景気実感と英EU離脱の影響について

<アンケート調査>
2016.7.20
大阪シティ信用金庫
中小企業における
景気実感と英EU離脱の影響について
− 今後 1 年の景気「悪くなる」が 83.4%
中国経済の不安や円高傾向などで景気に陰りが出るなか、英国のEU(欧州連合)離脱決
定により世界に衝撃が走り、我が国でも一時リーマンショック発生時を上回る株価暴落や円高
騰があった。その後、落ち着きを取り戻しつつあるが、中小企業におけるこの影響や、景気の
実感と見通しなどについて、アンケート調査で探ってみた。
■ 調査時点:2016 年 7 月上旬(1 日∼7 日)
■ 調査対象:大阪シティ信用金庫取引先企業
(大阪府内)
製
: 1,385 社
有効回答数 : 1,332 社
有効回答率 :
■ 調査方法:聞き取り法
業 種
■ 依頼先数
96.2%
■ 有効回答内訳:下の表のとおり
実 数
構成比
従 業 者
実 数
構成比
造
業
521 社
39.1%
10 人未満
820 社
61.6%
卸 売
業
222
16.7
10∼49 人
448
33.6
小
売
業
110
8.3
50 人以上
64
4.8
建
設
業
204
15.3
計
1,332
運
輸
業
100
7.5
サービス業
175
13.1
計
1,332
100.0
100.0
1.景気の実感等について
(1) 景気の実感
−「悪化を実感」が増加
はじめに、自社の仕事をとおし、現在の景気をどのように実感しているかすべての企業に聞
いた結果が第 1 表−(1)である。
全体として見ると、「②足踏み状態」と答えた企業が 54.1%で最も多く、「③悪化を実感」と答
えた企業が 28.3%、「①回復を実感」は 17.6%だった。
1 年前に比べると、「③悪化を実感」と答えた企業が 12.4 ポイント増加したのに対し、「①回復
を実感」とする企業は 15.4 ポイント減少し、今回は「③悪化」が「①回復」を逆転する結果となっ
た。
このように、中小企業の景気実感は、1 年前に比べ明確に悪化している。
第 1 表−(1) 景気の実感
項目
区分
(%)
① 回復
50.3
57.6
61.8
51.4
61.0
54.8
(49.0)
(53.8)
(57.4)
(44.2)
(54.5)
(56.4)
③ 悪化
業
種
別
18.4
14.9
8.2
24.5
9.0
21.2
規
模
別
10 人未満
10∼49 人
50 人以上
16.0 (28.9)
19.9 (40.2)
21.9 (50.0)
54.6 (53.4)
53.8 (46.7)
48.4 (42.5)
29.4 (17.7)
26.3 (13.1)
29.7 (7.5)
100.0 (100.0)
100.0 (100.0)
100.0 (100.0)
17.6 (33.0)
[28.1]
54.1 (51.1)
[49.5]
28.3 (15.9)
[22.4]
100.0 (100.0)
[100.0]
※ ( )内は 1 年前、2015 年 7 月調査
-1-
31.3
27.5
30.0
24.1
30.0
24.0
(18.2)
(19.2)
(21.3)
(9.8)
(14.8)
(7.7)
計
製 造 業
卸 売 業
小 売 業
建 設 業
運 輸 業
サービス業
全
体
[参考:2016 年 2 月]
(32.8)
(27.0)
(21.3)
(46.0)
(30.7)
(35.9)
② 足踏み
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
(100.0)
(100.0)
(100.0)
(100.0)
(100.0)
(100.0)
(2) 悪化を実感する要因
−「売上が減少」が 63.0%
前項で「悪化を実感」と答えた企業(377 社、28.3%)に対し、具体的にどのような要因から悪
化を実感しているのか複数回答で聞いた結果が第 1 表−(2)である。
全体として見ると、「①売上が減少してきた」と答えた企業が 63.0%で最も多く、「②業界内で
暗い話が増えてきた」とする企業も 38.1%で続いている。このほか、「③商談が減少してきた」は
26.2%、「④販売価格が弱含みになってきた」も 23.0%となっている。
第 1 表−(2) 悪化を実感する要因
項目
区分
①売上が減少
(複数回答、%)
②業界内で
暗い話
③商談が減少
④販売価格が
弱含み
⑤その他
業
種
別
製 造 業
卸 売 業
小 売 業
建 設 業
運 輸 業
サービス業
74.2
67.2
72.7
40.8
50.0
40.5
35.6
37.7
30.3
51.0
43.3
35.7
27.0
29.5
12.1
26.5
20.0
33.3
17.2
32.8
15.2
38.8
16.7
23.8
0
0
6.1
0
6.7
2.4
規
模
別
10 人未満
10∼49 人
50 人以上
64.3
61.9
52.6
34.9
43.2
47.4
27.0
23.7
31.6
23.7
23.7
10.5
1.2
1.7
0
63.0
38.1
26.2
23.0
1.3
全
体
-2-
2.英EU離脱の影響等について
(1) 国民投票の事前予想
−「残留派勝利を予想」が 77.6%
もし英国がEU(欧州連合)を離脱するような事態になれば、我が国にも多大な影響が及ぶで
あろうことが事前に報じられ関心が高まっていたが、実際に国民投票で残留派と離脱派のいず
れが勝利すると予想していたか、すべての経営者に聞いた結果が第 2 表−(1)である。
全体として見ると、「①残留派の勝利を予想していた」と答えた経営者が 77.6%と圧倒的に多
く、「②離脱派の勝利を予想していた」とする経営者は 22.4%だった。
以上のとおり、英国のEU(欧州連合)離脱決定という事態は、大半の中小企業経営者にとっ
ては予想外の出来事だったようだ。
第 2 表−(1) 国民投票の事前予想
項目
(%)
① 残留派の勝利
② 離脱派の勝利
計
業
種
別
製 造 業
卸 売 業
小 売 業
建 設 業
運 輸 業
サービス業
79.1
77.0
70.0
76.0
85.0
76.0
20.9
23.0
30.0
24.0
15.0
24.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
規
模
別
10 人未満
10∼49 人
50 人以上
75.5
81.0
79.7
24.5
19.0
20.3
100.0
100.0
100.0
77.6
22.4
100.0
区分
全
体
-3-
(2) リスクの大きさ
−「今後リーマンショック級に」が 17.3%
英国のEU離脱決定により、一時的にリーマンショック発生時を上回る大幅な株価暴落や円
高騰があったが、その後は落ち着きを取り戻した。しかし、先を見通したとき、経済的なリスクは
今後どれくらいの大きさに広がる可能性があると思うか、リーマンショックとの比較で聞いた結果
が第 2 表−(2)である。
全体として見ると、「①今後リーマンショック級の大きさに広がり得る」と答えた企業は 17.3%
だが、「②リーマンショックほどではないがかなり大きくなる」と予想する企業が 59.8%と多い。
一方、「③リーマンショックに比べるとずっと小さい」とする企業は 22.9%だった。
このように、この先の展開によっては大きなリスクが発生し得るとの警戒感を抱く企業が多い。
第 2 表−(2) リスクの大きさ
項目
(%)
①リーマンショック級
②リーマンショックほどでは
③リーマンショック
の大きさに広がる
ないがかなり大きくなる
よりずっと小さい
業
種
別
製 造 業
卸 売 業
小 売 業
建 設 業
運 輸 業
サービス業
18.1
18.9
10.9
19.1
15.0
16.0
58.9
60.8
56.4
59.8
63.0
61.7
23.0
20.3
32.7
21.1
22.0
22.3
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
規
模
別
10 人未満
10∼49 人
50 人以上
16.3
18.5
20.3
60.4
59.6
54.7
23.3
21.9
25.0
100.0
100.0
100.0
17.3
59.8
22.9
100.0
区分
全
体
-4-
計
(3) 自社への影響
−「悪影響が出る」が 57.5%
英国のEU離脱により、今後実際に自社の経営そのものに影響が出てくると思うか聞いた結
果が第 2 表−(3)である。
全体として見ると、「①直接的に悪影響が出る」と答えた企業は 2.6%だが、「②間接的に悪
影響が出る」とする企業が 54.9%あり、これら「悪影響が出る」と予想する企業の合計は 57.5%
となる。一方、「③とくに悪影響は出ない」と予想する企業は 41.3%で、「④好影響がある」とする
企業は 1.2%だった。
第 2 表−(3) 自社への影響
項目
(%)
①+②
①直接的に
②間接的に
③悪影響
④好影響が
悪影響が出る
悪影響が出る
は出ない
ある
業
種
別
製 造 業
卸 売 業
小 売 業
建 設 業
運 輸 業
サービス業
1.3
7.7
4.5
0.5
3.0
1.1
58.9
54.5
51.0
52.0
60.0
46.3
39.0
32.4
44.5
47.5
37.0
52.6
0.8
5.4
0
0
0
0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
60.2
62.2
55.5
52.5
63.0
47.4
規
模
別
10 人未満
10∼49 人
50 人以上
3.2
2.0
0
50.7
61.6
60.9
44.8
35.3
39.1
1.3
1.1
0
100.0
100.0
100.0
53.9
63.6
60.9
2.6
54.9
41.3
1.2
100.0
57.5
区分
全
体
-5-
計
悪影響が出る
3.今後 1 年の景気予想
−「悪くなる」が 83.4%
最後に、今後 1 年程度の景気をどのように予想するか聞いた結果が第 3 表である。
全体として見ると、「①悪くなる」と予想する企業が 83.4%と圧倒的に多い。これに対し、「②
横ばい」と予想する企業は 16.4%で、「③良くなる」とする企業は 0.2%と皆無に近い。
以上のとおり、中小企業の景気予想は極端に悪くなっている。
参議院選挙も終わり、政府はアベノミクスを再加速させるための経済対策を策定中だが、中
小企業では実効性ある景気対策が待ったなしの状況にあるといえよう。
第 3 表 今後 1 年の景気予想
項目
(%)
① 悪くなる
② 横ばい
③ 良くなる
計
業
種
別
製 造 業
卸 売 業
小 売 業
建 設 業
運 輸 業
サービス業
86.2
81.0
80.0
82.4
84.0
81.7
13.6
18.5
20.0
17.6
16.0
18.3
0.2
0.5
0
0
0
0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
規
模
別
10 人未満
10∼49 人
50 人以上
82.9
84.4
84.4
17.0
15.4
15.6
0.1
0.2
0
100.0
100.0
100.0
83.4
16.4
0.2
100.0
区分
全
体
-6-