特集 - ja-aomori.or.jp

改正農協法を踏まえた
「農業協同組合、農業協同組合
連合会及び農事組合法人向け
の総合的な監督指針」
の概要について
国会審議やパブリックコメント等を経て、改
正農協法、政省令および総合的な監督指針︵農
た議論が行われ自主的な取組みが行われ
を受けて、農業者等と役職員とで徹底し
2.自主的取組みの促進︵政府の農協改革
業協同組合、農業協同組合連合会及び農事組合
ていること︶
3. 准 組 合 員 の 事 業 利 用 に 関 す る あ り 方
信用事業及び共
済事業のみに係るものを除く ︶が、四月一日
︵今回の改正農協法では規制が見送られ
法人向けの総合的な監督指針
より施行された。
たが、調査等を通じて何らかの見直しが
なお、改正農協法附則第五十一条では、組合
の改革を促すとともに、組合の自己改革等の取
五年後にはあること︶
うことや、組合員たる農業者からみて経済活動
組みを状況によって五年後に何らかの措置を講
四月一日に公表・施行された改正監督指針
︵※
1︶では、自己改革に関する項目を新設するな
を積極的に行う組織となることなどを求める内
ずることとしており、
改正監督指針においても、
ど、組合員とJ A役職員の徹底した話合いを行
容が盛り込まれている。
組合等の経営を監督するうえでの基本的な
かを自己評価するために監督指針の正しい理解
そのため、どうすれば農業者に評価され、確
実に自己改革を実践しているといえるのかどう
組合の自己改革の実行が新設された。
考え方や、行政指導をする際の留意点など
が必要である。
︵※1︶監督指針とは、農水省が農業協同
をまとめたもの。農水省の職員が業務にあ
経営管理や業務運営等に当たっての指針と
り、監督を受ける立場の組合等にとっては
︵1︶基本的考え方︵監督指針策定の趣旨︶
1.組合の事業運営の明確化
たる時の手引書的な位置付けとなってお
なっている。
求められている。
業を通じて組合員に最大の奉仕をすることが
改正農協法で事業の目的が明確化されてい
る︵ ※2︶。 そ こ で、 監 督 指 針 に お い て も 事
監督指針の改正点は多岐にわたるが、本稿で
は、改正農協法を踏まえて特に重要な点︵三項
1.組合の事業運営の明確化︵組合は農業
の他の事業において、事業の的確な遂行によ
とが求められるとともに、農畜産物の販売そ
目︶について掲載することとする。
所得の増大に最大限取組まなければなら
り高い収益性を実現し、事業から生じた収益
ま た、 組 合 は そ の 事 業 を 行 う に 当 た っ て
は、農業所得の増大に最大限の配慮をするこ
ないこと︶
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特
集
成長発展を図るための投資または事業利用分
をもって、経営の健全性を確保しつつ事業の
また、改正農協法では、組合の理事に、青
年や女性を積極的に登用する観点から、
﹁理
た議論が行われるよう促すこととしている。
量配当に充てるよう努めることが求められて
事の年齢や性別に著しい偏りが生じないよう
を配置・育成できる内容となっている。
︵4︶組合員に対する営農・経営支援
ない﹂旨の規定は、そもそも組合は利益を
の﹁営利を目的として事業を行ってはなら
︵ ※2︶ 改 正 前 の 事 業 目 的︵ 旧 法 第 八 条 ︶
平成三十二年度までに十五%を目指すことを
る﹂
﹁役員に占める女性の割合を早期に十%、
い組織数を平成三十二年度までにゼロにす
指針において、
﹁女性役員が登用されていな
育成が行われているか。また、そのことを
た人材の配置や高度な専門性を有する人材
活動などが実施できるよう、業務に精通し
①適切な営農指導や意欲ある農業者へ出向く
上が新たに監督指針に明記されている。
いる。
得てはならない︵儲けてはならない︶との
成果目標として設定し、女性の参画拡大に向
考慮した人事異動が行われるよう配慮され
組合員に対する営農・経営支援として、次
のような実施体制や人材の育成及び能力の向
誤った解釈をされる傾向もあったため、そ
けた取組みをより一層促進﹂することが明記
に配慮する﹂旨の規定が設けられ、改正監督
の部分が削除された。
業生産拡大・農業所得増大に資する人材育
販売計画を提案できる能力など、地域の農
能力、農業者の経営改善を図る能力、生産・
ズに応じて、地域の生産者をとりまとめる
②営農技術の指導のみならず、販売先のニー
ているか。
業の職員のみ明記︶
︵3︶内部けん制体制について︵信用、共済事
された。
出資配当に上限を定めた規定は、株式会
社のように出資配当を目的として事業を
行ってはならないという組合の性格につい
て法改正後も変更はない。
内部けん制体制について改正監督指針で
は、
信用事業及び共済事業の職員については、
事について、その定数の過半数を原則として
慮した事業運営等を実現するため、組合の理
改正農協法では、組合員への最大奉仕とい
う目的に合致し、農業所得の増大に最大限配
む︶については、連続休暇、研修、内部出向
扱う職務などを行っている職員︵管理者を含
保するよう配慮されているか。また、現金を
務に従事させることなくローテーションを確
知、生産資材の調達手段方法等が新たに監督
組合員の農業所得の増大のために、次のよ
うに具体的な取組計画の作成や進捗状況の周
︵5︶販売・購買事業について
︵2︶役員体制について
﹁認定農業者﹂又は﹁農畜産物の販売その他
制度等、又はこれらの組み合わせにより、最
指針に明記されている。
成策を策定し、実施しているか。
の当該農協が行う事業または法人の経営に関
低限年一回一週間以上連続して職場を離れる
①有利販売に向けた取組強化
事故防止等の観点から長期間にわたり同一業
し実践的な能力を有する者﹂と規定されてい
方策をとっているかを監督することとしてい
物の有利販売に向けた具体的な取組計画を
る。
今回の改正では、信用事業及び共済事業の
職員についてのみ人事ローテーションの取組
作成しているか。その進捗状況について点
る。
得の増大に向けた経済活動を積極的に行って
みについて明記されるなど、組合員に対する
検を行うとともに、取組みによる効果の検
組合員たる農業者と、組合の役職員が徹
底した話合いを行うなどしたうえで、農産
いく観点から、役員体制をどうするかなどに
営農・経営支援のために専門的で必要な人員
そのため改正監督指針では、規定に適合し
た役員体制となっているか、組合が、農業所
ついて、組合員と組合の役職員の間で徹底し
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て定期的な見直しを行っているか。さらに、
証を行っているか。また、取組内容につい
庁としても改正農協法に基づく制度改革の趣旨
﹁ 組 合 の 自 己 改 革 を 円 滑 に 進 め る た め に、 行 政
者へのサービスが疎かになってはならない﹂と
サービスに主眼を置いて、正組合員である農業
このため、政府は、正組合員及び准組合員の
組合の事業の利用の状況並びに改革の実施状況
明記された。
評価を把握することなどを通じて、組合に自己
についての調査を行い、検討を加えて、結論を
及び内容の周知徹底を図るとともに、組合の自
改革の取組みを促していく必要がある﹂として
得るものとしている。
組合員に対しては、当該計画やその進捗状
②コスト縮減に向けた取組強化
自己改革の取組み状況を把握し、必要がある場
己改革の実施状況や自己改革に対する農業者の
肥料・農薬等の生産資材について、複数
の調達先を比較して︵価格及び品質など︶、
合には組合に取組みの改善を促すこととしてい
況等について周知しているか。
最も有利なところから調達しているかどう
る。
4.今後の対応
か。
ニーズに的確に応えて農産物の販売等を適切に
改正監督指針では、
﹁組合は、農業者の協同
組 織 で あ り、 担 い 手 を は じ め と す る 農 業 者 の
准組合員による組合の事業利用の状況ならび
農 協 法 附 則 で 法 律 施 行 日 か ら 五 年 以 内 に 、 正・
改正農協法において、准組合員の組合の事業
の利用に関する規制の在り方については、改正
求められる。
革工程表︶を確認・決定し、実践をすることが
総会・総代会で中期計画・農業戦略等︵自己改
平成二十七年十二月のJ A青森県大会の決議
等を踏まえ、各組合では重点取組施策とその目
行い、農業者の所得を向上させることなどを通
に、組合における事業および組織に関する改革
標を明確にして、組合員と徹底して話し合い、
じて地域農業を発展させていくことが何よりも
の実施状況についての調査を踏まえて検討を加
2.自主的取組みの促進︵自己改革の実行︶ 3.准組合員関係について
重要である﹂と明記された。
内容とする自己改革に取組み、組合員たる農業
業者と力を合わせて、農産物の販売力強化等を
すことが農村の活性化にとって望ましいこと
生活に必要な生活支援機関としての役割を果た
監督指針において改正前は、准組合員制度に
ついて、
﹁組合が農業者のみならず地域住民の
ていく必要がある。
改革が、組合員に着実に評価されるようすすめ
改革の実施状況調査﹂において、各J Aの自己
討も見据えて、政府により今後行われる﹁自己
農家組合員の所得増大のために、J Aグルー
プが全力を尽くすことは当然であるが、改正農
者、特に担い手から見て、その所得向上に向け
等﹂明記されていたが、この部分は削除され、
え結論を得るものとしている。
た経済活動を積極的に行う組織となること、そ
それに代わり、正組合員及び准組合員の事業の
ここでは、組合の地域のインフラとしての役
割︵従来の准組合員制度の趣旨 地域住民に利
︵中央会経営対策部︶
協法附則にある五年後の准組合員利用規制の検
のために組合の役職員が組合員と徹底した話合
利用の状況等の調査に関する項目が新設されて
特に、組合においては﹁農業者の協同組織﹂
という原点を踏まえ、担い手をはじめとする農
いを行う必要があるとしている。
定された﹁
﹃日本再興戦略﹄改訂二〇一四﹂等
用の途を開く等 ︶を認めつつ、
﹁農協はあくま
いる。
において、
﹁今後、五年間を農協改革集中推進
で も 農 業 者 の 協 同 組 織 で あ り、 准 組 合 員 へ の
自己改革の取組みは組合が自らの意志で実践
するものであるが、平成二十六年六月に閣議決
期間と位置付けて自己改革を促す﹂こととされ、
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