Page 1 Page 2 一月刊·共有船一 船舶流体力学の新時代 ーCFDが開く

平成 28年 7月 20日 発行 (毎 月5日 発行)第 518号
(日 /月
刊
公団船)
No。
518
51回 定 時 総 会 開 催
◇28年 度事業計画、27年 度収支計算書、28年 度予算実
◇会費の額、納入方法 ◇定款の一部変更
◇27年 度業務の概要、共有船保有の現況、建造実績
船舟
白整備共有船主協会 第
田
i≪
海事局 海洋 ・環境政策課≫
「内航海運の省エネ化の促進に関する検討会」
報告書
‐ ≪海事局 内航課》
t
第2回「内航海運の活性化に向けた今後の方向性検討会」
開催
I SES開 発の歴史と検証② 2軸 CPP方 式「ふたば」の概要
「おがさわら丸」就航
合
睡盟こ
]貨 客掲
整備共有船主協会機関誌
(一 社)周 脚白
シップ・ォブ・ザ・ ィャー2015
カーフェ リー「いずみ/ひ びき」に決定
◇2015年 の我が国のクルーズ等の動向
◇暫定事業による認定実績
◇5組 合で通常総会開催
凍示く術麗か■斐目
│
Å 三菱重工業椋 表書粛i
将喜ゝ牲韮届呈墨毘試会社
TEL.03-3451-5171
URL wwwaogaSaWarakaiun.co.jp
一 月刊・共有船 ―
〈連載口 〉
船舶流体力学 の新時代
一CFDが 開 く新 しい技術 開発 ―
大阪府立大学21世 紀科学研究機構
特認教授 池 田 良 穂
最近、 船舶設計 にお け るCFDの 威 力 に
魅 せ られ てい る。CFDと は、 コ ンピュ ー
そ して粘性 が絡 む渦 の問題 は もっぱ ら実
験 に頼 らぎるを得 なか った。筆者 は粘性 の
影響 が顕著 なビル ジキ ールの研究 か らは じ
タに よる流体力学手法 で、従来 の ような水
槽 や風 洞 の実験 を行わな くて も、 コ ンピュ
ー タ上で物体 のまわ りを流れ る流れや、 そ
めて、海洋資源開発 ブームだ った30年 ほ ど
前 には石油掘 削 リグの要素部材 に働 く波力
の研究 を行 って いたが、 いつ もこの流体 の
れ に伴 う流体 力 が計算で きる技術 で ある。
そ して、 その コ ンピュー タソフ トが市販 さ
中にで きる渦 に悩 まされていた。 い ったい
れ るよ うになっていて、だれで も手軽 にそ
の技術 を利用 して、船 の周 りの流れを把握
どのように流れ が剥離 して、 どのよ うな渦
が形成 され、 それがどのよ うに流体力 に関
す ることがで きる。 もちろん、 その使 い方
にはスキルがい るが。
係す るのか、ひたす ら水槽 で渦 を観 察 して
は考 えていた。
流体 はナ ビエ・ス トー クス方程式 に支配
され る ことが分 か って いた ものの、それ を
その渦 を含んだ複雑 な流れ が コ ンピュー
タで計算 で きるようにな り、渦がどの よう
解 くのが容易 で はなか った。 この方程式 か
ら液 体 の粘性 を無視 して簡略化 したのが、
にで き、 それ をどの ように制御すれ ば流体
力 が変わ るのか をパ ソコ ンの画面上 で ビビ
完全流体 とかポテ ンシ ャル流れ と呼 ばれ る
流れで、 これだけ簡易化 して も、解 くのは
ッ ドに見 ることがで きるようになったので
ある。 このCFDの 計算 コー ドを完成 させ
容易 ではない。古 くか ら多 くの優秀 な学者、
研究者 が この課題 に取組み、 さらに簡易化
るには、長年 にわ たる多 くの研究者 の汗 と
した線形理論 でなん とか解 いて、船の造波
抵抗や波浪中で の運動 を理論 的 に求 めるこ
とがで きるようになったのが、筆者 の若 い
努力 が あった ことは周知 の事実 で あり、筆
者 もその経緯 をある程度知 っているはい る
ものの、 そ うした開発能力はなか ったので、
常 に傍観者 の立場であった。
ころの】
犬況 だった。
-32-一
一 月刊・共有船 一
CFDの 威力 をまざま ざと知 ったのは、べ
春季講演会 で 3本 の論文 として発表す るこ
とができた。
トナ ムの造船系 の大学 か らの留学生 を受 け
入れた10年 ほど前のことだった。ベ トナム
では船舶用の実験施設 がないため、 コンピ
ュータを使った流体力学 が大学 の中で広 く
普及 していて、 その留学生 もCFDの 使 い
方 にはかな り慣れていた。 ただ、実験値 と
の比較をせず に使っていたため、その計算
結果 は筆者 の常識 とはかけ離れた もので あ
った。 筆者 の大学 で実験 を行 い、CFDの
計算結果 と比較 しては計算をや り直す とい
う繰 り返 しを して、1年 ほどたって、実験
結果 とCFD計 算結果 がよく合 うようにな
ってきた。
こうなると波 に乗 り出 した。筆者 が実験
室 で頭を抱 えていたい ろい ろな流体現象が
容易 に可視化できるようになったので ある。
最初 のテーマは、波浪中の抵抗増加であっ
た。最近 の巨大船 が、波 の中でほとんど揺
れないのにかかわ らず、抵抗が増加 して速
力 が落 ちるとい う問題 にCFDを 使 ってみ
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た。そうす ると、正面 か ら波 を受けた瞬間
向波中を航行す る肥大船の船首に働 く圧力分布 の
に、水面上 の船首部 に波 の山があたった瞬
違い (上 :静 水中、下 i波 浪中
じることがわかった。
きな圧力が生
に、
大
間
舵 の中では、ンヤパ ンハムワージが製造
す なわち、流体力学的 にはスタグネーシ ョ
販売 している高揚力蛇「シー リングラダー」
ン圧力 と呼 ばれるもので ある。 しか も、波
に興味があった。舵 の常識である流線型 の
の】
犬況 によってどの位置 にどのようなスタ
断面 からは程遠 い、舵 の後端形状 を魚 のひ
グネーション圧力が働 くのか も、 コ ンピュ
│!ラ
)
ータが明瞭 に示 して くれた。 これがわかれ
ば、 このスタグネーシ ョン圧力の働 く場所
の流れ を変 えて、圧力を減 らす方法 は容易
に考案できる。 こうして、バル クキ ャリア
か らPCCま で、 比較的短波長 の波 を正面
か ら受ける時の抵抗増加 を大幅 に減 らす方
法 を開発 し、今春 の 日本船舶海洋工学会の
-33-
れの形 のよ うに して、高揚力をだす ことの
できる優れ ものだ。舵 を切った時に揚力が
流線型舵 よりも大 きくなる流体力学的なメ
カニズムは容易 に理解 ができるが、まっす
ぐ走 る時 に舵の背後 に剥離渦 ができて抵抗
が増 えると考 えるのが船舶流体力学 に携わ
る研 究者 の常識 だ。 い ろい ろ話を聞 くと、
一 月刊 。共有船 ―
意丼 に抵抗増加 にはなっていないとい う。
このテーマにベ トナ ムか らの 2人 目の留
学生 が取組 んで くれた。 この場合 も剥離渦
の問題なので、CFDが 威力を発揮する。計
算を してみて、舵 の表面で うまく流れを剥
離 させて、その剥離渦 で舵後端までの部分
L
を包み込むように流れ させ ることで、抵抗
増加 を押 えるように、 きわめて巧妙 に形状
を工夫 していることが分 かった。 この時の
驚 きは新鮮 だった。 これまで長年、心の中
に溜 まっていたしこりが一気 に解消 された
瞬間で あった。
この後、彼 は、 これまで高揚力 はでるも
のの、抵抗増加 が′
心配 されて実用化 が進 ん
でいなかったウェ ッジラダーの最適 な設計
法 を開発す ることができ、直進時の抵抗 は
ほ とんど増 えず に、 舵 の揚力を10∼ 20%
まで自由に増加 させ るためのウェ ッジの設
計法 を開発 した。 これ によって、舵 の面積
を減 らす ことが可能 となるし、低速度での
82に 当た るプ ロペ ラ回転流 の様 子
3つ 目の事例 としては、上部構造 の形状
による風圧 力 の 問題 で、 そ の削減 にCFD
が威力 を発揮 した。
最近 は、旭洋造船 が開発 した球状船首 ブ
リッジ船 が、 各種 の船 の賞 を受賞 してい る
ように、 ユニー クな風圧力 を減 らした船型
がいろいると開発 されてい る。 こ うした開
発 にもCFDが 有用 だ。
力も計算 ができるようになってきた。
の水槽 で送風機 を使 って計測 を行 って、そ
の特性 を把握 は した ものの、 その流体力特
一 一
帽 卜隅
斯
︲
筆者 の研究室 では、サ ノヤ ス造船 との共
同研究 でチ ップ船 に働 く風圧力 の低減 に取
り組 んだ。軽 いチ ップ を積む ため乾舷 が深
幡 卜鮮
ヽ
舵効 きのよい高揚力舵 も可能 となる。 これ
も流れの剥離 と、その後方 の剥離渦 の挙動
が コンピュー タで簡単 に計算 ができるよう
になったおかげである。
また、プ ロペ ラ作動時の舵 の発生す る揚
>
い上 に、独特 の艤装品がデ ッキ上 に並んで
い る。 これ らに働 く風圧力を、筆者 の大学
義装品 によるどのような流れ に基
性 がどのお
づ くものなのかはなかなか理 解 がで きない。
そ こで す べ ての購装 品 の形状 をCFD計 算
型ヨ内
に取 り込 んで流れ を計算 した結果、その流
れ の全容 が見 えて きた。
そ うす ると風圧 力低減 へ のアイデ ィアも
―
と_― ・'Ⅲ
L
と
空い
自ず とわかって くる。 この成果 は、 同造船
所 か ら社会人 入学 した技術者 が博士論文 と
と
してまとめて くれた3
ウェッジラダーの まわりの渦のCFD計 算結果
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一 月刊・共
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すぐ発表できるのでご期待 いただきたヽ‐
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壇
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214102
ち,亀 目
しか し、CFDを 駆使 す る若 い研 究者 こ
一 緒 に、CFDの 結果 を見 ていて、 いつ こ
思 うのは意外 に若 い人 た ちがその結果 に実
奮 をして くれないこ とだ。実 は、流れの有
子 を画面 でみて も、CFDの 結果 なのだキ‐
4
″│!襲
ブリッジ形状の違いによる風の流れの変化。ブリ
ッジ背後に形成される渦が違うこ1と がわかる。
ら当 た り前で、それ以上 の考 えが浮 かばな
い らしい。筆者が、若 い ころ、実験 で渦 を
必死 にみて流れ の現象 を理解 しよ うと した
現在 は、デ ッキ上 に山の ように積載 され
た コ ンテ ナ に働 く風圧 力 をCFDで 計算 を
情熱 を伝 えな ければ、 なか なかCFDの 実
用的な活用 も難 しいのか も しれない と思 号
そ こで、 現在、 造船所 の方 々 と一 緒 に
してい る。 どこで剥離 をして、 コ ンテナの
CFDを 使 っ た設計や、 乱流 モ デル の運 び
隙間を通 った風 が どのよ うな渦 を形成 す る
のかが、次 々 と明 らかになって きて、想像
方 などを勉強す るプ ロジェク トを大 学内の
力 が掻 き立て られ る。 これ らの結果 ももう
-35-
最先端船舶技術研究委員会で走 らせている
ぜひ、 ご興味があればご参加 いただきたいそ
!