発表資料

動脈硬化を検出するための近赤外
蛍光プローブ
※配付資料に載せていない未公開データがあります
北海道大学
大学院薬学研究院
教授 小川 美香子
静岡県立大学 薬学部
講師 清水 広介
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形態イメージングと機能イメージング
生体内の組織・臓器の「形」がわかる
CT, MRIなど
特定の「機能」をもった組織・臓器がわかる
PET、光イメージングなど
“分子イメージング”ともいう。
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イメージングモダリティの比較
CT
解像度
MRI
US
PET
SPECT Fluorescence
~
定量性
深さ
感度
簡便性
被曝
信号ON/OFF
分子イメージング
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従来技術とその問題点
安定プラーク
外膜
不安定プラーク
線維性皮膜
中膜
粥腫
内膜
血管腔
マクロファージの浸潤(炎症)
プロテアーゼの活性化
血管内腔体積はプラークの安定性に関与しないため、従来の血管造影などの狭窄度を測
定する手法では、プラークの安定性を評価できない。
病変の石灰化や不安定プラークに蓄積した脂質を対象に、超音波, CT, MRIなどによる形態
学的診断が試みられているが、不安定プラークの破綻には、マクロファージによる炎症反
応など形態的には検出されない質的変化が直接的な原因となると報告されている
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分子イメージングとは
MI techniques directly or indirectly monitor and record the spatiotemporal distribution
of molecular or cellular processes for biochemical, biologic, diagnostic, or therapeutic
applications.
Thakur, M.; Lentle, B. C. Radiology 2005, 236, 753-755.
分子イメージング(Molecular Imaging)とは、生体内での分子プロセスの可視化に関す
る基礎的・臨床的研究、および開発された可視化手法を利用する応用研究およびそ
れらの方法の総称。近年登場した新しいイメージング技術によって生命体を明らかに
していこうとするものである。より効果的な創薬や病理の追求、オーダーメードな医療
などへの手がかりとして期待が集まっている。
Wikipedia
分子イメージングは、これまで可視化されていなかった個体内での分子の動きを見え
るようにする手法です。個体にダメージを与えることなく、生きたまま体内の様子を観
察できるのが特徴です。
見るための道具として、「分子プローブ」と呼ばれる化合物を用います。
理化学研究所 旧:分子イメージング科学研究センター
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分子イメージングプローブ
標識部位
MRI
CT
PET
SPECT
Optical
Gd2+, Mn2+, 19Fなど
I, Auなど
11C, 13N, 15O, 18Fなど
99mTc, 111In, 123Iなど
Rhodamine, Cyanineなど
標的指向性分子
低分子有機化合物、ペプチド、タンパク、ナノ粒子など
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従来技術とその問題点
これまでに、核医学分子イメージング法である[18F]FDG-PETにより、不安定プラークを画像
化することに成功した。
Ogawa M. et al., J Nucl Med. 2004;45(7):1245-1250.
また、血液検査では捉えられない薬物治療効果を、PETにてモニタリングすることができた。
Ogawa M. et al., J Nucl Med. 2006;47(11):1845-1850.
しかし、
PETイメージングは設備が高価である・薬の用事調製が必要である・放射線被曝を
するなど、リスク患者の拾い上げのための一次スクリーニングには適していない。
[18F]FDGの集積は血糖値に影響を受けるため、糖尿病などでの評価が難しい。
正常組織からのバックグラウンドシグナルが高い。
簡便に不安定プラークを特異的に検出する、近赤外蛍光イメージングプローブを開発
スクリーニング
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インビトロイメージング
vs.
インビボイメージング
簡単に余分な分を洗い流せる
余分な分を洗い流せない
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アクチベータブルプローブ
Conventional
always-on probe
Activatable probe
On
Off
On
On
Low contrast
High contrast
(High background)
(NO background)
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新技術の概要
機能性ナノ粒子を用いた新規近赤外蛍光分子イメージングプローブの創製
一つの疾患に限ることなく、様々な病態に応用可能な分子イメージングプローブ作成の
ための基礎技術を開発する
① 動脈硬化不安定プラークの簡便なスクリーニング法の開発
アクチベータブル近赤外蛍光標識ペプチドを内包した、標的化リポソームの開発
酵素反応特異性
OFF
細胞標的性
ON
蛍光分子
特異性・細胞集積性の向上
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術では動脈硬化プラークの質的画像
化が出来なかったが、本技術ではプラークの
質を画像化することに成功した。
• 従来技術の問題点であった、簡便性と特異性
を改良することに成功した。
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新技術の優位性
• 臨床応用までが容易なリポソームを用いた製剤であること
• 組み合わせ技術により、特異性の向上が期待できること
• マルチカラー、マルチモダル、マルチファンクションといった将来
性が期待できる技術であること
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シグナル分子
標的指向性分子
安全性、安定性
リポソームは歴史が古く、すでに医薬品や化粧品などでヒトへ応用されており、安全性が
確立されている。
血中で安定であり、薬剤の放出がおこらない。また、血中で不安定な薬剤を細胞内へ安
定的に運搬することができる。
表面修飾の容易性
標的化のための表面修飾が容易である。
シグナル分子の化学的性質が体内動態に影響を与えない
蛍光イメージングの場合、PETなどと比較しシグナル分子の分子量が大きい。したがって、
生体内へ投与した場合、シグナル分子の化学的性質が標的指向性分子の体内動態に影
響を及ぼす可能性が高い。標的指向性をもったリポソーム内にシグナル分子を封入する
ことで、これを防ぐことができる。
マルチモダルイメージング、Theragnosisへの展開の可能性
多種類のシグナル分子、あるいは、治療薬を封入することができる。
ICGペプチドのみを用いた場合
病巣へのターゲティング、マクロファージへの取り込み
マクロファージに取り込まれ、カテプシンによる切断をう
けてはじめて光る
(蛍光、RIなど)標識リポソームのみを用いた場合
病巣へのターゲティング、マクロファージへの取り込み
マクロファージに取り込まれ、カテプシンによる切断をう
けてはじめて光る
標識リポソームのみを用いた場合
病巣へのターゲティング、マクロファージへの取り込み
マクロファージに取り込まれ、カテプシンによる切断をう
けてはじめて光る
OFF
OFF
ON
たとえば、がんに広く存在する酵素
による発光により、がんの特異的検
出を行うとともに、転移に関わる酵
素による発光により転移能の評価
も行う。
ON
治療薬を封入し、TherapyとDiagnosisを可
能にする(Theragnosis).
Opticall imaging Nuclear imaging
MRI
早期検出から、詳細検討まで。
pre
Screening
Quantification
High resolution
2 hr
インビボ蛍光イメージング-何色を使う?
~透過性~
可視光領域
術中検出・内視鏡検査に。
1
吸光係数 (cm-1) Hb, HbO2
100
10
1
0.1
HbO2
0.01
0.01
水
0.001
400
0.1
Hb
500
600
出血すると、緑の蛍光は見えなくなる。
血液の多い臓器(肝臓など)も緑の蛍
光は隠れてしまう。
700
800
近赤外蛍光の利用
900
1000
NIR (near infrared)領域
体外からの検出に。
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インビボ蛍光イメージング-何色を使う?
~自家蛍光~
吸収波長 (nm) 蛍光波長 (nm)
NAD(P)H
コラーゲン
フラビン
400
340
270-370
380-490
500
600
700
450
305-450
520
800
900 1000 nm
近赤外領域を使うと自家蛍光が避けられる。
近赤外蛍光の利用
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Indocyanine green (ICG)
Ex: 768 nm
Em: 821 nm
ICG
Near-infrared fluorescent dye
浜松医科大学・第二外科
Unno N, et al. European Journal of Vascular and Endovascular Surgery (2008)
18
ICG標識カテプシンB切断ペプチドについて
OFF
ON
ICG
19
蛍光強度
ICG標識カテプシンB切断ペプチドについて
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
カテプシンB
KGGGFLGK
KGGGFLGK/カテプシンB
KGFGGGLK
KGFGGGLK /カテプシンB
0
3
6
9
12
15
18
21
24 (hr)
KGGGFLGK-ICG2ではカテプシンBによって経時的に蛍光強度が増加した。
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標的化リポソーム(PSリポソーム)について
Phosphatidylserine (PS)
Phosphatidylcholine (PC)
Recognized by MΦ in
vulnerable plaque
100 or 200 nm
PS liposome
21
標的化リポソーム(PSリポソーム)について
70
PS liposome
PC liposome
D-PS liposome
% dose/mg protein
60
50
40
30
20
10
0
100 nm
200 nm
[18F]FDG
インビトロでのマクロファージへの取り込みは、PSリポソームのほうがPC リポソー
ムより高かった。また、PS100 ではFDGに相当する取り込み量を認めた.
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PSリポソームのRAW264細胞への選択的取り込み
PSリポソーム
(標的化リポソーム)
PCリポソーム
(未標的化リポソーム)
顕微鏡による観察
内皮細胞
RAW264細胞
(マクロファージ様細胞)
DiI (リポソームの蛍光)
重ね合わせ画像
ペプチドICG2のリポソームへの封入化
リポソーム内外で
pH勾配を作成
低
脂質薄膜形成
高
空のリポソームを
リポソームを作製
空のリポソーム
脂質組成
DPPC / DPPS / コレステロール
= 1 / 1 / 1(モル比)
100 nm
ペプチドICG2封入
PSリポソーム
(P-ICG2-Lip)
電子顕微鏡画像
(TEM)
DPPC: ジパルミトイルホスファチジルコリン
DPPS:ジパルミトイルホスファチジルセリン
→マクロファージ標的化
Peptide-ICG2
(P-ICG2)
リモートローディング法により
Peptide-ICG2を封入
粒子径(nm)
: 180 ± 14
多分散指数(PDI)
: 0.077 ± 0.04
ゼータ電位(mV)
: -66.5 ± 7.40
P-ICG2回収率(%)
: 75.6
±
最近では約400
μg/mL
15.0
(蛍光強度比167)
蛍光強度比
: 18.9
± 2.0
までできることを確認!
(Triton/Buffer中)
総脂質濃度:40 mM
Peptide ICG2濃度:60.8 μg/mL
24
全身血流中で
すぐに蛍光発光
血流中で非常に安定なリポソーム
(標的部位への送達が可能)
肝臓集積を経て
腸に排泄
まだ肝臓で
検出できる
全身血流中で
蛍光は検出されな
い
リポソームから漏
れて蛍光検出
そのほとんどが
腸に排泄
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RAW264細胞におけるICG蛍光の検出
顕微鏡による観察
ペプチドICG2
(リポソーム未封入)
内皮細胞
ペプチドICG2内封
PSリポソーム
RAW264細胞
ICGの蛍光
重ね合わせ画像
培地中からは蛍光は得られず、細胞内でのみ蛍光のアクチベーションが起きた。
Pre
2 hr
Self-quench
OFF
OFF
ICG included PS-liposome
ON
3 hr
クエンチ効果が低い(4倍)
蛍光分子がリポソームから漏出する
バックグラウンドが高い
1 hr
in Macrophages
ICG
ON
0.5 hr
37⁰C, 5% CO2, DMEM FBS(+)
6 hr
蛍光を発しない。これにより酵素反応特異性が示された。
2hr
蛍光画像
サルを用いたインビボイメージング
カニクイザルを高脂肪食下にて飼育
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サルを用いたインビボイメージング
総頸動脈分岐部の1cm下部で総頸
動脈の長径・短径の測定を行った。
31
サルを用いたインビボイメージング
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動脈硬化不安定プラークの簡便な検出
実用化に向けた課題
• 現在、peptide-ICG封入PSリポソームについてマウス・ウサ
ギを用いたイメージングまで開発済み。しかし、投与量の問
題からサルでの実験を行っていない。
• ICG封入PSリポソームにてサルの実験を行ったが、体外か
らの非侵襲的イメージングは成功しなかった。原因として、
カメラの感度・バックグラウンド蛍光の上昇が挙げられる。
• 今後、レーザーによる励起など、感度上昇に向けた実験
データを取得し、非侵襲的イメージングへ向けた条件設定
を行っていく。
• また、peptide-ICG封入リポソームを用いたサルでの実験、
および、リポソームから漏出しない新規ICG類縁体の合成
を行い、バックグラウンドの低下を目指す。
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企業への期待
• 未解決の感度の問題については、レーザーを使う等の技術
により克服できると考えている。あるいは、光音響イメージン
グにて克服できる可能性もある。
• また、ICGの構造を変換することで、ペプチドを用いなくとも
バックグラウンド蛍光が上がらない技術を構築できると考え
ている。
• 近赤外光蛍光イメージング・光音響イメージングを開発中の
企業で、医療分野への展開を考えている企業には、本技術
の導入が有効と思われる。
• 蛍光分子の医療応用を行っている企業による、将来の臨床
開発を期待したい。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :蛍光標識用プローブ
• 出願番号
:特願2014-024424
• 出願人
:国立大学法人浜松医科大学、
静岡県公立大学法人静岡県立大学
• 発明者
:小川美香子(浜松医科大学)、
間賀田泰寛(浜松医科大学)、奥 直人(静岡
県立大学)、清水広介(静岡県立大学)
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お問い合わせ先
浜松医科大学
産学連携推進部
小野寺 雄一郎
TEL 053-435 - 2230
FAX 053-435 - 2179
e-mail [email protected]
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