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2016年7月22日
Japan tax alert
EY税理士法人
タイ、
フリーゾーン優遇
税率要件を厳格化
関税減免適用の「改正原産地基準」
に関する通達発行
EYグローバル・タックス・アラート・
ライブラリー
EYグローバル・タックス・アラートは、オン
ライン/pdfで以下のサイトから入手可能
です。
www.ey.com/taxalerts
2016 年 2 月に当事務所が発行したタックス・アラートでは、フリーゾーン( Free
Zone:FZ)運営者がFZ内で生産された物品を国内市場向けに流通させるために
満たすべき以下の主要な2要件を規定した、
2015年12月17日付け財務省通達第
13号(FN13)が発行されたことをお知らせしました。
i)域内調達率テスト:
タイ及びASEAN諸国を原産地とする原材料、労務費及びタイに置いて物品を
生産するために実際に費用されたその他の製造原価の合計価値で、
利益を含む
価値が、
物品の工場渡し価格の40%以上であること。及び、
ii)加工工程基準:
生産された物品は、
工業省産業経済庁
(Office of Industrial Economics:OIE)
の定める必須生産プロセス
(Essential Production Process:EPP)
に適合して
いなければならない。
2016年6月20日に発効するFN13は、旧2012年財務省通達の下で物品の関税
減免を認められた既存のFZ事業者、又はFN13発効時に関税減免申請の決定を
待っていた事業者に対しては、
既得権による2年間の猶予措置を認めています。
FN13が発効するまでに幾つかの重要な通達が発行され、FN13の執行を容易にす
るものとなっています。以下に、
2016年6月に発行された主要な2つの通達の内容
を要約します。
1.2016年6月17日付税関通達第73/2559号(以下「CN73」)
• CN73は、
FN13の実施に対する主要税関規則を定めており、FZに関する域内調達率の算出基準、主要な定義、通関手続及
び文書化要件を説明しています。
• タイ国内で生産された国内調達原材料に関して、FZ事業者はCN73により、係る原材料が実質作業工程(Substantial
operation process: SOP)
を経ており、
微小加工以上のプロセスを経ていることを示す証明書を入手することを求めて
います。税関は、
以下の6つの独立機関に対しSOP基準策定の責任を与えており、
係る基準に適合していることを認証する
認可を与えています。
i. タイ自動車研究所
ii. 電気電子研究所
iii. タイ繊維研究所
iv. タイ鉄鋼業研究所
v. タイ・プラスチック研究所
vi. 国立食品研究所
は、
2016年6月20日付通達第21/2559号を発行し、
例えば、
タイ自動車研究所
(Thailand Automotive Institute: TAI)
以下のような自動車部品と材料に適用されるSOP基準を規定しています。
部品の種類
実質作業工程
(SOP)
基準
単一部品・構成品が原産品として認定されるには、
形態、
形状又は性質に対して実質的な変更がもたらされ、
生産に使用された材
料とは異なる新製品が結果として生成されなければならない。さらに係る変更は工場の機械及び/又は工具を使用して実施され
なければならない。
単一部品・
コンポーネント
工程
機械
工具
鋳造
溶鉱炉
モールド
鍛造
鍛造機
ダイス
スタンピング
スタンピング機
ダイス
射出
プラスチック/ゴム射出機
モールド
ブロー成形
プラスチック・ブロー成形機
モールド
圧縮
熱間圧縮機
モールド
成形
熱間圧縮機
モールド
押出
押出成形機
押出ダイス
TAIは原材料/材料/部品に対する変更がどれほど
上記に示されていない生産工程を経る部品/構成品の認証申請については、
実質的であるかを検討する。係る変更は微小加工によるものであってはならない。
組立部品/構成品が認証を受けるためには、
生産者は以下のような一定のガイドラインや要件に従う必要がある。
i.
組立部品
部品組立工程は、
実質的生産工程でなければならず、
機械技術及びその他の工具等の使用を伴う。微小加工であってはなら
ない。
ii. エンジニアリング、
イノベーション促進又は新技術導入に関連して、
部品/構成品の性能又は機能を高める試験などの追加的
情報を提出しても良い。
iii. 原材料/材料/部品のすべてをタイ国における組み立てのために輸入する場合、認証を与える否かの判断は、組立工程が
実質的な生産工程又は微小加工のどちらに該当するかを考慮する。
組み立てられた部品の認証申請はケースバイケースで審査される。これは、各製造業者は異なる生産技術を有し、原材料/材
料/部品に関する技術も異なるからである。
• CN73では、
「微小加工」の定義も拡大され、
以下のものが含まれます。
i. 「物品の部品を完成品に組み立てること、物品を部品に単純分解すること、又は単純な構成品の組み立てもしくは
組み合わせにより完成品とすること」
ii. 「単純な検査又は較正」
「微小」
という用語は、
「生産や据付に特別な技能、機械装置、工具又は設備を必要としない活動」であると定義されてい
ます。
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2.2016年6月19日付け産業経済庁通達
この通達は、
FZ事業者がFZ内で生産され、国内市場で販売される物品つき満たす必要がある必須生産工程以下(Essential
Production Process:EPP)基準を示しています。以下の各セクター及び物品の種類につき、産業経済庁は特定のEPP基準を
定めています。
セクター
物品の種類
1) 乗用車、
ピックアップトラック及びバン
2)トラック
3)トラクター、農業用トラクター及びコンクリートミキサー車
4) オートバイ、電気を利用するオートバイ、電動自転車及び
自動車及び
コンポーネント
電動オートバイ
5)トラック車体の運転台
6) 自動車の排気管及びその部品
7)トラックのルーフ
8) シートベルト
9) 安全エアバッグ
食品
加工食品及び飲料
化学製品
石油化学製品
以下のような基礎化学品
• 無機化学品
• 有機化学品
• その他の化学品
以下のようなあらゆる種類のプラスチック樹脂
• ポリエチレン、
ポリプロピレン又はポリオレフィン
• ポリスチレン
• 塩化ビニル・ポリマー又はハロゲン化オレフィン・ポリマー
• 酢酸ビニル・ポリマー又はビニールエステル・ポリマー
• アクリルポリマー
10) ショック・アブソーバ
11) 自動車のフロア、左ホイールアーチ及びビーム強化材
12) オートバイの部品 − 風防ガラス、排気管、
フットレスト、
ハンドル、
前輪泥除け、
カバー、
サイドカー・カバー、
クラッチ・カバー、
チェーン・カバー、
後部カバー、
カバー・
シート、
タンク・カバー、
サイド・カバー、
左サイドキャップ
13) カート
14) 車軸モジュラー・
トレーラーの車軸
15) エンジン
16) バックミラー
以下のような川下化学品
• 肥料
• 塗料
• 化粧品
• 石鹸、
界面活性剤
• ポリアセタール/ポリエーテル/エポキシ樹脂/ポリカーボ
ネイト/アルキド樹脂/ポリオール・エステル/ポリエステル
• ポリアミド
• アミノ樹脂/フェノール樹脂/ポリウレタン
• リサイクル可能プラスチック樹脂
• プラスチック樹脂化合物
プラスチック
以下のいずれかの特徴を有するプラスチック製品
• 部品又は完成品
• プラスチック・ボトル製品
• プラスチック・プロフィール又はパイプ
• プラスチック製のフィルム、
袋又はシート
ゴム
1) 航空機、自動車、
トラック、
自転車又はオートバイのタイヤ、
ゴム製クローラやソリッドタイヤ等乗り物の生産に使用するゴム
2) ベルト、床材、
ゴム製軌道パッド、
ゴム製ベアリングパッド等の工事に使用するゴム
3) ゴム製ドアシール又はガスケット等乗り物用ゴム製部品
4) 天然ゴム、合成ゴム、
シリコーン等から作成された電子部品等の汎用ゴム部品
5) 医療用手袋及びゴム製尿道カテーテル等医療目的で使用されるゴム製品
6) 工業用手袋、台所用品、ラバーパッド、
コンドーム、
マットレス用ゴム糸及び天然ラテックス枕等の汎用ゴム製品
7) 基礎的計上又はシート状、薄型シートもしくはストリップ型の未加硫ゴム化合物
8) ゴムスクラップ
バッグ及び皮革
一部のバッグ及び皮革製品
紙
コート紙
紙製包装
紙箱、
カートンなど
織物、
衣服及び
工業用布
以下のものを含む繊維、
衣服及び工業用布
• 布
• 屋根用テント
• 野営用テント
• プラスチック繊維又はプラスチック編製品
• プラスチック・シートから加工した製品
• 圧縮プラスチック製品
• 大型の中空プラスチック製品
• 布製品より作成されたその他の製品の部品
• 衣料品
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セクター
物品の種類
宝石及び
装身具
以下のものを含む宝石及び装身具
• 宝石原石
• ダイヤモンド
• 真珠
鉄及び鋼鉄
熱延帯鋼及び冷延帯鋼
銅
エアコン、
冷凍機、
冷蔵庫に用いられる銅管
アルミニウム
1) アルミニウム製プロフィール
2) アルミニウム製中空プロフィール
3)ドア、窓、建物支柱等のアルミニウム製建物設備
4) アルミ製のコンドーム・パッケージ
機械、
部品、
設備及び
機械用コンポー
ネント
1) ロータリー耕運機
2) 金型
3) コンバイン収穫機
4) 芝刈り機
1) 建物で使用されるエアコン
3) 自動車用ラジオ
4) 回路分離及び電気回路切断のためのスイッチ
電気電子製品
医療機器
• 射出成形用鋼鉄製金型
• 射出成形用砂型
• 射出成形用プラスチック製金型
• エアコン用コンデンシングユニット
• エアコン用ファンコイルユニット
2) 電源
1) 医療用の採血管
• 銀、
金又はその他の貴金属から作成した宝石原石を用いた
宝飾装品
• 人工宝石を用いた宝飾品
• スイッチギア
2) 眼鏡用レンズ
自動車セクターを例として、乗用車、
ピックアップトラック及びバン並びにエンジンの生産に適用されるEPP基準は次の通り
です。
EPP基準
セクター
1) 必須生産工程とは、機械/設備が関税で使用可能な状態の乗用車、
ピックアップトラック及びバンの完成車の車体生産、
車体塗
装及び組立てに使用される工程、
並びに品質確認システムである。
乗用車、
ピック
アップトラック
及びバン
備考:
i) 車体の生産とは、溶接などの手段により塗装されていない構成品から車体を組み立てることを意味する。
ii) 車体の塗装とは、鍍金又はスプレー等の手段により、防錆又は化粧のために組み立てられた車体に塗装を施すことを意味
する。
iii)組立とは、塗装済みの車体を含む自動車の構成品を、完全で使用可能な状態の自動車に組み立てることを意味し、エンジン
等の駆動システム、
伝動システム、
ワイヤハーネスの取付けを含む。
iv)品質確認とは、最終的な品質確認工程を意味し、安全装置や自動車機能の検査を含む。
2) 関税低減の対象となるためには、製造者は2019年6月までに、1年当たり2千台以上の生産台数(1つ以上のモデル)
について、
すべての必須生産工程に適合しなければならない。関税低減の対象となる自動車は、
最低限、
組立及び品質確認システムについ
ての必須生産工程要件に資する必要がある。
3) 製造業者が、関税の低減を申請した時点で、要求される必須生産工程のすべてを満たしていない場合、関税の低減が妥当である
ことを説明するために、
生産工程拡充に向けた投資計画書を税関局に提出しなければならない。
4) 新規製造業者(2016年6月19日以前にFZ又はIEAT(工業団地公社)地区で操業したことのない事業者)は、生産を開始した日
から5年以内に、
年間2千台の生産要件を含む、
全ての必須生産工程の要件を満たさなければならない。
エンジン
機械/設備及び品質チェック・システムを使用した完全なエンジンの組立
結論
既存のFZ事業者やFZ参入を希望する事業者は、
FZ規則を熟知し、国内調達要件及び影響を受けるであろう財務諸表を含む主要
な事業領域を検討した上で、
国内市場向けにFZ内で生産する物品に係る要件遵守の現状を評価することが不可欠となります。FZ
事業者に対して物品を供給する事業者もまた、
FZ事業者がタイ国産原材料として取り扱うことを認められる材料又は部品に関し、
実質作業工程
(SOP)
基準を満たすという必要があります。
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