石油市場の現状と今後の展望 2016年7月21日 調査部 野神 隆之 1 原油価格(2003~16年) 2 原油価格(2014~16年) 3 原油相場の現状(2016年4~6月)(1) 1.原油価格上昇基調:2016年6月8日夜間 取引中にWTIで1バレル当たり51.67ドル、 2015年7月16日以来1年弱ぶりの高値に到 達。 2.主な上昇要因: ①季節的な需給の引き締まり感が市場で増大 (夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要 期(米国では5月28日~)到来)。 ➁米国での石油坑井掘削装置稼働数及び原 油生産量減少。 4 原油相場の現状(2016年4~6月)(2) 2.主な上昇要因(続き): ③2016年後半にかけての需給の構造的引き 締まり予想。 ④カナダ アルバータ州北部における山火事発 生に伴うオイルサンド由来の原油生産の停 止。 ⑤ナイジェリア原油生産地域における武装勢 力の石油インフラ破壊活動と同国原油生産 低下。 5 米国原油精製処理量(2016年) ・夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期接近に伴い製油所での原油精 製処理量増加、ガソリン生産活発化。 6 米国水平坑井掘削装置稼働数と原油価格・生産量 ・2014年7月の油価下落後、リグ稼働数はピーク時より8割程度減少。 ・しかしながら、2016年5月13日の273基を底にリグ稼働数は緩やかながら増加傾向に 転じ、7月15日には307基に。 2014年10月24日:1,262基 2016年7月15日:307基 7 カナダ石油生産量(2012~16年) ・カナダの石油生産量はアルバータ北部での山火事発生とオイルサンド生産地 域への接近に伴い、5月は日量100万バレル程度減少と推定。その後回復基調。 8 ナイジェリア原油生産量(2012~16年) ・武装勢力による原油生産・出荷関連施設攻撃続く。原油生産不安定に。 9 OPEC通常総会(2016年6月3日)(1) 1.原油生産上限再設定を一部産油国が提案、 サウジアラビアも賛同(加盟13ヶ国全体で 現状の産油量をもとにした上限を想定した ものと見られる)。 2.背景に、OPEC加盟国再結束と市場の OPECに対する信頼感の回復に対するサ ウジアラビアの要望ありか? 3.現状の原油生産量は高水準であることか ら、上限を設定しても、実際の需給面では 殆ど影響なし。 10 OPEC通常総会(2016年6月3日)(2) 4.イランは個別生産枠の設定を主張、その際 同国は日量460~470万バレルの生産枠の 設定を希望(4月時点の原油生産量日量 345万バレル)。 5.最終的には議論の調整がつかず、事実上 生産量に関しては何も決定せずに終了。 6.総会結果を受け、原油価格はOPECの結束 に関する失望売りから一時下落、しかし間 もなく回復(原油在庫減少が材料)。 11 OPEC原油生産量(2012~16年) ・サウジアラビアをはじめとしてOPEC原油生産量は高水準を維持。 12 原油相場の現状(2016年6~7月)(1) 1.原油価格下落へ:7月20日にWTIで1バレ ル当たり43.69ドル、5月10日以来2ヶ月ぶ りの安値に到達。 2.主な下落要因: ①英国の欧州連合(EU)離脱の動き(世論調 査で離脱支持派が残留支持派を上回る(拮 抗していたが...)と離脱決定(6月23日国 民投票)→英国及び欧州諸国の経済不透 明性により英ポンド及びユーロが下落した反 面米ドル上昇。 13 原油相場の現状(2016年6~7月)(2) 2.主な下落要因(続き): ➁カナダ アルバータ州北部における山火事の オイルサンド由来の原油生産への影響低下 で、同国からの原油供給に関する懸念後 退。 ③米国石油坑井掘削装置稼働数が増加。 ④ガソリン在庫の積み上がりに伴うガソリン需 給緩和感、ガソリン先物相場下落、製油所 の稼働低下に伴う原油購入不活発観測。 14 米ドル為替レート(対ユーロ)(2016年) ・英国のEU離脱に伴う経済不透明感から英ポンドとユーロが下落、米ドルが 上昇。 15 米国原油在庫量(2016年) ・米国原油在庫量は減少傾向を示すも、平年幅超過は続く。 16 OECD諸国石油在庫量(2016年) ・OECD諸国の石油在庫量も、平年の水準を超過して積み上がり。 17 米国ガソリン小売価格 ・原油価格下落によりガソリン小売価格下落。 18 米国ガソリン需要(2016年)(1) ・ガソリン小売価格下落で需要を刺激したことにより、米国ガソリン需要は堅調。 19 米国ガソリン需要(2016年)(2) ・堅調ではあるものの、下方修正も...。 20 米国精製利幅(2015~16年) ・米国需要堅調観測で精製利幅拡大、しかし途中で息切れ...。 21 米国ガソリン在庫量(2016年) ・米国ガソリン在庫は減少傾向ではあるものの、平年よりは豊富な状況に。 22 米国東部海岸ガソリン在庫量(2016年) ・米国東海岸ガソリン在庫増加した結果、週間統計史上最高水準に到達(6月 24日)。 23 欧州ガソリン在庫量(2016年) ・欧州でもガソリン供給過剰感発生。 24 短期的見通し(1) 1.夏場のガソリン需要期(米国では9月5日ま で)なお続く:しかし製油所の段階ではその 先の秋場の不需要期が視野に+ガソリン 供給過剰感もあり市場心理も冷え込み始 め(=秋場に向けた季節的な石油需給の 緩和感醸成)→原油価格に下方圧力。 2.しかし、この先の構造的な石油需給の引き 締まり観測:原油価格を下支え、秋場の不 需要期の底値は春場のそれよりも高くなる 可能性。 25 短期的見通し(2) 3.攪乱要因(1):英国のEU離脱に伴う英国 及び欧州諸国経済混乱(例.イタリアの銀 行不良債権問題)に伴う英ポンド及びユー ロ下落と米ドル上昇:原油価格にさらなる圧 力。 4.攪乱要因(2):地政学的リスク要因、特に 当面はナイジェリアでの武装勢力による石 油生産・出荷関連施設攻撃と供給低下。 26 短期的見通し(3) 5.攪乱要因(3):大西洋圏でのハリケーン等 暴風雨発生の可能性(特に8月半ば~10月 半ば)と米国メキシコ湾石油生産への影 響。 27 世界石油需給バランス(2015年) ・米国、ロシア及び主要OPEC産油国の高水準の生産で供給過剰。 ( 単位: 日量百万バレル) 2015 4 Q1 5 2014 1 Q1 5 2 Q1 5 3 Q1 5 総需要① 92.97 93.62 94.13 95.69 95.53 94.75 非OPEC生産 56.04 57.09 57.18 57.60 57.83 57.43 OPEC原油生産 OPEC NGL生産 31.22 6.50 31.39 6.59 32.44 6.66 32.66 6.70 32.62 6.74 32.28 6.67 総供給② 93.76 95.07 96.28 96.95 97.19 96.38 在庫変動その他( ②- ①) 0 .7 8 1 .4 5 2 .1 5 1 .2 6 1 .6 6 1 .6 3 出所: IEAデータをもとに作成 ※OPECはインドネシア及びガボンを含む 28 世界石油需給バランス(2016年) ・世界石油需要増加、及び米国原油生産量の伸び悩みで、需給バランス引き 締まりへ。 ( 単位: 日量百万バレル) 2016 4 Q1 6 2015 1 Q1 6 2 Q1 6 3 Q1 6 総需要① 94.75 95.22 95.56 96.84 96.89 96.13 非OPEC生産 57.43 56.99 56.00 56.52 56.66 56.54 OPEC原油生産 OPEC NGL生産 32.28 6.67 32.76 6.77 32.99 6.83 33.21 6.89 33.21 6.94 33.04 6.86 総供給② 96.38 96.52 95.81 96.61 96.80 96.44 在庫変動その他( ②- ①) 1 .6 3 1 .3 1 0 .2 5 - 0 .2 4 - 0 .0 9 0 .3 1 * : O P EC産油国については2 0 1 6 年6 月の原油生産量がその後も 維持される も のと仮定、O P ECにはイン ド ネシ ア 及び ガボン を含む 出所: IEAデータをもとに作成 29 世界石油需給バランス(2016年) (過去の(2016年5月時点)見通し) ・2016年第二四半期はカナダの山火事、及びナイジェリアでの原油生産量減少 で、当初見込みよりも需給バランス引き締まり。 ( 単位: 日量百万バレル) 2016 4 Q1 6 2015 1 Q1 6 2 Q1 6 3 Q1 6 総需要① 94.73 95.01 95.29 96.67 96.79 95.94 非OPEC生産 57.67 57.09 56.55 56.79 56.93 56.84 OPEC原油生産 OPEC NGL生産 32.05 6.68 32.56 6.77 32.76 6.82 32.76 6.88 32.76 6.94 32.71 6.85 総供給② 96.40 96.42 96.13 96.43 96.63 96.40 在庫変動その他( ②- ①) 1 .6 7 1 .4 1 0 .8 4 - 0 .2 4 - 0 .1 5 0 .4 6 * : O P EC産油国については2 0 1 6 年4 月の原油生産量がその後も 維持される も のと仮定、O P ECにはイン ド ネシ ア を含む 出所: IEAデータをもとに作成 30 世界石油需給バランス(2017年) ・世界石油需要増加の一方石油供給の伸び悩みにより、需給は引き締まり傾向。 ( 単位: 日量百万バレル) 4 Q1 7 2017 2016 1 Q1 7 2 Q1 7 3 Q1 7 総需要① 96.13 96.59 96.90 98.12 98.06 97.43 非OPEC生産 56.54 56.33 56.62 57.09 57.02 56.77 OPEC原油生産 OPEC NGL生産 33.04 6.86 33.21 6.94 33.21 6.95 33.21 7.01 33.21 7.07 33.21 6.99 総供給② 96.44 96.47 96.78 97.31 97.29 96.97 在庫変動その他( ②- ①) 0 .3 1 - 0 .1 2 - 0 .1 3 - 0 .8 1 - 0 .7 7 - 0 .4 6 * : O P EC産油国については2 0 1 6 年6 月の原油生産量がその後も 維持される も のと仮定、O P ECにはイン ド ネシ ア 及び ガボン を含む 出所: IEAデータをもとに作成 31 イラン原油生産量(2012~16年) ・2016年6月時点で日量366万バレルの原油生産、当面日量400万バレル目標。 32
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