7月21日配布資料

財務会計Ⅱ 第 12 回 講義の総括
2016 年 7 月 21 日(木) 米山 正樹
Ⅰ 全面公正価値会計と混合属性会計
論点
1.
2.
J-GAAP と IFRS それぞれにおける「評価基準の使い分け」の概要

分類基準の相違点

評価基準の相違点
分類基準や評価基準の違いを生み出している「基本的な会計観」の相違

全面公正価値会計を「究極の理想」とみるかどうか

「未確定の成果」と「確定した成果」との区分をどれだけ重視するのか

「売却のタイミングに係る恣意的な利益操作の排除」を必須の要請とみるか
どうか
Ⅱ 純利益と包括利益
論点
1.
当期純利益と包括利益との共通点・相違点

ストック情報から自動的に導かれてくるものか、それとも特定の要件を満たし
た「投資の成果」を独立にとらえたものか(「投資のリスクからの解放」や「期待
から事実への転化」を求めるかどうか)
2.

包括利益にしか含まれない「その他の包括利益」の具体例

リサイクリングの手続の要否
業績指標としての当期純利益と包括利益(の「優劣」):多様な立場の存在

当期純利益を主要な業績指標と位置づけたうえで、包括利益で補完する立
場

長期的に「包括利益による一元化を図る立場

上記 2 つの議論が抱えている問題点と「今後求められる分析視座」
参考

混合属性会計と全面時価(全面公正価値)会計のそれぞれを説明せよ。

ASBJ と IASB は、同じ「混合属性会計」を採用しているものの、金融商品の分類
1
基準や、カテゴリー毎に要求・許容されている会計処理は異なっている。代表的
な相違点を説明せよ。その際、IASB が要求・許容している会計処理には「全面
時価会計」の考え方が色濃く反映されている、と言われることがある。どういうこと
か、説明せよ。

包括利益と当期純利益のそれぞれを説明せよ。その際、両者の共通点や相違
点に言及せよ。また現行の当期純

利益と包括利益とを結びつけているリサイクリングの手続を説明せよ。さらに現行
会計基準が「その他の包括利益」に含めるように求めている項目を例示せよ。

主要国の現行会計基準では、包括利益と当期純利益をともに開示するように求
められている。両者をともに開示する必要性について、どのような議論が行われ
ているのかを説明せよ。他方で、OCI の利用を制限することで包括利益と当期純
利益の一元化を図るべし、という議論もみられる。これも併せて説明せよ。さらに
可能であれば、上記の議論が抱えている問題点を指摘せよ。
Ⅲ 資産負債観と収益費用観
論点
1.
(純粋な)収益費用観が抱えていた問題点の解消手段としての資産負債観

「当期の損益に貢献しないだけでなく、翌期以降の損益にも貢献が期待でき
ない項目」の許容
2.

経済的便益にひきつけた定義をストック項目に付与することの効果

資産負債観にもとづくことにより、資産・負債計上が困難となった諸項目
資産負債観の「変質」:その背景と影響

「変質した」資産負債観と結び付けられる全面公正価値会計の合理性が有
する状況

「議論の矮小化」を伴っている「変質」:「原価か、それとも時価か」という問題
設定では「解けない」問題の存在
参考

資産・負債アプローチ(資産・負債観)が唱えられるようになった経緯(収益・費用
アプローチの「原理主義的な」適用が引き起こした問題点)を説明しなさい。その
うえで、その問題点の解決策としてどのような役割が資産・負債アプローチに期
2
待されていたのかを説明しなさい。

資産・負債アプローチはその後、全面時価会計(全面公正価値会計)と結び付け
られ、その論拠とみなされるようになった。そのような議論が欠いている視点を説
明しなさい。
Ⅳ 概念フレームワーク
論点
1.
2.
3.
「基本的な会計観」や概念 FW の存在意義をめぐる対立

概念 FW と個別基準との関係

会計情報の主要な利用者と利用目的

情報開示の誘因と会計基準の役割

企業価値(そのもの)を会計情報として開示する必要性

企業価値の代理指標(フローの情報か、それともストック情報か)
討議資料「財務会計の概念フレームワーク」記載事項の概要

概念フレームワークに期待されている役割

財務報告の目的

会計情報の質的特性

財務諸表の構成要素

財務諸表における認識と測定
概念フレームワークの限界(概念 FW では果たしえない役割)

概念フレームワークに記されている限界

「より根源的な疑義」
参考

概念フレームワークが「将来の基準開発における指針の提供」という役割を担っ
ていることについては争いがない。その一方で、概念 FW のあり方をめぐっては、
(a)概念 FW と個別基準との関係、(b)利益情報の主要な利用者、(c)経営者による
情報開示の誘因、(d)経営者の主観的な見積もりに依拠した情報の要否、(e)企
業価値の代理指標などについて争いがある。それを説明しなさい。

討議資料「財務会計の概念フレームワーク」は、直前の設問で取り上げた「概念
フレームワークをめぐる諸論点(対立点)」について、どのようなスタンスをとってい
るのか、説明しなさい。
3

一般に「概念フレームワークが存在することで基準の開発が円滑に進む」と考え
られているが、それは「概念フレームワークを字義どおりに解釈し、それに従えば
無条件に有用な情報が提供されること」を意味しない。概念フレームワークに期
待しうることの限界を説明しなさい。

「概念フレームワークに準拠することでより有用な情報の提供が期待される」とい
う通念自体に向けられる、より根源的な批判がある。これはどのようなものか、説
明しなさい。
Ⅴ 連結財務諸表の作成方法をめぐる対立(親会社説と経済的単一体説)
論点
1.
連結財務諸表の作成・開示方法をめぐる代表的な対立

当期純利益の計算範囲
 持分の追加取得
 持分の部分売却(いずれも派生的な論点)

純資産の部の内訳区分(親会社株主に帰属する純利益に連動する項目を
独立掲記するかどうか)

2.
親会社説と経済的単一体説

3.
4.
のれんの計上範囲(部分のれんか、全部のれんか)
「代表的な対立点」との結びつき
IASB による経済的単一体説の支持

現行会計基準の経済的単一体説との親和性

IASB が経済的単一体説を支持する理由の説得力
日本の現行会計基準に対する評価

親会社説と経済的単一体説との「混在」

「混在」が生じた理由
4