海外経済フラッシュ:中国:2016年4-6月期GDP

平成 28 年(2016 年)7 月 15 日
No.2015-6
海外経済フラッシュ
中国:2016 年 4-6 月期 GDP 成長率は前年比+6.7%と前期から横這い
 2016 年 4-6 月期の実質 GDP 成長率は前年比+6.7%と 1-3 月期(同+6.7%)から
横這いとなり、市場の予想をやや上回った。重工業を中心とした投資の減速が
続くなか、インフラや都市部を中心とした不動産投資の拡大などが景気を下支
えしたとみられる。
 発表元の国家統計局は記者会見で、中国経済は「引き続き下向きの圧力に直面
している」ものの、上期の成長率が前年比+6.7%の伸びを確保したことで、
「2016 年の政府目標(前年比+6.5%~7.0%)達成への良好な基礎を築いた」
との見解を示した。
 先行きを展望すると、インフラ投資や個人消費の拡大による景気下支えが見込
まれるものの、過剰な資本ストックや債務の調整余地は依然大きく、重工業を
中心とした投資の減速による景気下押しが続く見込みである。足元、政府は
「三去一降一補(生産能力・在庫・レバレッジ解消、コスト削減、弱点補
強)」の重点任務を中心に供給側改革を推進する方針を強調している。
 また住宅投資についても、都市部での過熱抑制策を受けて早くも頭打ちの兆し
が窺われ、過去のトレンドからみても、来年にかけて拡大ペースが鈍る公算が
高い。加えて、低格付け社債利回りの上昇等を受けた起債計画の中止による企
業の資金調達環境の悪化が予想され、投資の減速を中心とした下振れリスクに
は引き続き留意する必要がある。
第1図:寄与度別にみた実質GDPの推移
12
10
8
6
4
2
0
-2
第1表:中国の産業別実質GDP
(前年比、%、%ポイント)
最終消費支出
総固定資本形成
純輸出
実質GDP
2015年
実質GDP
6.9
7-9月期 10-12月期
6.9
6.8
(前年比、%)
2016年
1-3月期 4-6月期
6.7
6.7
第1次産業
3.9
4.1
4.1
2.9
第2次産業
6.0
5.8
6.1
5.8
6.3
工業
5.9
5.8
5.8
5.5
n.a.
建築
n.a.
3.1
6.8
5.8
7.3
7.8
第3次産業
8.3
8.6
8.2
7.6
7.5
卸・小売
6.1
6.1
6.3
5.8
n.a.
交通運輸、倉庫・郵便
4.6
4.7
4.6
3.3
n.a.
宿泊・飲食
6.2
6.6
6.6
7.0
n.a.
15.9
16.1
12.9
8.1
n.a.
不動産
3.8
4.9
4.1
9.1
n.a.
その他サービス
9.2
9.5
9.9
8.7
n.a.
金融
10
11
12
13
14
15
16/1-6(年/月期)
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
(資料)中国国家統計局統計より三菱東京UFJ銀行経済調査室作成
1
1.結果概要
2016 年 4-6 月期の実質 GDP 成長率は前年比+6.7%と 1-3 月期(同+6.7%)と同じ伸びと
なり、事前の市場予想(Bloomberg:同+6.6%)をやや上回った。産業別の内訳をみると、
第 3 次産業の伸びが小幅鈍化したものの、第 2 次産業は幾分加速した。
国家統計局は記者会見で、中国経済は「引き続き下向きの圧力に直面している」ものの、
上期の成長率が前年比+6.7%の伸びを確保したことで、「2016 年の政府目標(前年比
+6.5%~7.0%)達成への良好な基礎を築いた」との見解を示した。また、1-6 月期の成長
率(6.7%)に対する各需要項目の寄与度について、消費が 4.9%pt(2015 年:4.1%pt)、
投資が 2.5%pt(2015 年:2.9%pt)、外需が▲0.7%pt(2015 年:▲0.1%pt)との見方が示
された。
2.足元の景気動向
各需要項目の動向を別統計の主な経済指標から見ていくと以下の通りである。
(1)投資
1-6 月期の固定資産投資(名目、都市部)は前年比+9.0%と 1-3 月期(同+10.7%)から
減速した。インフラ分野での公共投資や不動産投資の拡大などが下支えするなか、鉱業や
重工業を中心に減速が続いている。
もっとも、不動産投資の 7 割弱を占める住宅市場の動向をみると、金利低下や不動産仲
介業者やデベロッパー、P2P 業者などによる「首付貸」 (頭金ローン)の活用なども相俟
って、今年初めにかけて大都市を中心に住宅販売や投資が再活発化したが、3 月以降、都
市部での過熱抑制策を受けて早くも頭打ちの兆しが窺われる。実際、別統計の不動産投資
は、1-4 月期(前年比+7.2%)をピークに 1-6 月期には同+6.0%まで鈍化した。
(2)消費
1-6 月期の小売売上高(名目)は、前年比+10.3%と 1-3 月期(同+10.3%)と同じ伸びと
なり底堅さを維持した。高額商品や必需品などが伸び悩むなか、都市部を中心とした住宅
販売の持ち直しなどを背景に家具や建築関連が増加、小型車減税策を受け自動車販売も増
加基調を維持した。別統計のオンライン消費も高めの伸びを示している。総じて安定した
雇用・所得環境が家計消費の支えになっているとみられる。
(3)貿易
4-6 月期の輸出(名目)は前年比▲3.6%(1-3 月期:同▲10.1%)、輸入(名目)も
同▲6.7%(1-3 月期:同▲13.5%)へマイナス幅が縮小、貿易黒字は 1,436 億ドル(1-3
月期:1,257 億ドル)へ拡大した。但し、製造業 PMI を構成する輸出受注指数および輸入
2
指数は足元、ともに改善に足踏みがみられ、輸出入の底入れにはまだ時間を要する可能性
が高い。
3.当面の見通し
先行きを展望すると、インフラ投資や個人消費の拡大による景気下支えが見込まれるも
のの、過剰な資本ストックや債務の調整余地は依然大きく、重工業を中心とした投資の減
速による景気下押しが続く見込みである。足元、政府は「三去一降一補(生産能力・在
庫・レバレッジ解消、コスト削減、弱点補強)」の重点任務を中心に供給側改革を推進す
る方針を強調しているほか、大手鉄鋼メーカーも過剰生産能力の削減に向けたリストラ計
画を公表している。また住宅投資についても、都市部での過熱抑制策を受けて早くも頭打
ちの兆しが窺われ、過去のトレンドからみても、来年にかけて拡大ペースが鈍る公算が高
い。加えて、低格付け社債利回りの上昇等を受けた起債計画の中止による企業の資金調達
環境の悪化が予想され、投資の減速を中心とした下振れリスクには引き続き留意する必要
があろう。
(平成 28 年 7 月 15 日
福地
亜希
[email protected])
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