2016 年 7 月 22 日 プレスリリース 地産地消電力事業に関する調査を実施(2016 年) -FIT 電気含む再生可能エネルギーの比率が高い電力の地産地消で、地域経済を活性化- 【調査要綱】 矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内の地産地消モデルの電力小売事業の調査を実施した。 1. 調査期間:2016 年 4 月~7 月 2. 調査対象:地産地消モデルの小売電気事業者(地方自治体系、生活協同組合系、デベロッパー/エンジニア リング系等の事業者) 3. 調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用 <地産地消モデルの電力小売事業とは> 本調査における地産地消モデルの電力小売事業とは、特定地域の再生可能エネルギーによる発電電力を主 体として、その地域の電力需要家や提携した組合員・施設等に供給(電力小売)する事業形態を指す。また、特 定地域の再生可能エネルギーによる発電電力を主体として、当該地域以外の提携した組合員・施設等に産地直 送(電力小売)する事業形態も含める。(図 1 参照) 【調査結果サマリー】 2015 年度の地産地消モデルの電力小売市場規模は 135 億円 FIT 制度により再生可能エネルギーによる発電システムが普及し、また、電力小売自由化の進展にとも なって、各種の小売電気事業者が参入したことにより、地域の再生可能エネルギーによる発電電力を地 域の電力需要家(ユーザー)に選んで購入してもらう事業モデルとして、地産地消モデルの電力小売事 業は形成された。2015 年度の国内の地産地消モデルの電力小売市場規模は、小売電気事業者の売上 高ベースで 135 億円となった。 2020 年度の地産地消モデルの電力小売市場規模は 530 億円に拡大と予測 2016 年度は、家庭用等の低圧分野(50kW 未満)の電力小売も自由化されたことから、各事業者が家 庭用の電力小売販売も開始し、国内の地産地消モデルの電力小売市場規模は、小売電気事業者の売 上高ベースで 240 億円に増加する見込みである。今後、電力需要家(ユーザー)が増えていくとともに、 国内の様々な地域で、同様の地産地消モデルの電力小売事業が新たに立ち上げられていくことが考え られ、2017 年度の地産地消モデルの電力小売市場規模(同ベース)は 340 億円、2020 年度には 530 億 円に拡大すると予測する。 ◆ 資料体裁 資料名:「地産地消電力事業の実態と戦略分析 2016」 発刊日:2016 年 7 月 8 日 体 裁:A4 判 115 頁 定 価:150,000 円(税別) 株式会社 矢野経済研究所 所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝 設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/ 本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/) ㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected] 本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。 本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 7 月 22 日 プレスリリース 【 調査結果の概要 】 1. 市場背景~地産地消モデルとは 急速に普及している、太陽光や風力、地熱、バイオマス、廃棄物発電などの再生可能エネルギーによ る電力の多くは、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)により小売電気事業者が買い取りをし ている電力(以下、FIT 電気)であり、国民から広く徴収した賦課金により賄われている。また、一方で、電 力システム改革が進む中、2016 年 4 月の電力小売の完全自由化により、小売電気事業者が対象とする 電力需要家(ユーザー)は家庭用等の 50kW 未満の低圧分野まで拡大された。 本調査における地産地消モデルの電力小売事業とは、特定地域での再生可能エネルギーによる発電 電力(FIT 電気を含む)を主体(再生可能エネルギーによる発電電力の比率が高いことを前提)として、そ の地域の電力需要家や提携した組合員・施設等に供給(電力小売)する事業形態に加えて、特定地域 以外の提携した(生協等の)組合員・施設等に産地直送(電力小売)する事業形態も含む。 現在、地産地消モデルの電力小売事業に参入している小売電気事業者は 40 社を超えており、それら を業種別に分類すると、地方自治体系、生活協同組合系、デベロッパー/エンジニアリング系(ガス会社 系を含む)等の事業者がある。地方自治体系の小売電気事業者は、地方自治体が事業主体となり、地場 の民間企業等とも一体になって地産地消モデルの電力小売事業を展開している。事業への出資者構成 や出資比率は様々であるが、自治体と民間企業が出資する第三セクターの新会社を設立して電力小売 事業を展開するケースが多い。 生活協同組合(以下、生協)系の小売電気事業者では、全国に存在する様々な単位での生協が、電 力小売事業を展開している。生協組織としては、地域の生協(単協)と、それらをまとめる連合会組織があ り、それらの組み合わせによる様々な出資形態で電力小売事業を行なう子会社が設立されている。消費 生活協同組合法では、各生協の組合員のみが事業の対象と規定されていることから、生協の電力小売 事業では、生協の事業施設および組合員にのみ電力供給を行なっている。 デベロッパー/エンジニアリング系の小売電気事業者は、太陽光発電システム、廃棄物発電システム、 バイオマス発電システム、風力発電システム等のデベロッパー、エンジニアリング会社、コンサルティング 会社が、それらの発電電力を調達して電力小売事業も行なう。その際の事業の差別化ポイントが地産地 消モデルである。ガス会社系では、地方都市ガス会社や地域の LP ガス(プロパンガス)会社が、太陽光 発電システム等の再生可能エネルギーの発電電力を主体として、その地域の電力需要家(ユーザー)に 電力供給する。ガス会社系は、未だ地産地消モデルの電力小売事業を立ち上げたばかりであり、事業者 の位置付けとしては、デベロッパー/エンジニアリング系に含めている。 図 1.地産地消モデルの電力小売事業 矢野経済研究所作成 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 7 月 22 日 プレスリリース 2. 市場概況と予測 2015 年度の国内の地産地消モデルの電力小売事業の市場規模は、小売電気事業者の売上高ベー スで 135 億円となった。2016 年度は、家庭用等の低圧分野(50kW 未満)の電力小売も自由化されたこと から、各事業者が家庭用の電力小売販売も開始し、国内の地産地消モデルの電力小売市場規模は 240 億円に増加する見込みである。地産地消モデルの電力小売事業では、家庭用等の低圧分野の電力需 要家(ユーザー)の方が、電気料金のメリットだけではなく、環境負荷が少ないことや地域活性化につなが ること等のポリシーに賛同してもらうことで契約する形態が多くなる見通しである。これに対して、高圧分野 (50kW 以上)の電力需要家(ユーザー)で民間施設の場合は、電気料金での価格メリットの訴求が契約 獲得の条件になる。ただし、公共施設や生協施設等の場合は、地産地消モデルの電力小売事業の事業 主体として、それらの施設と契約していくことが可能になると考える。 今後、電力需要家(ユーザー)が増えていくとともに、国内の様々な地域で、同様の地産地消モデルの 電力小売事業が新たに立ち上げられていくことが考えられ、2017 年度の地産地消モデルの電力小売市 場規模(同ベース)は 340 億円、2020 年度は 530 億円まで拡大すると予測する。 図 2. 地産地消モデルの電力小売市場規模推移と予測 (単位:億円) 600 530 400 340 240 200 135 0 2015年度 2016年度 (見込) 2017年度 (予測) 2020年度 (予測) 矢野経済研究所推計 注1:小売電気事業者の売上高ベース 注2:2016 年度は見込値、2017 年度以降は予測値 注3:本調査における地産地消モデルの電力小売事業とは、特定地域の再生可能エネルギーによる発電電力を主体とし て、その地域の電力需要家や提携した組合員・施設等に供給(電力小売)する事業形態に加えて、当該地域以外の提携し た組合員・施設等にも産地直送(電力小売)する事業形態を指す。 3. 注目すべき動向~今後の地産地消モデルの電力小売事業 3-1.地方自治体系の小売電気事業者の動向 地方自治体系の地産地消モデルの電力小売事業は、その自治体の首長の強力なリーダーシップによ り 事 業 が 立 ち 上 げ ら れ る こ とが多い。多くの場合、その自治体ではもともと環境意識が高く、RPS (Renewables Portfolio Standard)制度や FIT 制度とともに、太陽光発電システムや風力発電システム、バ イオマス発電システム等の再生可能エネルギーの発電システムを導入したり、誘致したりしてきている。ま た、それらの自治体では、これまで再生可能エネルギーによる発電システムの導入によって、地方創生・ 再生、地域活性化(省エネ・CO2 排出削減、地域経済の活性化、産業振興、雇用拡大、災害対応等)に 取り組んできている。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 7 月 22 日 プレスリリース なお、地域の再生可能エネルギーによる発電システムとしては、先ずは太陽光発電システムが取り組 みやすく先行しているが、将来的にはその地域特性を活かすことが重要であり、バイオマス(木質、畜産 等)や小水力、風力、地熱による発電など種々の取り組みが考えられている。 3-2.生活協同組合系の小売電気事業者の動向 生協(単協)やその連合会では、各々にエネルギー政策等を策定してきており、特に東日本大震災後 には省エネ・節電や脱原発の方針が掲げられるようになった。生協ではこれまでの事業において、安全・ 安心な食品等にこだわる産地直送のスキーム等で事業展開してきており、電力に関しても再生可能エネ ルギーを選択して使用していく方針である。 もともと環境政策に積極的な生協では、従来から生協の物流拠点や配送センター等の施設に太陽光 発電システムを導入してきている。ここで、生協の店舗等の施設で使用する電力について、再生可能エ ネルギーによる電力の比率を高めていくためには、他の小売電気事業者から電力を購入するよりも、自ら が再生可能エネルギー比率の高い電力を供給する事業者になることを選択することとなった。 生協における電力小売事業の展開は、自らの物流施設における太陽光発電システム等の発電電力も 利用して、店舗等の各生協施設に再生可能エネルギーの比率が高い電力を供給することから開始され ており、また、2016 年度からは、生協組合員向けの家庭用等の低圧分野の電力小売も開始されるように 準備されている。 3-3.デベロッパー/エンジニアリング系の小売電気事業者の動向 デベロッパー/エンジニアリング系の地産地消モデルの電力小売事業においては、主な電源となる太 陽光発電システムは、ほとんどが FIT 制度への対応済、または RPS 制度への対応済であり、また、その地 域はもともと地形や日照条件において太陽光発電システムの適地となっている。 デベロッパー/エンジニアリング系の小売電気事業者は、これらの太陽光発電システムから買電する が、自社がエンジニアリング等で関与した物件だけでなく、他社物件も含めて、地産地消モデルの電力 事業に賛同が得られる発電事業者から広く調達する。また、その地域からの電源調達が第一義であるが、 場合によっては地域を広く設定して電源調達している小売電気事業者もいる。 これらの小売電気事業者では、再生可能エネルギーの比率が高い電力を、従来の大手電力会社(一 般電気事業者)よりも安価な料金体系で供給することにより電力需要家(ユーザー)を獲得している。太陽 光発電システムが主要電源になるため、高圧分野では発電カーブに近い需要カーブを有するユーザー や、負荷率の低いユーザーがターゲットになる。また、官公庁の施設案件については、入札(価格競争) で落札する場合や、環境負荷の少ない電力ということで随意契約により獲得できる場合もある。 そのほかのデベロッパー/エンジニアリング系の小売電気事業者として、ごみ焼却発電(バイオマス) のエンジニアリング会社も、地方自治体のごみ焼却発電システムを電源として、地産地消モデルの電力 小売事業を展開している。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
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