組織能力と競争力 - 経営教育研究センター

2016年度 経営戦略Ⅱ(新宅先生)
2016年7月21日
組織能力と競争力
成蹊大学経済学部 准教授
福澤光啓
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
1
本日の流れ
•
講義(85分)
– 1.組織能力と競争力との関係
• 競争力を支える組織能力
• 製品開発に関わる組織・戦略・人材マネジメントの日中韓比較分析
– ⇒開発活動の組織能力(プロダクト・イノベーション)
– 都留康・守島基博編著(2012)『世界の工場から世界の開発拠点へ』東洋経済新報社.
• 環境変化に対する生産現場の適応力
– 福澤光啓, 稲水伸行, 鈴木信貴, 佐藤祐樹, 村田香織, 新宅純二郎, 藤本隆宏(2012)「奔走する
リーダー:環境変動に対する自動車組立職場の適応プロセス」『組織科学』 46(2) 75‐94.
• 日本の電機産業の現場力に関する実証分析
– ⇒プロセス・イノベーション(+プロダクト・イノベーション)
– 新宅純二郎, 稲水伸行, 福澤光啓, 鈴木信貴, 横澤公道 (2014)「電機産業の現場力調査:日本
の現場の競争力を支える職場」『赤門マネジメント・レビュー』 13 (10), 371‐406.
– Inamizu, N., Shintaku, J., Fukuzawa, M., Suzuki, N., & Yokozawa, K. (2015), “Competitiveness, capability and climate of Japanese factories: An integrative survey in electric and electronics industry”, Proceedings of 22nd International Annual EurOMA Conference, LEA‐14, 10 pages. – Fukuzawa, M., Inamizu, N., Shintaku, J., Suzuki, N., Yokozawa, K., (2016) Genba‐capability and reshoring in Japanese electric and electronics industry, 5th World Conference on Production and Operations Management, Havana, (forthcoming).
– 2.現場の能力を活かすための戦略について考える
•
小レポート作成(20分)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
2
1.組織能力と競争力
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
3
経営者が競争優位の源泉から遠ざかる?
• Abernathy, W. J., Clark, K.B. and Kantrow (1983) Industrial Renaissance • 「米国の経営者は長年の間に、工場で造作なく
作った製品に対する、厳格で分析的な財務管理
の下でのマーケティングが自分たちの任務であ
ると考えるようになり、生産の現場とは無縁に
なった。マーケティングや財務ではなく、生産の技
術こそが、本当の競争優位をもたらすものだとい
う考え方にも無縁になってしまった(p.7)」
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
4
競争優位の源泉の再認識
⇒Industrial Renaissance
• 製品の生産技術の高さに裏打ちされた第二次
大戦後の20年間にわたる米国産業の成長と国
内市場の安泰があったからこそ、米国の経営
者は、もっともらしい「経営戦略」を振りかざして
こられたに過ぎない。
– 厳格で分析的な財務管理のもとでのマーケティング
や戦略の適否にどれほどの意味があったのか?
– 「生産技術の優秀さに基づく競争優位」が前提にあ
るので、米国企業は勝利し、成長し、利益をあげら
れた。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
5
• 自分たちの競争優位の源泉のなんたるかを忘
れた経営者たちが「経営」する米国企業では、
もはや、日本の「経営者」たちが率いる日本企
業に対しては、高い競争力を維持することは、
極めて難しかった。
– 地道な経営努力なくしては、いかなる戦略も成功は
おぼつかない。
– 例:経験曲線効果
• 製品デザイン、マーケティング、購買、技術、製造のすべ
てが、注意深く調整され管理されることで、はじめて、コス
トの低下を実現できる。単に、累積生産量さえ増やせば、
よいというわけではない。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
6
競争優位の源泉の再考:
コア・コンピタンスへの注目
• 「月に人を送り、基盤技術を発明した我が国
が、なぜ家庭用ビデオや、トヨタよりも優れた小
型車ですら、つくれないのであろうか」
– Hayes,R. H. (1985) Strategic Planning: forward in reverse? Harvard Business Review, Nov‐Dec. pp.111‐
119.
• プラハラード&ハメル(1990)、ハメル&プラハ
ラード(1994)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
7
• コア・コンピタンス(core competence)
– 目に見える製品や事業部ではなくて、その背後にある知識や行動の体
系。
– これを武器として、企業は新しい事業を創出し、持続的に競争に勝利し
て、利益を上げる。
– 80年代~90年代にかけて競争力を高めた日本企業を観察することで、
生まれてきた概念。
• NEC、カシオ、ホンダ、ソニー、トヨタなど。
• 目に見える製品・事業の成功の背後には、目に見えな
い、見えにくい「能力」がある。
– この能力を意識して、上手く発展させることが、戦略の最重要
課題。
1. コア・コンピタンスを特定し、
2. それを育成・発展させることを最重要課題として認識し、
3. それらのコンピタンスを単独、あるいは、組み合わせて他の
事業へと展開していくシナリオを描くことが重要。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
8
競争優位の源泉としてのレント(Rent)
• レントの概念
– 標準より大きな利潤、他社より大きな利潤のこと。
– もともとは、「地代」を指す言葉。
– 戦略は、レントを長期的に追求することが目的。
• レントの源泉
– 独占レント:産業の独占・寡占化が進むと、価格を高めに設定
できるので、レントを得ることができる。
– リカーディアン・レント:希少な資源を所有することによる比較優
位がもたらすレント
– 企業家レント:企業家活動による、新たな製品・市場機会を生
み出すことから得られるレント
• ポジショニングによるレントと内部要因によるレント
– 独占レントを追求する戦略→ポジショニング
– リカーディアン・レントを追求する戦略→企業内部の資源を重
視する戦略(RBV)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
9
企業の資源・能力と競争優位 Barney (2007)
• ある企業が、
–
–
–
–
環境の機会を利用し、脅威を減らす資源を持っており、
その資源を持っている競争企業が少数であり、
模倣が困難、もしくは供給が非弾力的であれば、
その企業は競争優位を獲得する。
• 資源の種類
– 目に見えるもの(tangible)
• 財務的資源
• 物的資源:工場、設備、ロケーション
– 目に見えないもの(intangible)
• 技術、評判(ブランド、他社との関係性)
• 組織的資源:管理システム、企業文化
– 人的資源
•
•
•
•
マネジャー、作業者、技術者
スキル、ノウハウ
コミュニケーション能力、協働能力
モチベーション
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
10
競争優位の持続性≒模倣の困難性
• 特定の時点で競争優位をもたらす資源を保有し
ているだけでは不十分。
– 競争相手が同様の資源を獲得することが容易であれ
ば、その企業の優位性は一時的。
• 持続力のある競争優位(sustainable competitive advantage)をもたらす経営資源、すなわち模倣が
困難である経営資源の追求が戦略上の焦点。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
11
模倣可能性(Imitability)
•
価値があり、希少で、かつ、模倣が困難な資源を保有していれば、持続的な
競争優位を得ることができる。
•
模倣可能性が低いと言っても、必ずしも模倣できないわけではない。
– 模倣するためには時間やコストがかかるので、それを当初から持っている企業と
比較して、不利な状況にあるということ。
– たとえば、どんなに新しい技術でも、それが優れた技術であれば、やがては、広く
普及することになる。普及に要する時間によって、その技術を保有していることか
ら生じる優位性の長さが決まる。広く普及した後には、競争優位の源泉にはならな
い。
– したがって、多くの場合には、模倣容易でどこにでもある資源と、模倣困難で希少
な資源の二つが存在していることになる。
•
直接的模倣
–
•
資源の模倣にかかるコストが、優位にある企業が当該資源の獲得に要したコス
トよりも高ければ、その優位性は持続する。
代替
–
–
優位にある企業と同じことを実現するために、他の資源で代替する。
例:直接的な人的コミュニケーションの代わりに、情報システムを利用したWeb
会議を頻繁に利用する。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
12
模倣を困難にする要因
1. 歴史的条件
–
–
経営資源の蓄積・獲得に関して、先行者利益があったり、その
蓄積過程が経路依存的(path dependent)であれば、後発企
業にとって、それを模倣することは困難、または、蓄積に長い
時間を要する。
「時間圧縮の不経済」:歴史を覆すことはできない。後から追い
かけようとすると、先を走っている人よりも、もっと早く走らなけ
ればならないので、余分な労力がかかる。
2. 因果関係の曖昧さ(causal ambiguity)
–
競争優位の源泉となっている経営資源が複数考えられ、個々
の経営資源と競争優位との因果関係が曖昧であれば、そもそ
も、どの資源を模倣すればよいのかがわからない。
– 「見えざる資産」
– トヨタ生産方式
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
13
3. 社会的複雑性(social complexity)
– 競争優位の源泉となる経営資源が、組織内の
人間関係や組織文化、供給業者や顧客の間で
の当該企業の評判などに支えられている場合、
模倣は容易ではない。
– QC(Quality Control)活動のような小集団活動
– 物理的な機械装置を模倣することは困難ではな
い(市場で購入できる)し、ある製品を購入してき
てリバースエンジニアリングによってどのような
技術が用いられているかを知ることはできるが、
それを操作するヒトを訓練したり、装置間の調整
などに関するノウハウを購入できない。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
14
4. 制度的条件
–
–
特許などにより、特定の資源の模倣が制限されている場合。
ただし、特許は有期。
5. 自らの事情により模倣できない
–
真似しようと思えばできなくはないが、真似できないという状
況。
既存の競争優位の源泉を無効にするような競合企業の出現
により生じる。既存の資源・能力との何らかの「矛盾」
–
•
•
技術革新:真空管から半導体へ変化したときに、既存の真空管企業は
成功できず。
既存の強力な流通網を持っているがゆえに、直販主体の電子商取引
や新たな流通チャネルを利用できない。
–
•
Dellコンピュータの直販モデルIBMやコンパックの強固な流通網
既存商品・ブランドイメージとの矛盾
–
–
キリンにとっての「ホンモノのビール(ラガー)」対アサヒの「生ビール(ドライ)」
アサヒにとっての「ホンモノのビール(ドライ)」対キリンの「発泡酒(淡麗生)」
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
15
競争優位の源泉としての組織能力
•
組織能力(Organizational Capability)
–
組織に体化された、資源の組み合わせと活用のパターン
(ルーチンの束)。
組織(企業)がある活動を、他の企業よりも上手に、か
つ、継続的にこなす力のこと。
–
•
•
•
ある企業が、他社に優る開発・生産の成果を、安定的に達成して
いる場合には、その背後に、当該企業が持っている独特の経営
資源や知識の蓄積・活動パターン・ルール・仕組みなどがあると
考えられる。
それらをひっくるめて、「組織能力」と呼ぶ。
組織能力の特徴
–
–
–
–
個々の企業に特有の属性
組織全体が持つ行動力や知識の体系
競合他社が模倣しにくく、地道に構築する必要がある
結果として、当該企業の競争力・生存能力を高めるもの。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
16
企業の競争力を支える組織能力
その他の環境要因(為替変動、政治的要因など)
組織能力
他社が簡単に真似できない
現場にできることのレベル
整理整頓清潔
問題解決、改善
ジャストインタイム
フレキシブル生産
深層の
競争力
表層の
競争力
お客から見えない
現場の実力を測る指標
お客が評価する
製品の実力を測る指標
生産性(労働・資本・原材料)
価格、性能、納期
ブランド、広告の効果
市場シェア、お客の満
足度
生産リードタイム
開発リードタイム
開発生産性
収益力
会社のもうけ
株価
能力構築競争
出所)藤本(2003), 図2・3を加筆修正
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
17
競争力の重層構造
• 表層の競争力
– 特定の製品・サービスに関して、消費者が直接観察・
評価できる指標
• 価格
• 知覚された製品内容(例えば、機能)
• 納期 など
• 深層の競争力
– 表の競争力を背後で支え、企業の組織能力と直接的
に結びついているもの。
•
•
•
•
生産性→価格競争力
生産期間→納期競争力
開発期間→消費者が知覚する商品力
適合品質(不良率)→消費者が知覚する商品力 など
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
18
深層の競争力:QCDF 藤本(2001)
• 品質(Q)
– 総合品質:製品に体化された情報であり、潜在的に
顧客満足を生み出すもの(性能、機能、デザイン)。
– 総合品質(total quality)=設計品質(design quality )
+製造品質(manufacturing quality)
• 設計品質:製造の目標としてねらった品質。設計図面に
盛り込まれた性能・機能のレベル
• 製造品質(適合品質):設計品質をねらって製造した製品
の実際の品質。いかに設計図面どおりにできているかを
示す尺度(製品のたてつけ、信頼性、耐久性など)
• 両方とも大事。同時追求をめざす。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
19
• コスト(C)
– 製品一単位当たりのコスト=製品原価
– コストを反映しない価格設定は、長期的に維持不可
能。
– 原価企画:製品のコスト目標は、当該製品の目標価
格を出発点として、これを展開するかたちで展開され
るべき。
– 製品原価=労務費+材料費+経費(開発費・設備等
の減価償却費)
– 総原価=製品原価+販売費および一般管理費
– 各々のコスト要素=生産性×投入要素価格(例:時
間当たり賃金、設備単価、部品単価など)
• 製品一個当たりの労務費=「労働生産性(製品一個当たり
の所要工数)」×「一時間一人当たり平均人件費」
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
20
• 納期(D)
– 顧客から見た場合の調達期間(発注から納品ま
での期間)
– 開発期間(開発リードタイム)
• 製品開発の開始から発売までの期間
– 生産期間(生産リードタイム)
• 原料が投入されてから出荷までの期間
– 納期の裏付け=生産能力(各工程の算出可能
量)
• 需要量>生産能力 → 品切れ、期間損失
• 受注生産 → 受注残(売れ残り)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
21
• フレキシビリティ(F)
– QCDとは同列ではないが、環境の変化や多様性への対
応を要求される産業では、競争力の重要な貢献要因。
– QCDが、外的要因の変化によって、マイナスの影響を受
けない程度のこと。
• 生産量やロットサイズの減少に対して、コスト面でフレキシブルな
システム
– 変動費に対する固定費の比重が小さい、段取り替え(品種の切り替え)
のコストが小さい。
• 製品設計の変化や多様性に対するコスト面でフレキシブルなシス
テム
– モデル間での部品の共通化(同一部品で複数製品に対応)と、工程の
汎用化(同一工程で複数品種に対応)の組み合わせで対応可能。
– 高いフレキシビリティと生産性(コスト)は両立しないと、一
般的に言われるが、20世紀後半の日本のメーカー(たと
えばトヨタ自動車)のなかには、その両立に成功した企業
もある。競争力の源泉にした。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
22
生産性についてもう少し詳しく
• コストの規定要因
–
–
–
–
生産性(原単位)
投入要素価格(材料価格、賃金率、設備価格等)
製品原価=生産性×要素価格
コスト競争力向上→「生産性向上」「要素価格切り下げ」
• 生産性
– インプット(生産要素の投入)とアウトプット(経済的に有用
な産出)の比率
– アウトプットによる分類:物的生産性、価値生産性
– インプットによる分類
• 部分生産性(PP):労働生産性、資本生産性、原材料生産性
• 全要素生産性(TFP):上記の総合指標
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
23
•
部分要素生産性
– 労働生産性
• もっとも一般的な生産性指標。一人当たり生産性、労働時間当たり生産性など。
• 同じ「一人」といっても、熟練度によって生産性が異なる。
• 工数=製品一個当たり延べ投入労働時間(人・時/個)
– 平均的な熟練度の作業者100人、年間1800時間ずつ労働、90万個生産。
– 工数=100×1800÷900000=0.2人・時/個
– 直接労務費が1時間当たり平均2000円の場合、製品1個当たり直接労務費は400円。
– 資本生産性(設備生産性)
• 集計レベルによって適切な指標が異なる
• 設備あたり生涯累積生産量を設備価格で割ることで、「製品一個当たりの当該設備の
コスト」が計算可能。
• 「運転時間当たり生産量」
– 原材料生産性
• 産出量1単位当たりの原材料投入量
• 歩留り(yield)、原単位
• 製品1つあたりいくつの部品が必要なのかは、設計時点で決まっている=部品展開表
(bill of materials, BOM)。
• 上流の素材・成形工程では、原材料生産性改善の余地が大きく、製造現場では歩留り
が重視されることが多い。
• 半導体製造のウェハー工程における「歩留まり率」、高炉段階における「コークス比」。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
24
• サイクルタイム(CT):各工程における一区切
りの作業に要する時間
– 正味作業時間
• CTのうち実際に付加価値(使用価値)を生み出す時
間
• 設計情報の転写が実際に行われている時間
– CTの長さが現場レベルの労働生産性のひとつ
の指標
– CTと正味作業時間の関係を分析することで、労
働生産性の要因分析ができる。
– 1個あたり正味作業時間の減少=情報転写効率
のスピード向上
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
25
• 自動車最終組立工程の労働生産性
– 完成品1台あたりの工数(人・時/台)
• 「当該工程の一日あたり延べ実労働時間(作業者数
×1日あたり平均実労働時間)」を、「一日あたり生産
台数」で割ったもの。
• ライン停止がないと仮定すると、一日あたりの生産台
数は、一日あたりの実労働時間をCTで除したものに
等しい。→「CT×作業者数」であらわすことも可能。
– CT1分の組立ラインで一日延べ600人の作業者が働いてい
る場合、労働生産性は10人・時/第(600人・分/台)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
26
• 時間労働生産性
=一個当たり所要工数
=「1台あたり延べ実労働時間」÷「一日あたり生産台数」
=(「1台あたり延べ正味作業時間」/「一日あたり生産台
数」)÷(「一台あたり延べ正味作業時間/「一日あたり延べ実労
働時間」)
=一台当たり総正味作業時間÷平均正味作業時間比率
=情報転写のスピード÷情報転写時間のシェア
• 製品設計を所与とすれば、情報転写スピードが早い
ほど、また、情報転写時間のシェアが大きいほど、人・
時単位の労働生産性は高くなる。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
27
•
労働生産性を高めるために、どちらからアプローチするか?
– 一台当たり総正味作業時間 OR 平均正味作業時間比率
– 歴史的にはどちらも実施
– トヨタ生産方式に代表される日本企業のものづくりマネジメントでは、「正味作
業時間比率の増大」を重視する「ムダ削減アプローチ」。
– 日本の組立系企業の国際競争力向上に大きく貢献
•
修正済み労働生産性
– 同一製品・同一工程の工場が2つ存在することはほぼない。
• 労働生産性をそのままもちいた横並び比較はできない。
• プロダクトミックス、内製率、自動化率、稼働率などは、企業や工場ごとに異なる。
• 同一企業内の工場間の比較でも難しい。データ補正作業が必要。
– 工学的アプローチによる補正:IMVPの調査結果
• 自動化、プロダクトミックス、内製率修正済みの車体溶接工数(生産性)は??
• 全世界の自動車組立工場の生産性比較分析(図5.4)
• 80年代後半、90年代前半、2000年、2006年(アジア地域)
– 当時の日本の自動車メーカーは、平均すれば正味の組立生産性で欧米メーカーを上回ってい
た。
– 欧米自動車企業による、「日本の生産性に追いつけ」運動。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
28
自動車生産性の国際比較(IMVP調査):
日本国内工場の生産性が最も高い
一台当たりの組立作業時間
45
41
40
35.5
35
30
24.9
25
20
15
16.8 16.5
29.7 28
25.3
21.9
20.1
16.8
12.3
10
5
0
JP/JP
US/NA
1989年
EUR
1994年
NE
2000年
JP/JP:日本国内の日本自動車メーカー、US/NA:北米国内の米国自動車メーカー
EUR:欧州内の欧州自動車メーカー、NE:新興国工場(アルゼンチン、オーストラリア、韓国等)
出所)Holweg and Pil (2004), Figure 4.1に筆者加筆
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
29
• 部分要素生産性の限界
– 生産工程が異なる場合や大きく変化する場合に、クロスセク
ションおよびタイムシリーズ比較は難しい。(異業種間比較や
長期生産性分析)
– 資本と労働の代替関係
• 全要素生産性の利用
– ある工場・企業・産業などにおける、集計された投入と集計さ
れた産出との比率。
– 物的な要素生産性とは、生産工程に展開するさまざまなメディ
アに体化した製品設計情報を、原材料・仕掛品のうえに転写す
る際の「効率」。
– 工程から製品への「情報伝達の効率」
– TFPについては上昇率が重視される
• TFP上昇率=投入の増加で説明できない産出の増加、つまり、生産
関数のシフト(技術進歩、イノベーション)。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
30
能力構築競争 藤本(2003)
• 能力構築競争
– 顧客に直接見えないレベルでの競争
– 1970年代後半以降における、世界の自動車企業の間で
の能力構築競争。
– 1980年代には、トヨタなどの日本企業が、世界の他の企
業を引っ張る形で、生産・開発・購買のグローバルな能力
構築競争が進展。
• 組織能力の模倣が困難な要因
1. 組織能力の中身が複雑で理解しにくい
2. 作り上げるのに時間がかかる
3. 組織能力の中身が時間の経過とともに強化される
•
「組織能力」を構築する「能力」に関わる。
–
•
トヨタの「進化能力」
シャープの「液晶技術」とそれによる製品開発力を30年以上に
わたって、強化し続けてきた。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
31
それまで鍛えてきた組織能力ものをいうとき:
たとえば不況期
出所)延岡健太郎, 藤本隆宏(2004)「製品開発の組織能力-日本自動車企業の国際競争力-」MMRC Discussion Paper No.9の図1
と図2
•
•
リーマン・ショック後の米国ビック3の苦境。日本企業も確かに苦しいが・・・。
不況期に、どのような能力構築(eg. 事業展開、現場改善、人事政策など)を行うかが、
次の競争での勝敗を左右する。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
32
組織能力の重層構造
•
静態的能力
–
トヨタ的システムを構成する組織ルーチン
•
•
•
•
•
かんばん方式、TQC、継続的改善運動
長期取引と多面的能力評価による購買管理
多能工育成型の人事管理
問題解決の前倒しによる迅速な製品開発
改善能力(ルーチン的な変革能力)
–
組織全体の問題解決能力
•
•
•
•
年間、百万件近い改善提案
現場の問題がいやでも顕在化する問題発見の仕掛け
標準化した問題解決手法の全社員への徹底教育
進化能力(ルーチンを変革する能力、新たな能力をつくりだす能力)
–
–
–
「若い頃の貧乏暮らし」:戦後の焼け野原からの再起
ルーチン的な静態的能力、改善能力を生み出してゆく非ルーチン的変革能力
失敗からも、成功からも学び、自己に体化させてゆく。
出所)藤本隆宏(1997)『生産システムの進化論』有斐閣
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
33
トヨタにおける生産システムの進化
藤本(1997)
• トヨタ自動車が世界の自動車メーカーの手本になるような
開発・生産システムは、事前の合理的な計画によって構築
されたものではない。
– 戦前から1950年代にかけて、フォード自動車との提携を何度も
模索したが、失敗に終わる。そのため、不完全な技術移転の
道を歩まざる終えなくなった。
– その制約条件を逆手にとり、「かんばん方式」をはじめとする独
自能力を構築してきた。
• トヨタの強みの真髄は、環境の制約条件や歴史的な偶発
事象など、企業にとって直接的にコントロールできないよう
な状況にその都度対応しながら、事後的に一貫した合理
的なシステムを構築する「事後的進化能力」にある。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
34
トヨタ自動車の事例(藤本・ティッド、1993)
• フィードやGMの日本進出は早い。
• 1925年:フォードの100%子会社日本フォードが設立さ
れ、横浜にノックダウン組立工場が建設された。
• 1927年:GMも日本ゼネラル・モータースを設立、大阪
でノックダウン組立工場の操業を開始。
• 輸入車ノックダウン組立は1934年にピークを迎え、日
本の国内市場の92%を占めており、完成輸入車が
5%、日本車は残りの3%(1000台)に過ぎず。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
35
豊田喜一郎の挑戦
•
当時は豊田自動織機製作所常務
•
1933年9月
– GMの33年型シボレーを購入し、35年5月にA1型試作車を完成させた。
•
1934年
– 豊田自動織機は刈谷に自動車の試作工場の建設開始
•
1936年
– 工場完成
– 自動車製造事業法が制定。
– 自動車製造が国の認可事業になり、生産は日本の会社に限定され部品もすべて国産にすること
になった。
– 結果、米国系子会社は日本からしめだされた。
– この時期の刈谷工場の生産能力は月産150台。
•
1937年
– 豊田自動織機は、自動車部を分離してトヨタ自動車工業株式会社を設立。
– 豊田喜一郎はトヨタ自動車工業の副社長就任
•
1938年
– 挙母町(現豊田市)に月産2000台(乗用車500台、トラック1500台)の挙母工場を完成させた。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
36
•
日中戦争が勃発し、第二次大戦を迎えることになる。
– 1945年9月には、トヨタはGHQの許可を得て、30年代に購入した古い機械を
利用することでトラックの生産を開始したが、終戦直後では、米国量産工場
の生産性は、トヨタの10倍ほどもあった。
•
豊田喜一郎は、この状況下で、「3年以内に米国の生産性に追いつく」
という大胆な目標を打ち出した。
– さすがに、3年では達成できなかった。しかし、トヨタは、本格的な乗用車であ
るトヨペット・クラウンを完成させた1955年まで、10年をかけて生産性を10倍
にした。
•
この間、米国の生産性は向上していなかったので、米国企業に追いつく
という目標は10年で達成された!
•
一見すると非合理的で無茶な戦略だが・・・
– しかるべき人がしかるべき時に宣言すれば、そして、ある程度の長期にわ
たって、変更・撤回されなければ、戦略は人びとの迷いを取り払い、元気づけ
て、方向づけることができる。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
37
製品開発に関わる組織・戦略・人材マネジ
メントの日中韓比較分析
企業レベルの分析
参考文献:都留康・守島基博編著(2012)『世界の工場から世界の開発拠点へ』東洋経済新報社.
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
38
製品開発のパフォーマンス
•
製品開発の課題
– いかに魅力ある製品を
– いかに効率的に
– いかに素早く開発し、市場に導入できるか
•
製品開発のQCD
– Q(Total Product Quality):総合製品品質
• 顧客にどれくらいの満足を与えられるか
– C(Development Cost):開発生産性
• 開発のために必要とされる資源投入量(ヒト・モノ・カネ)をどれくらい用いたのか
– D(Development Lead Time):開発リードタイム
• 開発の開始から製品の生産開始あるいは発売開始までの経過期間(リードタイム)
•
製品開発のマネジメントは難しい。
– だからこそ、マネジメントの良し悪しで、上記の三つの指標に企業間で大きな違
いが生じる。
⇒製品開発のマネジメントに成功すれば、持続的な競争優位を得られる。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
39
分析の枠組み
図1 製 品開発と人材マネジメントに関する因果関係図
市場環境
競合他社
消費者ニーズ
製品戦略
コスト・差別化・
ターゲット
製品アーキテクチャ
1. インテグラル/モジュラー
2. クローズ/オープン
経営資源
製品開発組織
1. 機能部門かプロジェクト組織か
2. プロジェクトマネージャーの性格
3. 内部調整・サプライヤーや顧客
など外部との調整パターン
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
開発成果・企業業績
人材マネジメント
1. 外部労働市場との関係性
2. 内部労働市場の編成状況
3. 能力開発・インセンティブ付与
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
40
アーキテクチャを変える?使い分ける?
すり合わせ型
組織能力
インテグラル型
アーキテクチャ
事後的調整
必要性「大」
長期的イン
センティブ
横断的開発
組織
モジュラー型
組織能力
モジュラー型
アーキテクチャ
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
事後的調整
必要性「小」
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
短期的イン
センティブ
機能別開発
組織
41
研究の背景
• 東アジア地域:「安価な生産拠点」から「製品開
発拠点」へ
– 2000年代以降、知識集約産業であるICT関連産業に
おいて、東アジア企業は強い国際競争力を有し、国
際分業でも世界をリードする地域に成長。
• 日中韓比較を通じて、製品アーキテクチャと開発
組織・人材マネジメントの間の補完関係、およ
び、それが製品開発に与える影響を国際比較す
る。
– 電機・電子・情報通信産業を対象
– 聞き取り調査と質問紙調査により実証分析
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
42
基本的な仮説
• 仮説1
– 企業は経営資源や製品市場などの環境条件に応じ
て製品アーキテクチャを戦略的に選択する.
• 仮説2
– 企業は選択した製品アーキテクチャに対応して開発
組織のデザインを戦略的に選択する
• 仮説3
– 企業は選択した製品アーキテクチャと開発組織とに
補完的な人材マネジメントの方法を採用する
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
43
主要な結果:仮説1
• 聞き取り調査
– 携帯電話、液晶テレビ、情報システムのいずれでも、
製品アーキテクチャを企業が戦略的に選択。
– 各社、蓄積された技術的・人材的能力の水準や製品
市場での品質要求(ハイエンド or ローエンドなど)に
応じて、インテグラル型とモジュラー型を意識的に選
択。
• アンケート調査
– 中国:モジュラー志向
– 日中韓:いずれも、同一業種であっても、モジュラー
寄りとインテグラル寄りにはバラつきあり。特定の
アーキテクチャが支配的ではない。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
44
主要な結果:仮説2
• 聞き取り調査
– モジュラー寄りの傾向の強い情報システムの場合、機能
部門型組織で開発。
– インテグラル寄りの傾向の強い携帯電話端末や液晶テレ
ビの場合、機能部門横断型プロジェクト組織で開発。
• アンケート調査
– 日本:機能部門横断的なプロジェクト組織の採用が相対
的に多い。
– 中国:機能部門内で開発
– 日本と中国:インテグラル型アーキテクチャと機能部門横
断的プロジェクト組織、モジュラー型アーキテクチャと機能
部門重視組織との補完関係が確認。
• 韓国ではこのような補完関係が確認できず。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
45
主要な結果:仮説3
• 聞き取り調査
– インテグラル型内部育成重視・長期的視点からの能力開
発・インセンティブ付与
– モジュラー型中途採用重視・短期的視点からのインセンティ
ブ付与
– 開発組織と人材マネジメントとの補完関係は確認できず
• アンケート調査
–
–
–
–
日本:新卒内部育成重視
中国:中途採用重視
韓国:新卒を重視しつつ、中途採用も多い。
製品アーキテクチャと人材マネジメントとの補完性
• 人事施策・慣行間の整合性が高まれば開発パフォーマンスも高まる
という関係
• 日本と(部分的に)韓国に関して、補完性が存在。
• 中国では実証されず。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
46
聞き取り調査の対象企業
出所)都留・守島(2012)、表6-4
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
47
聞き取り調査の結果の全体像
出所)都留・守島(2012)、表6-7
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
48
インプリケーション①:日本企業に関して
• 日本企業では、「インテグラル型アーキテクチャと機能部
門横断的なプロジェクト組織」、「モジュラー型アーキテク
チャと機能部門組織」との間の補完関係が明確であっ
て、また前者の場合に重量級プロジェクトマネージャーが
存在するという首尾一貫したパターンがみられる.
• こうした補完性は、日本企業が、経済発展と国際競争の
中で、試行錯誤の末に自生的・内発的に獲得していった
もの.
• だが、海外ではそうした補完性の意義が必ずしも十分に
認識されていない.
• 今後、日本企業が戦略的提携やコンサルティングを行う
際には、日本から海外へノウハウ移転が重要である.
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
49
インプリケーション①:日本企業に関して
• 製品アーキテクチャと人材マネジメントとの「見せかけの補完
性」?
– 日本企業のインテグラル型アーキテクチャは、長期志向の人材マネ
ジメントと強く結びついている.
– これ自体は補完性の証だが、近年、日本企業では長期志向の人材マ
ネジメントを「不動の前提」として、それが製品アーキテクチャをインテ
グラルなものに逆規定している?
– 「高技能の人材が余っているから、現在高い技術的蓄積があるから、
製品をインテグラルにする」という逆因果の可能性.
• これは国内市場が安定的に成長しているときには有効に機能し
たが、その条件は急速に失われつつある.
• 日本企業は、変化する製品市場の状況や韓国・中国の競合他
社をにらみ、製品アーキテクチャと人材マネジメントを戦略的に
調整すべき時期にきている.
– この点に関しては、インテグラルとモジュラーを使い分けた上で、中途
採用・新卒採用、短期雇用・長期雇用を組み合わせる韓国グローバ
ル企業には学ぶべきものがある.
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
50
インプリケーション②:中国企業に関して
• 中国企業でもやがて内部化・長期化が課題になる
• 中国企業に対しては、今後製品内容が高度化し、イン
テグラル型アーキテクチャを採る場合には、長期的視
点からの能力開発、リテンション、インセンティブ付
与、つまりは内部労働市場の確立が重要になる.
• 中国では労働法の改正により、有期契約から期間の
定めのない雇用への移行が基本方向である.この意
味でも、中国企業には今後長期的視点に立った人材
マネジメント(特にリテンション政策)が求められる.
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
51
インプリケーション③:韓国企業に関して
• インテグラル型製品の開発では、開発と製造との連携や早い段
階での問題解決が必要。しかし、聞き取り調査の中で開発部門
と製造部門との連携に問題があることが示された.
– こうした問題は、部門ごとの業績を反映させたインセンティブ付与により、
部門の機会主義的行動が促進されているためと考えられる.
• 韓国では、全般的にプロジェクトマネージャー(PM)の権限が強
いが、これは「強いられている」面もある.
– 人材不足を埋め合わせるために、PMが肩代わりせざるを得ない状況で
はないか?
– 結果として、PMへの仕事の集中が過度になり、PMのなり手が少ないとい
う状況が生まれつつある.
– 将来のPMを考慮した厚みのある人材育成の強化が必要
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
52
【ポイント】①アーキテクチャの使い分け
• モジュールの切り分けかた・製品戦略・開発組織のフィットネス
が重要。
– うまくいかない可能性が高い例
• ローエンド市場に対して、インテグラル度の高いアーキテクチャ。
• モジュラー度の高い製品なのに、緊密に相互調整しながら作っている。
– アーキテクチャの使い分けを上手く行えているかどうかがポイント
• 聞き取り調査から、韓国企業は、それを上手く行っていることが分かった。
• 日本企業は、持ち前の高いすり合せ能力を活用して、インテグラル製品お
よびモジュラー製品も、力業で作っている。
• 製品の複雑性・調整の相互依存性を、①どこに、②どのように
閉じこめるのか?
– 特定の部品
• 例:半導体と組込みソフトウェアの組み合わせ
– 製造装置内
– 社内 or 社外
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
53
【ポイント】②重量級プロジェクト・マネジャー
• 部門間の調整役
– 製品のインテグラル度が高いほど、プロジェクト・マネジャーの権
限が強くなる傾向が見られたが・・・
• まとまりのよい製品を作れているかどうかは、別問題。
• 重量級PMによる事後的調整にかかるコストに見合う、顧客の支払意
欲を得られるかが、企業利益を高めるためには必要。
– 製品コンセプトまで責任を持つことが重要
• 顧客に評価されるコンセプトを作れるかどうかは、別問題。
– たとえば、Apple社のiPhone、iPadのような、製品コンセプト、デザ
イン重視の製品をどう見るか?
• 携帯電話端末開発の事例研究では
– 日本企業の方が、むしろ、外的統合力が低くなっている?
• 必要とされない能力は育たない・弱りがち
– 韓国・中国の方が、安価だが外観デザインを重視した製品をス
ピーディーに提供する傾向にある。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
54
【ポイント】日本企業の伝統的な
製品開発力の存在は確かめられたが・・・
• 日本企業の伝統的な強み
– 新規製品投入、すり合せ型製品開発、重量級PM、長期雇用・内部育
成等
– これらが、売上や利益の伸びにつながっているかどうかは要検討。
• インテグラル寄り製品を開発するための組織能力は、日本企業
では、総じて高い傾向にある。
– 時間をかけて地道に積み上げられたものなので、すぐには、模倣され
ないだろう。
– しかし、全ての製品を日本で開発しなければならないかというと、そうで
もなさそう。
– すり合わせの能力が高いがゆえに、インテグラル型アーキテクチャを
選択しがちであるという、「インテグラル・バイアス」が、日本企業に強く
見られるのではないか?
– モジュール化戦略で攻めてくる、韓国・中国企業がいる場合に、日本企
業の戦略によって勝ち残ることはできるのか?
• 日本企業の戦略が生き残る場合は?(インテグラル型アーキテクチャ×長期的人材育成)
• 中国企業の戦略が生き残る場合は?(モジュラー型アーキテクチャ×短期的人材)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
55
【ポイント】日本企業の過剰なすり合せ(事後的調整)
• 設計合理化を進めてくる、韓国企業、中国企業といかに競争
するのか?
• 過剰なすり合わせ、過剰な品質への懸念。
– 韓国企業は相対的にモジュラー寄り。中国企業も同様。
– 同じ製品で競争したときに、要求品質の高い顧客や高いプレミアムを支
払ってくれる顧客を捕まえておかないと、日本企業は苦戦する恐れあり。
• モジュール化戦略を日本企業が採る場合、戦略と組織のあり
方について再考する必要あり。
– モジュール化後に、現有のすり合せ組織能力とのズレが生じる可能
性。
• 相対的にモジュラー寄りの製品を開発・生産する場合には、
海外拠点を活用する、という方向も?
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
56
• 技術開発戦略
– 日本企業は、3分野ともに技術的リーダーシップを採る
傾向。
– それと比して、韓国企業は少し遅れ気味であり、中国企
業は確立後の市場に参入する後発戦略を採る傾向。
– 日本企業の競争優位性を何処に見出すのか?
• 「生産」と「開発」のアーキテクチャは違う場合あり
– 設計のモジュール化と、生産の効率化を短絡的に結び
つけるのは危険。
– 製品設計のモジュール化が進んでも、生産自体は、す
り合せ的な要素が残る可能性あり。
– 総合的なバランスについて考慮して、拠点配置を行う必
要あり。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
57
マネジリアルインプリケーション①
• アーキテクチャの選択と「戦略」とのミスマッチが起
きていないか?
– 過剰品質? 過小価格?
• アーキテクチャの選択と「組織」とのミスマッチが起
きていないか?
– 過剰すり合せ? 過剰分業?
– 組織能力を活かしたアーキテクチャ選択を!
– 一方で、作りたいアーキテクチャに必要となる能力構築も忘れずに!
• 難しければ、海外企業との協業も視野に。
• 東アジア地域における、開発分業体制の構築の一
つの方向性。
– 比較的インテグラル寄りなもの→日本に残す
– 比較的モジュラー寄りなもの→韓国・中国と協力?
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
58
マネジリアルインプリケーション②
• 日本企業の製品開発力は健在である。
しかし・・・
• 韓国企業や中国企業は、次元の異なる戦略で攻め
てきている。
– モジュール化パワーを活用して、世界の市場を獲得してい
る。
– 新興国市場を日本企業はどう扱うのか?
• 日本企業は、内向きなすり合せが得意だが、そこに
偏重気味?
– もっと市場(顧客・ライバル)を見る必要あり。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
59
マネジリアルインプリケーション③
•
日本の場合は、典型的に、「インテグラル・長期インセンティブ」のときに、高パ
フォーマンス。
– インテグラル製品の開発パフォーマンスを下げることなく、開発を行うことができる
のは・・・組織能力が高いから
•
つまり、相対的に「めんどうくさい」製品を、効率よく開発する能力に長けてい
る。それを可能にするには、長期的インセンティブ付与が必要。
– インテグラル製品なので、事後的な調整が必要になる。
– 逆に、事前にデザインルールを決めておけば、事後的な調整が不要となるのが、
モジュラー型製品。
– 重要なのは、誰かが、事前の調整をしなければならないと言うことであり、本来は、
その活動を行った主体が、そこから生み出される価値を享受することになるはず。
– モジュール化の場合には、モジュラー化を進めた主体(つまり、デザイン・ルールを
決めた主体)が、競争優位性を持つ。
– さらに、デザインルールにしたがって、製品を開発する企業も、上手く、特化すれ
ば、競争優位性を得られる。
•
しかし・・・日本企業で、インテグラル型製品を作っている企業の場合、必ずしも
そうなっていない。
– インテグラル型の製品を効率的に開発できる組織能力を活用できるような競争戦
略・全社戦略の構築が必要
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
60
環境変化に対する生産現場の適応力:
組織内での役割分担を変えて難局に対処する
参考文献:
• 福澤光啓, 稲水伸行, 鈴木信貴, 佐藤祐樹, 村田香織, 新宅純二郎, 藤
本隆宏(2012)「奔走するリーダー:環境変動に対する自動車組立職場
の適応プロセス」『組織科学』 46(2) 75‐94.
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
61
概要
• 近年、自動車産業の生産現場では、組織体制をどうするの
かが大きな問題となっている。加えて、2008年以降の世界金
融危機以降、生産現場を取り巻く環境は大きく変動してい
る。これらの現代的な問題も本研究の背景にある。
• 本研究では、ある自動車組立職場において5ヶ月間にわた
り、綿密な現場観察とグループリーダーの行動の時間分析を
行った。
• その結果、生産数量の急激な変動と要員不足という厳しい
経営環境において、調査先の工場では、異常や問題の対応
に奔走するグループリーダーの姿が観察された。
• それは、グループリーダーも含めた現場の作業組織の高い
能力を生かして、従来の作業組織を変えながら適応するパ
ターンを示唆するものであった。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
62
既存研究
•
生産現場の競争力の主要な源泉の一つは、問題や変化への進化適応能
力。「トヨタ生産方式」、「リーン生産方式」。
(e.g., 大野, 1978; Womack, Jones and Roos, 1990;MacDuffie, Sethuraman
and Fisher, 1996)。
•
日本企業は、長い年月をかけて、フレキシビリティ、生産性、品質を高いレベ
ルで両立する生産システムを構築。(藤本, 1997)。
•
生産システムを支える「知的熟練」
(小池ほか, 2001; 小池, 2005)
– 「ふだんの作業」と「ふだんと違った作業」の2つが製造現場では観察される。
– 「ふだんと違った作業」の対応に必要となる技能や知識=「知的熟練」
•
一般的な作業組織の編成原理→意思決定のタイプに即して垂直的な分業
(March and Simon, 1958)。
•
自動車生産職場 (1)作業者、(2)チームリーダー、(3)グループリーダー
•
グループリーダーは最も知的熟練の能力が高く、生産システムの進化に大
きな役割を果たすと考えられる。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
63
生産現場における組織の編成
•
小池(2005)の「ふだんの作業」と「ふだんと違った作業」は、「ルーチン的意
思決定」と「非ルーチン的意思決定」(March and Simon, 1958)に対応してい
ると考えられる。
•
意思決定タイプに即して垂直的に分業をするように組織は設計される
(March and Simon, 1958)。同様に、生産現場の作業組織も、おおまかに次
のような3つの意思決定(仕事・タスク)のタイプとそれに伴う3つの階層構造
がある。
•
意思決定のタイプ
1.
2.
3.
標準作業の繰り返し
生産ラインにおける異常や停止、作業遅れの対応という問題解決活動。
生産量や生産性、要員数などの変動に対応するために、作業標準の見直しや
生産設備・作業の改善といった生産現場の変化対応能力を高める仕事を行う。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
64
• トヨタ生産方式を採用している工場における作業者、チー
ムリーダー、グループリーダー間での役割分担に関する
既存研究
– 藤本(1997)、Mishina (1995)、石田他(2009)、辻(2002)など
1. 作業者:標準作業を適切に実行することに従事
2. チームリーダー(班長):、数人の作業者の直接的なリー
ダーで、年休者などのリリーフや、ライン停止などの不具合
に直接対処
3. グループリーダー(組長):基本的には生産ラインにおいて
作業することはなく、作業標準の改訂などといった、ライン
から幾分はなれたところでの管理業務
• 「知的熟練」に関する既存の議論では、その担い手を生
産労働者というように一括りにする傾向がある。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
65
• 「トヨタ生産方式」を中心とした自動車生産現場に関する既存研究
では、生産ライン内外で生じる問題や変化にどのような組織編成・
役割分担で対応・解決しているのかが示されてきた。
– 生産ライン上で生じる異常や問題には基本的にはチームリーダーが
対応する。一方、グループリーダーは、作業標準の改訂や作業者の
教育など、比較的中・長期的な変化への対応に取り組んでいる。
• そのため、グループリーダーは基本的には生産ラインで作業をす
ることはないとされる。そして、生産現場の組織、とりわけチーム
リーダーやグループリーダーの能力の高さが日本の自動車企業
の生産性や品質の高さを支える重要な強みであると考えられてき
た。
• 本研究では、意思決定タイプによる垂直的な分業がなされるという
組織の編成原理を改めて念頭におきながら、生産現場がいかにし
て問題や変化に対応しているのかを見ていく。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
66
問題意識
• 生産現場の作業組織が、2008年の金融危機後の厳し
い環境変動に対して、どのように進化適応しているの
か?
• 調査対象:自動車メーカーX社のY工場α組
(シャシー工程)
• 調査期間:2010年2月から6月まで。
• 分析手法
– グループリーダーの行動をビデオに撮り時間分析。
– 時間間分析の他、作業者の作業観察、関係者へのインタ
ビュー、帳票類、社内データなどを総合的に組み合わせて分
析。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
67
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
出所)日本自動車工業会データベース(http://jamaserv.jama.or.jp/newdb/)より筆者作成
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
2010年3月‐2010年5月
2009年9月‐2009年11月
2009年3月‐2009年5月
2008年9月‐2008年11月
2008年3月‐2008年5月
2007年9月‐2007年11月
2007年3月‐2007年5月
2006年9月‐2006年11月
2006年3月‐2006年5月
2005年9月‐2005年11月
2005年3月‐2005年5月
2004年9月‐2004年11月
2004年3月‐2004年5月
2003年9月‐2003年11月
2003年3月‐2003年5月
2002年9月‐2002年11月
2002年3月‐2002年5月
2001年9月‐2001年11月
2001年3月‐2001年5月
2000年9月‐2000年11月
2000年3月‐2000年5月
1999年9月‐1999年11月
1999年3月‐1999年5月
1998年9月‐1998年11月
1998年3月‐1998年5月
1400000
1997年9月‐1997年11月
1997年3月‐1997年5月
1996年9月‐1996年11月
1996年3月‐1996年5月
1995年9月‐1995年11月
1995年3月‐1995年5月
1994年9月‐1994年11月
1994年3月‐1994年5月
1993年9月‐1993年11月
台
経営環境の変化:
自動車生産台数推移 メーカー別
1200000
1000000
トヨタ
日産
800000
マツダ
三菱
いすヾ
600000
ダイハツ
ホンダ
400000
富士
UDトラックス
日野
200000
スズキ
日本GM
0
三菱ふそう
その他
68
X社の特徴と直面している状況
•
•
X社の歴史と特徴
– 比較的少量生産の車種を多種多様に生産。最大5車種生産。
– ピーク時でも月産1万台強。
– 厳しい生産計画に応える、コンパクトだがしぶとい現場。
– 生産量・品種の変化に対応するフレキシビリティが特徴。
– 2007年から3車種を一本のラインで生産。
X社の直面していた状況
– 米国金融ブームで生産量を伸ばしてきたが、リーマンショック
–
で生産激減。
–
・2008年10月 月産1.4万台→2009年4月 月産3千台
–
→2009年9月以降は月産5~6千台で推移。
– 操業時間調整、1直化、非正規社員契約終了(正社員体制)、雇用
調整助成の活用、余剰人員活用の教育・訓練・改善・設備内製、
等々で対応。
–
・2009年7月から正社員を数百人規模で他社応援。
– 残業を極力しない・させないことがX社全体の方針
• 計画生産台数を達成するためにラインをなるべくストップさせずに生産しなけ
ればならない。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
69
対象工程(α組)のレイアウト図(概略)
•
•
グループαには12工程あり、2つのゾーンに分かれる
各TLが各ゾーンを管理し、GLが2つのゾーン全体を管理
ZONE B
b8
b7
(b6)
b5
(b4)
b3
HP
b2
stairway
table
Worker
Hall
TL
a9
GL
H
P
Home Position of GL
a2
a3
(a4)
(a5)
a6
(a7)
a8
Flow of Body
EngineMount AGV
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
ZONE A
70
ライン管理者の役割
• ライン管理者
– 基本はTLの仕事
– 生産の流れを管理
– ラインで異常が発生すると、その場に行
き解決を図る(On‐lineでの問題解決)
GL
ライン管理者と
してのGL
• GLもライン管理者になりうる
– 作業者が年休等を取って休みの場合
• TLがその工程に入り仕事
• GLがライン管理者として仕事
•
TL
ライン管理者
調査した12日のうち10日で
GLがライン管理者として仕事
作業者
ライン管理者
TL
作業者が休み
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
71
生産量の変動
• Y工場の生産量のピークは月産10,000台を超えていた
• 2008年の金融危機後に生産量は大きく減少
– 月産14,000台
– 月産 3,000台
(2008年10月)
(2009年 4月)
• その後、急激に生産が回復
– 月産 6,000台
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
(2010年 3月)
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
72
高いタスク負荷
•
•
•
2000年代半ば、多くの期間作業者を雇用
– 直接作業(ラインでの生産に従事する作業者)の40%程度
金融危機後、期間作業者の契約満期に合わせて、作業者数を減少
経営判断として、2009年7月より、正規従業員を親会社・グループ会社の工場に応援として派遣する
ことを決定。
生産量の急回復
作業者の減少
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
・ 非常に高いタスク負荷に直面
・ 高い生産性を維持することが困難に
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
73
生産性の推移
•
•
•
厳しい状況下でも、継続的に生産性向上。
結果だけ見れば、「人員が減って、生産台数が増えた」ので、労働生産性が上昇していると言えそう。
ただし、相対的に少ない人員で、多くの生産を行おうとすると、何も工夫をしなければ、混乱が生じて
しまい、生産性が下がる可能性が高い。
–
•
•
•
⇒生産現場は、どのような工夫をしていたのか?
高い生産性は、ライン管理者としてのリーダーからのヘルプによるところが大きい。
高タスク負荷と作業者不足によるリーダーの工程内作業が増加
•
各工程では比較的多くの要素作業 かつ タクトタイムは99秒から102秒
•
Zone Bでは、作業者不足のため・・・
•
GLが恒常的にライン管理者として仕事
•
作業者が年休取得等により、TLは恒常的に工程内作業
生産の流れを維持するために、GLとTLが生産ラインで仕事をすることに。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
74
時間分析: 27の行動分類 (2)
•
•
Zone Bのライン管理者としてのGLに焦点
• 彼らの行動を1回1時間、1日2回程度、ビデオ撮影
7つの大分類・27の小分類に行動を分類
大分類
小分類
1.異常対応
異常呼出しランプ点灯後の一連の行動
2. 直接作業
a.
b.
c.
d.
e.
f.
直接作業 (エンジン搭載)
直接作業(センターマフラー)
直接作業(アンダーカバー)
直接作業(定常)
直接作業(その他)
直接作業後の確認
3. 間接作業
a.
b.
c.
d.
e.
f.
必要部品や工具の取得・捜索
必要部品の修正
設備・装置の修正
部品送り装置の修正
メモ記入
カンバン回収
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
75
時間分析: 27の行動分類 (2)
大分類
小分類
4. コミュニケーショ
ン
a.
b.
c.
d.
電話
職制と会話
作業者と会話
その他の人との会話
5. 確認
a.
b.
c.
d.
e.
設備・装置の確認
車両の確認
作業者の作業確認
ライン状況の確認
トルク値抜き取り
6. 指導
a. 指導
7. その他の時間
a.
b.
c.
d.
待機時間
デスクでの作業
デスクワーク用の物の取得
その他
加えて、移動時間あり
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
76
行動別時間比率
• 大分類に基づいた分析結果
• 3月17日に比べて、4月2日と4月16日では直接作業が劇的に増加
E:4月16日午後
異常対応
D:4月16日午前
直接作業
間接作業
C:4月 2日午後
会話
確認
指導
B:3月17日午後
その他時間
A:3月17日午前
0%
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
20%
40%
60%
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
80%
100%
77
直接作業の小分類での分析① 3月17日
1200
1000
800
直接作業(その他)
直接作業(定常)
作業時間
600
(秒)
直接作業(エンジン搭載)
直接作業(アンダーカバー)
直接作業(センターマフラー)
400
200
0
A:3月17日午前B:3月17日午後 C:4月 2日午後D:4月16日午前 E:4月16日午後
• 全ての工程をスキルの高い作業者が実施
– GLがライン管理者。TLが年休。
• 直接作業は非常に少ない
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
78
直接作業の小分類での分析②4月2日
1200
1000
800
直接作業(その他)
直接作業(定常)
作業時間
600
(秒)
直接作業(エンジン搭載)
直接作業(アンダーカバー)
直接作業(センターマフラー)
400
200
0
A:3月17日午前B:3月17日午後 C:4月 2日午後D:4月16日午前 E:4月16日午後
• 工程b8‐1の作業者が休み = TLがその工程で作業
• GLがライン管理者。
• 直接作業(定常)が急激に増加
• 2016/07/21
TLのその工程の習熟度が不足していたため、GLが定期的にヘルプ。
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ
79
直接作業の小分類での分析③ 4月16日
1200
1000
800
直接作業(その他)
直接作業(定常)
作業時間
600
(秒)
直接作業(エンジン搭載)
直接作業(アンダーカバー)
直接作業(センターマフラー)
400
200
0
A:3月17日午前B:3月17日午後C:4月 2日午後D:4月16日午前 E:4月16日午後
•
工程a6‐1(エンジン搭載)の作業者が欠勤 = TLがその工程で作業
•
•
•
GL(バックアップ)がZone Aのライン管理者
Zone Bでも年休者がいたため、TLが工程内作業。GLがZone Bのライン管理者
直接作業(エンジン搭載)が急増
• 工程a6‐1は複数名で作業 = チームワークが必要
• But, TL及びGL(バックアップ)はa6‐1の作業に不慣れ
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ
• 2016/07/21
Zone Bのライン管理者たるGLが、Zoneを超えてヘルプに入る
80
発見事実のまとめ
1.
α組のグループリーダーの基本的な仕事は作業標準の改訂などである。た
だし、ライン進行に加え、ラインでの作業も十分に行えることも望まれる。
2.
α組の作業者は一見単能工に見えるが、多作業持ちである。年休者代行で
リーダーが入っても遅れが出てしまう。裏を返せば、それだけ多くの作業を
作業者は、短い時間の中で行い、なおかつそれを継続的にできている。
3.
チームリーダーが頻繁に作業者としてライン入りしていた。チームリーダー
は複数の工程にある程度習熟していて、生産品種の変化(4WD対応)と作
業者の変化(年休者・欠員対応)への対応を担保する存在であった。
4.
調査期間中、ほぼ全ての調査日でグループリーダーはライン進行業務に
携わっていた。
5.
ライン進行業務の中で、人の変化点があった場合(年休対応でチームリー
ダーがライン内で作業する場合)、当該工程で問題が多く発生したため、問
題対応でグループリーダーは奔走し、かなりの時間をライン内での実作業
に費やしていた。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
81
厳しい環境に置かれたY工場(α組)だったが、
培ってきた能力を発揮し、環境変化に適応。
•
(1)作業者
– 多くの作業に習熟しているので、ポジションあたりの作業量を極限まで増やした多作業持ち
をさせる。その結果として、生産ラインにかかる人数を少なくすることができる。ただし、余裕
はあまりないので、作業者同士で「助け合い」を行って作業遅れを未然に防ぐといったことは
ほとんどできない。
•
(2)チームリーダー
– ラインから浮いている人が少ないので、年休や欠員といった「人の変化」に対応することが基
本的な仕事となる。
•
(3)グループリーダー
– チームリーダーが(2)のような仕事をすることになるので、代わりにライン進行を担当する。
– また、(1)のようにぎりぎりのライン編成をしているため、チームリーダーが入ったポジション
では問題が起こりやすく(毎日同じポジションで仕事をするわけではないので、習熟度100%
とはいえ慣れが必要である)、その対応を行うことが必要となる。さらに、新人・派遣社員の
増大により、その問題対応も増える。
•
このような対応が可能になったのも、Y工場の生産組織が高い能力を培ってきた
から。
– 調査対象のグループリーダーを見てみると、標準的な姿として、3つの仕事の階層をまたが
るような能力を求められており、実際にグループリーダーはそのような能力を蓄積。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
82
• 「トヨタ生産方式」は長期的な生産量低減と多品種展開が
必要となる環境の中で培われてきた(e.g., 大野, 1978)。
• 今回、X社Y工場が直面していた環境変化は、むしろ生産
量激減の後の急回復と、人員の急減(および不足傾向)
が同時に起こったものであった。
– 経済状況などを鑑みると日本国内の需要および自動車生産
が今後大幅に増大することは考えにくいが、少なくとも現場
(工場のグループや課)のレベルではこのような変化は比較
的観察されるのではないかと考えられる。
• このような環境変化に対して、既存の教科書的な記述を
越えて、現場レベルの判断で実際にとられている臨機応
変な適応行動の一端が示された。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
83
現場の柔軟な適応行動が示唆していること
• この点に関して、生産現場の生の声を記録した清水(2005)の
以下の一節は示唆的。
– 生産数量の急増に生産ラインが追い付かず、組長がラインに入っ
て作業をしていたことが次のように回想されている)。
– 「『組長、おまえなにやっとるだ。組長がラインに入ってラインを見れ
るんか。』といわれた。だから『なに言っとるだ。俺が入らんかったら
生産が追いつかん。見ればわかるだろう』と言ってやった(清水、
2005、p.574)」。
• 生産数量が急増している場合には、在庫を積み増ししてでも
増産せよということがいわば黙認されていたということも記録。
• これらのトヨタ自動車における逸話は、場合によっては生産現
場の判断による、柔軟で臨機応変な対応で生産ラインを維持
し、それをある意味是とするところがある、ことを示唆。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
84
• X社Y工場においても、環境変動のない「通常の
状態」では、いわゆる「トヨタ生産方式」のような
生産ラインに関する基本的な考えが基軸にあっ
た。
• ただし、いわば緊急的な状況では、これを絶対
的なものとして守るのではなく、しっかりと理解し
中心に据えた上で、現場は比較的柔軟に適応。
– 「生産数量の変動」×「人員不足」×「生産性向上志
向」
– といった条件のもとでは、現場の組織能力が高い場
合に、現場の分業体制を変化させることで適応。
– ⇒生産現場や組織の適応理論を拡張できる可能性
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
85
日本の電機産業の現場力
参考文献:
• 新宅純二郎, 稲水伸行, 福澤光啓, 鈴木信貴, 横澤公道 (2014)「電機産業の現場力調査:日本の現
場の競争力を支える職場」『赤門マネジメント・レビュー』 13 (10), 371‐406.
• Inamizu, N., Shintaku, J., Fukuzawa, M., Suzuki, N., & Yokozawa, K. (2015), “Competitiveness, capability and climate of Japanese factories: An integrative survey in electric and electronics industry”, Proceedings of 22nd International Annual EurOMA Conference, LEA‐14, 10 pages. • Fukuzawa, M., Inamizu, N., Shintaku, J., Suzuki, N., Yokozawa, K., (2016) Genba‐capability and reshoring in Japanese electric and electronics industry, 5th World Conference on Production and Operations Management, Havana, (forthcoming).
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
86
調査の背景:
国内電機メーカーの現場力は?
• 1990~2010年代 電機業界をとりまく環境
–
–
–
–
コスト削減努力を打ち消す円高。
巨大な低賃金国・中国の登場:20分の1の賃金で無尽蔵の労働供給
バブル崩壊による国内経済低迷。
韓国、台湾、中国企業との競争激化による海外市場でのシェア低下
• 国内工場の逆境
–
–
–
–
•
量産は中国など海外へ移転
生産規模の縮小
人員削減。新規採用の抑制。
非正規従業員の増加
国内の生産現場は競争力を維持・拡大していくことができるのか?
– 弱体化しているとしたらその原因は?
– 強い現場は何をしているのか?
– その強さを今後も維持し続けることはできるのか?
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
87
先行研究
• 自動車産業を対象とした、開発および生産に関わる組織や戦略、
パフォーマンスに関する国際的な実証研究。
– Clark & Fujimoto (1991), 藤本・延岡(2006), Holweg & Pil (2004), MacDuffie, Sethuraman & Fisher (1996), Womack, Jones & Roos (1990). • 電機産業の製造現場を対象として競争力ならびに組織能力を測
定する研究は十分には行われていない。
– 製品開発の組織とパフォーマンスに関する国際的・産業横断的な実証分析は、都留・守島(2012)で
行われている。
– その理由のひとつは、生産性などのパフォーマンスを実数値で調査して業界横断的に比較すること
が難しかったからではないか。
– 本研究は、社内の海外拠点との比較を回答してもらうという手法を用いる。
• 海外へ移転した生産活動の国内回帰=リショアリング(reshoring)
– Ellram, Tate, and Petersen(2013), Gray, et al.,(2013), Shih (2014), Bailey & de Propris (2014).
– 特に、米国や英国、ドイツなど。
– 生産拠点の国際配置に影響を与える要因
•
コスト(人件費や材料費などの要素コスト)や政治的安定性・安全性、輸送費削減、リードタイム削減、市場近接
によるニーズの吸い上げ、政府の優遇政策(税制)など。
– 1990年代~2000年代において海外へ生産拠点を移管した最大の要因
•
アジア地域における「安い」労働賃金
– 近年中国での賃金上昇などを受けて、安価な労働力を得られないことがショアリングの主要因。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
88
自動車生産性の国際比較(IMVP調査):
日本国内工場の生産性が最も高い
一台当たりの組立作業時間
45
41
40
35.5
35
30
24.9
25
20
15
16.8 16.5
29.7 28
25.3
21.9
20.1
16.8
12.3
10
5
0
JP/JP
US/NA
1989年
EUR
1994年
NE
2000年
JP/JP:日本国内の日本自動車メーカー、US/NA:北米国内の米国自動車メーカー
EUR:欧州内の欧州自動車メーカー、NE:新興国工場(アルゼンチン、オーストラリア、韓国等)
出所)Holweg and Pil (2004), Figure 4.1に筆者加筆
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
89
分析枠組み:現場力の測定
組
織
力
社内他拠点比較
対ライバル比較
出所:藤本(2003)、図2・3に筆者加筆修正
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
90
• 藤本(2003)の分析枠組みを援用
– 現場の競争力と組織能力、組織風土の関係につ
いて分析。
• 企業の収益力や表層の競争力のみに基づい
て短絡的に強い現場を縮小および閉鎖する意
思決定がなされると、根源的な強みを自ら捨
てることにつながる。
– 日本の電機産業における現場の競争力と組織能
力の実態を測定し理解することは重要。
– 今後の事業運営や国際拠点展開の効果的なあり
方を考える際の立脚点の一つになる。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
91
調査方法
1. 聞き取り調査 2013年9月~12月
–
電機連合会員会社の中から、「元気な」工場を選抜してもら
い、8つの現場の聞き取り調査。
強い工場の特徴、生き残り戦略を調査。
–
2. アンケート調査 2013年12月~14年1月
–
データ収集:「電機産業の現場力調査研究会」を通じて実施
(新宅ほか、2014)。
先行研究、および聞き取り調査から抽出された仮説を検証す
るためのアンケート。
–
•
–
–
実務家からの回答可能性や内容に関するフィードバックも参考にし
て質問項目を洗練。
2013年12月~2014年1月の間に、登録人員数 (組合員数)
200名以上の電機連合に加盟している事業所を対象として、
特定の業界に偏ることなく配布・回収。
事業所(A票)、職場リーダー(B票)、作業者(C票)の3レベ
ルで実施。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
92
聞き取り調査の結果:
「強い」現場の特徴
1.
本社から与えられた業務をこなすだけでなく、工場自ら考え行動し、本
社、他社に営業活動を行い、新しい仕事を獲得する。
2.
生産機能だけでなく、開発や営業といった機能を工場に集結させることに
より、工場の行動範囲を広げるともに、他部門とも協力して、製品開発、
コスト削減、生産性向上を行う。
3.
人と機械・設備が継続してお互いを高め合うことで、他に負けない生産能
力を培う。
4.
単に試作と立ち上げだけを行っているのではなく、量産も行い、海外工場
の切磋琢磨を通じてマザー工場として成長しつづける。
5.
厳しい経済状況の中でも地道な改善活動をこつこつと行い、生き残る。
6.
人材育成が課題。若手が不足。技能継承をいかに行っていくか。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
93
【聞き取りケース】開発、営業、サービス、
ソリューションビジネスの機能を工場に集結
• トータルな価値で勝負するために日本工場を本社にする。
– 設計から量産までの機能を工場へ集約。
– 生産に必要な金型、生産設備の開発も工場内で実施。
– 改善活動を生産だけでなく、製品開発、設備設計も含めて実
施。
– 工場でサービス、ソリューションビジネスも展開。
• 日本で新興国ではできない製品、改善、サービス活動を展開。
– トータルな価値で新興国の工場に勝つ。
– 機能集結することで生産でも付加価値を稼いでいく。
– 強いマザー工場として海外工場を牽引する。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
94
【聞き取りケース】工場発の効率的な製品開発
• 工場に開発機能を持ったが、品質保証部門、実
験室、 レビュールームが離れているため、非効
率。
• 開発、生産部門でワンフロア化を実現
– 開発に関連する品質保証部門、実験室、レビュー
ルームなどの部門は工場2階へ集結。
– 逆に生産部門は工場1階に集結。
• それぞれ、関係者間の移動距離が少なくなり、コ
ミュニケーションも取りやすくなり、より効率的な
開発、生産活動を展開。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
95
工場に機能を集結させる:設計・生産・営業
• 考えて営業する工場にもとめられる機能
– 生産機能だけしか持たないなら、海外工場と同じ。
– 日本にある工場だからこそ、集結させることができる。
– 集結地は工場以外にない!(エンジニアは移動できるが
工場は移動困難)。
• 機能集結のメリット
– 開発と生産の緊密な連携による新製品立ち上げ時間の
短縮、コスト削減
– 量産、設備設計、製品設計の連携による生産性の改善
– 顧客対応を通じて顧客の声を生産、開発にフィードバック
– 開発と生産の連携による迅速なカスタマイズでBtoBの新
規ビジネス開拓
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
96
アンケート調査票の概要と対象
•
作業者・職場リーダー・事業所の一気通貫で「現場力」を測定
– 電機連合加盟組合で生産現場を持つ組合・企業に対して実施
– 「工場調査」・「職場リーダー調査」・「作業者調査」と、工場を預かるトップから製品を作る者までの3
階層の関係性を総合的に把握・分析するため、各階層の組み合わせで実施を依頼。
– 聞き取り調査で明らかとなった「強い現場像」の一般化
•
【A票:事業所・工場調査】
– 対象:工場長や総務部長など、工場や事業場全体を把握されている方。
– 項目:事業構成、事業戦略、パフォーマンス(深層、表層)、人事政策等
– 回答: 97事業所(163事業所配布、回収率59.5%)
•
【B票:職場リーダー調査】
– 対象:A票の対象となった事業場・工場で製造ラインの職場リーダーを務める方
– 項目:メンバーの技能、他部署との調整、組織風土、職務意欲・態度等
– 回答: 354人(446人配布、回収率79.4%)
•
【C票:作業者調査】
– 対象:B票の対象となった職場リーダーのもとで作業を行う方
– 項目:組織風土、職務意欲・態度等
– 回答: 3116人(3990人配布、回収率78.1%)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
97
日本の電機現場の平均像:
競争力と雇用の状況(A票)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
98
「深層の競争力」指標
•
「深層の競争力」の測定は一筋縄ではいかない
– 生産性やコストといった生産性の数値は一般的に非公開情報であり、そもそも
質問紙調査で調べることは難しい。
– 電機業界のように多様な製品を生産している企業の数値を単純に比較するこ
とは意味がない。
•
パフォーマンスの絶対値を調べるのではなく、相対的な評価を測定尺度と
して採用するほうが良い。
– ただし、相対尺度としては、同種製品を生産するライバル企業との比較が望ま
しいが、ライバル企業の数値を正確にベンチマークできている可能性は低い。
•
本調査で用いた指標=社内拠点間ベンチマーク
– 同種製品を生産する社内の他拠点との相対的パフォーマンス評価
– 理由:社内であれば、多くの企業において日本工場と社内の海外工場との間
の正確なベンチマーク指標をもっている可能性が非常に高い。
– 海外展開している企業への調査測定方法としても有用
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
99
• 下記の項目について、当該事業所と比較対象拠点を直近1年間(2012年
10月~2013年9月末)で比較し5点尺度で評価していただいた。(N=73、
中国拠点に限定するとN=47)
– 「1=比較対象拠点の方が優れている」、「3=同等」、「5=貴事業所の方が
優れている」。
– 比較対象の社内ライバル拠点は、「中国拠点」が最多 (約62%) であり、次い
で「ASEAN拠点」(約13%) が多い。
• コスト
1. 製造コスト(例:人件費、材料費など)
• QCDF
1. 顧客満足度
2. 外部不良率
3. 生産性(例:製品一個あたりの工数)
4. 納期(例:顧客注文の受注日から届ける日まで)
5. 市場に対応した変種変量の柔軟な生産能力
• 開発
1. 新製品投入回数(年間)
2. 独自製造技術の開発
3. 新製品の迅速な量産立ち上げ
4.経営戦略Ⅱ
新製品の提案と開発
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
2016/07/21
100
「表層の競争力」指標
•
表層の競争力については、社外のライバル企業とのベンチマーク比較を
回答者自身で行っている可能性が高いと考えられるため、ライバル企業
に対する相対的評価を測定尺度とした。
•
「当該事業における国内外の最大の競合企業と比較して、貴事業所(工
場)の当該事業が顧客から評価されている理由」
– 対象:当該事業所における2013年9月末時点での売上高第1位事業
– 5点尺度:「1=全く違う」、「3=どちらともいえない」、「5=全くその通り」であ
る。
• 低価格
1. コスト削減による低価格製品の提供
• 顧客サービス
1. ユニークな製品・サービスの提供
2. 納期の正確さ・短さ
3. 顧客からのカスタマイズ要求への高い対応力
4. 優れたカスタマーサービス(アフターサービス・技術サポート)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
101
回答事業所(工場)の概要
•
事業所売上高:約70%が100億円以1000億円未満
– 100億円未満:17%
– 100億円以上1000億円未満:69.1%
– 1000億円以上:13.8%
•
事業所粗利益率:全体の約75%が20%未満
–
–
–
–
–
•
0~9%未満:53.2%
10~19%:22.8%
20~29%:13.9%
30~39%:7.6%
40%以上:2.5%
事業領域(複数選択):重電・産業用電気機器が最多(31%)
–
–
–
–
–
–
重電・産業用電気機器:31%
電子部品:23%
通信・コンピュータ:17%
家電・映像・音響機器:12%
計測など産業用電子機器:9%
その他:19%
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
102
受注生産製品を「B to B」で取引する
事業所が大半
その他
1%
生産方式の内訳
取引方式の内訳
カタログ見込
生産
10%
BtoC
8%
部品BtoB
38%
カタログ受注
26%
設計受
注生産
63%
設計受注生産
カタログ受注
カタログ見込生産
生産方式:その他
個別設計受注品が約63%
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
完成品BtoB
54%
部品BtoB
完成品BtoB
BtoC
「B to B」が約92%
103
表層の競争力(対・最大ライバル企業)
顧客対応力で優位
• 市場における競争優位の主要な源泉は、顧客
対応力の高さ(N=87)。
顧客からのカスタマイズ要求への高い対応力
4.2 優れたカスタマーサービス
(アフターサービス・技術サポート)
4.1 納期の正確さ・短さ
3.9 ユニークな製品・サービスの提供
3.4 コスト削減による低価格製品の提供
3.3 3
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
3.5
4
4.5
104
深層の競争力比較 (73事業所)
日本マザー工場 vs 自社海外子工場
コスト以外全勝!
独自製造技術の開発
4.26 新製品の提案と開発
4.23 量産立ち上げ
4.21 外部不良率
4.16 顧客満足度
4.05 柔軟な生産能力
3.86 納期
3.85 生産性
3.78 新製品投入回数
製造コスト
1.00
大敗
3.67 1.92 2.00
3.00
同等
4.00
5.00
5点法
で回答
大勝
105
出所:新宅純二郎, 稲水伸行, 福澤光啓, 鈴木信貴, 横澤公道
(2014)「電機産業の現場力調査:日本の現場の競争
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ
2016/07/21
力を支える職場」『赤門マネジメント・レビュー』 13(10), 371‐406. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR13‐10.html
深層の競争力(対・社内の他拠点)回答分布
製造コストではかなり負け、ただし勝ちも約10%
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
106
製造部門における雇用の変化
2007→2013年
①全従業員数:平均で約100名減(約10%減)
②減少したのは派遣。派遣の有期雇用化もあまり多くない。
③生産工程における正規従業員の作業比率(13年, N=86):約66%
製造部門に従事する従業員数
人
700
600
590 582 2007年3月末
500
2013年10月末
・2007年と2013年の両方にご回答いた
だいた拠点(N=55)のみ
・正規や請負等の各項目ごとに55拠点
の値を合計して平均値を算出。
400
300
200
124 112 145 47 100
12 29 8 12 3 5 0
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
107
年齢構成のゆがみ:若手が少なく中堅が分厚い
•
•
•
•
技能を長期的に受け継ぐ若手(20代)少ない。先輩(40代)がたくさんいる30代。
高度な技能の発信元の超ベテラン層(55歳以上)も少なくなっている
次世代の超ベテラン候補者は多い(バブル入社組)
課題
– 人件費が相対的に高い年齢層が今後さらに増大
– 20年から30年かけて磨かれてきた高度な熟練の保有者から、若手への橋渡しをどのように行うのか?
– 中堅の40代が最も分厚いが、この層がうまく機能して、技能の橋渡しを促進できるような施策を考える
必要あり。
25.0
正規従業員の年齢別構成比
%
21.5 21.1 20.0
15.2 15.0
11.7 10.0
5.6 6.6 9.8 7.6 5.0
1.0 0.0 0.0
18‐24歳
25‐29歳
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
30‐34歳
35‐39歳
40‐44歳
45‐49歳
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
50‐54歳
55‐59歳
60‐64歳
65歳以上
108
【小括】日本の電機現場の競争力
結果
• 国内製造現場は、海外拠点に対して「コスト」を除き全勝。
• 顧客対応力が表層の競争力の主要な源泉
• 正規社員の年齢構成のゆがみ
– 「分厚い中堅層(40代)」、「少ない若手層(20代~30代前半)」
•
厳しい経営環境に直面しても、高い生産性や設計力を活用することで、つくる
製品や事業構成を変えながら、自ら仕事をつくりだし、生き残り続けるために
奮闘している現場が複数観察された(聞き取り調査より)。
課題
• 熟練作業者のノウハウ・スキル、組織運営の仕組み等を引き継ぐ若手が少な
く、ベテラン層の人件費が増加していく中で、その原資をいかに確保するか。
• 競争力維持・向上のために、製造面および設計・開発面での強みを活かし、
積極的に新規顧客や事業を開拓。
• 海外工場における「要素コスト(人件費や原材料費)」における優位性と、現場
の組織能力を反映する競争力指標である「生産性」における優位性を峻別
し、組織能力に裏打ちされた深層の競争力を活用するような、開発・生産拠
点のグローバル配置を行う。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
109
組織力と組織風土の関係:
A票とC票の統合分析
• B票をベースに、A票とC票とを統合したデータセットを作成。
– A票のデータは、同じ事業所の職場であれば同じデータを挿入。
– C票のデータは、職場ごとに平均値を算出し挿入。
• 売上高1位を担当する職場に限定して分析。
– 主力事業の主力職場に限った分析ができる。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
110
組織力を支える3要素
組織力=強い現場
問題の
真因解決
見通し
風通し(タテ)
見える化
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
迅速な
決定実行
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
チャレンジ
成長
111
「組織力」が現場の競争力を支えている
組織力と競争力の
相関分析
「組織力」指標
• 1)問題の真因解決
–
–
組織力
C1: 根本的な解決がされず、いつも同じような問題が起こっていると感じる。
(逆)
C2:問題がやり過ごされているうちに、立ち消えになることがある。 (逆)
• 2)迅速な決定と実行
–
–
•
•
C3: 我々の組織では、すばやくく意思決定が行われている。
C4: 我々の組織では、意思決定が行われると、すばやく実行に移されてい
る。
表層の競争力 –
価格
.081
表層の競争力 –
顧客サービス
.221 *
深層の競争力 –
コスト
深層の競争力 –
3)チャレンジと成長
QCDF
– C5:新しい仕事にチャレンジしていこうという雰囲気がある。
深層の競争力 –
– C6:仕事で想定外のことが起こっても、「これは成長のチャンスだ」と前向きに
開発
捉え直そうとする雰囲気がある。
主成分分析
–
–
各固有値:2.619、1.119、0.863、0.535、0.481、0.383(スクリープロットで第1
主成分を選択)
固有ベクトル:(0.555, 0.549, 0.742, 0.718, 0.693, 0.681)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
‐.122
.226 *
.364 **
注: * p < 0.05, ** p < 0.01
112
組織風土 (1):見通し
• 現場のリーダー・作業者1人1人に至るまで、長期的
かつ鳥瞰的な視野で仕事に取り組めていること。
•
高橋(1997)と同様の5つの質問項目を用いた。
•
•
•
P1:上司から仕事上の目標をはっきり示されている。(Yes = 1, No = 0)
P2:日々の仕事を消化するだけになっている。(Yes = 0, No = 1)
P3:長期的展望に立った仕事と言うより、短期的な帳尻あわせになりがちである。
(Yes = 0, No = 1)
P4:10年後の自分の会社のあるべき姿を認識している。(Yes = 1, No = 0)
P5:この会社にいて、自分の10年後の未来の姿にある程度期待がもてる。(Yes = 1, No = 0)
•
•
•
主成分分析
– 各固有値: 2.012、0.999、0.846、0.599、0.544
– 固有ベクトル: (0.520, 0.638, 0.647, 0.643, 0.708)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
113
組織風土 (2):風通し(自律性)
• 現場が積極的に発言し、ボトムアップで
意見集約・実行が行われていること。
• O1: 同僚間で仕事上の依頼や相談をしやすい雰囲気がある。
• O2:指示命令系統の違う人であっても、仕事上の依頼や相談をし
やすい雰囲気がある。
• O3:異なる意見を持っている人でも受け入れられる雰囲気
がある。
• O4:年齢や職位に関係なく、
問題解決に向けた激しい議論が行われることがある。
• O5:現場からの意見が多く挙げられ、実行に移されている。
• 主成分分析
– 各固有値:2.302、0.800、0.744、0.667、0.487
– 固有ベクトル:(0.591, 0.726, 0.770, 0.641, 0.649)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
114
組織風土 (3):見える化(規律性)
• 指示命令を明確にし、標準化・ルール化を徹底する
こと。
• V1:細かいことも文書化等により見える化して、職場の隅々に至る
まで周知徹底されている。
• V2:必要な情報がいつでもどこでもすぐ取り出せるようになってい
る。
• V3:問題解決がされた後は、文書化・標準化が徹底して行われる。
• V4:職場の指示命令系統は非常に明確である。 (Yes=1, No=0)
• 主成分分析
– 各固有値:2.129、0.726、0.633、0.512
– 固有ベクトル:(0.783, 0.764, 0.719, 0.645)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
115
相関分析:
「組織力」「見通し」「風通し」「見える化」
組織力
組織力
見通し
風通し
見える化
‐
見通し
.512 **
風通し
.614 **
.454 **
‐
見える化
.596 **
.404 **
.470 **
‐
‐
注: ** p < 0.01
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
116
優れた組織風土が組織能力を高める
規律性(見える化)と自律性(風通しの良さ)の同時実現
Model 1
見通し
風通し
見える化
見通し×風通し
見通し×見える化
風通し×見える化
性別
勤続年数
職場経験年数
役職
他社勤務経験
F
Adjusted R2
N
Model 2
.215 **
.356 **
.341 **
‐.009
‐.083
‐.007
.045
‐.080
8.054
.012
2906
**
*
**
**
‐.024
‐.010
‐.029
.008
‐.032
412.954
.536
2853
+
+
*
**
Model 3
.212
.360
.338
.002
‐.003
.035
‐.024
‐.010
‐.030
.010
‐.033
301.426
.537
2853
Model 4
**
**
**
.212 **
.360 **
.339 **
*
+
.034 **
*
‐.033 **
*
**
注: + p < 0.1, * p < 0.05, ** p < 0.01 , 被説明変数:組織力, 標準回帰係数の値を利用
Model 4はステップワイズ法による確認
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
各モデルにおけるVIFは1.5未満であり多重共線性は認められない。
‐.034 **
552.205 **
.537
2853
117
重回帰分析の結果:組織力(各変数)
真因解決
見通し
風通し
見える化
見通し×風通し
見通し×見える化
風通し×見える化
性別
勤続年数
職場経験年数
役職
他社勤務経験
定数
χ2
‐2 log likelihood
Nagelkerke R2
N
やり過ごし 迅速決定 迅速実行 挑戦風土 心構え
.360**
.206**
.540**
‐.024
‐.041
.054
‐.152
‐.045
.012
.060
‐.374**
‐.339*
.342**
.717**
.782**
‐.096+
.031
‐.008
‐.049
‐.559**
‐.057
‐.023
‐.116
‐.314**
.115
.207**
.755**
.781**
.053
‐.039
.064
.442** .532**
.814** .979**
.379** .255**
.019
‐.065
‐.006
.065
.020
.119
.051
‐.085
‐.025
‐.007
.015
‐.043
‐.029
‐.058+
.112
.290*
‐.016
‐.119
‐.148
‐.016
.189
.589**
‐.118
1038.26
484.780**
** 941.398** 872.034**
3
2931.84
2929.84
3067.29
3233.115
8
3
8
.214
.405
.378
.351
2864
2864
2865
2863
463.632**
3273.585
.205
2863
注: + p < 0.1, * p < 0.05, ** p < 0.01
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
.362**
.119*
.616**
‐.051
.033
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
.176**
‐.178
.047
‐.073*
‐.070
.011
‐.832**
945.1
**
89
2732.
734
.389
2863
118
進化能力の高い組織の特徴(藤本、1997)
規律性(見える化)と自律性(風通しの良さ)を同時に高めている組織⇒「心構え」が醸成
見える化
0.34
性別
勤続年数
職場経験
年数
役職
他社勤務
経験
定数
χ2
‐2 log likelihood
Nagelkerk
e R2
N
‐0.459
0.057
*
‐1.0 <風通 0.0<風通し
1.0<風通し
し≦0.0
≦1.0
0.365
**
0.448
**
0.63
‐0.062
0.102
0.041
0.023
‐0.343
‐0.095
‐0.091
‐0.05
0.165
0.15
0.002
‐0.009
0.225
‐0.115
0.462
+
‐0.035
‐0.233
**
‐0.52
46.272
1402.1
45
‐0.279
‐1.391
17.597
447.85
7
**
**
**
‐1.71
13.514
453.86
6
*
*
**
1.009
32.614
555.41
5
0.05
0.044
0.057
0.088
775
490
1087
538
注: + p < 0.1, * p < 0.05, ** p < 0.01
経営戦略Ⅱ
2016/07/21
従属変数は「心構え」
**
*
*
*
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
.800
「見える化」の係数の値
風通し≦‐
1.0
.700
.630
.600
.448
.500
.365
.400
.340
.300
.200
1
2
3
4
「風通し」のよさ(カテゴリ)
119
まとめ(1):日本電機現場の平均像と競争力
•
国内の生産現場は、自社の海外拠点に対して「製造コスト」を除いたすべての現場競争力において優れ
ている。
–
国際協力銀行(2015)によるアジア8カ国・地域を対象とした調査もこの結果を支持。
•
•
納期については国内マザー工場と同水準とする回答が多かった。
その他の労働生産性及び新製品の量産立ち上げ能力については、国内マザー工場のほうが優れているとの回答が大勢。
•
顧客対応力が、表層の競争力の主要な源泉。
•
正規従業員の年齢構成には、若手が少なく中堅が分厚いというゆがみ。
–
–
•
要素コストの相対的な安さだけで生産拠点の配置を考えるのは十分ではない。
–
–
–
•
(当たり前かもしれないが)若手採用・育成が急務
短期のコスト増を耐えつつ、長期の事業拡大・技能継承を行うという覚悟を経営者が持てるかどうか。
「要素コスト(人件費や原材料費)」における優位性と、「生産性」における優位性を峻別。
組織能力に裏打ちされた深層の競争力を活用するような、開発・生産拠点のグローバル配置を行うことが重要。
海外拠点における賃金が長期的に上昇する場合⇒「生産性」と「要素コスト」を掛け合わせて見極める必要があ
る。
中国ローカル企業における継続的な能力構築
–
自動車産業(重量トラック、乗用車)、コンテンツ産業(モバイルゲーム)など
•
–
•
王(2016)、黄(2016)、蒋(2016)
やはり、日本企業もグローバルに生き残っていくためには、たえざる能力構築が不可欠に?
厳しい経営環境に直面しても、高い生産性や設計力を活用することで、つくる製品や事業構成を変えな
がら、自ら仕事をつくりだし、生き残り続けるために奮闘している現場が本調査を通じていくつも観察さ
れた。
–
このような現場レベルでの取り組みの重要性やその意義を、トップマネジメントも一緒になって見極めたりサポート
していくことが、本社・事業部の重要な役割。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
120
まとめ(2):組織力と競争力との関係
• 表層の競争力と深層の競争力は相関している
– コストと価格について
• 組織力が、現場の競争力を支えている
– 組織力
• 1) 問題の真因解決
• 2)迅速な決定と実行
• 3)チャレンジと成長
• 優れた組織風土が組織能力を高める
– 規律性(見える化)と自律性(風通しの良さ)を同時に
実現している組織は、グローバル市場における高い
競争力を実現している。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
121
まとめ(3):進化能力の高い組織の特徴
• 心構え(の高い組織) = 進化能力(藤本、
1997)
• C票の結果から
– 規律性(見える化)と自律性(風通しの良さ)を同
時に高めている組織において、「心構え」が醸成
される。
– 規律性と自律性を両立させることが、現場の進化
能力(藤本、1997)を高めることを示唆。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
122
2.組織能力・深層・表層の競争力を
活かすことのできる戦略構築のために
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
123
国内工場における生産性格差の拡大:
1980年代~2000年代前半
•
参考文献:深尾京司(2012)『「失われた20年」と日本経済』日本経済新聞社
•
各産業における全要素生産性(TFP)の上昇要因
–
–
–
–
•
1981年から2003年までの『工業統計調査』を利用して各産業の産業平均に対する各工場の相対的
なTFPと労働生産性を算出。
–
–
•
現場の改善効果が表れている
ただし、この効果は、1990年代に大きく減少。
退出効果はすべての期間においてマイナスで拡大傾向
–
•
従業員数4名以上の国内全工場を対象。製造業を48産業に分類(TFPについてはデータ制約上1981年~
2000年が対象)
※閉鎖と判断された工場には、規模の縮小により従業員4名未満になった場合と製造業とは異なる産業に主
業を変更したケースも含まれる。
存続工場内での生産性上昇の効果である、内部効果が、すべての期間(5年ごと平均、ただし2000
年~2003年については3年間)において、日本のTFPと労働生産性の上昇の主要因。
–
–
•
①生産技術向上やコスト削減などのともなう企業や工場内のTFP上昇分(内部効果)
②TFPの高い企業・工場の拡大や低い企業・工場の縮小(再配分効果)
③TFPの高い企業・工場の開業・開設(参入効果)
④TFPの低い企業・工場の廃業・閉鎖(退出効果)
⇒生産性の高い工場が退出している。参入効果はプラス。
企業間資源配分(経済の新陳代謝機能)によるTFPや労働生産性の上昇は、1980年代から2000年
まで一貫して低迷しており、1990年代に入ってから急激に下落したわけではない。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
124
•
米国や英国:不況期には内部効果の寄与が小さくなり、再配分効果や純参入効果がTFP上昇の
主要因。好況期には内部効果が主要因。
•
日本:1990年代を通じて、比較的生産性の高い工場の閉鎖が恒常的に起きている。とくに、1995
年以降はマイナスの退出効果が拡大。
–
–
–
日本では閉鎖される工場が1990年代後半以降急増したが、新規開設は低迷した⇒工場数の急減と古い
工場の維持。
1990年に存在した42.5万の工場のうち、56%にあたる23.9万の工場が閉鎖。新設は10.1万。
1990年時点での労働生産性にもとづいて仕分け(10%刻み)したグループ別での残存率
•
•
–
–
⇒1990年代以降の直接投資急増による工場の海外移転が、生産性の高い大企業中心で行われたため、
このような結果になった可能性を指摘。
⇒とくに、電機産業を中心とした生産の海外移転がマイナスの退出効果をもたらした(アジアでの日系現地
法人の生産が急拡大。通信機器、電子計算機・同付属品、電子部品で顕著)
•
•
生産性が最も低いグループでは4.25万工場のうち73%が閉鎖
生産性が最も高いグループでも、4.24万工場のうち47%が閉鎖。
アジア地域での安価な労働力をもとめた生産拠点のシフト
さらに上場企業に限った分析では・・・
–
製造業・非製造業ともに、産業全体のTFP上昇の大部分は、内部効果で生じている。
•
–
–
–
再配分効果や参入・退出効果の寄与は昔から小さい。
上場企業のTFP上昇が停滞したのは、1990年から1995年の時期のみ。1995年以降はTFP上昇が加速(80
年代より大きい)
大企業が国内での設備投資を拡大しなかった背景⇒製造業では、製造拠点のグローバル化が進んでい
て、海外の市場や安価な労働力を求めて生産の海外移転を進めていた。
国内でも、労働コストの削減をもとめて、生産の拡大分を子会社に担わせて、企業内ではリストラクチャリン
グを進めた。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
125
マイナスの退出効果の2つの側面
• 競争力の高い(つまり組織能力が高いはずの)現場が
国内で閉鎖される
• ポジティブな面(深尾、2012)
– 生産性が高い企業が、海外へ生産拠点を積極的に移転し
ていく。
– 海外でさらなる市場拡大・事業機会へのアクセスUP
• ネガティブな面⇒内部淘汰圧力の問題では?
– 理由①:経営者の意思決定ミス(現場の実力をわかってい
なくて閉めた)
– 理由②:ステークホルダーからの利益追求プレッシャーが
強くて閉めた
– 理由③:生産していた製品の「事業の失敗(競争優位の喪
失)」により閉めた
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
126
内部淘汰圧力と現場力
• 現場の生産性が向上していても、本社・事業部
による決定で、閉鎖されることがある。
– 中沢・藤本・新宅(2016)
– ⇒内部淘汰圧力が有効に機能しているのか?
• 現場力を活かした多角化:現場で開発・生産す
る事業の変化・転換
– 1.本社・事業部が現場の強みを活用するために、新
規事業に進出。
– 2.生き残るために、現場が奔走。
• 電機産業でのケース⇒つくるものが無くなっても、自ら見つ
けてきて頑張って生き残っている。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
127
•
インテルにおけるDRAMからMPUへの事業転換:Burgelman (2002)
– インテルは、1970年代にDRAM市場でのシェアを80~90%獲得して成長した。
– しかし、1980年代には「高品質・低価格」の製品を実現した日本の半導体企業の躍進によ
り、そのシェアは、80年代半ばに2~3%へと激減。
– それに対してインテルは、先端技術への志向性をさらに強めて上位市場へと注力したが、す
でに主要顧客をライバルに奪われていたDRAM事業は不採算状況が続いたため85年には
撤退し、代わってMPUが主力事業に据えられた。
– インテルにおけるDRAM事業からの撤退の意思決定は、当初からトップマネジメントによって
進められたものではなかった。
•
トップマネジメントは、苦境に陥っている間でもDRAM事業を熱烈にサポートし、DRAMを技術ドライ
バーと見なし、DRAMの研究開発に対して他の事業 (MPUとEPROM) と同程度の投資を行っていた。
– DRAMからMPUへの事業転換は、生産現場レベルでは、すでにDRAMからMPUへと、高度な
プロセス技術を活用して、生産数量の配分を変えていたのに、本社のトップマネジメント(CEO
や上級副社長など)は、最後までDRAMにこだわった。
•
–
DRAM事業からの撤退を支えた構造的コンテクスト(トップマネジメントが構築)
•
•
–
–
⇒ただし、DRAMにこだわったことで、得られた設計技術の蓄積は重要。
①「生産開始時のウェハあたりのマージンを最大化する(maximize margin‐per‐wafer start)」という資
源配分ルール
②「知力は権力に勝る」というオープン・ディベートを奨励する社風
前者によって、すでに利益が減少しているDRAM事業への生産能力の配分を削減するという
意思決定をミドルマネジメントが下しても、それをトップマネジメントが覆すことは無かった。
後者によって、ミドルマネジメントがDRAM事業からMPU事業へと移行すべきであるという考
えを持ち続けて、実行に移すことが可能となった。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
128
•
優れたプロセス技術・能力を活用して、もっと儲けられる事業を行っていく、事業
を転換していくことこそ、本社・事業部の役割だが、なかなか難しい。
– すぐれた開発・生産の能力をいかに活用できるか?
•
•
•
•
既存事業での競争優位の向上
戦略転換
多角化
本社・事業部が現場の組織能力・深層の競争力を理解していることが不可欠
– 現場をわかったうえで、ある程度自律性を与えて、現場でつくる製品を変えながら事業存続
していく。
– 現場の実力を売上・儲けにつなげていくのが、経営者の仕事。
•
•
⇒組織能力と戦略とのリンケージ
健全な内部淘汰環境を構築することにより、市場競争を有利に進めていく。
– 内部淘汰環境と外部環境のフィット
– 資源配分ルールとして何を用いるのか?
•
•
•
•
利益?
シェア(市場、売上構成)?
要素コスト?
組織能力(生産性など)?
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
129
【あらためて】日本企業の国際立地戦略の問題
•
2000年代に入ってから、多くの日本企業が、中国や韓国、台湾などの海外企業の台頭
により、苦戦を強いられている。
– たとえば、デジタル家電の分野では年率20%以上の価格下落が起きる。
•
背景には、製品のモジュラー化の進展と、それによる、中核部品や製造設備の市場化が
ある。
– 製品機能を決める上で、中核的な役割を果たす部品や製造設備を専門に提供する企業が出現
•
•
携帯電話のベースバンドチップやマルチメディア機能までをひとまとめにして提供するメディアテック(台湾)
日本企業は、2000年以降、生産・開発拠点の配置において苦労している。
–
–
–
–
1990年代後半以降の「中国脅威論」により、国内工場を一斉に中国や東南アジアへシフト。
2006年~2008年頃には、国内空洞化はやはりまずいといって、国内回帰。国内拠点の集約など。
2008年9月の世界金融危機を受けて、国内拠点の弱体化や、もう一度海外へという動き。
2011年3月の東日本大震災を受けて、「地震コワイ」ので、国内拠点を重複して持ったり、海外へ開
発・生産拠点をシフトさせた方がよいのでは、という動き。在庫を積みました方がよいのでは?トヨタ的
システムはダメだ的な「極論・暴論」。
– 2013年以降、「アベノミクス」の効果等で、円高傾向が緩和⇒製造業の国内回帰!
– 2016年6月下旬のイギリス国民投票にて「EU離脱」⇒円高に振れたが、その後すぐに円安に⇒また、
製造業は海外へ??それとも、国内で生産??
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
130
• モジュール化の進展を受けて、それに対抗す
るために、海外の安い賃金を求めて、すべて
の生産拠点を海外へ移転してしまうのは、早
計に過ぎる。
• 日本に研究や開発の拠点を残して、そこで強
みを発揮しようとするならば、コアとなる生産
拠点を一部残しておく必要がある。
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
131
• 進化し続ける工場を日本国内に持ちつつも、グローバルな視点から、
開発・生産拠点の配置を考えていくことが、不可欠である。
– 先進的な開発と生産は、日本企業が蓄積してきた組織能力を活用するた
めには、両方持っておくことが重要。
– 片方だけでは、長期的に見ると弱ってくる。
• 天野倫文 (2005)『東アジアの国際分業と日本企業』有斐閣.
– グローバルに生産や開発拠点等を展開している企業においては、それを
積極的に進めている企業の場合、本国 (日本) における空洞化が進んで
しまうというよりも、むしろ、それを上手く行うことにより、本国側 (本社) の
事業転換が引き起こされ、本国側と海外事業の両方とも成功・成長しうる
ことを豊富なデータや事例研究から明らかにしている。
– 海外事業における戦略 (事業戦略) をテコとして、本国の戦略 (全社戦略) の転換をポジティブに行いうる。
• 国内で高性能・高品質の部品・材料ビジネス
• 海外拠点への部品輸出拠点
• 既存の高度な生産技術や製造技術を活用できるような新規事業(完成品)の開拓
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
132
グローバル環境下での開発・生産戦略
• 先進国の企業・市場を相手に競争する場合
– 高いブランド力の欧州企業、ITやハイテク領域に強い米国
企業。
• 業界標準を多数獲得して、かつ、国際標準としている。
• 新興国の企業・市場を相手に競争する場合
– BRICsなど:低コスト、低価格帯。いわゆるボリュームゾー
ン。
– 日本市場の常識は通用しないことが多い。その場合に、
現地のニーズをいかにつかみ取って、製品として実現する
かが重要。
• パナソニックの「中国生活研究センター」(上海)
• トヨタ自動車のIMV(Innovative International Multi‐purpose Vehicle)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
133
• 結局、ハイエンドの難しい製品を作りつつも、ミドル(ロワー)レンジ
の製品も開発する。
– ローエンドを捨てると、下からどんどん攻められてくる。
• すでに、2000年代にかなり日本企業は苦しんできた。
• イノベーターのジレンマ(Christensen, 1997)
– コストもかかるし、先進国企業との競争厳しいからといって、ハイエン
ドを捨てると、その時点で、技術の成長は止まる。そうして、いずれ下
からも追いつかれる。
• 両睨みの戦略・開発を行う必要があるのでは?
1.
アーキテクチャを工夫する
• プラットフォームリーダーになる。コンセンサス標準を獲得する。
2.
3.
4.
製品コンセプトで勝負する
チームワーク型の組織能力を活かすことのできる、「インテグラル領
域」を作り、それを死守する。
「複雑化」の進展する製品を選択し、そこでの「設計力」の優位性を
構築しつづける。設計の簡素化・モジュール化の努力もベースとして
行う(藤本編、2013)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
134
【一つのシナリオ】
日本のものづくり、今後どうすべきか?
⇒複雑化から逃げず、競争優位につなげる?
•
【参考】藤本隆宏編著(2013)『「人工物」複雑化の時代:設計
立国日本の産業競争力』有斐閣.
•
人工物の複雑化は、さまざまな産業で長期的に起こっている
21世紀的な現象。
–
制約条件の厳しい人工物:質量、運動量、環境負荷、安全対策
•
–
–
自動車、船舶など
動作や構造がアナログ的な製品
多機能化
•
–
工作機械、デジタル複合機など
機能要求の高度化:顧客の製品評価能力が使用経験とともに高ま
る
•
小型電子機器、電子部品、プロセス産業、ソフトウェアなど
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
135
•
複雑化への企業側の対応も複合的:多数の方策の合わせ技
–
–
–
–
–
–
–
•
ソフトウェアを含む電子制御の高度化
設計・実験支援ITの開発と活用
実験効率化手法(品質工学など)の採用
統合型ものづくり組織能力の強化
企業間の分業・協業の高度化
製品アーキテクチャのモジュラー化
モジュラー型製品の機能高度化
など
21世紀の日本企業が目指すべき一つの道⇒複雑化から逃げ
ず、複雑化のリスクをしっかりと受け止め、競争力の源泉とする。
複雑な人工物を得意技とした「設計立国」の道。「よい設計、よい
流れ」を日本に引っ張り、発信していく。
–
–
戦後の日本企業は歴史的に複雑化に対応しやすい統合型組織能
力をもつ現場を多く発生させてきた
日本企業の現場は、複雑な人工物を上手に扱う点において、競争
優位をもつ傾向がある
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
136
まとめ
•
組織能力とそれに支えられた競争力にもとづいて、戦略を構築すること
が必要。
– 全社戦略、競争戦略、開発戦略、生産戦略、海外拠点展開戦略など。
•
スタティックにみれば
– 現有の資源と組織能力を活用できる事業を行う
• 開発や生産の拠点配置もそれにしたがう
– ポジショニングをあやまると、能力に見合う業績(売上・利益)が得られない。
•
ダイナミックにみれば
– 現時点ではもうからなくても、能力構築をつづける。
• 現有の能力を活かせない事業から撤退して、他の事業に転換する。
• 生産現場レベルの能力をいかして、新規事業を獲得していく。
• 開発力も活かしていく。
– 少し背伸びして新規事業に進出してでも、能力構築をつうじて、新規事業で
必要になる能力もつくっていく。
• ダイナミック・シナジー(伊丹、2012)
• 心構え(藤本、1997)
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
137
ご清聴いただき
誠にありがとうございました
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
138
主要参考文献
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
天野倫文 (2005)『東アジアの国際分業と日本企業』有斐閣.
Bailey, D., and de Propris, L. (2014), “Manufacturing reshoring and its limits: the UK automotive case”, Cambridge Journal of Regions, Economy and Society, Vol. 7, No. 3, pp. 379‐395. Barney, J. B. (2007) Gaining and sustaining competitive advantage, 3rd ed., Upper Saddle River, N.J. : Prentice Hall: NJ.
Burgelman, R. A. (2002). Strategy is destiny: How strategy‐making shapes a company’s future. New York: Free Press. 邦訳, ロバート・A・
バーゲルマン (2006)『インテルの戦略』石橋善一郎, 宇田理監訳. ダイヤモンド社.
Clark, K., M. and Fujimoto, T. (1991), Product Development Performance, Harvard Business School Press, Boston, MA.
Ellram, L. M., Tate, W. L. and Petersen, K. J. (2013), “Offshoring and reshoring: An update on the manufacturing location decision”, Journal of Supply Chain Management, Vol. 49, No. 2, pp. 14–22.
藤本隆宏 (1997)『生産システムの進化論』有斐閣.
藤本隆宏(2001)『生産マネジメント入門Ⅰ』日本経済新聞社
藤本隆宏編著(2013)『「人工物」複雑化の時代:設計立国日本の産業競争力』有斐閣.
深尾京司(2012)『「失われた20年」と日本経済』日本経済新聞社
福澤光啓, 稲水伸行, 鈴木信貴, 佐藤祐樹, 村田香織, 新宅純二郎, 藤本隆宏(2012)「奔走するリーダー:環境変動に対する自動車組
立職場の適応プロセス」『組織科学』 46(2) 75‐94.
Fukuzawa, M., Inamizu, N., Shintaku, J., Suzuki, N., Yokozawa, K., (2016) Genba‐capability and reshoring in Japanese electric and electronics industry, 5th World Conference on Production and Operations Management, Havana, (forthcoming).
Gray, J. V., Skowronski, K., Esenduran, G. and Johnny Rungtusanatham, M. (2013), “The reshoring phenomenon: What supply chain academics ought to know and should do”, Journal of Supply Chain Management, Vol. 49, No. 2, pp. 27‐33.
Hamel, G., & Praharad, C. K. (1994). Competing for the future. Boston, MA: Harvard Business School Press.
Holweg, M. and Pil, F., K. (2004), The Second Centry: Reconnecting Customer and Value Chain through Build‐to‐Order, The MIT Press, Cambridge, MA.
Inamizu, N., Shintaku, J., Fukuzawa, M., Suzuki, N., & Yokozawa, K. (2015), “Competitiveness, capability and climate of Japanese factories: An integrative survey in electric and electronics industry”, Proceedings of 22nd International Annual EurOMA Conference, LEA‐14, 10 pages. 石田光男・富田義典・三谷直紀 (2009)『日本自動車企業の仕事・管理・労使関係:競争力を維持する組織原理』中央経済社.
伊丹敬之(2012)『経営戦略の論理(第4版)』日本経済新聞社
小池和男(2005)『仕事の経済学(第3版)』東洋経済新報社. MacDuffie, James. P., Kannan Sethuraman, and Marshall L. Fisher (1996) “Product Variety and Manufacturing Performance: Evidence from the International Automotive Assembly Plant Study,” Management Science, Vol. 42, No. 3, pp. 350‐369. March, J. G. and H. A. Simon (1958). Organizations, New York : Wiley.
Mishina, K.(1995). Toyota Motor Manufacturing, U.S.A., Inc. HBS Case Number 9‐693‐019, Harvard Business School, Boston.
中沢孝夫・藤本隆宏・新宅純二郎(2016)『ものづくりの反撃』筑摩書房
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
139
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
国際協力銀行(2015)「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(第27回) 」国際協力銀行業務企
画室調査課. https://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press‐2015/1203‐44372
黄巍(2016)「アウトソーシングによるサプライヤー企業能力構築プロセス‐中国ゲーム産業の事例」国際ビジネス
学会第86回関東部会(2016年7月16日)東京大学
大野耐一(1978)『トヨタ生産方式:脱規模の経営をめざして』ダイヤモンド社. Prahalad, C. K., & Hamel, G. (1990). The core competence of the corporation. Harvard Business Review, 68(3), 79–
91.
清水耕一(2005)「現場管理者が語るトヨタの現場管理:現場管理者の口述記録」『岡山大学経済学会雑誌』第36
巻第4号, pp. 203‐222.
Shih, W., C. (2014), “What it takes to reshore manufacturing successfully”, MIT Sloan Management Review, Vol. 56, No. 1, pp. 55‐62.
新宅純二郎, 稲水伸行, 福澤光啓, 鈴木信貴, 横澤公道 (2014)「電機産業の現場力調査:日本の現場の競争力
を支える職場」『赤門マネジメント・レビュー』 13 (10), 371‐406.
蒋瑜潔(2016)「外部経営資源の活用を通じた後発企業の技術能力構築プロセス‐吉利汽車のM&Aと提携を通じ
た成長戦略‐」国際ビジネス学会第86回関東部会(2016年7月16日)東京大学
高橋伸夫, 新宅純二郎 (2002)「Resource‐Based Viewの形成 」『赤門マネジメント・レビュー』1(9), 687‐704. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR1‐9.html
辻勝次(2002)「自動車工場の職場革新と新労働組織:トヨタの職場、20年の変遷」『立命館大学社会論集』第38
巻第1号, pp. 91‐109. 都留康・守島基博編著(2012)『世界の工場から世界の開発拠点へ』東洋経済新報社.
王中奇(2016)「製品技術開発におけるすり合わせ能力の形成経路 ‐中国80年代中・重量トラック産業の技術導
入過程を事例として‐」国際ビジネス学会第86回関東部会(2016年7月16日)東京大学
Womack James P., Daniel T. Jones, and Daniel Roos (1990) The machine that changed the world : based on the Massachusetts Institute of Technology 5‐million dollar 5‐year study on the future of the automobile, New York : Rawson Associates. (沢田博訳(1990)『リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える:最強の日本車メー
カーを欧米が追い越す日』経済界).
経営戦略Ⅱ 2016/07/21
©2016 Mitsuhiro FUKUZAWA
140