営業所に開設し
て、未成年者口座を開設している居住者等は、
ている非課税口座に関する事務の全部が、
特段の手続を行うことなく、その未成年者口
他の金融商品取引業者等の営業所又は同一
座が開設されている金融商品取引業者等の営
の金融商品取引業者等の他の営業所(以下
業所に非課税口座が開設されることになりま
す。
「移管先の営業所」といいます。
)に移管
(以下「事業譲渡等による移管」といいま
(注) 未成年者口座の意義等については、後述
す。)された場合におけるその移管先の営
「二 未成年者口座内の少額上場株式等に係
業所の長……事業譲渡等による移管があっ
る配当所得及び譲渡所得等の非課税の改正」
た旨、その移管がされた非課税口座に現に
を参照してください。
設けられている非課税管理勘定を設定する
⑤ 出国届出書の提出
際に提出を受けた非課税適用確認書等に記
非課税口座を開設している居住者等が出国
載された基準日及び基準日における国内の
により居住者等に該当しないこととなる場合
住所その他一定の事項
には、その者は、その出国をする日の前日ま
③ 非課税口座年間取引報告書の提出
でに、出国をする旨その他一定の事項を記載
金融商品取引業者等は、その年においてそ
した出国届出書をその非課税口座が開設され
の金融商品取引業者等の営業所に開設されて
ている金融商品取引業者等の営業所の長に提
いた非課税口座で非課税管理勘定が設けられ
出しなければならないこととされています
ていたものがある場合には、その非課税口座
を開設した居住者等の各人別に、その非課税
管理勘定の設定の際に提出を受けた非課税適
(措令25の13の 4 ①)。
2 改正の内容
用確認書等に記載された基準日及び基準日に
⑴ 基準日における国内の住所の記載及びその住
おける国内の住所その他一定の事項を記載し
所を証する書類の添付不要並びに勘定設定期間
た非課税口座年間取引報告書を非課税口座ご
の変更
とに作成し、その年の翌年 1 月31日までに、
① 基準日の廃止及び勘定設定期間の改正
─ 198 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
本非課税措置では、これまで非課税適用確
その居住者等からその金融商品取引業者等の
認書の交付申請書に記載する基準日における
営業所の長に対し、平成29年 9 月30日までに、
国内の住所を用いて同一人物による非課税口
この経過措置の適用を受けることを希望しな
座の重複開設の有無を確認していましたが、
い旨その他一定の事項を記載した書類の提出
平成28年より個人番号制度(マイナンバー)
があった場合には、この経過措置の適用はあ
が導入されたことに伴い、今後は、この個人
りません(改正法附則73②③、改正措規附則
番号を利用して重複開設の有無を確認するこ
14)。
ととされました。このため、平成30年分以後
この経過措置の適用により、平成29年10月
の勘定設定期間に係る非課税適用確認書の交
1 日において非課税口座を開設している者で
付申請書については、基準日における国内の
個人番号の告知をしているものは、特段の手
住所の記載及びその住所を証する書類の添付
続を行うことなく平成30年 1 月 1 日から平成
が不要とされました。これに伴い、ⓐ平成30
35年12月31日までの勘定設定期間の非課税適
年 1 月 1 日から平成33年12月31日までの期間
用確認書の交付を受けることができ、簡便に
及びⓑ平成34年 1 月 1 日から平成35年12月31
本非課税措置を継続して適用できることとな
日までの期間とされていた平成30年分以後の
ります。
勘定設定期間が、平成30年 1 月 1 日から平成
なお、金融商品取引業者等の営業所の長は、
35年12月31日までの期間に統一されました
本経過措置の対象となる居住者等に対し、平
成29年10月15日までに、本経過措置の適用に
(措法37の14⑤三・⑥)
。
上記の改正の結果、本非課税措置における
より非課税適用確認書の交付申請書が提出さ
勘定設定期間は、次に掲げるいずれかの期間
れたこととなった旨の通知(平成29年10月 1
となります。
日前に通知する場合には、提出されたことと
イ 平成26年 1 月 1 日から平成29年12月31日
なる見込みである旨の通知)をしなければな
らないこととされています(改正法附則73④)。
までの期間
ロ 平成30年 1 月 1 日から平成35年12月31日
③ 非課税適用確認書等の記載事項の改正
上記①の改正に伴い、非課税適用確認書、
までの期間
② 平成30年 1 月 1 日から平成35年12月31日ま
非課税管理勘定廃止通知書及び非課税口座廃
での勘定設定期間に係る非課税適用確認書の
止通知書並びに非課税口座年間取引報告書が
交付申請書の提出に関する経過措置
平成30年 1 月 1 日から平成35年12月31日まで
納税者の手続を簡素化する観点から、上記
の勘定設定期間に係るものである場合には、
①の改正に伴う経過措置として、平成29年分
基準日及び基準日における国内の住所の記載
の非課税管理勘定が設定されている非課税口
は不要とされました(措法37の14⑤三、措規
座を平成29年10月 1 日において開設している
18の15の 3 ⑤~⑦)。
居住者等で、同日においてその者の個人番号
④ 金融商品取引業者等の営業所の長が提供す
をその非課税口座が開設されている金融商品
ることとされている事項の改正
取引業者等の営業所の長に告知をしているも
上記①の改正に伴い、金融商品取引業者等
のは、同日にその金融商品取引業者等の営業
の営業所の長が次のイからハまでに掲げる場
所の長に対し、平成30年 1 月 1 日から平成35
合に該当してその営業所の所在地の所轄税務
年12月31日までの勘定設定期間が記載される
署長に一定の事項を提供する場合に、その提
べき非課税適用確認書の交付申請書の提出を
供に係る事項が平成30年 1 月 1 日から平成35
したものとみなすこととされました。ただし、
年12月31日までの勘定設定期間に係るもので
─ 199 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
あるときは、基準日及び基準日における国内
業所の長は、非課税管理勘定廃止通知書、非
の住所の提供は不要とされました(措規18の
課税口座廃止通知書及び非課税口座年間取引
15の 3 ⑥⑳、18の15の 4 ③、18の15の
報告書には非課税適用確認書の整理番号、基
5 )。
準日及び基準日における国内の住所に代えて、
イ 非課税適用確認書等の提出を受けた金融
その未成年者口座の開設の際に提出された未
商品取引業者等の営業所の長が、その提出
成年者非課税適用確認書又は未成年者口座廃
を受けた非課税適用確認書等に記載された
止通知書に記載された整理番号を記載するこ
事項を提供する場合(上記 1 ⑸②ロ又はホ
ととされました(措規18の15の 3 ⑥⑦、18の
15の 9 ②)。
参照)
② 金融商品取引業者等の営業所の長が提供す
ロ 金融商品取引業者等変更届出書、非課税
口座廃止届出書、非課税口座異動届出書又
ることとされている事項の改正
は非課税口座移管依頼書の提出を受けた金
上記①と同様に、非課税口座が自動開設さ
融商品取引業者等の営業所の長が、これら
れたものである場合には、金融商品取引業者
の書類の提出の日以前の直近に提出を受け
等の営業所の長が上記⑴④イからハまでに掲
た非課税適用確認書等に記載された事項を
げる場合に該当してその営業所の所在地の所
提供する場合(上記 1 ⑸②ハ、ニ及びヘ参
轄税務署長に提供する事項のうち非課税適用
照)
確認書の整理番号、基準日及び基準日におけ
ハ 事業譲渡等による移管がされたときにお
る国内の住所については、これらの事項に代
けるその移管先の営業所の長が、その移管
えて、その未成年者口座の開設の際に提出さ
がされた非課税口座に現に設けられている
れた未成年者非課税適用確認書又は未成年者
非課税管理勘定を設定する際に提出を受け
口座廃止通知書に記載された整理番号を提供
た非課税適用確認書等の事項を提供する場
することとされました(措規18の15の 3 ⑥⑳
合(上記 1 ⑸②ト参照)
、18の15の 4 ③、18の15の 5 )。
(注) 平 成30年 1 月 1 日 か ら 平 成35年12月31日
⑵ 未成年者口座の開設者が20歳に到達した場合
までの勘定設定期間についての事項を提供
において自動開設された非課税口座に係る書類
する場合には、上記⑴④のとおり、基準日
の記載事項及び提供事項の改正
及び基準日における国内の住所の通知は不
① 非課税管理勘定廃止通知書等の記載事項の
要とする改正が行われています。
改正
上記 1 ⑸④のとおり、金融商品取引業者等
⑶ 非課税口座内上場株式等が国外転出時課税制
の営業所に未成年者口座を開設している居住
度の対象となる場合の時価評価日の見直し
者等が20歳に到達した場合には、何らの手続
① 時価評価日の見直し
きを行うことなくその営業所に非課税口座が
本非課税措置の適用対象者は居住者等とな
開設されることとなっていますが、この自動
っていることから、非課税口座を開設してい
開設の場合にはその居住者等はその営業所の
る居住者等が国外転出(出国)をして居住者
長に非課税適用確認書を提出していないため、
等に該当しないこととなる場合には、その口
その営業所の長は、その居住者等の基準日に
座は国外転出の日に廃止され、上記 1 ⑶のと
おける国内の住所等は把握していないことと
おり、その非課税口座内の上場株式等はその
なります。このため、この自動開設により非
国外転出の時に、その国外転出の日の時価で
課税口座が開設されている場合には、その営
譲渡したものとみなされて非課税の適用を受
─ 200 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
けることとなります。一方、居住者が納税管
等の価額相当額とすることとされました(措
理人の届出をしないで国外転出をする場合に
令25の13④)。
② 出国届出書の記載事項の追加
は、その国外転出の時までに準確定申告をす
ることになりますが、時価 1 億円以上の有価
上記①の改正に伴い、非課税口座を開設し
証券等の対象資産を有する居住者については、
ている者が出国をする日の属する年分におい
その国外転出の時に有する有価証券等をその
て国外転出の予定日から起算して 3 月前の日
国外転出の日の 3 月前の日の時価で譲渡した
における有価証券等の価額相当額により国外
ものとみなして課税(国外転出時課税)がさ
転出時課税制度の適用を受けるときは、その
れます(所法60の 2 ①二)
。
出国をする日の前日までに提出することとさ
このため、非課税口座内上場株式等の価額
れている出国届出書に、その適用を受ける旨
が国外転出の日の 3 月前の日よりも国外転出
を記載することとされました(措規18の15の
時に下落している場合には、その下落により
6)
。
生じた差額については非課税の対象となるか
疑義が生じていたところですが、この部分に
3 適用関係
ついても非課税の対象となることを明確化す
⑴ 上記 2 ⑴の改正は、平成30年分以後の非課税
る観点から、本特例と国外転出時課税制度の
管理勘定について適用されます(措法37の14⑥
時価評価日を揃えることとされました。具体
等)
。
的には、払出事由が生じた日の属する年分に
⑵ 上記 2 ⑵及び⑶①の改正は、平成28年分以後
おいて、非課税口座を開設している居住者等
の所得税について適用し、平成27年分以前の所
が国外転出の予定日から起算して 3 月前の日
得税については従前どおりとされます(改正措
における有価証券等の価額相当額により国外
令附則 2 )。
転出時課税制度の適用を受けるときは、その
⑶ 上記 2 ⑶②の改正は、平成28年 4 月 1 日以後
国外転出の時においてその居住者等が有して
に提出する出国届出書について適用され、同日
いる非課税口座内上場株式等の払出し時の金
前に提出された出国届出書については従前どお
額は、同日( 3 月前の日)における有価証券
りとされます(改正措規附則13)。
二 未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所
得等の非課税の改正
については、所得税を課さないこととされてい
1 改正前の制度の概要
ます(措法 9 の 9 ①)。
⑴ 配当所得の非課税措置の内容
① 非課税管理勘定に係る未成年者口座内上場
金融商品取引業者等の営業所に未成年者口座
株式等……その未成年者口座にその非課税管
を開設している居住者又は恒久的施設を有する
理勘定を設けた日から同日の属する年の 1 月
非居住者(以下「居住者等」といいます。
)が、
1 日以後 5 年を経過する日までの間
次に掲げる未成年者口座内上場株式等の区分に
② 継続管理勘定に係る未成年者口座内上場株
応じそれぞれ次に定める期間内に支払を受ける
式等……その未成年者口座にその継続管理勘
べきその未成年者口座内上場株式等の配当等
定を設けた日からその未成年者口座を開設し
(その金融商品取引業者等が国内における支払
た者がその年 1 月 1 日において20歳である年
の取扱者で一定のものであるものに限ります。
)
─ 201 ─
の前年12月31日までの間
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
(注 1 )
上記の「非課税管理勘定」とは、未成
一方、未成年者口座管理契約に基づく未成年
年者口座管理契約に基づき振替記載等(振
者口座内上場株式等の譲渡による収入金額がそ
替口座簿への記載若しくは記録又は保管
の未成年者口座内上場株式等の取得費及びその
の委託をいいます。)がされる上場株式等
譲渡に要した費用の額の合計額又はその譲渡に
につき、その記載若しくは記録又は保管
係る必要経費に満たない場合におけるその不足
の委託に関する記録を他の取引に関する
額(損失額)は、所得税に関する法令の規定の
記録と区分して行うための勘定で、平成
適用については、ないものとみなすこととされ
28年から平成35年までの各年(その居住
ています(措法37の14の 2 ②)。
者等が、その年 1 月 1 日において20歳未
満である年及び出生した日の属する年に
⑶ 未成年者口座から未成年者口座内上場株式等
限ります。)の 1 月 1 日に設けられるもの
の払出しがあった場合のみなし譲渡
をいいます(措法37の14の 2 ⑤三)。
次の①から③までに掲げる事由により、未成
(注 2 )
上記の「継続管理勘定」とは、未成年
年者口座からの未成年者口座内上場株式等の一
者口座管理契約に基づき振替記載等がさ
部又は全部の払出し(振替によるものを含みま
れる上場株式等につき、その記載若しく
す。)があった場合には、その払出しがあった
は記録又は保管の委託に関する記録を他
未成年者口座内上場株式等については、その払
の取引に関する記録と区分して行うため
出事由が生じた時に、その払出し時の金額(時
の勘定で、平成36年から平成40年までの
価)により未成年者口座管理契約に基づく譲渡
各年(その居住者等が、その年 1 月 1 日
があったものとみなして、この非課税措置及び
において20歳未満である年に限ります。)
未成年者口座年間取引報告書の提出に関する規
の 1 月 1 日に設けられるものをいいます
定その他所得税に関する法令の規定を適用する
こととされています(措法37の14の 2 ④)。こ
(措法37の14の 2 ⑤四)。
(注 3 )
上記の「未成年者口座内上場株式等」
の場合の払出し時の金額は、非課税口座内の少
とは、未成年者口座管理契約に基づき未
額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の
成年者口座に係る振替口座簿(社債、株
非課税と同様です(前述一 1 ⑶③を参照)。
式等の振替に関する法律に規定する振替
① 未成年者口座管理契約に従って行うⓐ未成
口座簿をいいます。)に記載若しくは記録
年者口座から他の株式等の振替口座簿への記
がされ、又はその未成年者口座に保管の
載若しくは記録若しくは保管の委託に係る口
委託がされている上場株式等をいいます。
座(以下「他の保管口座」といいます。)へ
の移管又はⓑ未成年者口座内上場株式等に係
⑵ 譲渡所得等の非課税措置の内容
る有価証券のその居住者等への返還
金融商品取引業者等の営業所に未成年者口座
② 相続又は遺贈
を開設している居住者等が、上記⑴①及び②に
③ 次に掲げる事由でその居住者等の基準年の
掲げる未成年者口座内上場株式等の区分に応じ
1 月 1 日以後に生じたもの
それぞれ上記⑴①及び②に定める期間内に、そ
イ 未成年者口座の廃止
の未成年者口座内上場株式等のその未成年者口
ロ 贈与
座管理契約に基づく譲渡をした場合には、その
ハ 未成年者口座管理契約において定められ
た方法に従って行われる譲渡以外の譲渡
譲渡による事業所得、譲渡所得及び雑所得につ
いては、所得税を課さないこととされています
(注 1 )
上記③の基準年とは、その居住者等が 3
(措法37の14の 2 ①)
。
月31日において18歳である年をいいます。
─ 202 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
(注 2 )
このみなし譲渡によって、払出し時の金
ける書類で、その者の氏名、生年月日、
額(時価)で未成年者口座管理契約に基づ
未成年者口座を廃止した年月日、その廃
く譲渡があったものとみなされることから、
止した日の属する年分の非課税管理勘定
払出し時の金額までの金額に対応する損益
への上場株式等の受入れの有無その他一
(取得価額との差額)は非課税又はないもの
定の事項の記載のあるものをいうことと
されています(措法37の14の 2 ⑤八、措
とされます。
規18の15の10⑪)
。
⑷ 未成年者口座の要件等
② 未成年者口座管理契約の意義
① 未成年者口座の意義
この非課税措置の適用を受けるために居住
「未成年者口座」とは、居住者等(その年
者等が金融商品取引業者等と締結した上場株
1 月 1 日において20歳未満である者又はその
式等の振替記載等に係る契約で、その契約書
年中に出生した者に限ります。
)が、上記⑴
において、次に掲げる事項が定められている
から⑶までの非課税措置等の適用を受けるた
ものをいいます(措法37の14の 2 ⑤二、措令
め、一定の手続に従い、未成年者非課税適用
25の13の 8 ③~⑨、同条⑰において準用する
確認書又は未成年者口座廃止通知書を添付し
措令25の13⑥⑦⑩、措規18の15の10③~⑧)。
た未成年者口座開設届出書を金融商品取引業
イ 上場株式等の振替記載等は、その振替記
者等の営業所の長に提出をして、その金融商
載等に係る口座に設けられた非課税管理勘
品取引業者等との間で締結した未成年者口座
定又は継続管理勘定において行うこと。
管理契約に基づき平成28年 4 月 1 日から平成
ロ その非課税管理勘定においてはその居住
35年12月31日までの間に設定された上場株式
者等の次に掲げる上場株式等(ストックオ
等の振替記載等に係る口座(その口座におい
プション税制の適用を受けて取得をしたも
て未成年者口座管理契約に基づく取引以外の
のを除きます。)のみを受け入れること。
取引に関する事項を扱わないものに限りま
イ 次に掲げる上場株式等で、その口座に
す。
)をいいます(措法37の14の 2 ⑤一)
。
非課税管理勘定が設けられた日から同日
(注 1 )
上記の「未成年者非課税適用確認書」
の属する年の12月31日までの期間内に受
とは、居住者等の申請に基づき税務署長
け入れた上場株式等の取得対価の額の合
から交付を受けた書類で、その者の氏名、
計額が80万円を超えないもの
生年月日、税務署長がその未成年者非課
ⅰ その期間内にその金融商品取引業者
税適用確認書を作成した年月日その他一
等への買付けの委託(買付けの委託の
定の事項の記載のあるものをいうことと
媒介、取次ぎ又は代理を含みます。)
されています(措法37の14の 2 ⑤七、措
により取得をした上場株式等、その金
規18の15の10⑩)。
融商品取引業者等から取得をした上場
(注 2 )
上記の「未成年者口座廃止通知書」と
株式等又はその金融商品取引業者等が
は、未成年者口座を開設している居住者
行う上場株式等の募集(公募に限りま
等がその未成年者口座について本非課税
す。)により取得をした上場株式等で、
措置の適用を受けることをやめようとす
その取得後直ちに当該口座に受け入れ
る場合に、その旨その他一定の事項を記
られるもの
載した未成年者口座廃止届出書をその金
ⅱ その非課税管理勘定を設けた口座に
融商品取引業者等に提出し、その金融商
係る他の年分の非課税管理勘定から、
品取引業者等の営業所の長から交付を受
一定の手続の下で移管がされる上場株
─ 203 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
……同日の翌日に行う他の保管口座への
式等
移管
ロ 上記イのほか、一定の上場株式等
ハ 継続管理勘定においてはその居住者等の
ヘ その非課税管理勘定又は継続管理勘定に
次に掲げる上場株式等のみを受け入れるこ
記載若しくは記録又は保管の委託がされる
と。
上場株式等は、その居住者等の基準年の前
イ その口座に継続管理勘定が設けられた
年12月31日までは、次によること。
日から同日の属する年の12月31日までの
イ その上場株式等のその非課税管理勘定
間に、その継続管理勘定を設けた口座に
又は継続管理勘定が設けられた口座から
係る非課税管理勘定から一定の手続の下
他の保管口座でその口座と同時に設けら
で移管がされる上場株式等で、その移管
れた課税未成年者口座以外のものへの移
に係る払出し時の金額の合計額が80万円
管又はその上場株式等に係る有価証券の
を超えないもの
その居住者等への返還をしないこと。た
だし、災害等の一定の事由が生じたこと
ロ 上記イのほか、一定の上場株式等
ニ その非課税管理勘定又は継続管理勘定に
による移管若しくは返還(以下「災害等
おいて振替記載等がされている上場株式等
による返還等」といいます。)を行う場
の譲渡は、金融商品取引業者等への売委託
合又はその上場株式等の金融商品取引所
による方法等によること。
への上場が廃止された場合等の一定の事
ホ 次に掲げる上場株式等は、それぞれ次に
由(以下「上場等廃止事由」といいま
定める移管をすること。
す。)による移管若しくは返還を行う場
イ その口座に非課税管理勘定が設けられ
合を除きます。
た日の属する年の 1 月 1 日から 5 年を経
ロ その上場株式等の未成年者口座管理契
過する日(以下「 5 年経過日」といいま
約に定められた方法以外の方法による譲
す。
)において有するその非課税管理勘
渡で一定のもの以外のもの(その譲渡の
定に係る上場株式等(その非課税管理勘
対価に係る金銭その他の資産の交付が、
定が設けられた口座の他の年分の非課税
その口座が開設されている金融商品取引
管理勘定又は継続管理勘定への移管がさ
業者等の営業所を経由して行われないも
れるものを除きます。
)……次に掲げる
のに限ります。)又は贈与をしないこと。
場合の区分に応じそれぞれ次に定める移
ハ その上場株式等の譲渡の対価又はその
管
上場株式等に係る配当等として交付を受
ⅰ 5 年経過日の属する年の翌年 3 月31
ける金銭その他の資産(下記④ハにおい
日においてその居住者等が18歳未満で
て「譲渡対価の金銭等」といいます。
)
ある場合……その 5 年経過日の翌日に
は、その受領後直ちに課税未成年者口座
行うその口座と同時に設けられた課税
に預入れ又は預託をすること。
ト その口座につき上記ホ若しくはヘに掲げ
未成年者口座への移管
ⅱ 上記ⅰに掲げる場合以外の場合……
る要件に該当しないこととなる事由又は災
その 5 年経過日の翌日に行う他の保管
害等による返還等が生じた場合には、これ
口座への移管
らの事由が生じた時にその口座及びその口
ロ その居住者等がその年 1 月 1 日におい
て20歳である年の前年12月31日において
有する継続管理勘定に係る上場株式等
─ 204 ─
座と同時に設けられた課税未成年者口座を
廃止すること。
チ 未成年者口座を開設している居住者等の
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
基準年の前年12月31日までにその者が出国
しくは預託に係る口座に設けられた課税管
により居住者等に該当しないこととなる場
理勘定において行うこと。
合には、その者は、その出国をする日の前
(注) 上記の「課税管理勘定」とは、課税未
日までに、その旨、その未成年者口座に係
成年者口座管理契約に基づき振替記載等
る未成年者口座内上場株式等の全てを課税
がされる上場株式等又は預入れ若しくは
未成年者口座に移管することを依頼する旨
預託がされる金銭その他の資産につき、
その他一定の事項を記載した出国移管依頼
その記載若しくは記録若しくは保管の委
書を、その未成年者口座が開設されている
託又は預入れ若しくは預託に関する記録
金融商品取引業者等の営業所の長に提出す
を他の取引に関する記録と区分して行う
ること。
ための勘定をいいます。
リ その他一定の事項
ロ 課税管理勘定において振替記載等がされ
③ 課税未成年者口座の意義
ている上場株式等の譲渡は、特定口座に関
未成年者口座を開設した居住者等が、その
する定めにかかわらず、金融商品取引業者
未成年者口座を開設している金融商品取引業
等への売委託による方法等によること。
者等の営業所又はその金融商品取引業者等と
ハ 上場株式等に係る譲渡対価の金銭等(上
一定の関係にある法人の営業所に開設してい
記②へハ参照)は、その受領後直ちにその
る特定口座又は預金口座、貯金口座若しくは
口座に預入れ又は預託をすること。
顧客から預託を受けた金銭その他の資産の管
ニ その口座に記載若しくは記録又は保管の
理のための口座(これらの口座において課税
委託がされる上場株式等及びその口座に預
未成年者口座管理契約に基づく取引以外の取
入れ又は預託がされる金銭その他の資産は、
引に関する事項を扱わないものに限ります。
)
その居住者等の基準年の前年12月31日まで
で、その未成年者口座と同時に設けられるも
は、次に定めるところによること。
のをいうこととされていました(旧措法37の
イ 上場株式等のその口座から他の保管口
14の 2 ⑤五、措令25の13の 8 ⑩)
。
座への移管又はその上場株式等に係る有
④ 課税未成年者口座管理契約の意義
価証券のその居住者等への返還をしない
この非課税措置の適用を受ける居住者等が、
こと。
特定口座又は預金口座、貯金口座若しくは顧
ロ その上場株式等の課税未成年者口座管
客から預託を受けた金銭その他の資産の管理
理契約に定められた方法以外の方法によ
のための口座を開設する際に未成年者口座を
る譲渡で一定のもの以外のもの又は贈与
開設する金融商品取引業者等と締結した契約
をしないこと。
(未成年者口座管理契約と同時に締結される
ものに限ります。
)で、その契約書において、
ハ 金銭その他の資産のその口座からの払
出しをしないこと。
次に掲げる事項が定められているものをいい
ホ その口座につき、上記ハ若しくはニに掲
ます(措法37の14の 2 ⑤六、措令25の13の 8
げる要件に該当しないこととなる事由又は
⑪~⑬、同条⑰において準用する措令25の13
災害等による返還等が生じた場合には、こ
⑦)。
れらの事由が生じた時にその口座及びその
イ 上場株式等の振替記載等又は金銭その他
口座と同時に設けられた未成年者口座を廃
の資産の預入れ若しくは預託は、特定口座
止すること。
に関する定めにかかわらず、その記載若し
ヘ 居住者等の基準年の 1 月 1 日において、
くは記録若しくは保管の委託又は預入れ若
その口座が開設されている金融商品取引業
─ 205 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
者等に重複して開設されているその口座以
規18の15の10⑰において準用する措規18の15
外の特定口座があるときは、同日にその口
の 8 ①)。
座(特定口座である口座に限ります。
)を
イ その金融商品取引業者等の営業所の長が
受理し、又は提出若しくは送付を受けた未
廃止すること。
ト 金融商品取引業者等の営業所の長に出国
成年者口座開設届出書、未成年者口座内上
移管依頼書を提出した個人がその金融商品
場株式等移管依頼書、未成年者非課税適用
取引業者等と締結した課税未成年者口座管
確認書、未成年者口座廃止通知書、未成年
理契約及びその履行については、その出国
者口座廃止届出書、出国移管依頼書等、未
の時から帰国の時までの間は、その個人を
成年者口座異動届出書、未成年者口座移管
居住者とみなして課税未成年者口座及び課
依頼書及び未成年者出国届出書(以下「未
税未成年者口座管理契約に関する取り決め
成年者口座開設届出書等」といいます。
)
(上記ロ及びヘに関する事項を除きます。
)
……これらの届出書等に係る未成年者口座
が廃止された日から 5 年を経過する日
を適用すること。
ロ 未成年者非課税適用確認書の交付申請書
チ その他一定の事項
……その申請書の提出をした者がその年 1
⑸ 未成年者口座に関するその他の手続
月 1 日において20歳である年の前年12月31
日
① 未成年者出国届出書の提出等
未成年者口座を開設している居住者等の基
準年の 1 月 1 日以後にその者が出国により居
住者等に該当しないこととなる場合には、そ
2 改正の内容
⑴ 未成年者口座内上場株式等が国外転出時課税
の者は、その出国をする日の前日までに、そ
の対象となる場合の時価評価日の見直し
の旨その他一定の事項を記載した未成年者出
① 時価評価日の見直し
国届出書を、その未成年者口座が開設されて
前述「一 非課税口座内の少額上場株式等
いる金融商品取引業者等の営業所の長に提出
に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税の改
しなければなりません。
正」の 2 ⑶①の改正と同様に、国外転出時課
未成年者口座を開設している居住者等の基
税制度(所法60の 2 )と本非課税措置の時価
準年の 1 月 1 日以後にその者が出国により居
評価日を揃える観点から、払出事由が生じた
住者等に該当しないこととなった場合には、
日の属する年分において、未成年者口座を開
その者は、その出国の時に未成年者口座廃止
設している居住者等が国外転出の予定日から
届出書をその未成年者口座が開設されている
起算して 3 月前の日における有価証券等の価
金融商品取引業者等の営業所の長に提出した
額相当額により国外転出時課税制度の適用を
ものとみなされることとされていました(旧
受けるときは、その国外転出の時においてそ
措令25の13の 8 ⑰において準用する旧措令25
の居住者等が有している未成年者口座内上場
の13の 4 )
。
株式等の払出し時の金額は、同日における有
② 金融商品取引業者等の営業所における未成
価証券等の価額相当額とすることとされまし
年者口座に関する書類の整理保存
た(措令25の13の 8 ⑰において準用する措令
金融商品取引業者等の営業所の長は、次に
25の13④)。
掲げる書類について各人別に整理し、次に定
② 出国移管依頼書及び未成年者出国届出書の
める日の属する年の翌年から 5 年間保存しな
記載事項の改正
ければならないこととされていました(旧措
上記①の改正に伴い、未成年者口座を開設
─ 206 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
している者が出国をする日の属する年分にお
ていることから、未成年者口座を開設している
いて国外転出の予定日から起算して 3 月前の
居住者等が出国により居住者等に該当しないこ
日における有価証券等の価額相当額により国
ととなった場合には、その出国の日からは非課
外転出時課税制度の適用を受けるときは、そ
税の適用を受けることはできません。このため、
の出国をする日の前日までに提出することと
未成年者口座を開設している居住者等が出国に
されている出国移管依頼書又は未成年者出国
より居住者等に該当しないこととなる場合にお
届出書に、その適用を受ける旨を記載するこ
いて、その出国をする日の前日までに出国移管
ととされました(措規18の15の10⑦、同条⑰
依頼書を提出せずに基準年の 1 月 1 日前に出国
において準用する措規18の15の 6 )
。
した場合には、その者は、未成年者口座廃止届
出書をその未成年者口座が開設されている金融
⑵ 課税未成年者口座の要件の見直し
商品取引業者等の営業所の長に提出したものと
改正前の制度では、特定口座や預貯金口座な
みなすことが明確に規定されました(措令25の
ど各々の口座を「課税未成年者口座」と観念し
13の 8 ⑰において準用する措令25の13の 4 )。
ていましたが、これを改め、特定口座や預貯金
口座などの複数の口座から構成される口座を
⑷ 金融商品取引業者等の営業所における書類の
「課税未成年者口座」として観念することとさ
保存義務の改正
れました。具体的には、
「課税未成年者口座」
金融商品取引業者等の営業所の長は、次に掲
とは、未成年者口座を開設した居住者等が、そ
げる書類について、次に定める日の属する年の
の未成年者口座を開設している金融商品取引業
翌年から 5 年間保存しなければならないことと
者等の営業所又はその金融商品取引業者等と一
されました(措規18の15の10⑰において準用す
定の関係にある法人の営業所に開設している特
る措規18の15の 8 )。
定口座又は預金口座、貯金口座若しくは顧客か
① 上記 1 ⑸②イの未成年者口座開設届出書等
ら預託を受けた金銭その他の資産の管理のため
……次のイ又はロに掲げる日のいずれか遅い
の口座(これらの口座において課税未成年者口
日
座管理契約に基づく取引以外の取引に関する事
イ 未成年者口座開設届出書等に係る未成年
者口座が廃止された日
項を扱わないものに限ります。
)により構成さ
れるもので、その未成年者口座と同時に設けら
ロ 前述一 1 ⑸④(未成年者口座の開設者が
れるもの( 2 つ以上の特定口座を含まないもの
20歳に到達した場合の非課税口座の自動開
に限ります。)をいうこととされました(措法
設)によりその金融商品取引業者等の営業
37の14の 2 ⑤五)
。
所の長に非課税適用確認書が添付された非
これにより、未成年者口座と同時に設けられ
課税口座開設届出書の提出があったものと
ていない特定口座又は預金口座、貯金口座若し
みなされた日の属する勘定設定期間(前述
くは顧客から預託を受けた金銭その他の資産の
一 2 ⑴①を参照)の終了の日の翌日から 5
管理のための口座についても、課税未成年者口
年を経過する日
座を構成する口座として組み入れることが可能
② 未成年者非課税適用確認書の交付申請書
……次のイ又はロに掲げる日のいずれか遅い
となります。
日
⑶ 出国移管依頼書を提出せずに出国した場合の
イ その申請書の提出をした者がその年 1 月
未成年者口座廃止届出書のみなし提出の明確化
1 日において20歳である年の前年12月31日
本非課税措置の適用対象者は居住者等となっ
ロ 前述一 1 ⑸④(未成年者口座の開設者が
─ 207 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
20歳に到達した場合の非課税口座の自動開
以後の所得税について適用し、平成27年分以前
設)によりその金融商品取引業者等の営業
の所得税については従前どおりとされます(改
所の長に非課税適用確認書が添付された非
正法附則57、改正措令附則 2 )。
課税口座開設届出書の提出があったものと
⑵ 上記 2 ⑴②の改正は、平成28年 4 月 1 日以後
みなされた日の属する勘定設定期間の終了
に提出する出国移管依頼書又は未成年者出国届
の日
出書について適用し、同日前に提出された出国
移管依頼書又は未成年者出国届出書については
3 適用関係
従前どおりとされます(改正措規附則15②④)。
⑴ 上記 2 ⑴①、⑵及び⑶の改正は、平成28年分
三 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例
等の改正
信用取引等に係る上場株式等の譲渡以外の株
1 改正前の制度の概要
式等の譲渡による事業所得の金額又は雑所得
⑴ 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所
の金額とを区分して、これらの金額を計算す
得計算等の特例
ることとされています(措法37の11の 3 ②、
① 居住者又は恒久的施設を有する非居住者
措令25の10の 2 ③)。
(以下「居住者等」といいます。
)が、上場株
③ 特定口座とは、居住者等が、上記①又は②
式等保管委託契約に基づき特定口座(その者
の特例の適用を受けるため、金融商品取引業
が二以上の特定口座を有する場合には、それ
者等の営業所に、その口座の名称、その口座
ぞれの特定口座)に係る振替口座簿(社債、
に設ける勘定の種類、上記①又は②の特例の
株式等の振替に関する法律に規定する振替口
適用を受ける旨その他一定の事項を記載した
座簿をいいます。
)に記載若しくは記録がさ
特定口座開設届出書を提出して、その金融商
れ、又は保管の委託がされている上場株式等
品取引業者等との間で締結した上場株式等保
(以下「特定口座内保管上場株式等」といい
管委託契約又は上場株式等信用取引等契約に
ます。)の譲渡をした場合には、その特定口
基づき設定された上場株式等の振替口座簿へ
座内保管上場株式等の譲渡による事業所得の
の記載若しくは記録若しくは保管の委託又は
金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額とそ
上場株式等の信用取引等に係る口座(その口
の特定口座内保管上場株式等以外の株式等の
座においてこれらの契約及び上場株式配当等
譲渡による事業所得の金額、譲渡所得の金額
受領委任契約に基づく取引以外の取引に関す
又は雑所得の金額とを区分して、これらの金
る事項を扱わないものに限ります。)をいう
額を計算することとされています(措法37の
こととされています(措法37の11の 3 ③一)。
11の 3 ①、措令25の10の 2 ①前段)
。
② 信用取引又は発行日取引(以下「信用取引
⑵ 特定口座を開設していた居住者等が出国によ
等」といいます。
)を行う居住者等が、上場
り居住者等に該当しないこととなった場合の取
株式等信用取引等契約に基づき上場株式等の
扱い
信用取引等を特定口座において処理した場合
① 特定口座開設届出書の提出をした居住者等
には、信用取引等に係る上場株式等の譲渡に
が、その提出後、出国により居住者等に該当
よる事業所得の金額又は雑所得の金額とその
しないこととなった場合には、特定口座廃止
─ 208 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
届出書を特定口座が開設されている金融商品
株式等をその特定口座に移管することを依
取引業者等の営業所の長に提出したものとみ
頼する旨、移管する上場株式等の種類、銘
なされます(措令25の10の 5 ①)
。
柄、数その他一定の事項を記載した書類を
いいます。)を提出すること。
② 居住者等が、特定口座開設届出書の提出を
した金融商品取引業者等の営業所に開設され
ハ その居住者のうちその出国の日の属する
ていた特定口座(以下「出国前特定口座」と
年分の所得税につき国外転出時課税制度
いいます。)に係る特定口座内保管上場株式
(所法60の 2 ①⑩)の適用を受けたものが、
等の全てにつき、出国をした後引き続きその
帰国をした後、特定口座開設届出書及び出
金融商品取引業者等の営業所に開設されてい
国口座内保管上場株式等移管依頼書の提出
る口座(以下「出国口座」といいます。
)に
の際に、
「国外転出をした者が帰国をした
係る振替口座簿に記載若しくは記録を受け、
場 合 等 の 更 正 の 請 求 の 特 例( 所 法153の
又はその出国口座において保管の委託をし、
2)
」の適用に係る更正の請求書の提出の
かつ、帰国(居住者又は恒久的施設を有する
有無を明らかにするとともに、その更正の
非居住者に該当することとなることをいいま
請求書を提出している場合にはその更正の
す。)をした後再びその金融商品取引業者等
請求書の写し及び更正通知書又はその写し
の営業所に設定する特定口座に係る振替口座
を提出すること。
簿に記載若しくは記録を受け、又はその特定
ニ 上記ハの居住者が国外転出(出国)の日
口座に保管の委託をしようとするときは、次
から 5 年を経過する日(10年間の納税の猶
に掲げる要件を満たす場合に限り、その出国
予を受けている者については、10年を経過
口座に係る振替口座簿に記載若しくは記録が
する日)までに帰国をした場合には、その
され、又はその出国口座に保管の委託がされ
帰国の日から 4 月を経過した日(同日が、
ている上場株式等(以下「出国口座内保管上
国外転出をした者が帰国をした場合等の更
場株式等」といいます。
)をその特定口座に
正の請求の特例に基づく更正の請求をした
移管することができることとされていました
者のその請求に基づく更正の日前である場
合にあっては、同日)以後に出国口座内保
(旧措令25の10の 5 ②)
。
管上場株式等移管依頼書の提出をすること。
イ その居住者等が、出国をする日までに、
特定口座継続適用届出書(出国前特定口座
に係る特定口座内保管上場株式等を出国口
2 改正の内容
座に係る振替口座簿に記載若しくは記録を
国外転出時課税制度(所法60の 2 )の改正に伴
受け、又はその出国口座に保管の委託をす
い、上記 1 ⑵②の出国口座内保管上場株式等を特
る旨その他一定の事項を記載した書類をい
定口座に移管をする場合の手続等について、次の
います。)をその金融商品取引業者等の営
改正が行われました。
業所の長に提出すること。
ロ その居住者等が、帰国をした後、その金
⑴ 国外転出をした者が帰国をした場合等の修正
融商品取引業者等の営業所の長に特定口座
申告の特例の創設等に伴う措置
開設届出書の提出をする際、その特定口座
国外転出時課税制度の適用を受けた場合には、
開設届出書とともに出国口座内保管上場株
特定口座内保管上場株式等についても国外転出
式等移管依頼書(その出国口座に係る振替
等の時の価額で譲渡し、その価額で再取得した
口座簿に記載若しくは記録がされ、又はそ
ものとみなされるため、国外転出時課税制度の
の出国口座に保管の委託がされている上場
適用を受けて出国口座に移管した出国口座内保
─ 209 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
管上場株式等を帰国の後に特定口座に移管する
係る更正請求書の写し。以下「更正通知
場合には、国外転出時課税制度の適用後の取得
書等」といいます。)
価額により行われる必要があります。ただし、
ロ 再調査決定書、裁決書若しくは確定判
国外転出(出国)の日から 5 年(又は10年)以
決の判決書若しくは調書又はこれらの書
内に帰国等をした場合には、国外転出時課税制
類の写し
度の適用を取り消すことができることとされて
② その居住者が更正の請求の特例(所法153
おり(所法60の 2 ⑥)
、更正の請求の特例(所
の 2 )の適用を受けた場合……更正の請求に
法153の 2 )の適用によってこの課税の取消し
基づく更正に係る更正通知書等又はその写し
の適用を受けた場合には、国外転出時課税制度
(その更正の請求に基づく更正後に、その居
の適用前の取得価額で出国口座から特定口座に
住者が修正申告書を提出し、又は更正があっ
移管される必要があります。この国外転出時課
た場合には、その居住者の価額証明書類)
税制度による課税の取消しはこれまで更正の請
③ その居住者が上記①の修正申告の特例又は
求のみが認められていましたが、今回の改正に
上記②の更正の請求の特例の適用を受けなか
おいて、国外転出時課税制度の適用によって譲
った場合……その居住者の出国の日の属する
渡損失が生じた場合等における課税の取消しの
年分の所得税に係る確定申告書の写し又は決
方法として、「国外転出をした者が帰国をした
定通知書若しくはその写し(その確定申告書
場合等の修正申告の特例(所法151の 2 )
」が創
の提出又は決定の後に、その居住者が修正申
設されました。
告書を提出し、又は更正があった場合には、
その居住者の価額証明書類)
この修正申告の特例の創設等に伴い、国外転
出時課税制度の適用を受けた出国口座内保管上
(注) 上記①から③までの更正には、更正の請求
場株式等を特定口座に移管しようとする居住者
に対する処分に係る不服申立て又は訴えにつ
等は、帰国をした後、特定口座開設届出書及び
いての決定若しくは裁決又は判決を含みます。
出国口座内保管上場株式等移管依頼書の提出の
際に、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次
⑵ 国外転出時課税制度における取得価額の洗替
に定める書類を提出しなければならないことと
えの適用の見直しに伴う措置
されました(措令25の10の 5 ②三、措規18の13
今回の改正により、国外転出の日の属する年
③)。
分の所得税につき、国外転出時課税制度の適用
① その居住者が修正申告の特例(所法151の
を受ける居住者が、その年分の所得税につき確
2 )の適用を受けた場合
定申告書の提出及び決定がされていない場合並
修正申告書の写し。ただし、その修正申告
びに国外転出の日の属する年分の事業所得の金
書の提出後に、その居住者が再び修正申告書
額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上
を提出し、又は更正があった場合には、その
国外転出時課税制度の適用に係る収入金額が総
居住者の次に掲げる書類で国外転出時課税制
収入金額に算入されていない場合には、その国
度の適用に係る金額を証する書類(以下「価
外転出の時に保有していた有価証券等について、
額証明書類」といいます。
)
。
その国外転出の時における価額をもって再取得
イ 再び提出したその修正申告書の写し
したものとみなす措置等を適用しないこととさ
ロ その更正に係る次に掲げる書類
れました(所法60の 2 ④)。
イ 更正通知書(その更正が更正の請求に
この有価証券等の再取得をしたものとみなす
基づくものである場合には、その更正通
措置を適用しないこととされた者が出国口座内
知書又はその写し及びその更正通知書に
保管上場株式等を特定口座に移管しようとする
─ 210 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
場合には、国外転出の時に保有をしていた有価
した日が、更正の請求の特例(所法153の 2 )
証券等の取得価額について国外転出時の価額へ
に基づき更正の請求書の提出をした者のその請
の洗替えが行われず、修正申告の特例又は更正
求に基づく更正の日前である場合には、その更
の請求の特例の適用はできないことから、これ
正の日以後に出国口座内保管上場株式等移管依
らの者は特定口座開設届出書及び出国口座内保
頼書を提出することができます(措令25の10の
管上場株式等移管依頼書の提出の際に、上記⑴
5 ②四)。
①から③までの書類の提出は不要とされました
これは、国外転出時課税制度に係る納税猶予
の適用を受けている者が満了基準日の翌日から
(措令25の10の 5 ②三)
。
満了基準日以後 4 月を経過する日までの間に帰
⑶ 国外転出時課税制度の適用者に係る出国口座
国をした場合には、満了基準日から 4 月を経過
内保管上場株式等移管依頼書の提出日の改正
する日までは「納税の猶予に係る期間の満了日
出国口座内保管上場株式等を特定口座に移管
における価格下落の場合の更正の請求(所法
しようとする居住者等でその出国の日の属する
153の 2 ③)」により出国口座内保管上場株式等
年分の所得税につき国外転出時課税制度の適用
について取得価額が変動する可能性があるため、
を受けた者が国外転出(出国)の日から 5 年を
この更正の請求書を提出できる期間が終了する
経過する日(10年間の納税の猶予を受けている
までは、特定口座への移管ができないこととす
者については、10年を経過する日。以下「満了
るものです。
基準日」といいます。
)の翌日から満了基準日
以後 4 月を経過する日までの間に帰国をした場
3 適用関係
合には、その満了基準日から 4 月を経過した日
上記 2 の改正は、平成28年分以後の所得税につ
以後に出国口座内保管上場株式等移管依頼書を
いて適用し、平成27年分以前の所得税については、
提出しなければならないこととされました(措
従前どおりとされます(改正措令附則 2 )。
令25の10の 5 ②四ロ)
。ただし、
その 4 月を経過
四 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正
います(措法37の12の 2 ①)。
1 改正前の制度の概要
この損益通算の特例の対象となる「上場株式
⑴ 上場株式等に係る譲渡損失と配当所得等との
等に係る譲渡損失の金額」とは、居住者等が、
損益通算
上場株式等の次に掲げる譲渡をしたことにより
確定申告書を提出する居住者又は恒久的施設
生じた金額のうち、その者のその譲渡をした日
を有する非居住者(以下「居住者等」といいま
の属する年分の上場株式等に係る譲渡所得等の
す。)の各年分の上場株式等に係る譲渡損失の
金額の計算上控除してもなお控除しきれない部
金額がある場合には、その上場株式等に係る譲
分の金額をいいます(旧措法37の12の 2 ②)。
渡損失の金額に相当する金額は、上場株式等に
① 金融商品取引業者(第一種金融商品取引業
係る配当所得等の金額(特定上場株式等の配当
を行う者に限ります。下記②において同じで
等(措法 8 の 4 ②)については、申告分離課税
す。)又は登録金融機関への売委託により行
を選択したものに限ります。以下同じです。
)
う上場株式等の譲渡
を限度として、その年分の上場株式等に係る配
当所得等の金額の計算上控除することとされて
─ 211 ─
② 金融商品取引業者に対する上場株式等の譲
渡
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
③ 登録金融機関又は投資信託委託会社に対す
に、金融商品取引業者等に対する売委託の方法に
る上場株式等の譲渡で一定のもの
よる譲渡などの一定の方法による譲渡により生じ
④ その他一定の上場株式等の譲渡
たものに限られています。他方、国外転出時課税
制度(所法60の 2 )又は贈与等時課税制度(所法
⑵ 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
60の 3 )は、国外転出の日又は贈与等の日(以下
確定申告書を提出する居住者等が、その年の
「国外転出等の日」といいます。)の時価によって
前年以前 3 年内の各年において生じた上場株式
有価証券等の譲渡が行われたものとして課税する
等に係る譲渡損失の金額(この特例の適用を受
制度であり、これらの制度により生じた損失金額
けて前年以前において控除されたものを除きま
は時価をベースに算定されたものとなるため、こ
す。)を有する場合には、その上場株式等に係
れらの制度の適用により行われたものとみなされ
る譲渡損失の金額に相当する金額は、その確定
た譲渡が本特例の対象となる譲渡の範囲に追加さ
申告書に係る年分の上場株式等に係る譲渡所得
れました(措法37の12の 2 ②十一)。
等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金
これにより、国外転出等の日までに生じていた
額を限度として、その年分のその上場株式等に
上場株式等の含み損については、国外転出等の日
係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配
の属する年分の上場株式等に係る配当所得等の金
当所得等の金額の計算上控除することとされて
額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額との損
います(措法37の12の 2 ⑤)
。
益通算が可能となります。
この繰越控除の特例の対象となる「上場株式
(注) 国外転出等の日に有していた有価証券等を譲
等に係る譲渡損失の金額」とは、居住者等が、
渡せずにその国外転出等の日から 5 年(又は10
上場株式等の上記⑴①から④までの譲渡をした
年)以内に帰国をした場合等には、国外転出時
ことにより生じた損失の金額のうち、その者の
課税制度又は贈与等時課税制度の適用を取り消
その譲渡をした年分の上場株式等の譲渡所得等
すことができますが、その適用の取消しにより
の金額の計算上控除してもなお控除しきれない
譲渡損失がなかったものとする場合には、修正
部分の金額(その年において上記⑴の損益通算
申告書を提出することとなります(所法151の 2 、
の特例の適用を受けて控除されたものを除きま
151の 3 )
。この場合には、延滞税等の特例は措
す。
)をいいます(措法37の12の 2 ⑥)
。
置されていません。
2 改正の内容
3 適用関係
本特例の対象となる上場株式等の譲渡損失の金
上記 2 の改正は、平成28年分以後の所得税につ
額は、適正・公正な価格によって行われた譲渡に
いて適用し、平成27年分以前の所得税については、
より生じた損失金額であること等を担保するため
従前どおりとされています(改正法附則57)。
五 障害者等の少額貯蓄非課税制度の改正
非課税貯蓄申込書又は非課税貯蓄相続申込書の
1 改正前の制度の概要
提出をする場合には、障害者等の身体障害者手
⑴ 非課税貯蓄申込書及び非課税貯蓄相続申込書
帳その他一定の書類(以下「障害者等確認書
の提出
類」といいます。)及び本人確認書類の提示又
障害者等の少額貯蓄非課税制度の適用を受け
は署名用電子証明書等の送信をしなければなら
ようとする者が、金融機関の営業所等の長に、
ないこととされています(旧所法10②、旧所令
─ 212 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
ホ 運転免許証(提示する日において有効な
47②、措法 4 ②、措令 2 の 4 ③)
。
この非課税貯蓄申込書には、非課税の適用を
ものに限ります。)又は運転経歴証明書
受けようとする旨、その提出者の氏名、生年月
ヘ 旅券で提示する日において有効なもの
日、住所及び個人番号その他一定の事項を記載
ト 在留カード又は特別永住者証明書で、提
示する日において有効なもの
しなければならないこととされ(旧所令34①、
措令 2 の 4 ③)
、非課税貯蓄相続申込書には、
チ 上記イからトまでに掲げる書類のほか、
非課税の適用を受けている被相続人の預貯金等
官公署から発行され、又は発給された書類
について引き続き非課税の適用を受けたい旨、
その他これらに類するもの(提示する日前
その提出者である相続人の氏名、生年月日、住
6 月以内に作成されたもの(有効期間又は
所及び個人番号その他一定の事項を記載しなけ
有効期限のあるものにあっては、提示する
ればならないこととされていました(旧所規11
日において有効なもの)に限ります。)
②、措規 2 の 5 ①)
。
⑶ 署名用電子証明書等の範囲
⑵ 本人確認書類の範囲
上記⑴の署名用電子証明書等とは、次の①か
① 上記⑴の本人確認書類は次の書類とされて
ら③までの電磁的記録(電子的方式、磁気的方
いました(旧所規 7 ②)
。
式その他の人の知覚によっては認識することが
イ 行政手続における特定の個人を識別する
できない方式で作られる記録であって、電子計
ための番号の利用等に関する法律の個人番
算機による情報処理の用に供されるものをいい
号カードで提示する日において有効なもの
ます。)又は情報が記録された電磁的記録とさ
ロ 行政手続における特定の個人を識別する
れていました(旧所法10⑤、224①、所規81の
ための番号の利用等に関する法律の通知カ
6 ⑥)
。
ード及び住所等確認書類
① 署名用電子証明書(電子署名等に係る地方
ハ 住民票の写し又は住民票の記載事項証明
公共団体情報システム機構の認証業務に関す
書で個人番号の記載のあるもの(提示する
る法律(平成14年法律第153号)第 3 条第 1
日前 6 月以内に作成されたものに限りま
項に規定する署名用電子証明書をいいます。)
す。)及び住所等確認書類で住民票の写し
② 地方公共団体情報システム機構により電子
署名(電子署名及び認証業務に関する法律
等(下記②イの書類)以外のもの
② 上記①ロ及びハの住所等確認書類は次の書
(平成12年法律第102号)第 2 条第 1 項に規定
類とされていました(旧所規 7 ③)
。
する電子署名をいいます。)が行われた上記
イ 住民票の写し又は住民票の記載事項証明
①の署名用電子証明書に係る者の個人番号及
書(提示する日前 6 月以内に作成されたも
び個人識別事項(行政手続における特定の個
のに限ります。
)
人を識別するための番号の利用等に関する法
ロ 印鑑証明書
律施行規則(平成26年内閣府・総務省令第 3
ハ 国民健康保険、健康保険、船員保険、後
号)第 1 条第 1 項第 2 号に規定する個人識別
期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者
事項をいいます。)に係る情報で、同令第 4
証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家
条第 1 号の規定により総務大臣が定めるもの
公務員共済組合若しくは地方公務員共済組
③ 上記①の署名用電子証明書により確認され
合の組合員証又は私立学校教職員共済制度
る電子署名が行われた情報で、その署名用電
の加入者証
子証明書に係る者の氏名、住所及び個人番号
に係るもの
ニ 国民年金手帳
─ 213 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
(注) 上記②の「行政手続における特定の個人
を提出する障害者等の生年月日又は住所が記載
を識別するための番号の利用等に関する法
されていない場合には、その障害者等確認書類
律施行規則第 4 条第 1 号の規定により総務
にあわせて住所等確認書類を提示しなければな
大臣が定めるもの」は、「行政手続における
らないこととされました。また、この住所等確
特定の個人を識別するための番号の利用等
認書類の提示に代えて署名用電子証明書等の送
に関する法律施行規則第 4 条第 1 号の規定
信をすることもできることとされています(所
に基づき総務大臣が定める情報(平成27年
法10②、所令41の 2 ①②、47②)。
総務省告示第350号)」により、「通知カード
この場合における住所等確認書類及び署名用
及び個人番号カードに関する技術的基準(平
電子証明書等は、次のものをいうこととされま
成27年総務省告示第314号)第 4 の 1 の⑵の
した(所規 7 ②③)。
エに規定する署名券面情報」とされています。
① 住所等確認書類
次に掲げる書類でその障害者等の氏名、生
2 改正の内容
年月日及び住所の記載のあるもの
⑴ 非課税貯蓄申込書及び非課税貯蓄相続申込書
イ 個人番号カードで提示する日において有
の記載事項の改正
効なもの
ロ 上記 1 ⑵②イからチまでに掲げる書類
上記 1 ⑴の非課税貯蓄申込書及び非課税貯蓄
② 署名用電子証明書等
相続申込書について、個人番号の記載が不要と
次に掲げる電磁的記録又は情報が記録され
されました。
た電磁的記録
(注)
非課税貯蓄申告書や非課税貯蓄限度額変更
申告書には、引き続き個人番号の記載が必要
イ 署名用電子証明書
となります。なお、この改正の趣旨について
ロ 上記イの署名用電子証明書により確認さ
は後掲「国税通則法等の改正」の「四 マイ
れる電子署名が行われた情報で、その署名
ナンバー記載の対象書類の見直し」をご参照
用電子証明書に係る者の氏名、生年月日及
ください。
び住所に係るもの
3 適用関係
⑵ 提示すべき書類等の範囲の改正
上記⑴の改正に伴い、金融機関の営業所等の
上記 2 の改正は、平成28年 4 月 1 日以後に提出
長に、非課税貯蓄申込書又は非課税貯蓄相続申
する非課税貯蓄申込書又は非課税貯蓄相続申込書
込書を提出する場合には、原則として障害者等
について適用し、同日前に提出された非課税貯蓄
確認書類のみを提示することとされました。た
申込書又は非課税貯蓄相続申込書については従前
だし、その障害者等確認書類にこれらの申込書
どおりとされます(改正法附則 4 、改正所令附則 3 )
。
六 告知又は告知書等に記載をすべき事項等の改正
出をする個人は、その告知又は告知書等の提出
1 改正前の制度の概要
をする際、その告知又は告知書等の提出をする
⑴ 告知又は告知書等の提出の際の本人確認書類
相手方に対し、その者の氏名、住所及び個人番
の提示
号(次の⑨から⑪までの制度については、加え
次に掲げる告知又は告知書、届出書若しくは
て生年月日)の記載のある本人確認書類を提示
申請書(以下「告知書等」といいます。
)の提
し、又は署名用電子証明書等を送信しなければ
─ 214 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
⑵ 本人確認書類の範囲
ならないこととされています。
① 利子等・配当等の受領者の告知又は告知書
の提出(旧所法224①②、旧所令336①、339①)
② 譲渡性預金の譲渡等に関する告知書の提出
① 個人が告知又は告知書等の提出をする場合
に提示すべき上記⑴の本人確認書類の範囲は、
概ね次のとおりとされていました(旧所規81
の 6 ①、旧措規18の12③、旧国外送金等調書
(所法224の 2 、旧所規81の17②)
③ 株式等の譲渡の対価の受領者の告知(旧所
規 4 ①)。
イ 国内に住所を有する個人……その個人の
法224の 3 ①、旧所令342①)
④ 交付金銭等の受領者の告知(所法224の 3
次に掲げるいずれかの書類
イ 行政手続における特定の個人を識別す
③、旧所令345③)
⑤ 償還金等の受領者の告知(所法224の 3 ④、
るための番号の利用等に関する法律の個
人番号カードで提示する日において有効
旧所令346③)
⑥ 信託受益権の譲渡の対価の受領者の告知
なもの
ロ 行政手続における特定の個人を識別す
(旧所法224の 4 、旧所令348①)
⑦ 先物取引の差金等決済をする者の告知(旧
るための番号の利用等に関する法律の通
知カード及び住所等確認書類
所法224の 5 ①、旧所令350の 3 ①)
⑧ 金地金等の譲渡の対価の受領者の告知(旧
ハ 住民票の写し又は住民票の記載事項証
明書で個人番号の記載のあるもの(提示
所法224の 6 、旧所令350の 8 ①)
⑨ 特定口座開設届出書を提出する者の告知
する日前 6 月以内に作成されたものに限
(旧措法37の11の 3 ④、
旧措令25の10の 3 ①)
ります。)及び住所等確認書類で住民票
⑩ 非課税適用確認書の交付申請書又は非課税
の写し等(下記②イの書類)以外のもの
口座開設届出書を提出する者の告知(旧措法
ロ 国内に住所を有しない個人
イ 個人番号を有しない個人……その個人
37の14⑦⑪、旧措令25の13⑭~⑯)
⑪ 未成年者非課税適用確認書の交付申請書又
は未成年者口座開設届出書を提出する者の告
知(旧措法37の14の 2 ⑫⑰、措令25の13の 8
の次に掲げるいずれかの書類
ⅰ 住所等確認書類(住民票の写し等
(下記②イの書類)を除きます。)
ⅱ 官公署から発行され、又は発給され
⑰において準用する旧措令25の13⑭~⑯)
⑫ 国外送金等に係る本人口座を開設又は設定
する者の告知(国外送金等調書法 2 六、旧国
た書類その他これらに類するもの
ロ 個人番号を有する個人……その個人の
上記イⅰ又はⅱに掲げるいずれかの書類
外送金等調書令 3 )
⑬ 国外証券移管等に係る本人証券口座を開設
する者の告知(国外送金等調書法 2 十三、旧
及び還付された通知カード又は個人番号
カード
② 上記①の住所等確認書類は、次の書類とさ
国外送金等調書令 3 の 3 )
⑭ 国外送金等をする者の告知書の提出(旧国
れていました(旧所規81の 6 ②、旧措規18の
外送金等調書法 3 ①、旧国外送金等調書令 5
12④、旧国外送金等調書規 4 ②)。
②)
イ 住民票の写し又は住民票の記載事項証明
⑮ 国外証券移管等をする者の告知書の提出
(国外送金等調書法 4 の 2 ①、旧国外送金等
書(提示する日前 6 月以内に作成されたも
のに限ります。)
ロ 戸籍の附票の写し又は印鑑証明書
調書令 6 ①)
ハ 国民健康保険、健康保険、船員保険、後
期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者
─ 215 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家
旧措法37の11の 3 ④、旧措規18の12①、旧国外
公務員共済組合若しくは地方公務員共済組
送金等調書法 3 ①、旧国外送金等調書規 4 ⑥)。
合の組合員証又は私立学校教職員共済制度
① 署名用電子証明書(電子署名等に係る地方
公共団体情報システム機構の認証業務に関す
の加入者証
る法律第 3 条第 1 項に規定する署名用電子証
ニ 国民年金手帳、児童扶養手当証書、特別
明書をいいます。)
児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障
② 地方公共団体情報システム機構により電子
害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉
署名(電子署名及び認証業務に関する法律第
手帳又は戦傷病者手帳
2 条第 1 項に規定する電子署名をいいます。)
ホ 運転免許証(提示する日において有効な
ものに限ります。
)又は運転経歴証明書
が行われた上記①の署名用電子証明書に係る
ヘ 旅券で提示する日において有効なもの
者の個人番号及び個人識別事項(行政手続に
ト 在留カード又は特別永住者証明書で、提
おける特定の個人を識別するための番号の利
用等に関する法律施行規則第 1 条第 1 項第 2
示する日において有効なもの
チ 国税若しくは地方税の領収証書、納税証
号に規定する個人識別事項をいいます。)に
明書又は社会保険料の領収証書(領収日付
係る情報で、同令第 4 条第 1 号の規定により
の押印又は発行年月日の記載のあるもので、
総務大臣が定めるもの
③ 上記①の署名用電子証明書により確認され
その日が提示する日前 6 月以内のものに限
る電子署名が行われた情報で、その署名用電
ります。
)
子証明書に係る者の氏名、住所及び個人番号
リ 上記イからチに掲げる書類のほか、官公
に係るもの
署から発行され、又は発給された書類その
他これらに類するもの(提示する日前 6 月
(注) 上記②の「行政手続における特定の個人
以内に作成されたもの(有効期間又は有効
を識別するための番号の利用等に関する法
期限のあるものにあっては、提示する日に
律施行規則第 4 条第 1 号の規定により総務
おいて有効なもの)に限ります。
)
大臣が定めるもの」については、前述「五 (注 1 )
上記①及び②の書類は、いずれもその
障害者等の少額貯蓄非課税制度の改正」の
1 ⑶(注)をご参照ください。
者の氏名及び住所(上記⑴⑨から⑪まで
の制度では、加えて生年月日)の記載が
⑷ 特定株式投資信託等の配当等に係るみなし告
あるものに限ります。
(注 2 )
上記⑴⑨から⑪までの制度では、上記
知
②ロの戸籍の附票の写し及び上記チに掲
国内において配当等につき支払を受ける者は、
げる書類は対象外です。
その配当等の支払の確定する日までに、その確
定の都度(無記名の受益証券に係る配当等はそ
⑶ 署名用電子証明書等の範囲
の支払を受ける際)、その者の氏名又は名称、
上記⑴の署名用電子証明書等とは、次の①か
住所及び個人番号又は法人番号を、支払事務取
ら③までの電磁的記録(電子的方式、磁気的方
扱者等に告知し、又はこれらの事項を記載した
式その他の人の知覚によっては認識することが
告知書の提出をしなければならないこととされ
できない方式で作られる記録であって、電子計
ています(旧所法224①②、旧所令336①、337①
算機による情報処理の用に供されるものをいい
②、338①、339①⑨、旧所規81の 8 ①、81の12①)。
ます。)又は情報が記録された電磁的記録とさ
ただし、特定株式投資信託又は特定不動産投
れていました(旧所法224、旧所規81の 6 ⑥、
資信託の配当等の支払を受ける者が、その投資
─ 216 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
信託約款に定めるところにより、その受益権に
が金融機関等と継続して取引をしている場合には、
係る収益の分配の受領者としてその支払事務取
その者がその金融機関等に対して反復して個人番
扱者等に登録する際に上記の告知をしている場
号の告知や個人番号を記載した書類の提出をする
合には、その後に支払を受ける配当等について
ことも想定されるため、納税者及び事務実施者の
は、上記の事項の告知をしたものとみなすこと
事務負担等を考慮し、個人番号の告知方法等につ
とされています(旧所令336②五、339⑧、旧所
いての特例が設けられました。具体的には次のと
規81の 5 、81の 9 ⑥)
。
おりです。
① 上記の特定株式投資信託とは、信託財産を
株式のみに対する投資として運用することを
⑴ 番号既告知者に係る個人番号の告知の特例の
目的とする証券投資信託のうちその委託者指
創設
図型投資信託約款(その証券投資信託が外国
① 上記 1 ⑴の告知又は告知書等の提出を受け
投資信託である場合には、金融商品取引所の
る者がその告知又は告知書等の提出をする者
上場に関する規則)に、収益の分配の支払は、
の個人番号その他一定の事項を記載した帳簿
収益の分配に係る計算期間の終了する日にお
を備えているときは、その告知又は告知書等
いて受益者としてその氏名又は名称、住所及
の提出をする者は、その者の個人番号の告知
び個人番号又は法人番号が受託者(その証券
又は告知書等への記載を要しないこととされ
投資信託が外国投資信託である場合には、売
ました。ただし、その告知又は告知書等の提
買決済の委託を受けた法人)に登録されてい
出をする者の氏名、住所又は個人番号が、そ
る者に対して行われること、その受益権が金
の帳簿に記載されたその者の氏名、住所又は
融商品取引所に上場されていることその他一
個人番号と異なる場合には、改めてこれらの
定の要件を満たすものをいうこととされてい
事項について告知等をすることが必要となり
ました(旧所令336②五、旧所規81の 5 ①)
。
ま す( 所 法224①、224の 3 ①、224の 4 ①、
② 上記の特定不動産投資信託は、証券投資信
224の 5 ①、224の 6 、措法37の11の 3 ④、37
託以外の投資信託で公社債等運用投資信託に
の14⑥一・⑦⑪、37の14の 2 ⑫⑬⑰、国外送
該当しないもののうちその委託者指図型投資
金等調書法 3 ①、 4 の 2 ①、所令336①②④、
信託約款に、収益の分配の支払は、収益の分
338① ~ ③、339① ⑨、342① ④、344①、345
配に係る計算期間の終了する日において受益
①⑤⑥、346①⑤⑥、348①④、350①、350の
者としてその氏名又は名称、住所及び個人番
3 ① ④、350の 5 ①、350の 8 ① ④、350の10
号又は法人番号が受託者に登録されている者
①、措令25の10の 3 ①⑤、25の13⑬⑮⑰、25
に対して行われること、その受益権が金融商
の13の 8 ⑰、国外送金等調書令 3 、 3 の 3 、
品取引所に上場されていることその他一定の
5 ②、 6 ①、 9 の 3 ③、 9 の 4 ①、所規81の
要件を満たすものをいうこととされていまし
9 ①、81の17①⑤、国外送金等調書規 3 ①⑥)。
② 上記①の帳簿に記載すべき一定の事項は、
た(旧所令336②五、旧所規81の 5 ②)
。
次のものです。また、この帳簿は、その閉鎖
2 改正の内容
の日の属する年の翌年から 5 年間保存しなけ
行政手続における特定の個人を識別するための
ればならないこととされています(所規81の
番号の利用等に関する法律では、個人番号が記載
6 ⑦⑧、81の 9 ②、81の17⑥、81の20③、81
された書類を保存する際には安全管理措置を講ず
の25③、81の29③、81の33③、81の36③、81
ることが定められており、その事務実施者は適切
の38②、措規18の12⑥⑦、18の15の 3 ⑨⑩⑭、
な処理を求められることとなります。また、個人
18の15の10⑰、国外送金等調書規 3 ②③⑦、
─ 217 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
5 ①、11の 2 ②)
。
され、又は発給された書類その他これらに類
イ 本人確認書類の提示又は署名用電子証明
するもの」については、提示をする日前 6 月
書等の送信をした者の氏名、住所及び個人
以内に作成されたもの(有効期間又は有効期
番号
限のあるものにあっては、提示する日におい
て有効なもの)に限ることとされました(所規
ロ その提示又は送信を受けた年月日及びそ
81の 6 ①二イ・②十、措規18の12③二イ・④九)
。
の提示を受けた本人確認書類の名称又は署
名用電子証明書等の送信を受けた旨
(注) 上記 1 ⑴⑫から⑮までの制度における上
ハ その他参考となるべき事項
記 1 ⑵①ロイⅱの書類には、改正前より上
(注) 上記の帳簿は、その告知等をする者から
記の要件が付されています。
本人確認書類の提示又は署名用電子証明書
等の送信を受けて作成されたものに限られ
⑶ 特定株式投資信託等の要件の改正
上場株式等の配当等について、その支払の取
ます。
扱者を通じて交付がされる場合には、その収益
⑵ 提示すべき書類等の範囲の改正
の分配に係る配当等の支払調書の提出及び支払
① 上記⑴の帳簿に個人番号等が記載されてい
通知書の交付は受託者に代わりその支払の取扱
る者(番号既告知者)が提示又は送信をしな
者が行うこととする特例が設けられています
ければならない本人確認書類又は署名用電子
(措令 4 の 6 の 2 ⑨)。上記 1 ⑷①の特定株式投
証明書等は次のとおりとされました(所規81
資信託又は②の特定不動産投資信託は、その受
の 6 ①三・⑥二、措規18の12①二・③三、国
益権が金融商品取引所に上場されていることが
外送金等調書規 4 ①三・⑥二)
。
その要件とされているため、これらの投資信託
イ 本人確認書類……次に掲げる書類でその
の収益の分配についても、この支払調書の提出
障害者等の氏名及び住所の記載のあるもの
等の特例の適用対象となります。
イ 個人番号カードで提示する日において
このため、特定株式投資信託及び特定不動産
投資信託の収益の分配が支払の取扱者を通じて
有効なもの
ロ 上記 1 ⑵②イからリまでに掲げる書類
行われる場合には、受託者において支払調書の
ロ 署名用電子証明書等……次に掲げる電磁
提出等のために個人番号又は法人番号の登録を
的記録又は情報が記録された電磁的記録
受ける必要性は低いことを考慮し、特定株式投
イ 署名用電子証明書
資信託及び特定不動産投資信託に係る上記 1 ⑷
ロ 上記イの署名用電子証明書により確認
①及び②の要件について、支払の取扱者を通じ
される電子署名が行われた情報で、その
て収益の分配の交付を受ける者については、受
署名用電子証明書に係る者の氏名及び住
託者に対するその収益の分配の支払を受ける者
所に係るもの
の個人番号及び法人番号の登録は不要とされま
した(所規81の 5 ①一ハ・チ・②二)。
(注)
上記 1 ⑴⑨から⑪までの制度では、上
記イの本人確認書類及びロの署名用電子
(注 1 )
上記の支払の取扱者とは、上場株式等の
証明書等に、その番号既告知者の生年月
配当等の支払を受ける者のその上場株式等
日の記載又は記録がされていることが必
の配当等の受領の媒介、取次ぎ又は代理(業
要となります。
務として又は業務に関連して国内において
② 上記 1 ⑴①から⑪までの制度における国内
するものに限ります。)をする者であって証
に住所を有しない個人に係る本人確認書類の
券会社、銀行等の口座管理機関(社債、株
うち、上記 1 ⑵①ロイⅱの「官公署から発行
式等の振替に関する法律に規定する口座管
─ 218 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
後に行う本人口座等に係る確認について適用し、
理機関をいいます。)であるものをいいます
同日前に支払の確定した利子等、同日前に行わ
(措法 9 の 3 の 2 ①)。
(注 2 )
利子所得等に係る支払調書の特例(措法
れた株式等の譲渡等、同日前に提出をした特定
3 の 2 )の対象となる特定株式投資信託の
口座開設届出書等若しくは告知書又は同日前に
要件についても、同様の改正が行われてい
行った本人口座等に係る確認については従前ど
ます(措令 2 七)。
おりとされます(改正法附則19、71、73①⑤、
129、改正所令附則16、改正国外送金等調書令
3 適用関係
附則②、改正所規附則12)。
⑴ 上記 2 ⑴及び⑵の改正は、平成28年 4 月 1 日
⑵ 上記 2 ⑶の改正は、平成28年 4 月 1 日以後に
以後に支払の確定する利子等、同日以後に行わ
支払の確定する配当等について適用し、同日前
れる株式等の譲渡等、同日以後に提出をする特
に支払の確定した配当等については従前どおり
定口座開設届出書等若しくは告知書又は同日以
とされます(改正措令附則 3 、改正所規附則11)。
七 無記名公社債の利子等の帰属に関する特則の廃止
の前に利札を切り離して譲渡した場合におけるそ
1 廃止前の制度の概要
の譲渡による所得と、公社債等の譲渡をせずに引
無記名の公社債、無記名の株式(無記名の公募
き続き所有していた場合の所得との課税関係を調
公社債等運用投資信託以外の公社債等運用投資信
整するものとの説明がなされてきましたが、平成
託の受益証券及び無記名の社債的受益権に係る受
25年度税制改正により、平成28年 1 月から公社債
益証券を含みます。
)又は無記名の貸付信託、投
等の譲渡についても20%申告分離により課税され
資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券
ることとなったこと等を踏まえ、本制度は廃止す
については、その元本の所有者以外の者が利子、
ることとされました。
剰余金の配当又は収益の分配(以下「利子等」と
いいます。)の支払を受ける場合には、その利子
3 適用関係
等については、その元本の所有者が支払を受ける
上記 2 の改正は、平成28年 4 月 1 日前に支払を
ものとみなして、所得税法の規定を適用すること
受ける利子等については、従前どおりとされます
とされていました(旧所法14①)
。
(改正法附則 5 )。
2 廃止の趣旨等
本制度は、無記名の公社債等の所有者が利払い
八 先物取引に係る雑所得等の課税の特例等の改正
げる先物取引をし、かつ、その先物取引の区
1 改正前の制度の概要
分に応じ、それぞれ次に定める差金等決済を
⑴ 先物取引に係る雑所得等の課税の特例
した場合には、その差金等決済に係るその先
物取引による事業所得、譲渡所得及び雑所得
① 先物取引に係る雑所得等の申告分離課税
居住者又は恒久的施設を有する非居住者
については、他の所得と区分して15%(他に
(以下「居住者等」といいます。
)が、次に掲
個人住民税 5 %)の税率で課税することとさ
─ 219 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
れていました(旧措法41の14①)
。
よる総収入金額から、その先物取引の差金等
イ 商品先物取引等(商品先物取引法第 2 条
決済に係る先物取引に要した委託手数料及び
第 3 項第 1 号から第 4 号までに掲げる取引
その他の経費の額の合計額を控除した金額)
で同項に規定する先物取引に該当するもの
とされています。
のうち一定のもの又は同条第14項第 1 号か
また、先物取引の差金等決済により損失が
ら第 5 号までに掲げる取引で同項に規定す
生じたときは、その損失は他の差金等決済に
る店頭商品デリバティブ取引に該当するも
係る先物取引による所得との間でのみ通算で
ののうち一定のものをいいます。
)……そ
きる(先物取引による事業所得の金額、譲渡
の商品先物取引等の決済(その商品先物取
所得の金額又は雑所得の金額の計算上生じた
引等に係る商品の受渡しが行われることと
損失があるときは、他の先物取引による事業
なるものを除きます。
)
所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金
ロ 金融商品先物取引等(金融商品取引法第
額から控除することができる)こととされて
2 条第21項第 1 号から第 3 号までに掲げる
おり、その差金等決済に係る先物取引による
取引で同項に規定する市場デリバティブ取
所得以外の他の所得から控除することはでき
引に該当するもののうち一定のもの又は同
ないこととされています(旧措法41の14①、
条第22項第 1 号から第 4 号までに掲げる取
措令26の23①)。
引で同項に規定する店頭デリバティブ取引
なお、このように計算した結果、先物取引
に該当するもののうち一定のものをいいま
に係る雑所得等の金額の計算上なお損失が生
す。
)……その金融商品先物取引等の決済
じる場合には、所得税法その他所得税に関す
(その金融商品先物取引等に係る金融商品
る法令の規定の適用については、その損失の
金額はなかったものとみなされます。
の受渡しが行われることとなるものを除き
ます。
)
ハ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第19号に掲
⑵ 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
げる有価証券(外国金融商品市場において
確定申告書を提出する居住者等が、その年の
行う取引であって同条第21項第 3 号に掲げ
前年以前 3 年内の各年において生じた先物取引
る取引と類似の取引に係る権利を表示する
の差金等決済に係る損失の金額(この先物取引
ものを除きます。
)の取得……平成22年 1
の差金等決済に係る損失の繰越控除により既に
月 1 日以後に行うその有価証券に表示され
前年以前に控除されたものを除きます。)を有
る権利の行使(その行使により金融商品の
する場合には、上記⑴②のその損失の金額はな
受渡しが行われることとなるものを除きま
かったものとする原則にかかわらず、その先物
す。)若しくは放棄又はその有価証券の譲
取引の差金等決済に係る損失の金額に相当する
渡(金融商品取引業者に対するもの等に限
金額は、その確定申告書に係る年分の先物取引
ります。
)
に係る雑所得等の金額を限度として、その先物
取引に係る雑所得等の金額の計算上控除できる
(注)
上記ハの有価証券には、カバードワラ
こととされています(措法41の15①②)。
ントが該当します。
② 先物取引に係る雑所得等の金額の計算
申告分離課税の対象とされる「先物取引に
2 改正の内容
係る雑所得等の金額」は、差金等決済に係る
平成23年度税制改正において、店頭商品デリバ
先物取引による事業所得の金額、譲渡所得の
ティブ取引や店頭デリバティブ取引に係る所得が
金額及び雑所得の金額の合計額(先物取引に
本特例の対象とされたところですが、これは、商
─ 220 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
品先物取引法においては取引所取引及び店頭取引
品デリバティブ取引については、商品先物取引
を通じた横断的な規制体系が整備され、金融商品
法に規定する商品先物取引業者を相手方として
取引法においては店頭デリバティブ取引について
行う取引に限ることとされました。
市場デリバティブ取引と同様の証拠金規制等が整
⑵ 上記 1 ⑴①ロの金融商品先物取引等のうち店
備されるなど、店頭取引についても投資家保護策
頭デリバティブ取引については、金融商品取引
が講じられてきていること等を踏まえたものです。
法に規定する金融商品取引業者(第一種金融商
ところが、近年、金融商品取引法に基づく金融
品取引業を行う者に限ります。)又は登録金融
商品取引業の登録をしていない海外に所在する業
機関を相手方として行う取引に限ることとされ
者が、インターネット取引によって日本の居住者
ました。
を相手方として店頭取引等を行うケースが見受け
られ、投資家とのトラブルが生じています。こう
3 適用関係
した海外の無登録業者との取引は適切な投資家保
上記 2 の改正は、個人が平成28年10月 1 日以後
護が確保できない取引であることから、無登録業
に行う先物取引について適用し、同日前に行う先
者との取引を本特例の対象外とする観点から次の
物取引については従前どおりとされます(改正法
改正が行われました(措法41の14①一・二)
。
附則79)。
⑴ 上記 1 ⑴①イの商品先物取引等のうち店頭商
九 特定の取締役等が受ける特定外国新株予約権の行使による株
式の取得に係る経済的利益の非課税等の廃止
業による研究開発事業等の促進に関する特別措置
1 廃止前の制度の概要
法の施行の日(平成24年11月 1 日)から平成28年
会社法に相当する外国の法令の規定に基づく株
3 月31日までの間に同法第 4 条第 1 項の規定によ
主総会の決議、取締役会の承認その他これらに類
る研究開発事業計画の認定又は同法第 6 条第 1 項
するもの(以下「決議等」といいます。
)により
の規定による統括事業計画の認定を受けた会社の
新株予約権(その決議等に基づき金銭の払込みを
親法人である外国法人で株式会社と同種類のもの
させないで発行されたものに限ります。
)を与え
とされていました。
られる者とされたその決議等(以下「付与決議
等」といいます。
)のあった特定外国株式会社が
2 廃止の内容
設立した認定研究開発事業者若しくは認定統括事
本特例は、利用状況を勘案し、適用期限(平成
業者の取締役等又はその取締役等の権利承継相続
28年 3 月31日)の到来をもって廃止されました
人が、その付与決議等に基づきその特定外国株式
会社と取締役等との間に締結された一定の契約に
より与えられた特定外国新株予約権をその契約に
(旧措法29の 3 )。
3 適用関係
従って行使することによりその特定外国新株予約
上記 2 の改正は、取締役等又は権利承継相続人
権に係る株式の取得をした場合には、その株式の
が平成28年 4 月 1 日前に行った特定外国新株予約
取得に係る経済的利益については、所得税を課さ
権の行使については従前どおりとされます(改正
ないこととされていました
(旧措法29の 3 ①本文)
。 法附則68)。
この「特定外国株式会社」とは、特定多国籍企
─ 221 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
十 特定中小会社が発行した株式に係る課税の特例の改正
じた損失の金額とみなすこととされています
1 改正前の制度の概要
(措法37の13の 2 ①)。
⑴ 特定中小会社が発行した株式の取得に要した
② 特定中小会社の特定株式を払込みにより取
金額の控除等
得をした居住者等が、その取得の日からその
平成15年 4 月 1 日以後に、特定中小会社の設
特定中小会社の株式の上場等の日の前日まで
立の際等に発行された特定株式を払込みにより
の間にその特定株式の譲渡をしたことにより
取得をした居住者又は恒久的施設を有する非居
生じた損失の金額のうち、その譲渡をした日
住者(以下「居住者等」といいます。
)が、そ
の属する年分の一般株式等に係る譲渡所得等
の特定株式を払込みにより取得をした場合にお
の金額の計算上控除しても控除しきれない金
ける一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例
額を有するときは、その控除しきれない金額
(措法37の10)及び上場株式等に係る譲渡所得
についてその年分の上場株式等に係る譲渡所
等の課税の特例(措法37の11)の適用について
得等の金額の計算上控除をし、なお控除しき
は、その年分の一般株式等に係る譲渡所得等の
れない金額について、その年の翌年以後 3 年
金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額の
内の各年分の一般株式等に係る譲渡所得等の
計算上、その年中にその払込みにより取得をし
金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額
から繰越控除ができることとされています
た特定株式(その年12月31日において有するも
(措法37の13の 2 ④⑦)。
のに限ります。)の取得に要した金額の合計額
を控除することとされています(旧措法37の13
⑶ 特定中小会社及び特定株式の意義
①)。
この特例の適用を受けた場合には、その適用
上記⑴及び⑵の特例の適用対象となる「特定
を受けた年の翌年以後のその適用を受けた特定
中小会社」とは次に掲げる株式会社をいい、
株式に係る同一銘柄株式の取得価額については、
「特定株式」とはその株式会社の区分に応じそ
その特例により控除した金額に相当する金額を
れぞれ次に定める株式をいうこととされていま
圧縮(減額)することとされています(措法37
した(旧措法37の13①)。
の13③、措令25の12⑦)
。
① 中小企業の新たな事業活動の促進に関する
法律に規定する特定新規中小企業者に該当す
⑵ 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失
の繰越控除等
る株式会社……その株式会社により発行され
る株式
① 特定中小会社の特定株式を払込みにより取
② 内国法人のうち、その設立の日以後10年を
得をした居住者等について、その特定中小会
経過していない中小企業者である株式会社
社の設立の日からその特定中小会社の株式の
……その株式会社により発行される株式で投
上場等の日の前日までの間に、その特定株式
資事業有限責任組合契約に関する法律に規定
が株式としての価値を失ったことによる損失
する投資事業有限責任組合(一定の要件を満
が生じた場合とされる清算結了等の事実が発
たすものに限ります。)に係る投資事業有限
生したときは、その損失の金額は、その年分
責任組合契約に従って取得をされるもの
の一般株式等に係る譲渡所得等の金額の計算
③ 内国法人のうち、金融商品取引法に規定す
上、その特定株式の譲渡をしたことにより生
る認可金融商品取引業協会の規則においてそ
─ 222 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
の事業の成長発展が見込まれるものとして指
定を受けている株式を発行する株式会社であ
2 改正の内容
って、その設立の日以後10年を経過していな
平成27年 8 月10日に施行された「地域再生法の
い中小企業者……その株式会社により発行さ
一部を改正する法律(平成27年法律第49号)」に
れる株式でその規則においてその株式を取り
おいては、中山間地域等における小さな拠点(コ
扱うことができることとされている金融商品
ンパクトビレッジ)形成に資する事業が新たに特
取引業者を通じて取得をされるもの
定地域再生事業として位置づけられ、平成28年度
④ 内国法人のうち、地域再生法の認定地域再
税制改正において当該事業を行う株式会社が「特
生計画に記載されている一定の特定地域再生
定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の
事業を行う株式会社(平成28年 3 月31日まで
課税の特例(措法41の19)」の対象となる株式会
に同法による認定地方公共団体の確認を受け
社に追加されたことに伴い、本特例の対象となる
たものに限ります。
)であって中小企業者に
特定中小会社の範囲から、上記 1 ⑶④の特定地域
該当するものとして一定の要件を満たすもの
再生事業を行う株式会社が除外されました(旧措
……その株式会社により発行される株式で、
法37の13①四)。
認定地方公共団体の確認を受けた日から同日
以後 3 年を経過する日までの間に発行される
3 適用関係
上記 2 の改正は、居住者等が平成28年 4 月 1 日
もの
⑤ 内国法人のうち、沖縄振興特別措置法第57
前に払込みにより取得をした地域再生法に規定す
条の 2 第 1 項に規定する指定会社で平成26年
る認定地域再生計画に記載されている一定の特定
4 月 1 日から平成29年 3 月31日までの間に同
地域再生事業を行う株式会社が発行した特定株式
項の規定による指定を受けたもの……その指
については、従前どおりとされます(改正法附則
定会社により発行される株式
72)。
十一 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の
特例の改正
なお、この特例の適用を受けた場合には、そ
1 改正前の制度の概要
の適用を受けた年の翌年以後のその適用を受け
⑴ 居住者又は恒久的施設を有する非居住者(以
た特定新規株式に係る同一銘柄株式の取得価額
下「居住者等」といいます。
)が、特定新規中
については、その特例により控除した金額に相
小会社の特定新規株式を払込み(その発行に際
当する金額を圧縮(減額)することとされてい
してするものに限ります。
)により取得をした
ます(措法41の19③、措令26の28の 3 ⑥)。
場合において、その居住者等がその年中にその
⑵ 上記⑴の特例の適用対象となる「特定新規中
払込みにより取得をした特定新規株式(その年
小会社」とは次に掲げる株式会社をいい、「特
12月31日において有するものに限ります。以下
定新規株式」とはその株式会社の区分に応じそ
「控除対象特定新規株式」といいます。
)の取得
れぞれ次に定める株式をいいます(旧措法41の
に要した金額(その金額の合計額は1,000万円
19①)。
が限度とされます。
)については、寄附金控除
① 中小企業の新たな事業活動の促進に関する
を適用することができることとされています
法律第 7 条に規定する特定新規中小企業者に
該当する株式会社(その設立年数が 1 年未満
(旧措法41の19①)
。
─ 223 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
税の特例の適用に関する規定に基づき前述の
であるなど一定のものに限ります。
)……そ
「十 特定中小会社が発行した株式に係る課税
の株式会社により発行される株式
② 総合特別区域法第55条第 1 項に規定する指
の特例(措法37の13、37の13の 2 )」の適用対
定会社で平成28年 3 月31日までに同項の規定
象とすることにより当該株式会社への個人投資
による指定を受けたもの……その指定会社に
家による資金供給を促進し税制面における支援
より発行される株式でその指定の日から同日
策を講じていたところですが、上記の地域再生
以後 3 年を経過する日までの間に発行される
法の改正を踏まえて、適用対象となる株式会社
もの
を、認定地域再生計画において定めた集落生活
③ 内国法人のうち、沖縄振興特別措置法第57
圏内で「小さな拠点」の形成に資する事業を行
条の 2 第 1 項に規定する指定会社で平成26年
う株式会社に改めた上で、本特例の対象とする
4 月 1 日から平成29年 3 月31日までの間に同
こととされました。
項の規定による指定を受けたもの……その指
具体的には、この特例の適用対象となる特定
定会社により発行される株式
新規中小会社の範囲に、内国法人のうち地域再
④ 国家戦略特別区域法第27条の 5 に規定する
生法の認定地域再生計画に記載されている一定
株式会社……その株式会社により発行される
の特定地域再生事業を行う株式会社で、地域に
株式で国家戦略特別区域法及び構造改革特別
おける雇用機会の創出に対する寄与の程度を考
区域法の一部を改正する法律(平成27年法律
慮して常時雇用する従業員の数その他一定の要
第56号)附則第 1 条第 1 号に掲げる規定の施
件を満たすことについて平成28年 4 月 1 日から
行の日(平成27年 8 月 3 日)から平成30年 3
平成30年 3 月31日までの間に認定地方公共団体
月31日までの間に発行されるもの
の確認を受けたものが追加され、特定新規株式
の範囲に、この株式会社により発行される株式
2 改正の内容
でその確認を受けた日から同日以後 3 年を経過
⑴ 特定新規中小会社及び特定新規株式の追加
する日までの間に発行されるものが追加されま
した(措法41の19①五)。
平成26年末に閣議決定された「まち・ひと・
しごと創生総合戦略」を踏まえ、人口急減・超
(注) 認定地方公共団体とは、作成した地域再生
高齢化という我が国が直面する大きな課題に対
計画につき内閣総理大臣の認定を受けた地方
し取り組み、各地域において自律的で持続的な
公共団体をいい、認定地域再生計画とは、そ
社会の創生を推進する観点から、各種生活サー
の認定を受けた地域再生計画をいいます(地
ビス機能の提供を維持するコンパクトビレッジ、
域再生法 7 ①、 8 ①)
。
いわゆる小さな拠点を形成することにより中山
この特例の対象となるためには、次の要件を
間地域等における持続可能な地域づくりを促進
満たす必要があります。
すること等を内容とした「地域再生法の一部を
① 対象事業の要件
改正する法律案」が第189回国会に提出され、
この特例の対象となる株式会社が行うべき
同法案は平成27年 6 月19日に可決・成立し、同
認定地域再生計画に記載されている一定の特
月26日に法律第49号として公布され、同年 8 月
定地域再生事業は、地域における特定政策課
10日から施行されています。
題(地域における少子高齢化の進展に対応し
これまで地域再生法の認定地域再生計画に記
た良好な居住環境の形成その他の地方公共団
載されている一定の特定地域再生事業を行う株
体が地域再生を図るために特に重点的に取り
式会社により発行される株式を払込みにより取
組むことが必要な政策課題をいいます。)の
得した個人に対しては、地域再生法第16条の課
解決に資する事業のうち、地域における住民
─ 224 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
の生活及び産業の振興の拠点(地域再生拠
属する事業年度の前事業年度の売上高に
点)の形成を図るために行う次に掲げる事業
占める営業利益の割合が 2 %を超えてい
(特定地域再生事業)で株式会社により行わ
ないこと(ただし、その会社がその申請
れるものをいいます(地域再生法 5 ④四ロ、
の日の属する事業年度に設立された場合
地域再生法施行規則 7 )
。
は、この要件は適用されません。)。
イ 集落生活圏における就業の機会の創出に
ニ 特定の株主グループの有する株式の総数
資する施設の整備又は運営に関する事業
が発行済株式の総数の 6 分の 5 を超える会
(特産物の販売、地域資源を活用したツア
社でないこと。
ホ 金融商品取引所に上場されている株式等
ー等)
ロ 集落生活圏の住民の共同の福祉又は利便
の発行者である会社でないこと。
のため必要な施設の整備又は運営に関する
ヘ 次に掲げる会社以外の会社であること。
事業(コミュニティバスの運行、図書館の
イ 発行済株式の総数の 2 分の 1 を超える
数の株式が同一の大規模法人及びその大
運営等)
(注)
上記の集落生活圏とは、自然的社会的
諸条件からみて一体的な日常生活圏を構
規模法人と特殊の関係のある法人の所有
に属している会社
成していると認められる集落及びその周
ロ 発行済株式の総数の 3 分の 2 以上が大
辺の農用地等を含む一定の地域(市街化
規模法人及びその大規模法人と特殊の関
区域の区域及び区域区分に関する都市計
係のある法人の所有に属している会社
画が定められていない都市計画区域内の
用途地域が定められている土地の区域を
ト その会社の営む事業が公序良俗に反して
おらず、かつ、風俗営業に該当しないこと。
チ 個人からの金銭の払込みを受けて新株を
除きます。)をいいます。
発行するときに、その新株の発行による資
② 株式会社の要件
この特例の対象となる株式会社は、次の要
金調達を円滑に実施するために必要となる
件に該当することについて、平成28年 4 月 1
投資に関する契約(以下「株式投資契約」
日から平成30年 3 月31日までの間に、認定地
といいます。
)を締結する株式会社である
方公共団体の確認を受けた株式会社です(措
こと。
法41の19①五、地域再生法16、地域再生法施
リ その認定地域再生計画について認定地方
行規則23)
。
公共団体から確認書の交付を受けた株式会
イ 常時雇用する従業員の数が 2 人以上であ
社で有効期限が満了していないものがない
場合において、その認定地方公共団体の確
ること。
ロ 認定地域再生計画に記載されている上記
認を受けようとする株式会社であること。
①の事業を専ら行う株式会社(上記①ロの
(注) 認定地方公共団体が確認書を交付する
事業を専ら行うものを除きます。
)である
場合には、確認の日から起算して 3 年を
こと。
超えない範囲内において有効期限を付す
ハ 中小企業基本法の中小企業者に該当する
会社のうち、次のいずれにも該当するもの
であること。
ることとされています(地域再生法施行
規則24③⑤)
。
③ 株式の要件
イ その設立の日以後10年を経過していな
いこと。
この特例の対象となる株式は、株式会社が
上記②の確認を受けた日から 3 年以内に発行
ロ 認定地方公共団体の確認の申請の日の
─ 225 ─
する株式です。また、その株式会社と払込み
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
をする居住者等との株式投資契約(上記②チ
ヘ 特定事業主であった者から受ける金銭そ
参照)の締結日においてその株式会社が上記
の他の資産によって生計を維持している者
②のイからチまでの要件及び次に掲げる要件
(上記ハからホまでに掲げる者を除きます。
)
を満たす必要があります(措法41の19①五、
ト 上記ニからヘまでに掲げる者と生計を一
にするこれらの者の親族
地域再生法施行規則26)
。
イ 設立の日以後10年を経過していないこと。
ロ 常時雇用する従業員の数が、認定地方公
共団体の確認の日における常時雇用する従
チ 上記②の株式会社との間で株式投資契約
(上記②チ参照)を締結していない者(上
記イからトまでに掲げる者を除きます。)
⑤ 特例の適用を受けるために確定申告書に添
業員の数以上の数を維持していること。
ハ 常時雇用する従業員の数が、その締結日
付すべき書類等
の属する事業年度の直前の事業年度末にお
上記②の要件を満たす特定新規中小会社に
ける常時雇用する従業員の数に比べて 2 人
より発行される株式について、この特例の適
(その株式会社が中小企業基本法の商業又
用を受けるためには、確定申告書に次の書類
はサービス業に属する事業を主たる事業と
を添付しなければならないこととされていま
して営む会社である場合には 1 人)以上増
す(措令26の28の 3 ⑨、措規19の11⑦)。
加していること(ただし、確認の申請の日
イ 特定新規中小会社から交付を受けた認定
の属する事業年度に払込みを受ける場合は、
地方公共団体のその特定新規株式に係る基
この要件は適用されません。
)
。
準日において次のイからハまでに掲げる事
実の確認をした旨を証する書類(次のニに
④ 適用対象者の要件
この特例の適用対象者は、特定新規株式を
掲げる事項の記載があるものに限ります。)
払込みにより取得をした居住者等です。ただ
イ その株式会社が認定地方公共団体の確
し、次に掲げる者は、この特例の適用対象者
認の日において上記②イからリまでの要
には含まれません(措法41の19①前段、措令
件を満たすものであり、かつ、株式投資
26の28の 3 ①、措規19の11①~④)
。
契約(上記②チ参照)の締結時において
イ 法人税法第 2 条第10号に規定する同族会
上記③イからハまでの要件を満たすもの
社に該当する特定新規中小会社の株主のう
であること。
ち、その特定新規株式の払込みの期日(以
ロ 居住者等が取得をした株式が、その株
下「基準日」といいます。
)において、そ
式会社が認定地方公共団体の確認を受け
の者を法人税法施行令第71条第 1 項の役員
た日から同日以後 3 年を経過する日まで
であるとした場合に同項第 5 号イに掲げる
の間に発行されたものであること。
ハ 特定新規株式の取得が、その居住者等
要件を満たすこととなるその株主
ロ その特定新規株式を発行した株式会社の
と株式会社との間で締結された株式投資
設立に際し、その株式会社に自らが営んで
契約(上記②チ参照)に基づき払込みに
いた事業の全部を承継させた個人(以下
よりされたものであること。
ニ その居住者等の氏名及び住所、払込み
「特定事業主であった者」といいます。
)
ハ 特定事業主であった者の親族
により取得がされた特定新規株式の数及
ニ 特定事業主であった者と婚姻の届出をし
びその特定新規株式と引き換えに払い込
ていないが事実上婚姻関係と同様の事情に
むべき額並びにその払い込んだ金額
ロ 居住者等がその特定新規株式に係る基準
ある者
日において上記④イからトまでに掲げる者
ホ 特定事業主であった者の使用人
─ 226 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
に該当しないことの確認をした旨を証する
閣府令(平成28年内閣府令第28号。以下「改
書類
正総合特区府令」といいます。
)により上記
ハ その特定新規中小会社(特定新規中小会
1 ⑵②の総合特別区域法第55条第 1 項に規定
社であった株式会社を含みます。
)から交
する指定会社が行う特定地域活性化事業の実
付を受けたその特定新規株式を払込みによ
施区域が限定され、地域活性化総合特別区域
り取得をした居住者等が有するその特定新
のうち市街化区域の区域又は区域区分に関す
規中小会社の株式のその取得の時(その取
る都市計画が定められていない都市計画区域
得の時が複数あるときは、その最初の取得
内の用途地域が定められている土地の区域内
の時)以後のその株式の異動に関する事項
のみとされました(総合特別区域法施行規則
33二)。
がその異動ごとに記載されたもの
② 適用期限の延長
ニ 株式投資契約(上記②チ参照)に係る契
総合特別区域法の指定会社に係る同法の指
約書の写し
定期限が、平成30年 3 月31日まで 2 年延長さ
ホ 控除対象特定新規株式数の計算に関する
れました(措法41の19①二)。
明細書
ヘ 適用控除対象特定新規株式に係る寄附金
控除の金額の計算に関する明細書
3 適用関係
⑴ 上記 2 ⑴の改正は、平成28年 4 月 1 日から平
⑵ 総合特別区域法の指定会社に係る要件の見直
成30年 3 月31日までの間に認定地方公共団体の
し等
確認を受けた株式会社が、その確認を受けた日
① 指定会社の要件の見直し
から 3 年以内に発行する特定新規株式について
新たにこの特例の対象となった上記⑴②の
適用されます(措法41の19①五)。
株式会社が行う事業の実施地域(上記⑴①
⑵ 上記 2 ⑵①の改正は、平成28年 4 月 1 日から
(注) 参照)との棲み分けを図る観点から、
施行されています(改正総合特区府令附則)。
総合特別区域法施行規則の一部を改正する内
十二 金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の不適用
の改正
(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律
1 改正前の制度の概要
により信託業務を営む金融機関のその記載又
⑴ 国内に営業所を有する銀行その他の金融機関
(以下「金融機関」といいます。
)が支払を受け
る公社債若しくは預貯金の利子、合同運用信託
若しくは特定公募公社債等運用投資信託の収益
は記録がされた公社債の利子で一定のものを
除きます。)
② 金融機関に対する預貯金の利子(一定のも
のを除きます。)
の分配又は社債的受益権の剰余金の配当で次に
③ 金融機関を委託者とし、かつ、その金融機
掲げるものについては、所得税の源泉徴収を行
関を受益者とする合同運用信託又は特定公募
わないこととされています(措法 8 ①)
。
公社債等運用投資信託の収益の分配でその委
① 社債、株式等の振替に関する法律に規定す
託した期間(貸付信託の収益の分配について
る振替口座簿(以下「振替口座簿」といいま
は、その受益証券が引き続き記名式であった、
す。)に記載又は記録がされた公社債の利子
又は振替口座簿に記載若しくは記録がされて
─ 227 ─
――租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正――
係る措置の実施時期について」(平成26年 8 月29
いた期間)内に生じたもの
④ 振替口座簿に記載又は記録がされた社債的
日行政改革推進本部決定)において、日本貿易保
受益権の剰余金の配当(金融機関の信託業務
険は、平成29年 4 月に特殊会社化することが決定
の兼営等に関する法律により信託業務を営む
されていました。これらの内容を含む「貿易保険
金融機関のその記載又は記録がされた社債的
法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法
受益権の剰余金の配当で一定のものを除きま
律案」が第189回国会に提出され、可決・成立し、
す。)
平成27年 7 月17日に法律第59号として公布されて
⑵ 上記⑴の国内に営業所を有する銀行その他の
金融機関は、銀行、信用金庫、労働金庫、信用
います。
日本貿易保険は、これまで所得税法別表第 1 に
協同組合、農業協同組合、農業協同組合連合会、 掲げる独立行政法人に該当し、その支払を受ける
漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工
利子等や配当等について所得税が課されないこと
業協同組合、水産加工業協同組合連合会及び株
とされていましたが(所法11①)、今般の貿易保
式会社商工組合中央金庫並びに生命保険会社、
険法の改正により特殊会社化され所得税法別表第
損害保険会社、信託会社(信託業法第 3 条又は
1 に掲げる法人には該当しないこととなります。
第53条第 1 項の免許を受けたものに限ります。
)
、 しかしながら、特殊会社化後も既に本特例の対象
農林中央金庫、信用金庫連合会、労働金庫連合
となっている損害保険会社と類似の業務を行うこ
会、共済水産業協同組合連合会、信用協同組合
と等に鑑み、上記 1 ⑵の金融機関の範囲に株式会
連合会及び株式会社日本政策投資銀行とされて
社日本貿易保険が加えられました(措令 3 の 3 ①)。
いました(旧措令 3 の 3 ①)
。
(注) この改正は平成27年度税制改正大綱において
決定されたものですが、上記法律案の成立時期
2 改正の内容
を考慮し、平成28年度税制改正の関係法令にお
「独立行政法人等に関する基本的な方針」
(平成
25年12月24日閣議決定)において、独立行政法人
日本貿易保険を政府全額出資の特殊会社に移行し
いて政令改正が行われています。
3 適用関係
つつ、貿易再保険特別会計を平成28年度末までに
上記 2 の改正は、平成29年 4 月 1 日以後に支払
廃止し、同特別会計を株式会社日本貿易保険に移
を受けるべき利子等について適用されます(改正
管するとともに、
「各独立行政法人の統廃合等に
措令附則 6 )。
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