HERO使いが行くGX世界 ID:91756

HERO使いが行くG
X世界
加藤彰
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
︻あらすじ︼
E・HEROが好きで﹃ゲートHERO﹄というデッキを使う東條創は、カードショッ
プで親友とデュエルした帰り道で事故に会ってしまう。
次に視界に入ったのは自分の部屋。しかしどことなく自分の部屋ではない気がする
創は、自分の部屋にあるはずがないものを目撃する。
デュエルディスク。
そして創の前に現れたのは、いるはずのないとある女の子であった。
と、いうことで王道にGX世界にトリップしてしまうお話です。
注意点です。
●アニメ版の設定と漫画版の設定がごちゃ混ぜになっています。
●シンクロとエクシーズは﹃サイバー﹄などのカテゴリの関係上その内出ますが、極
力汎用シンクロや汎用エクシーズは使わない方向性で行きます。
●カードプールは発売時期無視です。
●禁止制限の内容はあってないようなものなので気にしないでください。
●先攻ドローありでデュエルが進行します。
●プレイングがおかしい場面があるかもしれませんが、どうかご容赦ください。
目 次 第1話﹃ゲートHERO﹄ │││
第5話﹃イカサマ疑惑
﹄ │││
第4話﹃望んだ流れ﹄ │││││
竜﹄ │││││││││││││
第3話﹃激突
サイバーVS可能性の
第2話﹃カード集め∼運命の出会い∼﹄ 1
37
82
第6話﹃二つの属性を持つ竜を攻略しろ
!?
51
67
!
29
﹄ │││││││││││││
!
│
とうじょうはじめ
世間一般からしたら、カードゲームは子供の遊び道具という認識になってしまうだろ
も居心地が良い。
そこでできた新しい友達もいる。コミュニケーションがたくさんとれる場所で、とて
この春、中学生に上がったこの俺もこのカードショップにお世話になっている。
高校生や大学生も足を運ぶ場所になっていた。
の遊び場に困っていた子供たちに突然できた場所だ。そりゃ小学生や中学生に限らず、
この小さな田舎町にできたカードショップは大繁盛だった。なぜなら、カードゲーム
帰る支度を終えると自転車にまたがり、行きつけのカードショップへと足を運ぶ。
である。
遊戯王デュエルモンスターズのカードゲーム。それがこの俺、 東 條 創のマイブーム
う。
学校が終わる。チャイムが鳴り響き、生徒たちは部活だなんだと言うが、この俺は違
1
第1話﹃ゲートHERO﹄
第1話『ゲートHERO』
1
う。やっている身からしたら、気軽にバイトして稼げるようになった高校生からカード
ゲームは本番なんじゃないかと思うが。
まさる
ななしろまさる
そんなことはどうでもよく、カードショップの扉を開ける。そこに居たのはいつもの
友達。
﹁よう、 優。先に来てたのか﹂
﹁おせえぞ、待ちくたびれたんだからな﹂
この目の前の男が、このショップで知り合いになった友達の一人。名は七 城 優。色々
とアドバイスを貰ったりしてお世話になっている。
優は基本的にはデッキビルダーをやっているそうだが、ちゃんと大規模な大会でも結
果を残している人で、プレイヤーの間では有名人らしい。俺はそういうガチな環境で戦
﹂
うのではなく、こうやって友人間で楽しくする派だから彼の事はここで友達になるまで
知らなかった。
ふふふ⋮⋮俺のヲーデッキが火を噴くぜ
﹁そりゃごめんな優。じゃ、早速やるか﹂
﹁おう
﹁まったく⋮⋮優はロマンの塊だよな﹂
!
﹁へいへい﹂
﹁俺はこういうデッキが好きなんだ。放っておいてくれ﹂
!
2
椅子に腰かけ、俺はバッグからデッキケースを取り出す。
ヒンズーシャッフルとファローシャッフルを織り交ぜながら、お互いにデッキを念入
りにシャッフル。これは不正がないように、という事と相手を信用するための行為だ。
小さい規模だが、このショップの大会によく出る俺と優はシャッフルをしっかりとす
るという癖をつけるためにこういったフリーのデュエルでも行っている。
スマートフォンで遊戯王用の計算アプリを立ち上げ、準備は完了。
じゃんけんをした結果、俺の勝利、優は敗北。先攻はもらったわけだ。
東條創:LP8000
七城優:LP8000
効果モンスター
︽E・HERO プリズマー︾
て、E・HERO ネオスを墓地に送る﹂
表示で召喚。効果を発動。エクストラデッキからE・HERO ネオス・ナイトを見せ
﹁じゃあ、先攻ね。ドロー。お、いい感じじゃん。俺はE・HERO プリズマーを攻撃
第1話『ゲートHERO』
3
星4/光属性/戦士族/攻1700/守1100
自分のエクストラデッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンス
ターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を自分のデッキから墓地へ
送って発動する。
このカードはエンドフェイズ時まで墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱
う。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。
この流れ、いわゆるネオスビートのように見えるが、俺のデッキはそのタイプではな
こ
い。HEROはその種類ゆえデッキタイプはたくさんあるが、俺のデッキは融合するた
めに組み上げたデッキだ。
﹁カードを一枚伏せて、ターンエンド﹂
スタンバイ。メインフェイズ。おろかな埋葬を発動し、N・エア・
﹁相変わらず安定のスタートを切るよなぁ。俺のターン。ドローフェイズ⋮⋮ん
れ揃ったんじゃね
?
ハミングバードを墓地へ﹂
︽おろかな埋葬︾
?
4
通常魔法
自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送る。
優のデッキは、彼が言うにはヲーことラーの翼神竜のデッキらしい。ライフを回復す
るエア・ハミングバードを墓地に送ったことから彼の狙いが見えてくる。
エア・ハミングバードで手札からライフをちゅっちゅして大きく回復し、ラーの翼神
竜 に ラ イ フ を ち ゅ っ ち ゅ さ せ て 攻 撃 力 を 上 げ る 気 だ。さ す が は ヲ ー。ラ イ フ ち ゅ っ
ちゅギガントという名は伊達ではない。
﹂
そして、墓地に送ったという事は、墓地から特殊召喚してあのカードを発動させて一
気にリリース要因をそろえる気らしい。
?
︽地獄の暴走召喚︾
﹁俺もE・HERO プリズマーを二体特殊召喚﹂
体特殊召喚﹂
﹁オッケー。特殊召喚成功時、地獄の暴走召喚を発動してN・エア・ハミングバードを二
﹁ないよ﹂
﹁死者蘇生を発動。N・エア・ハミングバードを特殊召喚。何かある
第1話『ゲートHERO』
5
速攻魔法
相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力15
00以下のモンスター1体が特殊召喚に成功した時に発動する事ができる。
その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て
攻撃表示で特殊召喚する。
相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、その
﹂
モンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。
︽N・エア・ハミングバード︾
効果モンスター
星3/風属性/鳥獣族/攻 800/守 600
500ライフポイント回復する。
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。
自分は相手の手札の数
﹁残念、ないな﹂
﹁じゃあ、キモちゅっちゅ三体の効果を発動してライフを回復。ヴェーラーは
×
﹁じゃあ、6000回復してライフポイントは14000な﹂
?
6
七城優:LP8000↓14000
優はエア・ハミングバードの効果でライフポイントを稼ぐことが出来た。そして、召
喚権を残している。
つまり、攻撃力14000のヲーの欲心竜が登場するというわけである。
これは脅威だ。ただし、罠カードへの対策等があればの話だが。
ヲーだ
﹂
/守 ﹁エア・ハミングバード三体を生贄に、ラーの翼神竜を召喚﹂
﹁出た
効果モンスター
星10/神属性/幻神獣族/攻 このカードは特殊召喚できない。
?
!
このカードが召喚に成功した時、このカード以外の魔法・罠・効果モンスターの効果
このカードの召喚は無効化されない。
召喚しなければならない。
このカードを通常召喚する場合、自分フィールド上のモンスター3体をリリースして
?
!
︽ラーの翼神竜︾
第1話『ゲートHERO』
7
8
は発動できない。
このカードが召喚に成功した時、ライフポイントを100ポイントになるように払う
事で、このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。
また、1000ライフポイントを払う事でフィールド上のモンスター1体を選択して
破壊する。
ついに現れた神のカードの一枚。
だが、遊戯王OCGにおいては残念なカードの一枚である。
特殊召喚が不可能という原作ファンに喧嘩を売ったかのような条件を付け、マリクが
行った死者蘇生からの流れを再現できなくした。これでは不死鳥の名はどこへ行った
のやら、である。
さらに生贄にしたモンスターの攻守の合計値がこのモンスターの攻守の値となる効
果と、フィールド上のモンスターを生贄に捧げて攻撃力を加算する能力もなくなってい
る。
ライフポイントをモンスターの攻守にする効果が召喚成功時になっているため、モン
スター破壊効果﹃ゴッドフェニックス﹄は何らかの方法でライフポイントを回復してか
らでないと使えないという噛み合わなさ。
正直、神がOCGで使えるとなったときはファンとして興奮したものだ。
最初にOCG化した︽オベリスクの巨神兵︾は原作に近い効果になっていて満足のい
くものだった。
だが、次にOCG化されたこの︽ラーの翼神竜︾は残念だった。このカードテキスト
炎を纏いし不死鳥となりて
﹄とできなかった
を作った人は原作へのリスペクトはないのか、と思ってしまったものだ。せめて墓地か
ら蘇生して﹃地より蘇生し天を舞え
!
それがどういった動きをするのかはこの後のプレイを見ていれば分かるはず。
キにも対応できるように考えて作っているつもりだ。
ちなみに俺が使っているデッキはトーナメントで使われるような、いわゆるガチデッ
ト用はトーナメント用、フリー用はフリー用と住み分けという形で納得するしかない。
ただ、そんなことを考えていては遊戯王を楽しむことは出来ないだろう。トーナメン
ムバランスとはいったい何なのか。
可愛く思えるような強力なカードが暴れまわっているのはどういうことなのか。ゲー
まぁ、ゲームバランスを考えるとこうなるのが妥当だという考えもあるが⋮⋮ラーが
耐性もないというのに。
ものか。ただでさえ、ライフポイントが100になって魔法・罠・モンスター効果への
!
﹁ラーの召喚成功時に効果発動。ライフが100になるように支払い、払った数値分が
第1話『ゲートHERO』
9
ラーの攻守になる。と、いうことで、ラーの攻守は13900だ﹂
﹂
七城優:LP14000↓100
︽ラーの翼神竜︾
攻撃力:13900
守備力:13900
﹁で、バトルフェイス。何かある
﹁ないっすよ﹂
ラーでプリズマーを攻撃﹂
!
相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターを全て破壊する。
相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
罠カード
︽聖なるバリア│ミラーフォース│︾
﹁残念ながらそれは通らないよ、優。ミラフォ発動﹂
﹁よーし。通れ
?
10
﹂
?
これが原作通りに罠が効かない効果だったら俺はこのまま負けていた。
なんだよ、平然と発動すんなよ
これが原作完全再現だったら神のカードに勝てるのだろうか
﹁ああああああああああ
!
るんだぜ
召喚したくなるじゃん﹂
﹁だってしょうがないじゃん。おろ埋と死者蘇生と暴走召喚が揃ってなおかつラーがあ
突っ込んできた優が悪い﹂
﹁だってしょうがないじゃん。発動しないと負けるんだもん。伏せカードの対策なしに
!!
一応俺は勝ち筋とか考えて作ってるから
﹂
﹁いや、俺はちょっと違うから。それはガチデッキ完全否定、汎用完全否定の奴だから。
だろ。そのままじゃファンデッカスと呼ばれるぞ﹂
﹁まぁ、その気持ちは十分わかる。だけど、せめて伏せカード対策が出来てから動くべき
?
!
﹁あー分かる分かる。お前のデュエルの対戦相手の顔は面白いよな﹂
のが面白くて面白くて﹂
﹁俺はみんなと同じになるのが嫌だからね。それに、なんだそのカード、って反応される
とか、よくやるよ﹂
デッキを作ってるもんな。双頭のサンダー・ドラゴンとかライトニング・パニッシャー
﹁分 か っ て る よ。優 は 誰 も 使 わ な い よ う な カ ー ド に 目 を 向 け て、そ れ を 生 か す よ う な
第1話『ゲートHERO』
11
﹁そ う だ よ な ー。ま、と り あ え ず ラ ー は た だ で は 破 壊 さ れ な い ん だ な ー こ れ が。ミ ラ
フォにチェーンで手札から神秘の中華なべを発動。﹂
︽神秘の中華なべ︾
速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。
生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポ
イントを回復する。
これによって原作で行われた︽融合解除︾でライフに還元する演出を完全再現とまで
いかないが、似たようなことは出来るのだ。
これで優のライフは13900ポイント回復して14000となる。
初 手 六 枚 の 引 き 良 す ぎ だ ろ ⋮⋮。ど う な っ て ん だ オ イ
七城優:LP100↓14000
﹁中 華 な べ 持 っ て た の か よ
﹂
!
!
12
﹁俺も分からん。だけど、これで多分即死はなくなったんじゃね
﹁さて、それはどうだろう﹂
﹂
?
七城優はこのカードショップで出会った奴で、その場の流れで友達になった。
ういう風に会話しながらラフなデュエルを行った方が気が楽だし面白い。
雑談を交えながら行うデュエルは楽しい。大会のようなピリピリした雰囲気より、こ
セット 1枚
魔法・罠 なし
場 なし
七城優 LP14000 手札1枚
セット なし
魔法・罠 なし
リズマー︾
場 ︽E・HERO プリズマー︾、︽E・HERO プリズマー︾、︽E・HERO プ
東條創 LP4000 手札4枚
﹁ま、いいや。俺はメインフェイズ2で一枚伏せてターンエンド﹂
第1話『ゲートHERO』
13
使うデッキはどれもこれも面白いものばかり。先ほど言った︽双頭のサンダー・ドラ
ゴン︾を何回も融合召喚するデッキ、
︽ライトニング・パニッシャー︾を使ったチェーン
ビート。他にも︽ハネクリボー︾でワンターンキルを食らったときは目が点になった。
と聞いたときにとあるデッキ提案
俺が使っているデッキも彼から相談を受けて作ったもので、漫画版融合HEROを沢
山使えてそれなりに強いデッキってなにかある
してきた。
を墓地に落とす。
プリズマーの効果を発動して、
︽E・HERO ネオス︾と︽E・HERO バブルマン︾
まずはドローフェイズでカードを一枚引く。これで俺の手札は五枚。まずは二体の
﹁俺のターン﹂
では、そのデッキはいったい何なのかと言うと⋮⋮。
基本的な形と動かし方を教えてもらって、今では自分で試行錯誤して作っている。
?
さて、優の︽地獄の暴走召喚︾のおかげで墓地肥しという準備が終わった。さらに、必
﹂
要なHEROの数も揃った。
これで勝つる
﹁まずはサイクロンっと
﹁容赦ねぇなまったく。トホホ⋮⋮﹂
!
!
14
︽サイクロン︾
速攻魔法 フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
破壊されたのは︽激流葬︾。モンスターを召喚した時に発動して、フィールドのモンス
ターを掃討するトラップカードだ。
サイクロンが無かったらフィールドが焼野原になってこのターンで仕留めるのは不
可能だった。こればっかりは引きが良かった、と言うしかない。
﹁そしてミラクル・フュージョンを発動 墓地のバブルマンとネオスを除外して、E・
HERO アブソルートZeroを特殊召喚﹂
!
合デッキから特殊召喚する。
スターをゲームから除外し、
﹁E・HERO﹂という名のついた融合モンスター1体を融
自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモン
通常魔法
︽ミラクル・フュージョン︾
第1話『ゲートHERO』
15
︵この特殊召喚は融合召喚扱いとする︶
500ポイントアップする。
×
だが、俺のデッキの核はこのカードではない。
カードである。
デッキタイプによっては不必要なカードにもなるが、大抵のHEROデッキには入る
ドバンテージ的に実質一枚消費で融合召喚できるのだ。
合︾では三枚のカードを失って融合召喚するのに対し、
︽ミラクル・フュージョン︾はア
︽ミラクル・フュージョン︾はE・HEROを使うにあたって重要なカードだろう。︽融
全て破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、相手フィールド上に存在するモンスターを
ro﹂以外の水属性モンスターの数
このカードの攻撃力は、フィールド上に存在する﹁E・HERO アブソルートZe
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
﹁HERO﹂と名のついたモンスター+水属性モンスター
星8/水属性/戦士族/攻2500/守2000
融合・効果モンスター
︽E・HERO アブソルートZero︾
16
﹂
いや、展開するにあたっては重要な位置に存在するカードではあるが、メインはこの
カードではない。
では、メインのカードとは││。
﹁お次にフュージョン・ゲートを発動
!
まぁ、このカードを引きすぎると邪魔になるだけで事故の要因となる面があるのが玉
抜群にある。
爆発的な展開が可能になる他、
︽E・HERO The シャイニング︾とのシナジーが
﹃ゲートHERO﹄と呼ばれるデッキの核となるカード。これを使うことが出来れば
そう、これが俺のデッキの核。
する事が出来る。
除外し、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚
ド上から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから
このカードがフィールドに存在する限り、ターンプレイヤーは手札・自分のフィール
フィールド魔法
︽フュージョン・ゲート︾
第1話『ゲートHERO』
17
に瑕である。
このデッキを知った頃は︽フュージョン・ゲート︾がとても重要なカードに思えて、三
枚積んだ挙句、フィールド魔法をサーチする︽テラ・フォーミング︾まで積んだことが
あった。
しかし、優に抜けと言われたのである。
その理由としては、もっと他に入れるべきカードがあるという事と、
︽フュージョン・
ゲート︾は事故要因になるという事だった。
手札に複数来てしまったときの処理方法が︽超融合︾のコストか、破壊されたときに
張り直すぐらいしかないからだ。
つまり、サーチカードまで積むのはやりすぎなのである。
﹂
!
﹁HERO﹂と名のついたモンスター+光属性モンスター
星8/光属性/戦士族/攻2600/守2100
融合・効果モンスター
︽E・HERO The シャイニング︾
HERO The シャイニングを特殊召喚
﹁フュージョン・ゲートの効果を発動して、場のプリズマー二体を除外して融合し、E・
18
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
300ポイントアップする。
このカードの攻撃力は、ゲームから除外されている自分の﹁E・HERO﹂と名のつ
いたモンスターの数
このカードがフィールド上から墓地に送られた時、ゲームから除外されている自分の
×
これで俺の場には攻撃力1700の︽E・HERO プリズマー︾と攻撃力2500
いる。
るE・HEROが四体のため、攻撃力が1200ポイントアップして3800となって
さて、今出した︽E・HERO The シャイニング︾の攻撃力は、除外されてい
いかにこのカードをうまく使えるかがカギとなってくる。
を︽フュージョン・ゲート︾の効果を使ってそのまま召喚することが出来る。
る効果を持つ。つまり、そのモンスターで次の︽E・HERO The シャイニング︾
さらに、破壊されて墓地に送られても効果でE・HEROを二体まで手札に加えられ
れる。つまり、このカードの攻撃力が大きく上がることになるのだ。
ゲートHEROは︽フュージョン・ゲート︾を使う関係でE・HEROが沢山除外さ
このデッキにおけるエースカード。
﹁E・HERO﹂と名のついたモンスターを2体まで選択し、手札に加えることが出来る。
第1話『ゲートHERO』
19
の︽E・HERO アブソルートZero︾、攻撃力3800の︽E・HERO The
シャイニング︾がいる。
この合計値は8000ポイント。優のライフを削りきるにはあと6000ポイント。
●デッキから﹁HERO﹂と名のついたモンスター1体を手札に加える。
で、フィールド上の魔法・罠カードを選んで破壊できる。
●このカード以外の自分フィールド上の﹁HERO﹂と名のついたモンスターの数ま
る。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動でき
星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300
効果モンスター
︽E・HERO エアーマン︾
自分のデッキから﹁E・HERO﹂と名のついたモンスター1体を手札に加える。
通常魔法
︽E│エマージェンシーコール︾
││そのまま召喚。サーチ効果を発動して││バブルマンを手札に﹂
﹁そして、E│エマージェンシーコールを発動。E・HERO エアーマンをサーチして
20
﹁続けてエアーマンとプリズマーをゲートの効果を使って融合。二体を除外してE・H
ERO The シャイニングを特殊召喚﹂
二体目の︽E・HERO The シャイニング︾が出てきた。除外されているE・H
EROは六体。つまり攻撃力は4400になる。
これで場のモンスターの総攻撃値は11300ポイント。
こ れ こ そ が ゲ ー ト H E R O の 醍 醐 味。流 れ る よ う な 連 続 融 合。爆 発 力 の あ る 展 開。
これこそ俺のやりたかったこと。
漫画版遊戯王GXの登場人物、響紅葉の使うHEROをカッコいいと思ってしまった
俺が優に相談しながら作ったデッキだ。
?
瞬の爆発力は凄いな﹂
﹁Zeroから攻撃力の低い順番で攻撃するけど、ゴーズは
﹁ないよ。あと2700か﹂
七城優:LP14000↓2700
﹂
﹁あはははは⋮⋮。容赦ねえなまったく。さすがはゲートHEROだよ。相変わらず一
第1話『ゲートHERO』
21
攻撃は終わったように見えるが、このデッキにはまだ攻め手が残されている。
手札もちょうど二枚あるし、全てが噛み合った。今回の引きは優も俺もすごく良い。
やっぱゲートHEROいいな。使ってて面白いよ﹂
!
﹁それは優のプレイングミスが原因だろ
し﹂
伏せカードに警戒しないで突っ込んできた
?
と﹂
﹁使われている側はまったく面白くないけどな。特に今回のような一方的な展開になる
﹁よっしゃ
﹁あーあ。俺の負けか﹂
とりあえず、これで優のライフを削りきることが出来た。
いが、弱い使い方だと教わった。
特にゲートHEROのような攻めのデッキでは守りとして使う事は悪いことではな
ど、今回のような攻撃的な使い方をする方が強いと優に教えてもらった。
これも使い始めた頃は勘違いしていたカードで、守りの札として認知していた。だけ
シャイニング︾を召喚した。
︽超融合︾によって更なる追撃が可能となる。今回は三枚目の︽E・HERO The
ストにしてZeroとシャイニングを融合。シャイニングを召喚だ﹂
﹁まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ。手札から超融合を発動。バブルマンをコ
22
﹁それは⋮⋮。すみません、俺が原因です﹂
二人は笑い合う。
この後も続々とお店に来た人と沢山デュエルした。
ゲートHEROといえば東條創だと覚えられる程に顔は広くなっていた。
今 が す ご く 楽 し い。カ ー ド ゲ ー ム を 通 し て い ろ ん な 人 と 触 れ 合 え る。そ れ こ そ が
カードゲームの醍醐味と言ってもいいかもしれない。
﹁あ、もうこんな時間か。じゃあ優、俺はそろそろ帰るよ﹂
時間を忘れてデュエルしまくってた俺は、ふと外を見ると暗くなっていることに気付
﹁おう、また明日な﹂
く。時間はもう夜の7時を回っている。
いい加減疲れてきたし、そろそろ帰ろうかと思ったのだ。
店を出て、駐輪場に止めた自転車にまたがり、ライトを忘れずに点灯して帰路に着く。
冬に段々と近づいている今日この頃、日が沈むのが早い。周りはすっかり真っ暗だ。
交差点の信号が赤になったのでいったん止まる。
とか。
今日のデュエルを通して脳内でデッキ構築を見直す。一、二枚の差だが、これが結構
響くのだ。
あれは結構邪魔になったな、減らそうかな
?
第1話『ゲートHERO』
23
あれ欲しいタイミング多かったな、増やそうかな
﹁え⋮⋮
﹂
││その時の事だった。
とか。
そんな事を考えながら、信号が青になったので道路を横断する。
?
それが俺の最後の思考となった。
理解した時にはもう手遅れだった。
俺は⋮⋮車にはねられたのか
︶
酷い痛みを感じる。身体に力が入らない。立ち上がれない。
意識が薄れる。
身体に激痛が走り、乗っていた自転車はどこかへ飛んで行ってしまった。
いったい何が起こったのか理解するのに時間がかかった。
そして、浮遊感。
突如、強い衝撃。
その光を発する鉄の塊が自分の方へと突っ込んでくる。
避けようと思ったが、身体よりもその光の方が早かった。
それはすごい勢いで自分の方へと向かってくる。
真横に見えた強い光。
?
︵あれ⋮⋮
?
?
24
意識が完全になくなる。
﹂
強い不安に襲われるが、その不安でさえ、段々と消えていった。
2
﹁うわああああああああああああああああああ
俺はベッドの上で飛び起きる。
!!
それにしてはリアルだったな。はぁ、朝からなんていう夢を見
?
と、今日は10月23日土曜日。今日もショップに行って遊戯王をやろうと思う。
だが、猛烈な違和感に襲われた。
俺はベッドから降りて、着替えようとした。目覚まし時計のカレンダーを確認する
額には冷や汗。だけど、見慣れた自分の部屋にいるので凄まじく安心する。
てしまう。
あまりにも怖い夢だったので、自分を落ち着かせるためについ独り言をぶつぶつ言っ
たんだよ。外に出たくなくなるじゃん。車怖いよ﹂
﹁⋮⋮夢 夢オチ
?
俺、こんなもの買った覚えがないぞ。こんな古い物、今じゃプレミアじゃね
?
見慣れた自分の部屋なのに、一つだけ、違和感を抱かせるあるものがあった。
﹁え
?
第1話『ゲートHERO』
25
26
なんであるの
﹂
││もしかして、ここって遊戯王のアニメの世界
もっともありえないことだ。
?
そんな想像をしてしまうのは、この俺の精神年齢が低いせいなのだろうか。
実味のないことこの上ない。
どう考えたらそんな結論に行きつかは分からない。あまりにも突拍子もない話で、現
それに先ほどの夢があまりにもリアルだったことから変な想像をしてしまう。
ようにも感じてくる。
ここは自分の部屋なのにそれだけが違和感として残ってしまう。どこか違う場所の
だ。強いて言えば、特典としてついてくるカードだけが必要な存在だろう。
ないだろう。遊戯王をゲームとして遊んでいる身からしたら正直言って必要ない存在
実体化することなんてない。精々ごっこ遊びに使うかコスプレに使うかしか使い道が
ポイントはボタンをカチカチ音を出しながら合わせる方式だ。もちろん、モンスターが
ものを買えるほどのお金なんてなかった。しかも、操作が恐ろしく面倒くさくてライフ
これが発売したのは大分前だ。それこそ、俺がまだ小学生より前の頃の話で、こんな
た一番最初のデザインのものだ。
そこにあったのはデュエルディスクと呼ばれるもの。それも、バトルシティで使われ
?
だが、心のどこかでその考えを肯定してしまっている。
それを証明するためには机の上にあるデュエルディスクを調べてみる事が一番だろ
う。
俺は恐る恐るそれに手を伸ばす。
つかみ取ったそれはプラスチックのおもちゃとは思えない質感と重さ。⋮⋮これは
プラスチックじゃない。明らかに金属だ。
スイッチに指を伸ばし、ONにする。
すると、機械音が発され、真ん中で別れていたフィールドが一つにつながり、アニメ
で見たデュエルディスクとなったく同じ形になった。
まさか、これにカードを乗せると実体化するなんてことはないよな
そう思いながら机の上に散らばったカード群に手を伸ばす。
その時だった。
?
家のインターホンが鳴り響く。ピンポーン、という音が何度も繰り返されて、正直煩
わしい。
俺は部屋から出て階段を降り、リビングへと出る。
﹂
誰が来たのか確認するためにテレビモニターの前に立つ。
﹁
!?
第1話『ゲートHERO』
27
言葉が出なかった。
カメラの向こうに立っている二人は、俺がよく知る人物。
だが、その二人がインターホンの前に立っているだなんてありえない。なぜならその
人は││空想上の人物なのだから。
﹂
﹂
?
まさか、今起
?
ひどい頭痛と共に、リビングに俺の叫び声がこだました。 インターホンに映る彼女が誰なのか、信じられないが確認した瞬間だった。
!!
!?
あああああ
﹂
﹁なッ 痛ッ││なんだこれ⋮⋮頭が割れ⋮⋮割れちまいそうだ⋮⋮あ、あああああ
間違いない。彼女は││。
その声は、やはり聞いたことのあるものだった。
きたばかりだったりしないわよね
﹁あ、やっと出た。今日は兄さんと一緒に遊びに行く予定だったでしょ
通話のスイッチを押し、インターホンの目の前にいる人物に恐る恐る話しかける。
﹁はい⋮⋮どなたでしょう
?
28
か。
この世界は、自分の知っているものとは違う。まるで、漫画の遊戯王と同じではない
の人生とはまるで違う人生の記憶。
その記憶は俺のものであって俺のものではない。自分が知っている東條創という男
今は夏休み中で家に帰っているということ。
して、かのプロデュエリスト、響紅葉に憧れてE・HEROのデッキを使っていること。
俺の名前は東條創で、デュエルアカデミア中等部に通う一年生の生徒だという事。そ
ひどい頭痛の最中、今までの事を思い出したからだ。
それに、分かったこともある。
ると理解してしまっているからだ。
たが、すぐにこれは現実だと自覚する。自覚するしかなかった。確かにここに自分がい
なぜ目の前にその二人が存在しているのかは分からない。一瞬、夢だと思ってしまっ
気が付けば、目の前に二人の男女がいた。その顔を、俺は知っている。
1
第2話﹃カード集め∼運命の出会い∼﹄
第2話『カード集め∼運命の出会い∼』
29
そういえば聞いたことがある。とあるゲームでこのネタを使っていたことがある。
││世界線。
西暦二〇〇〇年。インターネット上に現れた、二〇三六年からやって来たタイムトラ
ベラーと自らを名乗る人物が提唱した理論。
世界線はパラレルワールドと同義であると発言している。
つまり、俺が今いるこの世界は、元々いた世界とは全く違う世界線にいるのではない
か。
限られた知識を使って出した結論がコレだ。所詮はゲーム等で知っているだけの素
人の知識。当てには出来ない。
少しだけ気持ち悪い感覚に陥る。
?
から彼は感情を表情に表わす分かりやすい人だな、と思う。ただ、デュエル中に限って
吹雪さんは本当に心配していると、見て分かるほどに不安そうな表情をしている。昔
﹁大丈夫って⋮⋮叫び声が聞こえたよ。本当に大丈夫かい
﹂
いるような感覚。だけど、実体としてそこにいるのは一人だけ。
今の俺は俺であって俺ではない。まるで、まったく違う自分が二人、そこに存在して
俺は自然に二人の名前を呼んだ。
﹁大丈夫だよ、明日香、吹雪さん。立ちくらみしただけだから﹂
30
はクールになるが。
やはり、気持ち悪い。初対面であるはずの天上院吹雪の過去を俺は知っている。そし
て、その横で泣いている吹雪さんの妹である明日香の事も。
﹂
﹂
﹁はい。もう大丈夫です。ほら、明日香も泣くなよ﹂
﹁だって、本当にビックリしたんだから
明日香は流れる涙を拭って首を縦に振る。
に馴れるときは来るのだろうか
そんな淡い期待を持ちながらそのドアを開けて店内に入るが、優の姿はなかった。街
もしかしたら、優もここにいるのではないか。
行きつけのショップにとても似ていた。
俺、吹雪さん、明日香が向かったのは行きつけのカードショップ。ここは前の世界の
だけど、これが普通だと言わんばかりに行動に移した。
ろう。
界じゃありえない行為。デュエルディスクを持ち歩くだなんて、痛い子だと思われるだ
とりあえずデッキとデュエルディスク、財布を持って外へと出る。俺の知っている世
?
こうやって自然に会話できていることが本当に気持ち悪い。変な感覚だ。この感覚
?
!
﹁ああ、悪かったよ。ほら、遊びに行こう。な
第2話『カード集め∼運命の出会い∼』
31
﹂
並みや、ショップの外見と内装はまったく同じでも、違う世界なんだなと理解した。
ここに││優はいない。
﹁さて、早速大会に参加しましょ
﹂
﹁ちょっと待った明日香﹂
﹁何よ
﹂
?
俺の新しいHEROデッキが完成するまでちょっと無理かな﹂
!
融合︾といったカードは一般流通されていない。そもそも、あのカードは遊城十代のワ
しかし、一つだけ問題点がある。この世界における︽E・HERO ネオス︾や︽超
パーツは揃えることが出来るはずだ。
ここはカードショップだ。足りないカードは買えばいい。シングルで買えば大体の
要なカードで持っていないカードも何となくだが分かる。
のだ。幸い、自分の持っているカードは何となくだが理解できている。したがって、必
そうだ。この世界の俺はゲートHEROを作っていない。デッキの内容が全く違う
﹁ともかく
﹁だって、創のデッキは││﹂
﹁まぁ、その、なんだ。俺のデッキ、まだ大会に出られるようなデッキじゃないんだ﹂
﹁なんでよ
﹁俺は今回パスさせてもらうわ﹂
?
?
32
ンオフに近い。手に入れるのは不可能だろう。
だが、ゲートHEROを組めないわけじゃない。幸い、俗に属性HEROと言われる
響紅葉の使う︽E・HERO アブソルートZero︾のような融合HEROは一般に
流通されており、俺はそのカードを持っている。
正直、こんなレアカードをよく持っていたな、と思うが、この世界の俺はパック等で
必死こいて集めたのだ。その根気にこの俺は賞賛を送りたい気持ちだ。いったい何人
の諭吉が犠牲になったのか。それはこの世界の俺ですら覚えていなかった。
手札に戻すという効果なわけだが、それを舐めたら痛い目に合う。
このカードはモンスターを破壊して墓地に送ったり除外することはない。ただ単に
去カードとして教えられた。
フリーチェーン最強説は優が教えてくれた説である。特に強制脱出装置は最強の除
しいところだな⋮⋮﹂
な。さて、フリーチェーン系最強トラップの強制脱出装置と汎用水属性モンスターが欲
﹁えっと、必要なのはHERO関連以外のカードか⋮⋮。思ったより少なく済みそうだ
ストレージに一枚一〇円で置いてある。
必 要 そ う な カ ー ド を と り あ え ず 買 う。ど う せ ほ と ん ど は ノ ー マ ル カ ー ド の 部 類 だ。
﹁さて、まずは必要そうなカードをあらかた集めるか⋮⋮﹂
第2話『カード集め∼運命の出会い∼』
33
召喚権は一ターンに一度というルールがあるこのゲームでは、バウンス効果は非常に
強力だ。相手の動きを抑制することが出来る。
さらに、融合モンスターや、この世界にはないがシンクロモンスター、エクシーズモ
ンスターに撃つことが出来れば完全除去となるこのカード。弱いわけがない。
案の定、このカードは一〇〇円コーナーにあったが、三枚買っても三〇〇円なので買
うことにした。
あとは、
︽E・HERO アブソルートZero︾の素材にもなってくれる汎用性の高
い水属性モンスターが欲しいところだが⋮⋮。
﹂
!!
この︽ペンギン・ソルジャー︾はデュエルモンスターズの初期の頃から存在するカー
これだ
﹁ペンギン・ソルジャーか⋮⋮。場のカードを二枚バウンスできる水属性のカード⋮⋮
まった。
さて、大体ストレージ四個と半分くらい探し終えた頃だろうか。あるカードが目に留
だが、デッキの完成の為には探し出すしかない。
そんな都合のいいカードを見つけ出すのは骨が折れる作業だ。
そんなことを呟きながらストレージのカードを次々と見ていく。膨大なカードから
﹁はてさて、何が良いものか﹂
34
ドである。
古く、低スペックの能力値のため、使う人は極端に少ない。
だが、ゲートHEROとの相性は抜群だ。汎用性もあり、リバース効果を使い終わっ
た後は︽E・HERO アブソルートZero︾の素材となることで無駄のない活躍を
成し遂げてくれるカード。
悪くない。
﹁これでよし。お会計っと﹂
三一〇円のお買いもの。良い買い物をしたと思う。
さて、大会の方はどうなっているかなっと。
﹂
?
﹁そんなことより、なんで創君はこの大会に出なかったんだい
﹂
﹁えっと、新しくデッキを構築している最中なので、勝負どころじゃなかったんです﹂
?
大会の規模を物語っているだろう。
今回のショップ大会はそれほど大きな規模じゃない。もう決勝戦ということが、その
まぁ、明日香なら大丈夫だろう。
ね﹂
﹁ああ、アスリンは大丈夫だよ。この決勝戦もきっと勝てる。ただ、油断は禁物だけど
﹁吹雪さん、明日香はどうですか
第2話『カード集め∼運命の出会い∼』
35
﹁そういうことか。じゃあ、デッキが完成したらこの僕が調整役になってあげよう﹂
そんな話をしていると、明日香が賞品のデュエルモンスターズのパックを持ってこっ
﹁ありがとうございます吹雪さん﹂
優勝してきたわよ﹂
ちにやって来た。どうやら優勝したようだ。
﹁創、見てごらんなさい
デュエリスト
﹁さすがは明日香だな。ま、俺の新しいHEROデッキには勝てるかな
﹂
こんなショップの小さな大会でも全力全開の明日香さんマジで決闘者の鑑っすね。
ふふん、と胸を張りながらドヤ顔の明日香。
!
そう、俺が愛用してきたゲートHEROに勝てるかな、明日香
?
?
36
第3話﹃激突
サイバーVS可能性の竜﹄
?
それに、亮さんの弟である丸藤翔と俺は仲がいいらしい。実際に会っていないから記
どうやら、記憶通りこの俺はこの二人から弟のように慕われているみたいだ。
﹁はい。よろしくお願いしますね、亮さん﹂
﹁そうか。じゃあ、吹雪と戦って、再調整したものと相手しよう﹂
﹁いや、最初の相手は僕だ。先ほど約束したからね﹂
﹁ほう⋮⋮。デッキが完成したらこの俺が相手になってやろう﹂
たんだ﹂
﹁うん。明日香の優勝だよ。ただ、創君はデッキ構築の途中ということで出場しなかっ
﹁構わない。ショップ大会はどうだった
﹂
この世界での俺との関係は良いお兄さんと弟分といったところだ。
そう言った人物。それは遊戯王GXではサイバー流でおなじみの丸藤亮だった。
﹁こっちだ吹雪﹂
一度ショップを出て、次の目的地へと向かう俺たち。そこに待っていた人物は││。
!
﹁やあ、亮。待たせたね﹂
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
37
憶の中でしかないが、実際に会えばまたしても自然にコミュニケーションを取るだろ
う。最初に吹雪さんと明日香と会った時だってそうだったのだから。
さて、こうやって亮さんに会った理由はただ一つ。吹雪さんと亮さんの二人は今度の
大きな大会の為のデッキ調整を行ったらしく、こうやってデッキのバランスを調べるた
めに戦うらしい。
この二人の実力はデュエルアカデミア中等部の中でも一位、二位を争う実力で、こう
やってよく二人で対戦しながらデッキ調整するという話だ。
デュエルも盛んに行われている大きな公園へとやって来た俺たち四人。吹雪さんと
亮さんはデュエルディスクを構え、デュエルの準備を進める。俺と明日香は見学だ。
﹄
!!
﹂
!
強力なテーマではあるが、コンセプトはまるで違う。
吹雪さんは真紅眼デッキで亮さんはサイバーデッキだ。この二つのテーマは非常に
さて、二人のデュエルが始まった。
天上院吹雪:LP4000
丸藤亮:LP4000
﹃決闘
﹁ああ、来い
﹁じゃあ、いくよ、亮﹂
38
吹雪さんの真紅眼デッキは﹃レッドアイズ﹄を出し続けることで継続的な火力を出す
ことができる安定性があるのが強み。
対して亮さんのサイバーデッキは、
︽パワー・ボンド︾を使ったハイパワーデッキ。一
撃必殺の攻撃によって相手を仕留めるデッキタイプである。ただし、失敗したときのデ
サイバー・ラーバァを攻撃表示で召喚し、ターン終了だ﹂
メリットは少々キツイものがあるのが弱点か。
﹁俺のターン。ドロー
!
している。
小さい機械竜がそこに現れた。それはまるでサイバー・ドラゴンの幼生のような姿を
ラーバァ﹂1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから﹁サイバー・
ン戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このター
星1/光属性/機械族/攻 400/守 600
効果モンスター
︽サイバー・ラーバァ︾
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
39
まずは亮さんの一ターン目。安定の滑り出しだ。まずは防御に専念して必要なパー
ツを集め、準備が整ったところで一撃必殺にすべてをかけるそのプレイングスタイル
は、まるで獲物を見つけた野獣の様だ。チャンスをうかがい、隙あらば仕留めにかかる。
ブラック・オブ・レジェンド
気を抜けば、そのままやられてしまうだろう。
そのモンスターをデッキに戻し、墓地のこのカードを手札に加える。
る。
自分の墓地のレベル7以下の﹁レッドアイズ﹂モンスター1体を対象として発動でき
︵2︶:このカードが墓地に存在する場合、
デッキからレベル7以下の﹁レッドアイズ﹂モンスター1体を特殊召喚する。
︵1︶:このカードをリリースして発動できる。
﹁伝説の黒石﹂の︵1︶
︵2︶の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
星1/闇属性/ドラゴン族/攻 0/守 0
効果モンスター
︽伝 説 の 黒 石︾
ブラック・オブ・レジェンド
﹁僕のターンだ。さっそく行くとしよう。 伝 説 の 黒 石を召喚するよ﹂
40
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
赤く輝く黒く丸い石が現れる。それはまるで卵のようだ。
そして、吹雪さんは宣言する。
現れたのは紅い瞳を持つ黒き竜。
﹁このカードを生贄にささげることで、 真 紅 眼 の 黒 竜を攻撃表示で特殊召喚
んてザラにいるみたいだし。
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
﹂
﹂
サポートカードは持っているのに肝心の︽真 紅 眼 の 黒 竜︾自体を持っていない人な
カードであることには変わりない。
サポートカードと共に再録。少々値段が落ち着いてきたのだが、それでも相当なレア
少し前まで10万円を超えるようなレートをしているカードであったが、最近様々な
!
!
はバーンダメージカードなどのサポートカードが豊富で、速攻を仕掛けやすい。
対する吹雪さんはさっそく切り札であるレッドアイズを出してきた。レッドアイズ
さんらしい堅実な戦いだ。
の圧縮を行うのだ。それによって勝つために必要なカードを呼び込みやすくする。亮
デッキから再び︽サイバー・ラーバァ︾が現れる。これによって、時間稼ぎ兼デッキ
デッキからサイバー・ラーバァを同じく攻撃表示で特殊召喚する﹂
﹁いいだろう。だが、サイバー・ラーバァの効果により、戦闘ダメージはゼロだ。そして、
﹁バトルだ。レッドアイズでサイバー・ラーバァを攻撃。ダーク・メガ・フレア
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
41
さぁ、亮さんはどうやって吹雪さんの猛攻を防ぐのだろう
?
﹁俺のターンだ。サイバー・ドラゴン・コアを攻撃表示で召喚﹂
り込んで静かに見守っている。
俺と明日香の二人はこの二人のデュエルがどのような展開に転ぶのか、期待しつつ黙
だが、これは嵐の前の静けさのようにも感じられる。
り出し。
一巡目が終了し、吹雪さんはド派手にレッドアイズを召喚。対して亮さんは静かな滑
セット 1枚
魔法・罠 なし
場 ︽真 紅 眼 の 黒 竜︾
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
天上院吹雪 LP4000 手札4枚
魔法・罠 なし
場 ︽サイバー・ラーバァ︾
丸藤亮 LP4000 手札5枚
﹁僕はカードを一枚セット。これでターンエンドだ﹂
42
︽サイバー・ドラゴン・コア︾
効果モンスター
星2/光属性/機械族/攻 400/守1500
このカードが召喚に成功した時、デッキから﹁サイバー﹂または﹁サイバネティック﹂
と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。
また、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存
在しない場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから﹁サイバー・ドラゴン﹂と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
﹂
!
﹁その通りだ吹雪。だが、このカードはすぐには使わない。使うのはこのカードだ﹂
﹁サイバーの融合サポートカードか⋮⋮
俺はサイバネティック・フュージョン・サポートを手札に加える﹂
﹁コアの効果で︽サイバー︾か︽サイバネティック︾のカードをデッキから手札に加える。
として扱う。
このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り﹁サイバー・ドラゴン﹂
﹁サイバー・ドラゴン・コア﹂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
43
﹂
亮さんが手札からカードを一枚デュエルディスクに挿した。そのカードとは││。
﹁魔法カード、エヴォリューション・バースト
︽エヴォリューション・バースト︾
通常魔法
る。だから発動できたというわけだよね﹂
﹁さすが、俺が使うカードに関してはよく知っているな﹂
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
﹁そりゃあ何回手合わせしたか分からないくらいだからね﹂
!
サイバー・ドラゴン・コアの口から激しい閃光と共に光線は発射される。
﹁ふふ⋮⋮さあ、破壊するカードはソイツだ。 真 紅 眼 の 黒 竜
﹂
﹁サイバー・ドラゴン・コアはフィールド上と墓地では︽サイバー・ドラゴン︾扱いにな
が││﹂
﹁このカードは自分のフィールド上に︽サイバー・ドラゴン︾が存在しなければ使えない
このカードを発動するターン、﹁サイバー・ドラゴン﹂は攻撃できない。
相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
自分フィールド上に﹁サイバー・ドラゴン﹂が存在する場合に発動できる。
!
44
それはレッドアイズを貫き、爆発。
フィールド上からレッドアイズの姿が消えてしまった。
れてしまった﹂
﹂
﹁さすがだよ亮。速攻でレッドアイズを召喚しても、ダメージを与えることなく破壊さ
!
﹁もちろん、攻撃可能なモンスターで攻撃だ。いけ、サイバー・ラーバァ﹂
﹂
さぁ、次の行動は
﹁だが、まだまだこれからだろう
?
﹁その通り
?
﹁俺はカードを二枚セットし、ターンエンドだ﹂
い。このままでは大ダメージを受けてしまうが⋮⋮。
きっと吹雪さんは次のターンにレッドアイズのモンスターを再び召喚するに違いな
ただ、これでは低攻撃力のモンスターを棒立ちにさせてしまっている。
0分のダメージを受けた。
サイバー・ラーバァの尻尾にある黄金に輝く棘により刺された吹雪さんは攻撃力40
天上院吹雪LP4000↓3600
﹁くぅ⋮⋮﹂
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
45
守りの札はしっかりと持っていたらしい。
さすがはデュエルアカデミア中等部において最強の名を持っているデュエリスト。
抜かりない。
すことでこのカードを手札に加える﹂
レッドアイズ・ワイバーン
?
デッキから﹁レッドアイズ・インサイト﹂以外の﹁レッドアイズ﹂魔法・罠カード1
︵1︶:手札・デッキから﹁レッドアイズ﹂モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
﹁レッドアイズ・インサイト﹂は1ターンに1枚しか発動できない。
通常魔法
︽レッドアイズ・インサイト︾
イズ・インサイトを発動﹂
﹁いや、このカードを発動するよ。デッキから真紅眼の飛竜を墓地へ送り⋮⋮レッドア
﹁もう一度レッドアイズを召喚するつもりか
﹂
﹁墓地の伝 説 の 黒 石の効果を発動し、墓地にある︽レッドアイズ︾カードをデッキに戻
ブラック・オブ・レジェンド
そして、どのような行動を取るのか考えること約五秒。吹雪さんは宣言した。
その引いたカードを見た瞬間、吹雪さんは微笑んだ。
﹁僕のターンだ。ドロー﹂
46
枚を手札に加える。
﹂
﹁亮、こんな言葉を知っているかい
﹁なんだ
﹂
?
レッドアイズ・フュージョン
んだ。
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
もレッドアイズの敗北だ。だが、それは様々な可能性を用いることで覆すことが可能な
ブルーアイズは攻撃力3000で、レッドアイズは攻撃力2400││どう頑張って
かの青 眼 の 白 竜と真 紅 眼 の 黒 竜の対比の言葉だ。
ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン
﹁知っていたんだね、亮﹂
﹁しかし赤き竜がもたらすのは勝利にあらず、可能性なり﹂
﹁青き竜は勝利をもたらす││﹂
?
このカードの効果以外ではモンスターを召喚・特殊召喚できない。
﹁真紅眼融合﹂は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分は
通常魔法
︽真 紅 眼 融 合︾
レッドアイズ・フュージョン
﹁真 紅 眼 融 合、これがレッドアイズの可能性の一つだよ﹂
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
47
︵1︶:自分の手札・デッキ・フィールドから、
融 合 モ ン ス タ ー カ ー ド に よ っ て 決 め ら れ て い る 融 合 素 材 モ ン ス タ ー を 墓 地 へ 送 り、
喚
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
メテオ・ブラック・ドラゴンだ
﹂
﹁バトルだ。メテオ・ブラック・ドラゴンで攻撃、メテオ・ダイブ
攻撃力3500の強力な可 能 性 の 答 えが現れた。
メテオ・ブラック・ドラゴン
隕石のように燃え上がるその身は、全てを焦がす灼熱。
!
﹂
!?
﹂
﹂
!
ドラゴンにバージョンアップさせる。俺は︽サイバー・ドラゴン︾扱いのサイバー・ド
﹁フィールド上の︽サイバー・ドラゴン︾を生贄にささげることで、サイバー・バリア・
﹁なに
﹁この瞬間、トラップ発動。アタック・リフレクター・ユニット
この攻撃が通れば亮さんは3100の大ダメージを受けてしまう。
メテオ・ブラック・ドラゴンが空高く飛び上がり、隕石のように降り注ぐ。
!
!
﹁そう。僕はデッキから真 紅 眼 の 黒 竜とメテオ・ドラゴンを墓地に送ることで融合召
﹁なるほど、可能性か﹂
この効果で特殊召喚したモンスターのカード名は﹁真紅眼の黒竜﹂として扱う。
ら融合召喚する。
﹁レッドアイズ﹂モンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合デッキか
48
ラゴン・コアを生贄に、サイバー・バリア・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚
効果モンスター
︽サイバー・バリア・ドラゴン︾
星6/光属性/機械族/攻 800/守2800
このカードは通常召喚できない。
にする。
﹂
このカードが攻撃表示の場合、1ターンに1度だけ相手モンスター1体の攻撃を無効
できる。
このカードは﹁アタック・リフレクター・ユニット﹂の効果でのみ特殊召喚する事が
!
ゴンの攻撃が受け止められてしまった。
吹雪さんの場には攻撃可能なモンスターが存在しない。
これじゃサイバー・バリア・ドラゴンの破壊ができない⋮⋮
!
サイバー・バリア・ドラゴンが展開する光のバリアによってメテオ・ブラック・ドラ
無効にする﹂
﹁サイバー・バリア・ドラゴンの効果を発動。一ターンに一度、相手モンスターの攻撃を
第3話『激突! サイバーVS可能性の竜』
49
あの三枚の手札の中に、逆転のカードが眠っているというのか
丸藤亮 LP4000 手札3枚
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
場 ︽サイバー・ラーバァ︾︽サイバー・バリア・ドラゴン︾
魔法・罠 なし
セット 2枚
天上院吹雪 LP3600 手札4枚
場 ︽メテオ・ブラック・ドラゴン︾︽真 紅 眼 の 黒 竜︾
魔法・罠 なし
セット 1枚
?
し か し こ れ か ら 亮 さ ん の タ ー ン。何 か 仕 掛 け る 気 な の が ヒ シ ヒ シ と 伝 わ っ て く る。
攻撃力の差は歴然だ。
バー・バリア・ドラゴン。
対 し て 亮 さ ん に 場 に は 攻 撃 力 4 0 0 の サ イ バ ー・ラ ー バ ァ と 攻 撃 力 8 0 0 の サ イ
攻撃力3500の︽メテオ・ブラック・ドラゴン︾⋮⋮見た目からして圧巻だ。
し、ターンエンドだ﹂
﹁くっ⋮⋮だが、守ってばかりじゃ僕には勝てないよ亮。リバースカードを一枚セット
50
魔法・罠 なし
セット 2枚
天上院吹雪 LP3600 手札4枚
易く並べていく派手な展開。
対する吹雪さんはレッドアイズのカードを巧みに使い、高攻撃力のカードをいとも容
ここまで亮さんはとても静かなデュエルをしていると思う。
トでしかない。
三巡目に入る。ダメージを受けているのは吹雪さんだけだが、たったの400ポイン
セット 1枚
魔法・罠 なし
場 ︽メテオ・ブラック・ドラゴン︾︽真 紅 眼 の 黒 竜︾
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
場 ︽サイバー・ラーバァ︾︽サイバー・バリア・ドラゴン︾
丸藤亮 LP4000 手札3枚
第4話﹃望んだ流れ﹄
第4話『望んだ流れ』
51
﹁ねぇ創。兄さんと亮さん、どっちが勝つのかな
﹂
?
して、サイバー・エルタニンを特殊召喚する
効果モンスター
﹂
!
/守 ?
︽サイバー・エルタニン︾
星10/光属性/機械族/攻 ?
そして墓地のもう一体のサイバー・ラーバァとサイバー・ドラゴン・コアの四体を除外
﹁いくぞ、俺のターン。俺は、場のサイバー・ラーバァ、サイバー・バリア・ドラゴン。
断できるほど甘い勝負ではない。
藤亮なのだ。デュエルアカデミアで一位二位を争う者同士の戦いは目先の事だけで判
見ていると分かる。この状況をひっくり返すことなど容易い事だ。ましてや相手は丸
そう。吹雪さんも、この現状を自分が有利だ、勝てる、と慢心していないのは表情を
がないものね﹂
﹁そうね。このまま終わるような人だったらデュエルアカデミア最強の名を授かるはず
のまま終わるわけがない﹂
て吹雪さんはデッキが回りまくっていて調子が良いみたいだ。だけど、あの亮さんがこ
﹁そうだなぁ。状況から見て亮さんは何か逆転のカードを握っているみたいだね。対し
52
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上及び自分の墓地に存在する機械族・光属性モンスターを全てゲーム
から除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
500ポイントになる。
このカードの攻撃力・守備力は、このカードの特殊召喚時にゲームから除外したモン
スターの数
を持っている。
その存在は畏怖するのには十分すぎるほどの存在感を醸し出し、すべてを破壊する力
はアラビア語で竜の頭を意味する言葉だ。
そこに現れたのは巨大な機械の竜の頭。このカードの名前となっているエルタニン
在するモンスターを全て墓地へ送る。
このカードが特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上に表側表示で存
×
﹂
!
﹃ああ
﹄
これで除外される。ただではやらせないよ、亮﹂
﹁その前に、僕はトラップを発動。奈落の落とし穴だ。攻撃力2000のエルタニンは
地へと送る。食らえ、コンステレイション・シージュ
﹁サイバー・エルタニンの効果により、吹雪、お前のフィールドのモンスターをすべて墓
第4話『望んだ流れ』
53
!!
俺と明日香の声が重なる。
それほどまでにこの展開は予想外だった。
︽サイバー・エルタニン︾という逆転のカードが出てきたかと思えば、一枚の罠カード
によりすぐに退場させられてしまった。一応、カード効果によって吹雪さんの場をガラ
空きにすることができたが、それでも、亮さんの攻め手を封じたことには変わりない。
そして、吹雪さんはレッドアイズに特化しているデッキであるため、簡単にフィール
ドを整えなおすことが可能だろう。
●このカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して
除外する事でデッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。
●このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードをゲームから
以下の効果から1つを選択して発動できる。
星1/光属性/機械族/攻 0/守 0
効果モンスター
︽サイバー・ヴァリー︾
ン終了だ﹂
﹁ならば、俺はサイバー・ヴァリーを召喚する。そしてリバースカードをセットしてター
54
ゲームから除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする。
●このカードと手札1枚をゲームから除外し、その後自分の墓地のカード1枚を選択
してデッキの一番上に戻す。
一応、これで次の吹雪さんのターンを凌ぐことができるかもしれない。
この状況に対する回答はどんなものなんだ
ヴァリーが何らかの効果が除去されなきゃの話ではあるが⋮⋮吹雪さんの手札はど
んな感じなんだ
?
通常罠
﹂
このカー
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
レッドアイズ・スピリッツ
ドの効果により、墓地の︽レッドアイズ︾を蘇生する。蘇れ真 紅 眼 の 黒 竜
エンドフェイズにリバースカードオープン
!
そのモンスターを特殊召喚する。
︵1︶:自分の墓地の﹁レッドアイズ﹂モンスター1体を対象として発動できる。
!
!
ね。亮、君のその瞳には勝利を求める熱さを感じる。だから僕もそれに答えよう。この
﹁せっかくの攻め手がこうも簡単に防がれて意気消沈している⋮⋮わけではなさそうだ
?
︽レッドアイズ・スピリッツ︾
第4話『望んだ流れ』
55
吹雪さんはこうなることを想定して蘇生用のカードを伏せていた。
そして見事にこの状況でレッドアイズを蘇生して攻め手を確保した。
﹂
ここまで完璧なタクティクスだ。
﹁そして僕のターン。ドロー
これで吹雪さんの手札は五枚
!
﹂
!!
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
︽真 紅 眼 の 黒 竜︾専用の魔法カードで、レッドアイズの元々の
﹁そうはさせん。トラップ発動、ダメージ・ポラリライザー。ダメージを与える効果を無
攻撃力││つまり今回の場合は2400のダメージを亮さんは受けることになる。
︽黒炎弾︾か⋮⋮
!
その﹁真紅眼の黒竜﹂の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
︵1︶:自分のモンスターゾーンの﹁真紅眼の黒竜﹂1体を対象として発動できる。
このカードを発動するターン、﹁真紅眼の黒竜﹂は攻撃できない。
通常魔法
︽黒炎弾︾
えよう。マジックカード、黒炎弾
﹁ヴァリーの効果でバトルでダメージを与えられないなら、このカードでダメージを与
!!
56
カー
ド
これで2400の大ダメージを回避できただけでなく、手札を補充でき
効にし、互いにカードを一枚ドローする﹂
上手い
た。
ド
﹂
?
特殊召喚
﹂
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
﹁レッドアイズ⋮⋮ダークネス⋮⋮ドラゴン﹂
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン
ラゴン︾、︽メテオ・ドラゴン︾の四体⋮⋮
﹂
レッドアイズ・ワイバーン
つまり⋮⋮︽真 紅 眼 の 闇 竜︾の攻撃力は。
!
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン
吹雪さんの墓地には、︽真 紅 眼 の 黒 竜︾、︽真紅眼の飛竜︾、︽メテオ・ブラック・ド
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
は自分の墓地に存在するドラゴン族一体につき300ポイント攻撃力を上げる﹂
﹁そう。これが僕の新しいレッドアイズの力。その可能性の一つさ。 真 紅 眼 の 闇 竜
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン
﹁そう。これが僕の新たな力。 真 紅 眼 の 黒 竜を生贄に捧げ⋮⋮真 紅 眼 の 闇 竜を
﹁新たな切り札だと
カー
﹁さすがだね亮。だけど、その効果で僕も新たな切り札を呼び込むことができた﹂
だが⋮⋮それは吹雪さんも同じ。
!!
!
!
ダークネス・ギガ・フレイム
﹂
﹁ヴァリーの効果のせいでダメージを与えられないのは残念だけど、このまま攻撃だ。
﹁攻撃力3600⋮⋮
第4話『望んだ流れ』
57
!
﹁サイバー・ヴァリーの、効果を発動。攻撃対象となったこのカードを除外することで
カードを一枚ドローし、バトルフェイズを終了させる﹂
セット 1枚
魔法・罠 なし
場 なし
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
丸藤亮 LP4000 手札3枚
そのモンスターを特殊召喚する。
モンスター1体を対象として発動できる。
︵1︶
:自分エンドフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の﹁レッドアイズ﹂
このカードの効果を発動するターン、自分は通常召喚できない。
星4/風属性/ドラゴン族/攻1800/守1600
効果モンスター
︽真紅眼の飛竜︾
レッドアイズ・ワイバーン
真紅眼の飛竜を除外し、墓地から真 紅 眼 の 黒 竜を特殊召喚できる﹂
レッドアイズ・ワイバーン
﹁僕 は カ ー ド を 二 枚 伏 せ て、エ ン ド フ ェ イ ズ 時、通 常 召 喚 を 行 っ て い な い か ら
58
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
天上院吹雪 LP3600 手札2枚
場 ︽真 紅 眼 の 闇 竜︾︽真 紅 眼 の 黒 竜︾
魔法・罠 なし
セット 2枚
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
た
吹 雪 さ ん の 場 に は 攻 撃 力 3 0 0 0 の 巨 大 な 大 型 モ ン ス タ ー と、攻 撃 力 2 4 0 0 の
︽真 紅 眼 の 黒 竜︾、そして伏せカードが二枚という布陣。
対して今の亮さんの場にはセットカードが一枚のみ。
てか、あのカード⋮⋮ゲーム序盤から伏せられているけど、何のカードなんだ
だのブラフ⋮⋮にしては何か違和感を感じる。
﹂
﹁俺のターン。ドロー⋮⋮吹雪、俺の勝利への道が完成したぞ﹂
﹁なんだって
この
?
?
召喚される﹂
﹁二ターン後⋮⋮
﹂
バー・ドラゴンを墓地へと送る。そして、二ターン後の未来にサイバー・エンドが特殊
カードの効果により、俺はサイバー・エンド・ドラゴンを選択。デッキより三枚のサイ
!
?
﹁俺は手札より永続魔法、未来融合│フューチャー・フュージョンを発動する
第4話『望んだ流れ』
59
﹁遅すぎる、と思っているならまだまだだな吹雪。忘れたか 俺はサイバー・ドラゴ
﹂
ン・コアの効果で何を手札に加えたか﹂
﹁ま、まさか⋮⋮
?
召喚できるじゃないか。
!
ライフポイントを半分支払い││﹂
!
﹂
﹁俺は手札、フィールド、墓地のカードを除外することで融合素材にすることが出来る
丸藤亮LP4000↓2000
サポート
﹁手札からパワー・ボンドを発動
そして速攻魔法、サイバネティック・フュージョン・
そのカードを使えば、二ターンなんて待つことなく︽サイバー・エンド・ドラゴン︾が
俺もすっかり忘れていた。
!!
60
このカードによって特殊召喚したモンスターは、元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップ
を墓地へ送り、機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
手札またはフィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスター
通常魔法
︽パワー・ボンド︾
!
する。
発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは特殊召喚したモ
ンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。
︵この特殊召喚は融合召喚扱いとする︶
︽サイバネティック・フュージョン・サポート︾
速攻魔法
ライフポイントを半分払って発動できる。
このターン、自分が機械族の融合モンスターを融合召喚する場合に1度だけ、その融
合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・フィールド
上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。
︽サイバー・エンド・ドラゴン︾
ろ、サイバー・エンド・ドラゴン
パワー・ボンドの効果により攻撃力は二倍だ﹂
﹁俺は、墓地より三体のサイバー・ドラゴンを除外し、パワー・ボンドにより融合。現れ
﹁サイバネティック・フュージョン・サポート﹂は1ターンに1枚しか発動できない。
第4話『望んだ流れ』
61
!
融合・効果モンスター
星10/光属性/機械族/攻4000/守2800
分だけ戦闘ダメージを与える。
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
パワー・ボンドの効果により攻撃力は8000ポイント
けだ。
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
﹂
エターナル・エヴォ
だけど、伏せカードが二枚あるこの状況でこの動きは危険すぎるんじゃないのか
リューション・バースト
﹁バトル。サイバー・エンド・ドラゴンで真 紅 眼 の 黒 竜に攻撃
!
?
パワー・ボンドはその強大な力ゆえに、大きな代償が付きまとう。
ス│を発動するよ﹂
ど、今回ばかりは勝ちに急ぎすぎたんじゃないかな 聖なるバリア │ミラーフォー
﹁ふふ⋮⋮すごいね。やっぱり攻撃力8000のサイバー・エンドは凄まじいよ。だけ
!
?
︽真 紅 眼 の 黒 竜︾へこの攻撃が通れば、5600のダメージを受けて吹雪さんの負
!!
︵1︶
:このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
﹁サイバー・ドラゴン﹂+﹁サイバー・ドラゴン﹂+﹁サイバー・ドラゴン﹂
62
︽盗賊の七つ道具︾
カウンター罠
その発動を無効にし破壊する。
まさか、まさかそんな馬鹿なことがあるかよ
﹂
融合召喚で場に出したモンスターがパワー・ボンドの効果でアップした攻撃力分のダ
メージを、エンドフェイズに受けることになる。
﹂
だから亮さんは何としてでもこのターンで勝負をつけなくちゃならなかった。
﹂
俺が何のためにこのカードを今まで取っていたと思う
そしてこの状況でミラーフォース。今回ばかりは││。
﹁勝ちに急ぎすぎた
﹁それは、確か三ターン目に伏せていたカード⋮⋮
﹂
﹁そう。発動するタイミングは今しかない。カウンタートラップ、盗賊の七つ道具
?
このカードはライフ1000ポイントをコストに、トラップの発動を無効にして破壊
!
!
!
?
丸藤亮LP2000↓1000
﹁なに
!?
︵1︶:罠カードが発動した時、1000LPを払って発動できる。
第4話『望んだ流れ』
63
する効果を持っている。発動タイミングとしては、あの時││︽サイバー・エルタニン︾
の召喚に対して︽奈落の落とし穴︾が発動された時があったはず。
俺ならきっとそのタイミングで発動していた。
だって、今のこの状況まで予測できないからだ。
確かに︽パワー・ボンド︾での一撃必殺を狙うのが亮さんのデッキコンセプトなのは
﹂
分かっている。だけど、攻め手が薄いあの状況で、エルタニンを守らない選択を取れる
なんて⋮⋮亮さんは本当に凄いデュエリストだ
﹁まさか亮、君はこの状況を予測していたというのか
!
﹂
レッドアイズ・ブラック・ドラゴン
﹁ぐ、ぐああああああああああああああああああああああ
!!
﹂
5600ポイントのダメージを受けて、吹雪さんのライフポイントは、ゼロを刻んだ。
雪さんを襲う。
三つの光の柱が、︽真 紅 眼 の 黒 竜︾を吹き飛ばした。そしてその凄まじい衝撃が、吹
!!
バースト
﹁お前が言うな吹雪。攻撃は続行されるぞ。いけ、エターナル・エヴォリューション・
﹁⋮⋮まったく、君は色んな意味で凄まじいデュエリストだよ﹂
﹁いや、予測していたわけではない。ただ、この状況を望んでいただけだ﹂
!?
64
天上院吹雪LP3600↓0
レッドアイズ・ダークネス・ドラゴン
﹁まさかあそこから兄さんが負けちゃうだなんて﹂
﹁そうだな。吹雪さんの引きはすごく良かった。 真 紅 眼 の 闇 竜が出てきたときは思
わず心が震えたけど、盗賊の七つ道具の使うタイミングはそれ以上に震えたね。鳥肌も
んだよ﹂
﹂
本当にそうだ。明日香の言う通り、亮さは序盤、防御に徹していた。だが、それもこ
の結末を想定してでの準備に過ぎなかった、という事だろう。
﹁アハハ、負けちゃったよ。デッキの詰めが甘かった、っていうことかな
ちましょう
﹂
﹁いいデュエルでしたよ吹雪さん。惜しいところまで行ったんです。本番では絶対に勝
?
ど、だけど、俺は言う。
今は吹雪さんを励ます言葉しかうかばない。この言葉自体迷惑なのかもしれないけ
本当に惜しかった。
!
か分からなかったんですよ
油断は禁物だと思います﹂
﹁亮さんも、今回は勝てましたけど、あのとき未来融合を引けていなかったらどうなった
﹁創は吹雪の味方か⋮⋮随分と好かれたみたいだな吹雪﹂
第4話『望んだ流れ』
65
?
﹁あぁ⋮⋮勝者にはキツイな創は。だが、その通りだな。創の言う通りだ。本番では今
回以上に本気で行く。覚悟しておけ、吹雪﹂
吹雪さんは、ああ、と返事をする。そして、亮さんと二人して笑い合う。
﹂
二人のデュエルはすごかった。俺も、あんな風にデュエルしてみたい。
﹁明日香﹂
﹁なに、創
それに向かって突っ走るだけだ。
待っていてください、亮さん、吹雪さん
!
とにかく、今の俺にははっきりとした目標がある。
みたいだ。いや、適応した、ということなのかもしれない。
なんて考えてしまう時点で、俺は早々にずいぶんとこの世界に毒されてしまっている
なること。
そう、俺の目標はデュエルアカデミアで最強の称号を勝ち取り、プロデュエリストに
﹁いずれは、あの二人を超えてみせるよ﹂
﹁そうね。あの二人は目標とするのにちょうどいいのかもしれない﹂
﹁俺は強くなる。今以上に強く。あの二人みたいに﹂
?
66
﹄
!?
もし言ったら痛い子認定されてしまうではないか。
に思い始めたのは正直焦った。まさか、俺は違う世界線から来た、だなんて言えない。
さて、俺のプレイングはおろか、デッキ内容が大幅に変わったことで、明日香が不審
の世界において、始めたばかりの初心者の方がマシなんじゃないかと思うほどに。
ている俺でも勝てないことが結構ある。だが、弱い人はとことん弱い。それはもう、前
正直、強い人と弱い人の差が酷いものだ。強い人は前の世界での遊戯王の環境に馴れ
そんなことよりデュエルの実技の事だ。
のおかげでなんとか中の上まで持ち上げることが出来た。
界に飛んでくる前までだ。この世界に来てからというもの、学科については⋮⋮明日香
この学校での成績はちょうど真ん中の平凡な男だった。だが、それはこの俺がこの世
エルアカデミア中等部での生活を送っていた。
ついこの前まで普通の中学生だった東條創こと俺は、なんら不自由なく、自然にデュ
1
第5話﹃イカサマ疑惑
第5話『イカサマ疑惑!?』
67
それから、この前行われた実技テストでは、今までではありえないほどの急成長を見
せてしまったせいで、イカサマを疑われる事態に至った。が、そういう目を向ける輩は
知識と腕を見せつけることで論破してやった。
今では、結構前線に立つ生徒になりつつある。
そして⋮⋮もう一人。
このデュエルアカデミア中等部一年生のトップ││万丈目準とは最近仲良くなった。
ふざけるのもいい加減にしてくれ﹂
それは、そのイカサマ疑惑事件での出来事で、彼と関わったことが始まりだった。
2
﹁おいおい⋮⋮この俺がイカサマだって
内容を見た限り、随分と正統派なデッキ構築をしていた。︽融合︾の魔法カードを使い、
たいどんなデュエルをしていたのか。ゲートHEROデッキを作る前の自分のデッキ
どうやら俺はあまり強くなかったらしい。別世界の俺がここにたどり着く前はいっ
る。
なんだか急にデュエルが強くなったみたいでイカサマ疑惑が浮上してしまったのであ
長い長い夏休みも終わり、デュエルアカデミア中等部へ登校を再開した俺なのだが、
?
68
第5話『イカサマ疑惑!?』
69
手札融合するおなじみの融合召喚方法。まさに正統派。
しかし、それは手札を三枚も使かわないと融合召喚できないのである。正直、召喚し
た直後に一枚のカードで破壊されれば単純に2のディスアドバンテージになってしま
うのだ。
あの遊城十代のような運命力があればそれで戦う事は十分可能だろう。しかし、俺に
はそんな特別なスキルは持っておらず、デッキ構築で勝負するしかないのだ。
前の世界では使っていたカードが使えなくなっている今、ゲートHEROは今まで自
分が使っていた内容とは結構異なる。
たとえば、前の世界では︽E・HERO ネオス︾を墓地に送り、︽ヒーロー・ブラス
ト︾で攻撃力2500以下のモンスターを除去しつつ手札のHEROを増やす。という
戦法を取っていたのだが、この世界で手に入る通常E・HEROモンスターで最大攻撃
力を持つのは︽E・HERO スパークマン︾なので、︽ヒーロー・ブラスト︾はそこま
で重要な札ではなくなってしまったので一枚に減らした。ネオスが使えるのなら三枚
積んでいた札だというのに。
ほかにも︽超融合︾の問題など、様々な壁にぶち当たりながらもなんとか形にしたこ
のGX世界版ゲートHEROは中々やれるデッキだった。
連戦連勝。
すごくうれしかった。やはり一生懸命考えたデッキで勝つ、ってのは気持ちがいいも
のだと改めて実感した。
そのときだ。誰かが噂を流し始めたのだ。
東條創はイカサマを使って勝っている、と。
根も葉もない噂だし、聞き流していた。いずれそんな噂話すぐ消えるだろう。
そう思っていた俺は甘かった。すぐにでもそのイカサマは根も葉もない事実である
﹂
ことを伝え、噂を否定するべきだったのだ。だから、今こうやって、俺を囲んでくる奴
らに少し遅い弁明をしているわけである。
﹂
﹁ありえねーんだよ、底辺デュエリストだったお前が急に勝てるだなんてな
そんなんで強くなれんなら苦労しねぇんだよ
﹁ありえねー話じゃねぇよ。色々勉強したんだって﹂
﹁勉強だぁ
!!
ているんだ。それは優と友達になってからよく理解している。
限に生かせるデッキができる。要は知識の差が強さの差を生み出していると俺は思っ
デュエルモンスターズのデッキ構築は勉強すれば手持ちの一見弱いカードでも最大
マトモに戦えないのは当然なことだ。
デュエルはまず構築から始まるんだ。戦うための剣が糞みたいな鈍なものだったら
こんな感じで一部の生徒が俺に突っかかってくるのだ。
?
!
70
アイツはマニアックなカードを最大限に活用し、それなりに戦えるデッキを作ってし
まうのだ。
俺では考え付かないような、面白くて強いデッキを。もちろんガチデッキも強い。
それに構築だけでなくプレイングもそうだ。いくら切れ味の良い最高峰の剣を手に
入れても使う人がド素人では本来の力を発揮できないだろう。宝の持ち腐れとはこの
事だ。
構築とプレイング、この二つがデュエルにおいて何よりも大事な土台となる部分だ。
それは知識がどれだけあるのか、ということと、経験に基づくプレイングが要求される。
俺はそれを多少身に着けているに過ぎないのだ。
﹂
﹂
﹄
﹂
お前の頭は空っぽですか
あぁ、イカサマする
この事は先生に黙っといてやるからよ、分かってんだろ
俺なんか、優に比べたらまだまだだ。
うな
﹁何が黙ってるって
﹁イカサマしてることだっつーの
?
くらいだもんなぁ、それしか能のないやつだもんな
﹃ギャハハハハハハハハ
?
?
?
俺を囲む男たちは汚らしく笑う。それにひどい嫌悪感を抱いた。
!!
!
!!
﹁なぁ、イカサマしてんだろ
第5話『イカサマ疑惑!?』
71
こんな奴らが俺と同じデュエリストだなんて吐き気がする。亮さんや吹雪さん、明日
﹂
香や翔君と比べたらデュエリストの風上にも置けない奴らだ。
﹁なんだ、何がそんなに面白いんだ
その声を俺は知っている。
?
﹁ま、万丈目さん⋮⋮﹂
﹁何
確か⋮⋮東條創、だったな
﹂
?
﹂
?
さん勝ち始めたからだってさ。これでイカサマ認定できると思う
﹂
﹁いや、してない。つか、何を根拠にそんな話になっているかと思ったら、俺が最近たく
﹁イカサマをしているのか
ジュニアチャンプの称号は伊達ではないということだろうか。
る。
この世界においてドラゴンデッキ使いの万丈目準は、一年生の中でも最強の一角であ
突然の登場に俺は驚くしかできない。
﹁う、うん﹂
?
﹁い、いや、コイツがイカサマをしてるんじゃないかって⋮⋮﹂
﹁もう一度聞く、何がそんなに面白いんだ
﹂
そのとき、俺を囲む男たちの後ろから一人の声が聞こえた。
?
72
?
﹁さぁな。お前の口からの言葉だけでは判断できん。お前が実力で勝てているのか、ズ
ルして勝てているのか、それはお前がデュエルすることで証明するんだ。さぁ東條、俺
とデュエルだ﹂
﹁ちょ、万丈目さん││﹂
﹁黙ってろ お前らは東條のことをしっかりと監視しているんだな。イカサマをして
天上院明日香だった。
﹂
角。 一年生の生徒たちが道を開けていく中、一人だけ道を開けなかった人がいる。
みんな万丈目の顔を見るなり慌てた顔で道を開けていく。さすがは一年生最強の一
ている。俺たちはそこへと向かった。
昼休みはデュエル場が解放されており、ルールさえ守ればだれでも使えるようになっ
﹁ふん⋮⋮場所を変えるぞ﹂
﹁分かった。恩に着るぜ、万丈目﹂
どあるわけない。
なっている場合ではない。俺の実力を証明するチャンスだ。ここで逃げ出す選択肢な
正直、展開の早さに呆気にとられてしまっているが、デュエルとなればそんな状態に
るかしていないか﹂
!!
﹁ちょっと、これは何なの
第5話『イカサマ疑惑!?』
73
!?
彼女も一年生では最強の一角に存在する一人であり、実力としてはジュニアチャンプ
﹂
﹂
の称号を持っている万丈目と同等くらいである。さすがはデュエルアカデミアのキン
﹂
グ、天上院吹雪の妹だ。
﹁ねぇ、創、これは何
﹁いや、俺の疑惑を晴らすための戦い、かな
﹁疑惑って、創がイカサマをしているんじゃないか、ってやつ
そもそも、事故はほとんど起きないようにデッキを組んだつもりだ。初手五枚プラス
い訳は通用しないと考えた方が良いだろう。
無様な戦いなんてできるわけがない。手札が事故って何もできませんでした、なんて言
そんなことよりも重要なのは、この戦いで実力を認めさせなくてはならないことだ。
俺のイカサマ疑惑を晴らすためのもの。我慢しなくてはならない。
もちろん、俺の左右と後ろには、さきほど俺に突っかかってきた奴らがいる。これも
の上へと立つ。
心配そうな目を向けてくる明日香の横を通り抜け、俺と万丈目はデュエルフィールド
﹁う、うん⋮⋮﹂
らさ﹂
﹁そうそれ。だから明日香は安心しなって。別にケンカ吹っかけられたわけじゃないか
?
?
?
74
1ドローの最初の計6枚が何パーセントの確率でちゃんと動けるものになるかの検証
も行った。
カードが変に偏ったりしない限り事故はないように作り上げている。
大丈夫だ。
﹂
俺はいつも通りにデュエルするだけだ。
﹁準備はいいか
万丈目が俺に尋ねてくる。
?
﹄
﹁ああ、大丈夫。さて、始めようか﹂
!!
だから、必要な札を集めるためにこのカードを採用した。
た連続融合召喚により決着を付けるワンショット・キルを狙うデッキでもある。
ゲートHEROは、︽フュージョン・ゲート︾や︽ミラクル・フュージョン︾を利用し
早速デッキからカードをドローすると、そのカードは︽カードカー・D︾だった。
デュエルディスクの機能により、先攻は俺になった。
万丈目準:LP4000
東條創:LP4000
﹃デュエル
第5話『イカサマ疑惑!?』
75
﹁まずは下準備だ
俺はカードカー・Dを召喚。リバースカードを一枚セットし、カー
ら、これで俺はターンエンド﹂
ドカー・Dの効果を発動。カードを二枚ドローし⋮⋮強制的にエンドフェイズになるか
!
︽E・HERO エアーマン︾
︽魔導戦士ブレイカー︾
これで手札は六枚。
その後、このターンのエンドフェイズになる。
自分はデッキから2枚ドローする。
発動できる。
︵1︶
:このカードが召喚に成功した自分メインフェイズ1にこのカードをリリースして
このカードの効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。
このカードは特殊召喚できない。
星2/地属性/機械族/攻 800/守 400
効果モンスター
︽カードカー・D︾
76
︽E・HERO バブルマン︾
︽フュージョン・ゲート︾
︽融合︾
︽ハーピィの羽根箒︾
なかなかの内容だ。
リバースカードは︽聖なるバリア │ミラーフォース│︾だし、次の万丈目のターン
でワンターンキルされることはないとは思うけど⋮⋮どうなるか。
﹂
﹂
を伏せていたとしても、この俺には通用しない﹂
﹁この俺を相手に、モンスターゾーンを空にしてターンを渡すとはな。リバースカード
﹁どういう意味だ
﹁それを今から説明してやる。ドロー
を使用できるように集中する。
俺は見逃さなかった。何か仕掛けてくる⋮⋮そう思った俺はいつでもリバースカード
万条目は手札を見るなりニヤリと笑った。あのクールな表情が、一瞬でも崩れたのを
!
?
二枚のカードがデュエルディスクに吸い込まれていき、次に現れたのは。
ス・ワイバーンを墓地に捨てることで││﹂
﹁俺は手札の地征竜│リアクタンの効果を発動する。このリアクタンと手札のエクリプ
第5話『イカサマ疑惑!?』
77
﹁デッキから巌征竜│レドックスを守備表示で特殊召喚
﹂
!
光 と 闇 の 竜を除外する﹂
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁そ し て、墓 地 に 送 ら れ た エ ク リ プ ス・ワ イ バ ー ン の 効 果 を 使 い、デ ッ キ か ら
﹁巌征竜│レドックス﹂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
に加える事ができる。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・地属性モンスター1体を手札
のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
また、このカードと地属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、自分の墓地
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
または地属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
星7/地属性/ドラゴン族/攻1600/守3000
効果モンスター
︽巌征竜│レドックス︾
78
︽エクリプス・ワイバーン︾
効果モンスター
星4/光属性/ドラゴン族/攻1600/守1000
デッキから光属性または闇属性のドラゴン族・レベル7以上のモンスター1体を除外
︵1︶:このカードが墓地へ送られた場合に発動する。
する。
このカードの︵1︶の効果で除外されているモンスターを手札に加える。
︵2︶:墓地のこのカードが除外された場合に発動できる。
この戦術は⋮⋮マズイぞ。このままじゃ確実に召喚されちまう
だったら召喚を防げたってのに、引けなかったものはどうしようもない。
だけど、今の俺にはどうすることもできない。ミラフォじゃなくて、強制脱出装置
!
喚。この瞬間、エクリプス・ワイバーンの効果が発動する﹂
ス・ワイバーンと地征竜│リアクタンを除外することで、ブラスターを墓地から特殊召
﹁そして、おろかな埋葬でデッキから焔征竜│ブラスターを墓地に送り、墓地のエクリプ
第5話『イカサマ疑惑!?』
79
︽焔征竜│ブラスター︾
効果モンスター
星7/炎属性/ドラゴン族/攻2800/守1800
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
または炎属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
また、このカードと炎属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、フィールド
上のカード1枚を選択して破壊する。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・炎属性モンスター1体を手札
に加える事ができる。
厄介だな。厄介すぎる⋮⋮
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁除外されている光 と 闇 の 竜を手札に加える
そして、場のレドックスとブラス
!
!
つまり、俺は成す術もなくあのドラゴンの召喚を許してしまうってわけだ。
フィールド上にはモンスターが二体。そして通常召喚を万丈目は行っていない。
﹁焔征竜│ブラスター﹂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
80
ライトアンドダークネス・ドラゴン
ターを生贄に⋮⋮俺と共に闘ってくれ。現れろ、 光 と 闇 の 竜
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹂
!!
選択したモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
自分フィールド上のカードを全て破壊する。
択して発動する。
このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在するモンスター1体を選
イントダウンする。
この効果でカードの発動を無効にする度に、このカードの攻撃力と守備力は500ポ
罠カードの発動を無効にする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、効果モンスターの効果・魔法・
このカードの属性は﹁闇﹂としても扱う。
このカードは特殊召喚できない。
星8/光属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
効果モンスター
︽光 と 闇 の 竜︾
第5話『イカサマ疑惑!?』
81
﹄
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹂
そして、場のレドックスとブラス
第6話﹃二つの属性を持つ竜を攻略しろ
ライトアンドダークネス・ドラゴン
このカードの属性は﹁闇﹂としても扱う。
このカードは特殊召喚できない。
星8/光属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
効果モンスター
︽光 と 闇 の 竜︾
ライトアンドダークネス・ドラゴン
ターを生贄に⋮⋮俺と共に闘ってくれ。現れろ、 光 と 闇 の 竜
﹁除外されている光 と 闇 の 竜を手札に加える
!
択して発動する。
このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在するモンスター1体を選
イントダウンする。
この効果でカードの発動を無効にする度に、このカードの攻撃力と守備力は500ポ
罠カードの発動を無効にする。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、効果モンスターの効果・魔法・
!!
!
82
自分フィールド上のカードを全て破壊する。
﹂
選択したモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。
﹁出てきちまったか⋮⋮光と闇、二つの属性を持つ竜が
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁ふん。その様子だと、このドラゴンのチカラを知っているようだな
する最強の竜だ﹂
﹂
﹁あぁ、知ってるよ。 光 と 闇 の 竜は魔法、罠、モンスター効果、その全てを無力に
?
!
ただし、無効にする度に攻守が500下がってしまうがな﹂
!
ライトアンドダークネス・ドラゴン
タックは免れない。クソッ⋮⋮
﹁いくぞ。 光 と 闇 の 竜の攻撃││シャイニングブレス
ドラゴンの口が開き、白い光がその場を包み込む。
眩しい、眩しい、眩しいぞオイ
だけどこのまま食らう訳にはいかない。
!
﹂
!
!!
ただ、俺の場にはミラフォしかない。コレを発動しても無効にされてダイレクトア
にできないから、戦闘破壊できる数値にまで下げれば良い。
きる回数は守備力が400まで下がる最大四回。ただし、モンスターの召喚自体は無効
︽光 と 闇 の 竜︾は攻撃力が2800で、守備力が2400ある。だから無効にで
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁その通り
第6話『二つの属性を持つ竜を攻略しろ!』
83
聖なるバリア │ミラーフォース│
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁リバースカードオープン
!
﹂
!!
その瞬間、 光 と 闇 の 竜の効果によりそれは無効となる﹂
!
﹂
!!
己まで縛り付ける。それがあのドラゴンの弱点。戦闘破壊できる数値まで下げれば、万
︽光 と 闇 の 竜︾は確かに強力だ。しかし、その強大すぎる力ゆえに、その能力は
ライトアンドダークネス・ドラゴン
とにかく、これで俺のライフポイントは2300減った。
これ、その内モンスターに質量まで持たせることができたりしてな。
のピリピリとした痛みまで再現するとは恐ろしいな。
さすがは最新型のソリッドビジョンシステムなだけはある。ダメージを受けたとき
東條創LP4000↓1700
﹁ぐ⋮⋮ぐうううううううう
これで俺を守る壁はなくなった。
それを跡形もなく破壊した。
ソリッドビジョンによって映し出されたミラーフォースのカードに落雷が降り注ぎ、
︽光 と 闇 の 竜︾攻撃力2800↓2300 守備力2400↓1900
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁問題ない。その効果を使わせないと攻略できないからな﹂
﹁無駄だ
84
丈目自身は魔法や罠カードで防御することができない。
﹁俺はこれでターンエンドだ﹂
だから万丈目はリバースカードを伏せたりすることはない。
破壊されれば自分フィールド上のカードが全て破壊されてしまうからだ。
さて、ここからは俺の反撃。
﹂
俺が、今ここで、お前をデュエルで負
﹁さすがだぜ万丈目。中等部最強とされているだけはある﹂
﹁されている⋮⋮だと
﹂
!?
﹂
!!
﹂
!
﹂
?
いい機会だ。ここで言ってお
!
もなく、イカサマだなんだと騒ぎ立てる貴様らが嫌いだ。こうして、デュエリストとし
くぞ貴様ら。己の身可愛さに、この俺にヘコへコしている貴様らが嫌いだ。なんの証拠
﹁戦いもしない奴に、東條のことを嘲笑う資格は無い
笑いながら言う取り巻き男子が、たった今、万丈目に怒られていた。
﹁⋮⋮ッ
﹁黙ってろッ
﹁おいおいおい、万丈目さんに失礼だぞ東條
のものじゃない。最強と言われるにはまだ早いんじゃないのか
かすからだ。ジュニアチャンプだかなんだか知らないが、最強の座は万丈目、お前だけ
!
?
﹁あぁ。されている、と言った理由はただ一つ
第6話『二つの属性を持つ竜を攻略しろ!』
85
ての誇りを持っている東條を嘲笑う貴様が嫌いだッ
万丈目⋮⋮お前、最高にクールだぜ。
カッコよすぎて惚れちまいそうだ。
﹂
!!
﹂
!!
﹁これで戦闘破壊の圏内だ 俺は魔導戦士ブレイカーを召喚。効果により魔力カウン
︽光 と 闇 の 竜︾攻撃力2300↓1800 守備力1900↓1400
ライトアンドダークネス・ドラゴン
﹁俺は魔法カード、融合を発動するが、これ光 と 闇 の 竜の効果により無効となる﹂
ライトアンドダークネス・ドラゴン
万丈目の場に︽光 と 闇 の 竜︾がいる今、俺の取れる行動は一つしかない。
ライトアンドダークネス・ドラゴン
引いたカードは⋮⋮︽奈落の落とし穴︾か。
﹁あぁ、言われなくてもそうするぜ。ドロー
﹁さぁ東條、お前のターンだ。その闘志を俺にぶつけろ﹂
86
効果モンスター
︽魔導戦士ブレイカー︾
︽光 と 闇 の 竜︾攻撃力1800↓1300 守備力1400↓900
ライトアンドダークネス・ドラゴン
ターが乗るが、これも無効になって攻守がダウンする﹂
!
星4/闇属性/魔法使い族/攻1600/守1000
︵1︶:このカードが召喚に成功した場合に発動する。
このカードに魔力カウンターを1つ置く︵最大1つまで︶。
︵2︶:このカードの攻撃力は、このカードの魔力カウンターの数
300アップする。
だから俺は︽魔導戦士ブレイカー︾のモンスター効果を利用させてもらった。
ことができない。
一応、手札を消費せずとも攻略する方法はあるが││俺のデッキにはその方法を取る
きるかが問題になってくる。
ばならない。それが強みであるこのドラゴンは、いかに最小限の手札消費で戦闘破壊で
どうしても︽光 と 闇 の 竜︾を攻略しようとすれば、何枚かの手札を消費しなけれ
ライトアンドダークネス・ドラゴン
これで、光と闇、その二つの属性を持つ竜の攻略は完了だ。
を対象として発動できる。その魔法・罠カードを破壊する。
︵3︶
:このカードの魔力カウンターを1つ取り除き、フィールドの魔法・罠カード1枚
×
い
モンスター効果は、効果の無効であって、モンスター自体を破壊するわけではないか
らな
ライトアンドダークネス・ドラゴン
!
!
﹁こ れ で 光 と 闇 の 竜 の 攻 撃 力 は 1 3 0 0 に な っ た 戦 闘 で の 破 壊 が 可 能
!
第6話『二つの属性を持つ竜を攻略しろ!』
87
け、ブレイカーの攻撃。マナブレード
ライトアンドダークネス・ドラゴン
万丈目LP4000↓3700
﹂
そのまま塵となり消滅。万丈目のライフポイントに300のダメージだ。
ブレイカーの魔法剣が確かにドラゴンの首を討ち取った。
!!
﹂
!
﹁問題ない。さぁ、万丈目のターンだぜ
﹂
ライトアンドダークネス・ドラゴン
このターンをどうにかして凌げば⋮⋮勝機はある
?
れるわけにはいかないんだ。
ち目が無くなる。ダメージレースでは今のところ俺が負けている。このまま押し切ら
だが、何らかの方法で︽光 と 闇 の 竜︾が手札に戻り、再び召喚されてしまうと勝
!
﹁この瞬間、特殊召喚されたレドックスは俺の手札に戻る﹂
﹁俺は⋮⋮カードを二枚伏せる。ターンエンドだ﹂
が、次の万丈目のターンで再び召喚してくるのは明白だ。
る効果を持っている。だから、レドックスをフィールドに維持することはできない。だ
レドックスはその効果ゆえに特殊召喚されると、相手のエンドフェイズ時に手札に戻
その表示形式は守備。当然だ、守備力が3000なんだから。
竜│レドックスー︾
﹁やるな。だが、 光 と 闇 の 竜は破壊されたときに墓地より仲間を呼ぶ。蘇れ︽巌征
88
﹂
﹁俺のターン
﹁なぁ
通常魔法
︽強欲な壺︾
ふ⋮⋮良いカードを引いた。強欲な壺だ﹂
ここで、強欲な壺だと
!
グで引いてくるとは⋮⋮デッキに、カードに愛されるってのはこういうのを言うのか
これで万丈目の手札は六枚。
タイミングで使うかによって決まる。
見極めるんだ。使用するタイミングを⋮⋮
!
六枚もあれば征竜の力で大量展開が可能だ。あとはに俺の二枚の伏せカードをどの
?
る︽強欲な壺︾は制限カードに指定されているってのに、よりにもよってこのタイミン
最悪だ。手札が増えればそれだけ選択肢が増える。だからこそ簡単に手札を増やせ
デッキからカードを2枚ドローする。
!?
!?
ラスターを特殊召喚
﹂
﹁俺は手札の神竜 アポカリプスと巌征竜│レドックスを除外し、墓地から焔征竜│ブ
第6話『二つの属性を持つ竜を攻略しろ!』
89
!
神竜アポカリプスだって
例えば︽ D・
D・
R ︾といったカードを使えば、召喚権を消費しない
ディファレント・ディメンション・リバイバル
それを除外したってことは、除外ゾーンから特殊召喚する術を持っているってことな
!?
ふふ⋮⋮見えてきたぜ、万丈目の戦術が。
そうすれば再び万丈目の場に︽光 と 闇 の 竜︾が現れる。
ライトアンドダークネス・ドラゴン
まま二体の生贄を用意することができる。
のか
?
とができる。俺はボマー・ドラゴンを手札に加える﹂
!
征竜│タイダルを特殊召喚する﹂
リームの効果を発動。このカードと竜の騎士を墓地に捨てることにより、デッキから瀑
ドラゴン・ナイト
﹁ブラスターの召喚が防がれたなら、別の選択肢を選ぶのみ。俺は、手札の水征竜│スト
あることが分かっているが、その他は未知数。何を仕掛けてくるかは分からない。
しかしそれでも万丈目の手札はまだ六枚もある。その内一枚は︽ボマー・ドラゴン︾で
まずは一手目⋮⋮ブラスターを除外した。
る効果は使えない﹂
﹁く⋮⋮ブラスターは自身の特殊召喚能力をすでに使っている。除外されてもサーチす
﹁ここで俺はトラップを発動する。奈落の落とし穴だ。奈落へ落ちろブラスター
﹂
﹁レドックスが除外された瞬間、効果が発動する。地属性のドラゴンを手札に加えるこ
90
︽水征竜│ストリーム︾
効果モンスター
星4/水属性/ドラゴン族/攻1600/守2000
ドラゴン族または水属性のモンスター1体と
このカードを手札から捨てて発動できる。
デッキから﹁瀑征竜│タイダル﹂1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。
また、このカードと水属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、デッキから
特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。
このカードを手札・墓地から特殊召喚する。
または水属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。
自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族
星7/水属性/ドラゴン族/攻2600/守2000
効果モンスター
︽瀑征竜│タイダル︾
﹁水征竜│ストリーム﹂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
第6話『二つの属性を持つ竜を攻略しろ!』
91
モンスター1体を墓地へ送る。
このカードが除外された場合、デッキからドラゴン族・水属性モンスター1体を手札
に加える事ができる。
﹁瀑征竜│タイダル﹂の効果は1ターンに1度しか使用できない。
水征竜の効果により特殊召喚されたタイダルは攻撃に参加できない。
ここでタイダルを特殊召喚するということは、生贄の駒を集めているに他ならない。
万丈目は召喚権を残している。手札は残り四枚。その内一枚が︽ボマー・ドラゴン︾だ
R を発動する
﹂
から三枚のカードが謎だということ。そして、先ほど除外した︽神竜 アポカリプス︾の
D・
R ︾は手札一枚をコストに除外されているモンスターを特殊召喚
D・
ディファレント・ディメンション・リバイバル
ことを考えれば、その手札が透けるようにして見えてくる。
﹁そして俺は手札を一枚捨てて、
D・
﹁俺は、神竜 アポカリプスを、特殊召喚だ⋮⋮
﹂
する装備魔法だ。装備魔法ゆえの弱点を持っているが、その対策は万全だぜ。
︽ D・
ディファレント・ディメンション・リバイバル
やはり来たか
!
!
92
!!