IFRS Developments 第122号 2016年7月

第 122 号 / 2016 年 7 月
IFRS Developments
IASBが事業の定義及び以前より保
有していた共同営業に対する持分の
会計処理の明確化を提案
重要ポイント
• ED では、以下の事項の明確化
を提案している。
• 事業の定義の適用
• 事業の定義を満たす共同営
業に対する支配又は共同支
配を企業が獲得した場合に
おける、以前より保有して
いた持分の会計処理
• コメント募集期限は 2016 年
10 月 31 日である。
概要
国際会計基準審議会(IASB)は、2016 年 6 月 28 日に公開草案「事業の定
義及び以前より保有していた持分の会計処理」(IFRS 第 3 号及び IFRS 第
11 号の改訂案)(ED)を公表した。改訂案の目的は以下のとおりである。
•
事業の定義の適用を明確化すること
•
事業の定義を満たす共同営業に対する支配又は共同支配を企業が獲得し
た場合における、以前より保有していた共同営業の資産及び負債に対す
る持分の会計処理に関して、実務上のばらつきを解消すること
事業の定義の明確化
IASB は、IFRS 第 3 号「企業結合」の適用後レビュー(PIR)で利害関係者
が示した懸念を受けて、IFRS 第 3 号の事業の定義の適用方法を明確化する
改訂を提案した。当該改訂案では、事業の取得と資産グループの取得を区別
する際に役立つ追加のガイダンスを提供している。また、米国財務会計基準
審議会(FASB)も、事業の定義の適用の困難さに関して、PIR で受領した
同様のフィードバックに対処するための提案1を公表している。
IASB 及び FASB
は、実質的にコンバージェンスされている IASB の IFRS 第 3 号と FASB の
会計基準(ASC)第 805 号における事業の定義の明確化について共同審議
を行った。IASB の改訂案の内容は以下のとおりである。
1 2015 年 11 月に公表された、会計基準アップデート案「事業の定義の明確化」
取得した資産の公正価値が単一の資産に集約されるか
ED では、統合された一連の活動及び資産が事業を構成するかどうかに関す
る評価を単純化するために、
スクリーニング・テストの実施を提案している。
改訂案によれば、取得した総資産の公正価値のほとんどすべてが、識別可能
な単一の資産又は同様の資産グループに集約される場合、統合された一連の
活動及び資産は事業には該当しない。当該スクリーニング・テストは、支払
対価の合計や純資産ではなく、取得した総資産の公正価値に基づいて実施さ
れる。取得した単一の資産又は同様の資産グループの重要性は、資金の調達
方法を考慮せずに評価される。
スクリーニング・テストにより、統合された一連の活動及び資産が事業に該
当しないと判断された場合には、企業は事業の定義に関する他のガイダンス
を評価する必要はない。
事業に該当するための最低限の要件
統合された一連の活
動及び資産が事業に
該当するための最低
限の要件の明確化が
提案されている
IASB は、事業に該当するためには、最低限、アウトプットの創出に寄与す
る能力を有したインプット及び実態を伴うプロセスが取得対象に含まれてい
なければならない、と判断した。しかしながら、アウトプットの創出に必要
となるすべてのインプット及びプロセスを取得することが、統合された一連
の活動及び資産が事業に該当するための要件となるわけではない。
取得したプロセスが実態を伴うかどうかの評価
ED は、実態を伴うプロセスを取得したかどうかに関する企業の判断を容易
にするためのガイダンスを設けている。改訂案では、統合された一連の活動
及び資産の取得が、アウトプットを有しているかどうかによって異なる要件
を定めている。取得日時点で、当該活動及び資産がアウトプットを有してい
ない場合は、取得したインプットが、アウトプットの創出に不可欠なプロセ
スを実行するために組織化された労働力、及びアウトプットの開発が意図さ
れた他の 1 つ以上のインプットを含んでいる場合にのみ、事業の定義が満た
される。一方、取得日時点で、当該活動及び資産がアウトプットを有してい
る場合は、特殊又は希な、あるいは代替困難なプロセス(又はプロセス・グ
ループ)
を含んだ取得であれば、
組織化された労働力の存在は求められない。
足りない要素を取り替える市場参加者の能力
IASB は、足りない要素を取得した一連の活動及び資産と組み合わせること
によって、アウトプットを継続して生成する市場参加者の能力は、もはや取
得が企業結合に該当するかどうかを評価する際の検討事項ではないと判断し
た。IASB は、市場参加者が取替可能であることではなく、取得したものに
基づいて評価すべきであると考えている。
アウトプットの定義の改訂
ED では、顧客に提供される財及びサービスに焦点をあてることで、アウト
プットの定義の範囲を狭めることを提案をしている。提案されている定義で
は、投資家、その他の所有者、構成員又は参加者に対して、コスト低減やそ
の他の経済的便益という形で、
直接的に提供されるリターンを除外している。
IASB は、現行のアウトプットの定義が、資産と事業を区別するのに十分で
ないと考えている。例えば、取得した多くの資産(例:工場施設における新
たな機械装置の購入など)は、活動及びプロセスの取得とは関係なく、コス
ト低減をもたらす場合がある。
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IASB が事業の定義及び以前より保有していた共同営業に対する持分の会計処理の明確化を提案
その他の明確化
ED では、取得した契約は実態を伴うプロセスではないことも明確にしてい
る。しかしながら、取得された委託契約の中には、実態を伴うプロセスを実
行するために組織化された労働力へのアクセスを提供する場合がある。
また、ED では、のれんの存在は、事業を取得したことの指標になる場合が
あるとしている。しかしながら、重要でない金額ののれんの存在をもって、
取得された資産(及び活動)が直ちに事業とみなされるわけではない。
IASB は、事業に該当するかどうかの解釈を容易にするために、IFRS 第 3 号
に設例を設けることを提案している。
以前より保有していた持分の会計処理
IASB は、事業の定義を満たす共同営業の支配又は共同支配を企業が獲得し
た場合における会計処理に関して、実務上のばらつきが存在することに留意
した。ED では、実務上のばらつきを解消するために、IFRS 第 3 号及び IFRS
第 11 号を改訂し、以下の規定を設けることを提案している。
企業が共同営業に対
する支配を獲得する
場合、以前より保有
していた共同営業の
資産及び負債に対す
る持分は、公正価値
で再測定を行う
•
既に共同営業者である、又は共同営業の当事者である企業が、共同営業
に対する支配を獲得した場合、以前より保有していた共同営業の資産及
び負債に対する持分は、公正価値で再測定を行う。この結論に至る過程
において、IASB は、共同営業である事業の支配を獲得することは、段階
的に達成される企業結合に該当し、以前より保有していた持分の再測定
は、IFRS 第 3 号の公正価値測定に関する要求事項と整合することに留意
した。
•
既に共同営業者である企業が、共同営業に対する持分を取得したが、共
同支配が維持される場合、以前より保有していた共同営業の資産及び負
債に対する持分の再測定は行わない。また、既に共同営業の当事者であ
る企業が、
共同営業に対する持分を取得し、
共同支配を獲得する場合も、
以前より保有していた持分の再測定は行わない。この結論に至る過程に
おいて、IASB は、共同営業の資産及び負債に対する持分の性質は変化し
ているが、当該取引はグループの境界性や以前より保有していた共同営
業に対する持分の会計処理を変化させるものではないことに留意した。
経過措置
ED では、IFRS 第 3 号の改訂案を、取得日が本改訂の発効日以降開始する最
初の年次報告期間の期首以降となる企業結合から適用することが提案されて
いる。
IFRS 第 11 号の改訂案は、共同支配の獲得が本改訂の発効日以降開始する最
初の年次報告期間の期首以降となる取引から適用することが提案されている。
発効日は決定されていないが、早期適用は認められる。
IASB が事業の定義及び以前より保有していた共同営業に対する持分の会計処理の明確化を提案 3
次のステップ
EY| Assurance | Tax | Transactions | Advisory
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に対するフィードバックを行うことを推奨する。
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