グローバル・マクロ・ トピックス

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
7/29
投資情報部
シニアエコノミスト
宮川 憲央
物価の基調は減速が鮮明に
~日本・消費者物価指数(2016年6月全国・7月東京都区部)
 6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、以下、コアCPI)は前年同月比▲0.5%、「食
料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合(以下、米国型コアCPI)」は同+0.4%となった。米
国型コアCPI上昇率は低下傾向にあり、7月東京都区部の結果からはこうした傾向が続いて
いることがうかがえる。
 原油価格の下落の影響が一巡していくため、コアCPI上昇率は上向いていくとみられる。その
一方、円高の進行、個人消費や賃金の伸び悩み等から、米国型コアCPI上昇率はさらに低
下していく可能性が高い。
 この結果、当面、消費者物価上昇率で2%という物価安定目標を達成することは難しい状況に
あると考えている。このため、日銀は本日(7/29)の会合で追加の金融緩和を決定するとみて
おり、こうした金融緩和政策は長期化していく可能性が高い。
米国型コアCPI上昇
率はさらに低下
6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、以下、コアCPI)は前年同月比
▲0.5%(5月:同▲0.4%)、「食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合(以下、
米国型コアCPI)」は同+0.4%(5月:同+0.6%)となり、ともに5月から上昇率が低下し
た。なお、コアCPI、米国型コアCPIともに市場予想を下回った(ブルームバーグの集
計では、コアCPIは同▲0.4%、米国型コアCPIは同+0.5%が見込まれていた)。また、
季節調整値でみると、コアCPIが前月比+0.1%、米国型コアCPIは同±0.0%となった。
コアCPIの前年同月比の動きについて、5月からの変化の内訳をみると、エネル
ギー(ガソリンや電気代等)や外国パック旅行等がコアCPI上昇率を押し上げる一
方、耐久消費財、宿泊料、被服および履物等がコアCPI上昇率を押し下げた。生鮮
食品を除く食料や耐久消費財の上昇率が低下傾向にあり、円安による物価の押し
上げ効果が一巡してきている可能性が示唆される。一方、原油価格の下落に歯止
めが掛かってきたため、エネルギーによる下押し圧力は和らいできている。
なお、現時点では未発表であるが、今回の結果をもとにすると、日銀が物価の基
調をみるうえで重視している「生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数」の上昇
率も6月はさらに低下している可能性が高い。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
消費者物価指数の推移(全国、前年同月比)
( 月次:2011/1~2016/6)
(%)
4.0
生鮮食品を除く総合
3.0
食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合
2.0
1.0
0.0
▲ 1.0
消費税率引き上げの影響を調整した試算値
▲ 2.0
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:総務省「消費者物価指数」のデータよりみずほ証券作成
東京都区部でも米国
型コアCPIの減速傾
向は継続
7月の東京都区部コアCPIは前年同月比▲0.4%(6月:同▲0.5%)、米国型コアCPI
は同+0.3%(6月:同+0.4%)となり、米国型コアCPIの上昇率が低下する一方で、コア
CPIの下落幅は縮小した。なお、ともに市場予想(ブルームバーグの集計)と一致す
る結果となった。また、季節調整値ではコアCPI、米国型コアCPIともに前月比▲
0.1%となった。
コアCPIの前年同月比の動きについて、6月からの変化の内訳をみると、エネル
ギー(電気代、都市ガス代)、外国パック旅行、被服および履物等はコアCPIを押し
上げる方向に働いた一方、生鮮食品を除く食料、耐久消費財、宿泊料、通信、諸雑
費等がコアCPIを押し下げる方向に働いた。エネルギーによる下押し圧力が和らい
だことでコアCPIの下落幅は縮小する一方、米国型コアCPI上昇率は減速傾向が鮮
明となっている。
消費者物価指数の推移(東京都区部、前年同月比)
( 月次:2011/1~2016/7)
(%)
3.5
生鮮食品を除く総合
3.0
2.5
食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
▲ 0.5
▲ 1.0
▲ 1.5
消費税率引き上げの影響を調整した試算値
▲ 2.0
11
12
13
14
15
16
(年)
出所:総務省「消費者物価指数」のデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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物価目標の 達成は
依然として難しい状
況
今後の動向について考えると、原油価格下落の影響が一巡していくことで、コア
CPI上昇率は徐々に上向いていくとみられる。
ただし、①これまでの円安による原材料コストの上昇を転嫁することによる価格上
昇の動きは一巡してきており、今後は円高が価格を押し下げる方向に働くとみられ
る、②ベースアップの動きが盛り上がりを欠いたことから、賃金の伸び悩みは続くと
みられるため、労働コストの上昇を価格に転嫁する動きが限定的なものにとどまると
ともに、家計の物価上昇に対する警戒感は根強く残るとみられる、③個人消費の伸
びが力強さを欠き、厳しい企業間競争が続くなかで、原材料コストが下落してきてい
るため、企業の予想物価上昇率も低下してきている、等から、生鮮食品を除く食料
や米国型コアCPIの上昇率は低下していく可能性が高い。
このため、2017年度中というやや長めの時間軸においても、消費者物価上昇率で
2%という物価安定目標を達成することは難しい状況にあると引き続き考えている。と
くに、これまでのような原油価格の下落ではなく、物価の基調を示す「生鮮食品およ
びエネルギーを除く総合指数」の上昇率が低下することで、目標が達成できない状
況になるとみている。こうした状況を放置した場合には、日銀の目標達成に対するコ
ミットメントが疑問視されるとともに、企業や家計の予想物価上昇率が低下し、ますま
す目標達成が難しくなる可能性がある。
こうした点から、日銀は7/28~29に開催される金融政策決定会合において、マイ
ナス金利の引き下げや国債・ETFの買い入れ増額を含む追加緩和を決定すると考
えている。また、こうした金融緩和は少なくとも、黒田総裁の任期である2018年4月ま
では続く可能性が高いと考えている。
為替と消費者物価指数の推移(前年同月比)
(月次:2010/1~2016/7)
(%)
1.5
(%)
30
1.0
20
0.5
10
0.0
0
▲ 0.5
▲ 10
▲ 1.0
▲ 20
▲ 1.5
消費者物価指数(左目盛)
ドル円レート(右目盛)
▲ 2.0
10
11
12
13
14
15
16
17
▲ 30
▲ 40
(年)
(注) 消費者物価指数は食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合、消費税の影響を調整、2016/6まで
ドル円レートは9ヵ月先行して表示、直近は2016/7/28時点
出所:総務省、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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GDPギャップと消費者物価指数(前年同月比)の推移
( 月次:2000/1~2016/6)
(%)
1.0
消費者物価指数(左目盛)
(%)
4
GDPギャップ(右目盛)
0.5
2
0.0
0
▲ 0.5
▲2
▲ 1.0
▲4
▲ 1.5
▲6
▲ 2.0
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(注) GDPギャップは内閣府による推計値、四半期の中間月(1-3月期なら2月)の時点にプロット
直近は2016年1-3月期、図中では9ヵ月先行して表示
消費者物価指数は食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合、消費税の影響を調整
出所:内閣府、総務省のデータよりみずほ証券成
▲8
17
(年)
消費者物価指数と所定内給与の推移(前年同月比)
( 月次:2000/1~2016/6)
(%)
2.0
消費者物価指数(左目盛)
1.5
(%)
4
所定内給与(右目盛)
3
1.0
2
0.5
1
0.0
0
▲ 0.5
▲1
▲ 1.0
▲2
▲ 1.5
▲3
▲4
(年)
▲ 2.0
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(注) 消費者物価指数は食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合、消費税の影響を調整
所定内給与は2016/5まで
出所:総務省、厚生労働省のデータよりみずほ証券作成
消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、前年同月比)の推移
( 月次:1985/1~2016/6)
(%)
4
2016/4の展望レポートにおける
16年度見通し(0.5%)
物価安定の目標(2%)
3
2
1
0
▲1
▲2
▲3
85
87
89
91
93
95
97
99
01
03
(注)消費税率引き上げの影響を調整
出所:総務省「消費者物価指数」、日本銀行の資料よりみずほ証券作成
05
07
09
11
13
15
(年)
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金融商品取引法に係る重要事項
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商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
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