みずほ米国経済情報 - みずほ総合研究所

みずほ米国経済情報
2016年7月号
◆ トピック
米雇用統計の改善と、強まる公定歩合引き上げ要請
6月雇用統計や公定歩合のレビューに関する議事録は利上
げが近いことを示唆する。しかしFOMC内では先行きのリス
ク判断が分かれたままで、利上げの大きな障害である。
◆ 景気判断
拡大基調が継続。内外の下振れリスクは残存
英国民投票の結果が米経済に与える影響や労働市場の先
行きに対する懸念は一旦後退している。今後も米経済の拡
大基調が続く見込みだが、下振れリスクは残存している。
1.トピック:米雇用統計の改善と、強まる公定歩合の引き上げ要請
6 月雇用統計は、
6 月FOMC
7 月は 2 つの注目すべき議事録が公表された。1 つは、6 月 14・15 日に開催
議事録に示された 3 つの
された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録である(7 月 6 日)
。この議事録
評価項目をクリア
には、6 月雇用統計の何に注目すべきか、3 つの評価項目が示されている。そ
して 7 月 8 日の 6 月雇用統計はいずれの項目もクリアした(図表 1)
。
3 つの評価項目とは、6 月 FOMC において労働需要の弱さを警戒した参加者
らが挙げたものであり、雇用 DI、経済的理由によるパート労働者数、及び労
働参加率を指す。
5 月雇用統計では、
非農業部門雇用者数がわずか 3.8 万人
(速
報値)の増加に留まったことに加えて、次の点が問題視された。①雇用 DI が
50 を割り込み、
雇用減速が一部業種に留まらず、
幅広い業種にわたったこと。
②(不景気などの)経済的理由によるパート労働者が増え、フルタイムの求
人減少を示唆したこと。そして、③労働参加率が低下し、求職者(失業者)
の雇用見通しの悪化を示唆したことである。
6 月雇用統計では、非農業部門雇用者数が大きく持ち直しただけでなく、上
記 3 つの評価項目のすべてで、5 月とは反対の動きがみられた。雇用 DI は 50
を超え、幅広い業種で雇用が拡大し、経済的理由によるパート労働者が減り、
労働参加率は上昇した。労働需要の弱さを警戒していた一部の 6 月 FOMC 参加
者にとって、6 月雇用統計は胸をなで下ろす内容だったと言える。
地区連銀の公定歩合引
き上げ要請も強まる
もう 1 つの議事録は、7 月 12 日に公表された公定歩合のレビューに関する
連邦準備制度理事会
(FRB)
の議事録である。
現在の公定歩合
(primary credit)
は 1.00%(FF 金利誘導目標の上限+0.5%)であり、原則 2 週間に 1 度、レ
ビューが行われている。
公定歩合は経営が健全な銀行に対する流動性支援ツールであり、通常の金
融政策とは異なるが、地区連銀による公定歩合の変更要請は経済動向を踏ま
えて行われている点で変わらない(なお公定歩合の決定権は FRB にある)
。そ
のため、12 地区連銀のうちどれほどが変更要請をしているかをみることによ
って、次の FOMC の政策決定を占う材料になり得る。
ただ公定歩合の議事録は公表されるまでのラグが長いため、12 地区連銀に
よる公定歩合の変更要請が急速に増える状況では、FOMC の予想には役立たな
い。実際、前回利上げ時の 2004 年を振り返ると、公定歩合の引き上げ要請が
始まったのは、同年 5 月 17 日のレビューだが、このレビューを含む議事録が
公表されたのは、
すでに FOMC が利上げを開始した後の同年 8 月 19 日だった。
一方、現局面では、公定歩合の引き上げ要請がすでに始まっている。7 月
12 日に公表された最新の議事録には、6 月 FOMC 直前に行われた 6 月 13 日の
レビューが含まれており、12 地区連銀のうち半数が公定歩合の引き上げを求
めていたことが明らかになった
(図表 2)
。
公定歩合の引き上げを求める声は、
前回の引き上げ(昨年 12 月 FOMC 時)以降、強まる一方であることが分かる。
FOMC では、下振れリス
2 つの議事録と、足元までの経済指標や国際金融市場の持ち直しを踏まえる
ク派が均衡派と拮抗す
と、利上げの足音が近づいているように思われる。しかし FOMC 内では、景気・
る状況に変化なし
物価の先行きに対するリスク判断が大きく分かれたままである。上述した
1
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
FOMC 議事録によれば、実質 GDP 成長率とコア・インフレ率の見通しに関し、
前回 3 月会合時よりも「上振れリスクがあると」と考える参加者が増えたも
のの、下振れ派と均衡派が拮抗する状況は変わらない(図表 3)
。FOMC が利上
げに踏み切るには、下振れ派の割合が大きく減少する必要がある(昨年 12 月
の利上げ時には 2 割以下)
。混乱とアンチ・ビジネスの様相を強める米大統領
選、Brexit 交渉、イタリアの不良債権問題、欧米で相次ぐテロなど、企業や
消費者を委縮させかねない不安要素が燻ることを踏まえると、下振れ派が均
衡派へと鞍替えする蓋然性は低いように思えてくる。
図表 1 米雇用統計の評価
単位
4月
5月
6月
14.4
18.8
1.1
11.4
28.7
14.7
非農業部門雇用者数
前月差、万人
前月差の3カ月平均、万人
賃金上昇率
前年比、%
2.5
2.5
2.6
失業率
%
5.0
4.7
4.9
54.0
48.1
62.4
▲16.1
46.8
▲58.7
62.8
62.6
62.7
6月FOMC議事録に示された雇用慎重派のチェックリスト
%
① 雇 用 DI
② 経 済 的 理 由 に よ る パ ー ト 労 働 者 数 前月差、万人
③労働参加率
%
(資料)FRB より、みずほ総合研究所作成
図表 2 公定歩合にみる利上げ圧力
図表 3 FOMC 参加者のリスク判断状況
(%)
(%) 実質GDP成長率
100
1.25
コア・インフレ率
上振れ
90
80
前回の公定歩合引き上げ
70
均衡
60
1.00
50
40
30
20
0.75
2013/1/1
下振れ
10
2014/1/1
2015/1/1
2016/1/1
0
3月
(年/月/日)
(注)12 地区連銀の公定歩合変更要請を踏まえたもの。
各時点の公定歩合(現在 1.00%)よりも上方にあるほど、多く
の地区連銀が引き上げ要請を行っており、逆に下方にあるほど
多くの地区連銀が引き下げ要請を行っていることを表す。
(資料)FRB より、みずほ総合研究所作成
6月
3月
6月
(資料)FRB より、みずほ総合研究所作成
2
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
2.概況:拡大基調が継続。内外の下振れリスクは残存
米国経済は年初の踊り場を経て拡大基調が続いている。
英国民投票の結果が米
1 カ月前を振り返ると、英国民投票の結果が米経済に与える影響や、弱い 5
国経済に与える影響は
月雇用統計を受けて労働市場の先行きに対する懸念が強まっていたが、こう
限定的。6 月雇用統計は
した懸念は一旦後退している。
5 月の低迷から一転し
て良好な結果
英国のEU離脱による米国経済への影響は今のところ限定的とみられる。6
月のISMの調査によれば、約 4 割もの企業が Brexit 決定により悪影響を受
けると予想していたことが分かった。その理由として最も回答が多かったの
が為替の変動である。しかし、英国民投票後のドルの実効レートをみると、
小幅なドル高に留まっている。
なお、米国と英国の関係は、貿易面からみればそれほど強くない。英国向
け輸出が米輸出全体に占める割合は 4%に過ぎない。注意を要するのは、
Brexit 決定による悪影響を受けやすいEU向け(英国を含む)で、全体の 2
割弱を占める。また、直接投資残高をみると、英国は 12%、英国を含むEU
は全体の半分程度を占め、米国にとっての主要な投資先であると分かる。
Brexit による米産業への影響は、
英国・EU進出企業の売上減少を通じて、配
当収入など所得収支への下押しとして現れる可能性もある。
4~6 月期の米国経済は個人消費の堅調を主因に、1~3 月期から加速すると
見込まれる。7~9 月期以降についても、所得の増加や良好な金融環境を支え
に、個人消費の堅調さが維持されるとみられることから、緩やかな拡大基調
が続くと見込まれる。しかし、内外の下振れリスクは残っている。米国内で
は、設備投資を巡る不確実性がある。6 月 FOMC 議事録では、設備投資の弱さ
の背景として、①企業収益の低迷、②景気の先行き懸念、③規制や財政政策
の不透明性、④金融危機以降における新規プロジェクトへの意欲の低下が挙
げられた。設備投資の回復が遅れるリスクに注意が必要だ。
製造業の生産活動は低
調さから抜け出せず
生産活動をみると、エネルギー部門の悪化が一服する一方で、非エネルギ
ー部門は低調さから抜け出せずにいる。
エネルギー部門の 6 月の生産指数は 2 カ月ぶりに上昇した。石油・ガス生
産は引き続き減少しているが、石油・ガス掘削活動が 2015 年 8 月以来のプラ
スに転じた。また、エネルギーを除く鉱工業生産指数についても、2 カ月ぶり
の上昇となった(図表 5)
。しかし、前月大幅減産となっていた自動車の反発
による影響が大きく、自動車を除けば緩やかな低下傾向が続いている。
製造業、非製造業とも
に業況が改善
一方、企業業況は改善した。6 月の製造業ISM指数(53.2)は新規受注や
生産等主要指数が改善したことにより、前月から上昇した(図表 6)
。非製造
業ISM指数(56.5)も、大幅に低下した 5 月の水準から反発しており、非
製造業の業況改善ペースが再加速したことを示す結果となった。非製造業に
ついて業種別にみると、18 業種中 15 業種で業況が改善を報告した(5 月:14
業種)
。業況悪化は教育、専門、その他サービスの 3 業種にとどまっており、
幅広い業種で業況改善がみられた。
3
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
図表 4
(前期比年率、%)
8
実質GDP成長率
政府支出
純輸出
在庫投資
設備投資
住宅投資
個人消費
図表 5
4.6
4.3
4
2.1
2.0
1.1
1.4
2
79
78
77
76
75
74
73
72
107
106
105
104
103
102
101
100
3.9
0.6
0
▲2
15/6
▲0.9
▲4
1
(%)
(2007=100)
実質GDP
6
2
3
4
1
2
2014
3
4
2015
鉱工業生産(除くエネルギー)
設備稼働率(総合、右目盛)
2016
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
図表 6
58
(資料)連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
製造業ISM指数
生産
新規受注
入荷遅延
図表 7
雇用
在庫
16/6
(年/月)
15/12
1
(年/四半期)
60
鉱工業生産と稼働率
総合指数
非製造業ISM指数
64
新規受注
事業活動
62
入荷遅延
総合指数
雇用
60
56
58
54
56
52
54
50
52
48
50
46
48
15/6
15/9
15/12
16/3
16/6
15/6
15/9
15/12
16/3
(年/月)
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
図表 8
景気の全体感を示す主要統計
Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016
成長率
実質GDP成長率
16/6
(年/月)
2016/2
2016/3
2016/4
2016/5
2016/6
2016/7
前期比年率、%
2.0
1.4
1.1
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比年率、%
2.9
1.7
1.2
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
純輸出
寄与度、%Pt
▲ 0.3
▲ 0.1
0.1
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
在庫投資
寄与度、%Pt
▲ 0.7
▲ 0.2
▲ 0.2
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比、%
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
▲ 0.6
0.8
0.2
0.0
n.a.
n.a.
DI
51.0
48.6
49.8
51.8
49.5
51.8
50.8
51.3
53.2
n.a.
国内最終需要
月次実質GDP成長率
企業業況
製造業ISM指数
生産活動
鉱工業生産指数
非製造業ISM指数
DI
58.2
56.9
53.8
55.0
53.4
54.5
55.7
52.9
56.5
n.a.
前期比、%
0.4
▲ 0.9
▲ 0.4
▲ 0.3
▲ 0.2
▲ 1.0
0.5
▲ 0.3
0.6
n.a.
非エネルギー部門
前期比、%
0.4
▲ 0.1
0.0
▲ 0.3
0.0
▲ 0.5
0.1
▲ 0.3
0.3
n.a.
鉱工業 設備稼働率
%
76.6
75.8
75.4
75.2
75.6
74.8
75.2
74.9
75.4
n.a.
%
75.7
75.4
75.3
75.0
75.4
75.1
75.1
74.8
75.1
n.a.
製造業
(資料)米国商務省、マクロエコノミック・アドバイザーズ、ISM、連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
4
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
3.家計部門:労働市場は底堅く、個人消費は堅調。住宅需要は増加
労働市場は底堅く、個人消費は堅調に拡大している。住宅市場では、低金
利が住宅需要の下支えとなっている。
労働市場は底堅さを維
持
6 月の非農業部門雇用者数は+28.7 万人と、前月(同+1.1 万人)から大き
く持ち直した(図表 9)
。6 月増加の一部は大手通信会社(Verizon)によるス
トライキ終了の影響だが、それを除いても幅広い業種の雇用が回復した。四
半期ベースでみれば、4~6 月の月間平均は+14.7 万人と、1~3 月(+19.6
万人)や 2015 年(+22.9 万人)に比べて鈍化しているが、失業率の安定を維
持できる増加ペース(10 万人程度)を保っている。
失業率は低下
6 月の失業率は 4.9%と、前月から 0.2%ポイント上昇した。もっとも、労
働参加率の上昇が主因となっており、内容は悪くない。労働参加率は、2015
年 9 月を底に上向きの動きが続いた後、4、5 月は低下したが、6 月は 3 カ月
ぶりに上昇した。
賃金上昇率は緩やかな
加速が継続
6 月の時間当たり賃金上昇率(農業を除く民間部門)は、前月比+0.1%と
なった(図表 10)
。前年比では+2.6%と、2014 年 12 月(同+1.7%)を底に
緩やかな加速傾向が続いている。
小売売上高は堅調なペ
ースで拡大
小売売上高は堅調なペースで拡大している(図表 11)
。6 月のコア小売売上
高(自動車・ガソリン・建材・外食を除く)は前月比+0.5%と、4・5 月に続
いて堅調な伸びとなった。無店舗販売が全体を押し上げたほか、食品、総合
小売、ヘルスケアなど幅広い業態の売上が増加した。一方、6 月の自動車販売
台数は年率 1,666 万台と、前月から減少した。年間の自動車販売台数は 2015
年に過去最高を記録していた(約 1,740 万台)
。足元の販売台数は高水準が継
続しているものの、1,700 万台前後での増減となっている。
消費者マインドはまち
まち
7 月の消費者マインドは、カンファレンスボードが概ね横ばいとなる一方、
ミシガン大(速報値)は低下した。ミシガン大の担当者によれば、英国民投
票後に、高所得者層を中心に先行きへの懸念が高まった模様である。しかし、
国民投票後の株価をみると、一時的に下落したたものの、上昇基調に転じて
いる。ミシガン大は、7 月後半から 8 月前半にかけて消費者マインドは持ち直
すと予想している。
住宅着工は横ばい圏の
動き
住宅着工件数は年率 110~120 万件のレンジで、増減を繰り返している。6
月の住宅着工件数は前月比+4.8%の年率 118.9 万件(図表 12)
、先行指標で
ある住宅着工許可件数は前月比+1.5%の年率 115.3 万件となった。許可件数
は 2015 年末以降の減少傾向から回復が持続している。
住宅ローン金利の低下
6 月の新築住宅販売件数は前月比+3.5%の年率 59.2 万件と、2008 年 2 月
が需要の促進に貢献も、
以来の水準に増加した。一方、住宅販売の大宗を占める中古市場では、6 月の
先行きは不透明
販売件数が前月比+1.1%(年率 557 万件)と 4 カ月連続で増加した。全米不
動産協会(NAR)によれば、雇用の拡大と住宅ローン金利の低下が需要の
下支えにつながっているようだ。しかし、先行きに対する見方は慎重で、住
宅在庫の不足と住宅価格の上昇を踏まえれば、今後もこうした販売増加ペー
スが続くか不透明であると指摘した。
5
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
図表 9
(前月差、万人)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
15/6
雇用統計
15/12
非農業部門雇用者数
図表 10
(%)
7.0
(前月比、%)
6.5
0.4
6.0
0.2
5.5
0.0
5.0
▲ 0.2
4.5
16/6
(年/月)
▲ 0.4
0.6
15/6
15/12
16/6
(年/月)
後方3か月移動平均
失業率(右目盛)
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
図表 11
時間当たり賃金
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
小売売上高
図表 12
(前月比、%)
2.0
住宅着工件数と住宅市場指数
(年率、万件)
130
70
1.5
60
1.0
50
115
0.5
40
0.0
30
▲ 0.5
100
▲ 1.0
15/6
15/12
コア
20
15/7
16/6
(年/月)
(資料)米国商務省、NAHB より、みずほ総合研究所作成
図表 13
家計部門の主要統計
Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016
非農業部門雇用者数
2016/3
2016/4
2016/5
2016/6
2016/7
223
240
220
150
233
186
144
11
287
%
5.2
5.0
4.9
4.9
4.9
5.0
5.0
4.7
4.9
n.a.
時間
34.6
34.5
34.5
34.4
34.4
34.4
34.4
34.4
34.4
n.a.
時間当たり賃金
前期比、%
0.6
0.6
0.6
0.7
0.0
0.2
0.3
0.2
0.1
n.a.
小売売上高
前期比、%
0.9
0.3
▲ 0.1
1.4
0.3
▲ 0.3
1.2
0.2
0.6
n.a.
前期比、%
1.0
0.3
0.7
1.8
0.4
0.2
1.1
0.5
0.5
n.a.
台数、百万台
17.8
17.9
17.2
17.2
17.5
16.6
17.4
17.4
16.7
n.a.
週当たり労働時間
コア小売
新車自動車販売台数
ミシガン大消費者信頼感
カンファレンスボード消費者信頼感
住宅市場
2016/2
前期差、千人
失業率
個人消費
16/7
(年/月)
住宅着工件数
住宅市場指数(右目盛)
自動車・建材・ガソリン・外食
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
雇用環境
16/1
n.a.
1966年Q1=100
90.7
91.3
91.6
92.4
91.7
91.0
89.0
94.7
93.5
89.5
1985年=100
98.3
96.0
96.0
94.8
94.0
96.1
94.7
92.4
97.4
97.3
住宅着工件数
年率、千戸
1,156
1,135
1,151
1,160
1,213
1,113
1,155
1,135
1,189
n.a.
住宅着工許可件数
年率、千戸
1,146
1,221
1,142
1,140
1,162
1,077
1,130
1,136
1,153
n.a.
新築住宅販売件数
年率、千戸
487
508
529
n.a.
525
537
572
572
592
n.a.
中古住宅販売件数
年率、千戸
5,403
5,200
5,300
5,503
5,070
5,360
5,430
5,510
5,570
n.a.
DI
61
62
59
59
58
58
58
58
60
59
NAHB住宅市場指数
(資料)米国労働省、米国商務省、Autodata、ミシガン大、カンファレンスボード、NAR、NAHB よりみずほ総合研究所作成
6
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
4.企業・対外・政府部門:設備投資は低迷、輸出は底ばい
設備投資については、建設投資、機械関連投資とも減少している。
建設投資は減少
6 月の建設投資(除く住宅)は 2 カ月連続で減少した(図表 14)
。工場建設
や商業施設の建設減少が全体の押し下げに寄与した。
機械関連投資は低迷
機械関連の設備投資動向を示す資本財(国防・航空機を除く資本財)の 5
月の出荷額は 3 カ月ぶりに減少した(図表 15)
。4・5 月平均の出荷額は 1~3
月期を 1.4%下回っており、機械関連投資は低迷が続いている。先行きをみる
上で重要な受注額は 2 カ月連続で減少した。鉱業・石油・ガス機械が増加し
たものの、金属加工機械や空調等機械が減少した。
企業の投資マインドは
まちまち
企業の設備投資マインドはまちまちである。6 月の地区連銀・製造業調査に
よる 6 カ月先の設備投資判断DIをみると、ニューヨークがほぼ変わらなか
ったが、フィラデルフィアは上昇した。
輸入が増加する一方、
輸出は減少
5 月の実質輸出入は、輸入が増加する一方で、輸出が減少した(図表 16)
。
5 月の実質輸入は、産業用資材の増加が全体を押し上げた。実質輸出は、食品
が増加する一方で、資本材や自動車等が減少した。実質輸出の 3 カ月移動平
均は、2016 年初以降、底ばいで推移している。また、6 月の輸出受注指数(製
造業ISM指数の補助項目)は 4 カ月連続で 50 の水準を超えている。
連邦財政赤字は前年度
を上回る規模
2016 会計年度における 6 月の連邦財政収支は 60 億ドルの黒字と、前年に比
べて約 90%黒字額が減少した。6 月までの累計赤字額(2015 年 10~2016 年 6
月)は、4,071 億ドルとなり、前年度(3,668 億ドル)を上回る規模となって
いる(図表 17)
。企業収益の低迷により法人税収が減少し、歳入全体が伸び悩
んでいることが主因である。
7
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
図表 14 非住宅建設投資
図表 15 資本財出荷・新規受注
(年率、億ドル)
(年率、億ドル)
680
4200
660
4000
640
620
3800
600
580
15/5
3600
15/11
15/5
16/5
(年/月)
16/5
(年/月)
非国防資本財新規受注
非国防資本財出荷
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
表 16 実質財輸出・輸入
(2013年平均=100)
114
112
110
108
106
104
102
100
98
15/5
15/11
図表 17 累積連邦財政収支
(億ドル)
0
▲1,000
▲2,000
▲3,000
▲4,000
▲5,000
▲6,000
10
15/11
輸出
12
2
4
6
8
(月)
16/5
(年/月)
2015年度
輸入
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
2016年度
(資料)米国財務省より、みずほ総合研究所作成
図表 18 企業・対外・政府部門の主要統計
Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016
企業業況
▲ 8.2
ニューヨーク(NY)連銀 現状判断
フィラデルフィア(PHL)連銀 現状判断
設備投資
0.2
2016/4
2016/5
2016/6
2016/7
▲ 16.6
0.6
9.6
▲ 9.0
6.0
0.6
▲ 7.3
0.4
▲ 2.8
12.4
▲ 1.6
▲ 1.8
4.7
▲ 2.9
2.0
コア資本財 受注金額
前期比、%
1.4
▲ 1.9
▲ 1.8
n.a.
▲ 2.1
0.3
▲ 0.9
▲ 0.4
n.a.
n.a.
前期比、%
0.4
▲ 1.7
▲ 3.0
n.a.
▲ 1.6
0.0
0.6
▲ 0.5
n.a.
n.a.
非住宅建設支出
前期比、%
PHL連銀 6か月先設備投資判断
貿易収支
10億ドル
輸出
10億ドル
輸入
財政
2016/3
2.2
コア資本財 出荷金額
NY連銀 6か月先設備投資判断
輸出入
2016/2
▲ 9.2 ▲ 11.8
3.8
▲ 1.4
1.2
n.a.
0.7
2.0
▲ 0.1
▲ 0.7
n.a.
n.a.
16.6
13.7
14.6
12.2
12.9
15.8
22.1
3.1
11.2
11.0
17.5
14.0
8.4
14.5
2.5
13.3
12.7
23.6
7.1
15.1
▲ 126 ▲ 124 ▲ 122
n.a.
▲ 44
▲ 36
▲ 37
▲ 41
n.a.
n.a.
n.a.
182
180
183
182
n.a.
n.a.
564
552
542
10億ドル
690
676
664
n.a.
226
216
220
223
n.a.
n.a.
実質財輸出
2013年=100
103
102
101
n.a.
103
101
103
101
n.a.
n.a.
実質財輸入
2013年=100
109
109
109
n.a.
112
106
108
109
n.a.
n.a.
▲ 123 ▲ 216 ▲ 245
60
▲ 193 ▲ 108
106
▲ 53
6
n.a.
財政収支
10億ドル
歳入
10億ドル
802
766
711
993
169
228
438
225
330
n.a.
歳出
10億ドル
925
981
956
932
362
336
332
277
323
n.a.
(資料)ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、米国商務省、米国財務省よりみずほ総合研究所作成
8
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
5.物価動向:コアPCEデフレーター上昇率は低位安定
輸入物価は下落率が縮
小
6 月の輸入物価指数は前年比▲4.8%となり、前月(同▲5.0%)から下落率
が縮小した(図表 19)
。ドル高や原油安が一服していることにより、前年比ベ
ースでみた輸入物価に対する低下圧力は弱まっている。一方、最終財(自動
車、消費財、資本財)の下落率は前月から小幅に拡大した。
国内企業部門の物価は
プラス圏に浮上
6 月の最終需要・生産者物価指数
(PPI)
は前年比+0.3%
(前月同▲0.1%)
と、2014 年 12 月以来の高い伸びとなった(図表 20)
。エネルギーを含む財物
価の上昇率はマイナス幅が縮小し(5 月同▲2.6%→6 月同▲2.2%)
、サービ
ス物価の上昇率は、毎月の変動が大きい卸売業者や小売業者等のマージン(利
鞘)の増加等を受けて加速した(5 月同+1.4%→6 月同+1.5%)
。
PCEデフレーターは
リテール部門の物価上昇率は、低位安定が続いている。
低位安定
5 月の個人消費支出(PCE)デフレーター上昇率は前年比+0.9%(前月
同+1.1%)と鈍化したが、コアPCEデフレーター(食品・エネルギーを除
く)上昇率は同+1.6%と前月から変わらなかった(図表 21)
。コアの 3 カ月
前比年率上昇率をみると、+1.6%と前月から変わらなった。基調的な物価上
昇率を示すダラス連銀刈込平均PCEデフレーター上昇率は、
3 月以降、
1.8%
の上昇率が続いている。
6 月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比+1.0%(前月同+1.1%)
と鈍化したものの、コアCPI上昇率は同+2.3%(5 月同+2.2%)と加速し
た。一方、クリーブランド連銀の刈込平均CPI上昇率は前年比+2.0%と前
月から変わらなかった。
CPIを、財・サービスに分けてみると、財物価の上昇率はマイナス圏に
沈んだままだが、住居費や医療費などサービス物価の上昇率が加速した。こ
のうち、6 月の住居費上昇率は前年比+3.5%と、家賃・帰属家賃をけん引役
に、2007 年以来の水準まで高まっている。住居費は、コアCPIに対する寄
与度(+1.5%Pt)が最大の品目である。住居費との連動性が高い賃貸物件の
空室率は 1990 年代前半以来の低水準にあり、賃貸物件の需給は引き締まって
いる。賃貸需要の堅調さが住居費の上昇につながっているとみられる。
市場ベースのインフレ
市場取引ベースのインフレ期待は緩やかに低下した。一方、サーベイ調査
期待は低下も、サーベ
に基づくインフレ期待はほとんど変わらなかった(図表 22)
。7 月のミシガン
イ調査は安定
大調査(速報)による 5~10 年先のインフレ期待は+2.6%であった。
以上
9
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
図表 19
輸入物価
(前年比、%)
5
図表 20
(前年比、%)
0.5
(前年比、%)
0.0
2.0
▲ 0.5
1.0
▲ 1.0
0.0
▲ 1.5
▲1.0
▲ 2.0
16/6
(年/月)
▲2.0
0
3.0
▲5
▲ 10
▲ 15
15/12
15/6
輸入物価
図表 21
15/12
15/6
16/6
(年/月)
コア
総合
うち最終財(右目盛)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
最終需要PPI
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
PCEデフレーター
図表 22
(前年比、%)
2.0
期待インフレ率
(%)
3.2
2.8
1.5
2.4
1.0
2.0
0.5
1.6
1.2
0.0
15/6
15/12
総合
16/1
15/7
16/6
(年/月)
ミシガン大 期待インフレ率(5~10年先) (年/月)
BEI(5年先5年)
コア
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
図表 23
物価の主要統計
Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016
輸入物価
消費者物価
2016/3
2016/4
2016/5
2016/6
2016/7
▲ 11.2
▲ 9.5
▲ 6.4
▲ 5.0
▲ 6.6
▲ 6.1
▲ 5.3
▲ 5.0
▲ 4.8
n.a.
前年比、%
▲ 1.6
▲ 1.6
▲ 1.2
▲ 1.1
▲ 1.2
▲ 1.2
▲ 1.1
▲ 0.9
▲ 1.1
n.a.
最終需要 生産者物価指数
前年比、%
▲ 0.9
▲ 1.3
0.0
0.1
0.1
▲ 0.1
0.0
▲ 0.1
0.3
n.a.
コア生産者物価指数
前年比、%
0.7
0.2
1.0
1.1
1.3
1.0
0.9
1.2
1.3
n.a.
消費者物価指数
前年比、%
0.1
0.5
1.1
1.1
1.0
0.9
1.1
1.0
1.0
n.a.
コア消費者物価指数
前年比、%
1.8
2.0
2.2
2.2
2.3
2.2
2.1
2.2
2.3
n.a.
PCEデフレーター
コアPCEデフレーター
刈込平均 PCEデフレーター
インフレ期待
2016/2
前年比、%
輸入物価指数
最終財
生産者物価
16/7
ミシガン大 期待インフレ率
BEI(5年先5年)
前年比、%
0.3
0.5
1.0
n.a.
1.0
0.8
1.1
0.9
n.a.
n.a.
前期比、%
0.3
0.1
0.1
n.a.
▲ 0.1
0.1
0.3
0.2
n.a.
n.a.
前年比、%
1.3
1.4
1.6
n.a.
1.7
1.6
1.6
1.6
n.a.
n.a.
前期比、%
0.3
0.3
0.5
n.a.
0.2
0.1
0.2
0.2
n.a.
n.a.
n.a.
前年比、%
1.7
1.7
1.8
n.a.
1.8
1.8
1.8
1.8
n.a.
%
2.7
2.6
2.6
2.5
2.5
2.7
2.5
2.5
2.6
2.6
期末値、%
1.9
1.8
1.5
1.5
1.4
1.6
1.6
1.6
1.4
1.4
(資料)米国商務省、米国労働省、ダラス連銀、ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
10
みずほ米国経済情報(2016 年 7 月号)
2 01 6年 7月 27 日
発行
欧米調査部主席エコノミスト 小野 亮
03-3591-1219 mak ot [email protected] o. jp
欧米調査部主任エコノミスト 風間 春香
03-3591-1418 har uk a.kazama@mizuho-r i. co.jp
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