銀行問題はBSからPLに、超低金利で本当に持続的

リサーチ TODAY
2016 年 7 月 28 日
銀行問題はBSからPLに、超低金利で本当に持続的か
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
先週、TODAYではイタリアの銀行の不良債権問題の深刻さを話題にした。日本の銀行の不良債権問題
は大幅に改善し、今や不良債権比率は世界のなかで最も健全な状況にある。一般的な銀行の危機では、
資金繰りの流動性が問題になるが、この問題に至る信認のき損はバランスシート問題による面が大きい。す
なわち、バランスシートに実態がないと市場がみなせば、資金調達が困難となり、銀行は流動性問題に陥
るという悪循環が生じる。つまり銀行危機とは、バランスシート問題に起因した資金繰りによって生じるケー
スが多い。日本の1990年代から2000年代にかけての状況はその典型例だ。また、2000年代後半の欧米金
融機関の問題も、証券化等によるバランスシート問題から生じた資金繰り問題だった。
■図表 バランスシートの健全性(メガバンク)
14
(%)
12
バーゼルⅢ
10
8
6
不良債権比率(傘下銀行単体)
4
Tier1比率(グループ連結)
2
0
02/3 03/3 04/3 05/3 06/3 07/3 08/3 09/3 10/3 11/3 12/3 13/3 14/3 15/3 16/3 (年/月)
(注)Tier1 比率は 12/3 末まではバーゼルⅡベース、13/3 末以降はバーゼルⅢベース。
(資料)各社決算資料よりみずほ総合研究所作成
上記の図表にあるように、邦銀の不良債権比率は極限に近いレベルに低下し、加えて最近では有価証
券等の含み益が積み上がる状況にある。さらに、図表のように自己資本が拡充されており、邦銀は二重・三
重にも健全な状況だ。一方、今日の問題はBS(バランスシート)の次元からPL(収支)に移っているのでは
ないか。銀行の収支、たとえば総資金利ざやは基本的に長短金利差に連動する。今日の金利水没環境に
おいて長短金利差は極限まで圧縮され、しかも預金金利は事実上マイナスにならないなか、金融機関収
支の圧縮は継続せざるをえない。次ページの図表のように、預貸金利回り差は各業態ごとに、着実に縮小
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を続けている。
■図表 預貸金利回り差の推移(業態別)
(%)
3.0
都市銀行
地方銀行
2.5
第二地方銀行
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
90/3 92/3 94/3 96/3 98/3 00/3 02/3 04/3 06/3 08/3 10/3 12/3 14/3 16/3 (年/月)
(資料)全国銀行協会公表資料よりみずほ総合研究所作成
しかも、下記の図表に描かれるように、問題は日銀のマイナス金利導入で、貸出金利の低下に拍車が掛
かっていることである。今週の日銀の政策決定会合について金融機関が注目するのが、マイナス金利の深
掘りや金融機関向け貸出金利へのマイナス金利の適用であるのは、これ以上の貸出金利低下が一層の収
支圧縮に繋がるからだ。 いずれにしても長期金利の低下が続くなか、銀行経営はPLに負担が掛かる体力
消耗戦に突入したといえる。この状況は本当に持続的な環境であるのかが改めて問い直されている。こうし
た問題に全ての金融機関が直面することになる。資金繰りに懸念はなく、現段階で問題はないが、下期から
さらに来年度を展望し、着実に低金利持続の影響が金融機関に生じることを我々は直視せざるをえない。
■図表 貸出約定平均金利(新規)
2.0
(%)
都市銀行
地方銀行
第二地銀
1.5
1.0
0.5
0.0
2014
2015
2016
(年)
(注)貸出は、各月での書換継続を含む新規実行分(短期+長期)が対象。但し、当座貸越は除く。
(資料)日本銀行「貸出約定平均金利」よりみずほ総合研究所作成
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