企業向け研修サービス市場に関する調査を実施(2016

2016 年 7 月 11 日
プレスリリース
企業向け研修サービス市場に関する調査を実施(2016 年)
―新入社員研修は引き続き増加、定額制研修サービスの利用が拡大―
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内の企業向け研修サービス市場の調査を実施した。
1. 調査期間:2016 年 4 月~6 月
2. 調査対象:研修サービス事業者、ユーザー企業・団体等
3. 調査方法:当社専門研究員による直接面談、ならびに電話・e-mail 等によるヒアリング、文献調査併用
<企業向け研修サービスとは>
本調査における企業向け研修サービスとは、企業向けに研修サービス事業として提供される外部事業者にお
ける研修・教育を対象とし、自社内における自社従業員への研修・教育は含めない。なお、研修サービス子会社
による、親会社またはグループ向けに実施される研修・教育サービスを含む。
【調査結果サマリー】
◆2015 年度の企業向け研修サービス市場規模は前年度比 2.3%増の 4,970 億円
2015 年度の企業向け研修サービス市場規模は事業者売上高ベースで、前年度比 2.3%増の 4,970 億
円であった。企業の人材採用意欲が活発化したことにより、新入社員向け研修の需要が引き続き増加し、
一部では研修施設や講師の供給が追い付かない事態も発生した。
◆定額制・低価格の企業向け研修サービスが普及・拡大
2015 年度においては、中堅・中小規模企業を主なターゲットとした、定額制の研修サービス(会員向け
に公開された研修講座や e ラーニングコンテンツを使い放題にして月額または年額で対価を収受するサ
ービス)の普及が一段と進んだ。また、チケット制の低料金の研修サービスや 1 講座 1 万円台等のシンプ
ルな価格設定で提供されている研修サービス等も同様に好評を博し、参加者数を伸ばしている。こうした
定額制・低価格の研修サービスが普及・拡大したことにより、中堅・中小規模の企業が企業向け研修サー
ビスの顧客となるケースが増加している。
◆ 資料体裁
資料名:「企業向け研修サービス市場の実態と展望 2016」
発刊日:2016 年 6 月 30 日
体 裁:A4 版 606 頁
定 価:120,000 円(税別)
◆株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
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2016 年 7 月 11 日
プレスリリース
【 調査結果の概要 】
1.市場概況と予測
企業向け研修サービスは、新入社員や中堅社員、管理職向けの階層別研修や、営業や技術系社員
向けの業務内容別研修、海外赴任などのための語学研修、PC スキルなどのIT 系研修、資格取得を目的
とした研修などの従来からの研修サービスに加え、対人スキル、モチベーション向上のための自己啓発を
目的とする研修なども行われている。2015 年度の国内の企業向け研修サービス市場規模は事業者売上
高ベースで、前年度比 2.3%増の 4,970 億円であった。
2015 年度は大手企業のみならず、中堅・中小規模の企業における人材の採用意欲が全般的に活発
化したことにより、新入社員向け研修の需要が引き続き増加した。研修が集中する 4~5 月においては、
貸会議室やホテルのバンケットルーム等の研修会場等に予約が殺到し、研修施設の供給が間に合わな
い事態も見られた。また、同時期に新入社員向け研修の講師についても不足し、研修サービス事業者各
社が引き合いの増加に対応出来ずに、やむ無く研修の実施依頼を断る事態が一部生じた。同様に、若
手社員向け研修や管理職向け研修も、やはり、研修が集中する 9~10 月には、開催する研修施設不足
や、講師の供給不足が一部生じ、研修サービス事業者側の事情により、市場の成長を一定程度抑制して
しまう結果につながった。
2016 年度に入り、前年度よりも更に新入社員向け研修、若手社員向け研修の利用企業が増加してい
るものとみられ、多くの研修サービス事業者が、研修施設と講師の確保により一層注力せざるを得ない事
態となっている。このように、企業向け研修サービスの需要は大きく拡大する傾向にありつつも、研修サー
ビス事業者側が一部受注にまでつなげられない状況が続いており、市場規模の拡大幅は緩やかなにな
らざるを得ないものと推測し、2016 年度の企業向け研修サービス市場規模は事業者売上高ベースで、前
年度比 2.0%増の 5,070 億円と予測する。
図 1. 企業向け研修サービス市場規模推移・予測
(単位:億円)
6,000
5,000
5,640
4,710
4,630
4,520
4,670
4,790
4,860
4,970
5,070
5,140
4,000
3,000
2,000
1,000
0
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度
(予測) (予測)
矢野経済研究所推計
注 1.事業者売上高ベース
注 2.2016 年度以降は予測値
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2016 年 7 月 11 日
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2.注目すべき動向
2-1.定額制・低価格の企業向け研修サービスが普及・拡大
企業向け研修サービス市場で、非常に注目される動きとして、会員向けに公開された研修講座や e ラー
ニングコンテンツを使い放題にして月額または年額で対価を収受する、いわゆる「定額制」のサービスモ
デルが、ユーザー企業に軒並み支持され、当該サービスが売上を伸ばしていることがあげられる。また、
チケット制の研修サービス(低価格の料金で講座を自由に選んで参加できるサービス)や 1 講座 1 万円台
等のシンプルな価格設定で提供されている研修サービス等も同様に好評を博し、参加者数を伸ばしてい
る。こうした定額制・低価格の研修サービスが普及・拡大したことにより、中堅・中小規模の企業が企業向
け研修サービスの顧客となるケースが増加している。
これまで、企業向け研修サービス市場は、個人消費者マーケットのように価格への敏感性が強くない市
場と言われてきており、際立った価格戦略を打ち出す研修サービス事業者は、どちらかといえば少数派
であったが、ここに来て、新規顧客や中堅・中小規模のクライアント企業を取り込むべく、柔軟な価格体系
での戦略を構築する研修サービス事業者が増えている状況である。
BtoCビジネスにおいては、スマートフォンやインターネットの通信料金、動画コンテンツサービス、ゲー
ム・音楽配信サービス等で「定額サービス」「低料金サービス」が常態化している。BtoBビジネスである企
業向け研修サービスにおいても、サービスを発注する立場の総務・人事担当者は、一個人(消費者)とし
ては定額・低料金のサービスに慣れ親しんでいる訳であり、相対で見積られる分かりにくい料金体系より
も、定額サービスのようなシンプルで分かりやすく、安い料金体系に魅かれやすくなっていることも、定額
制や低価格の研修サービスが伸長している要因の一つとなっているものと考える。
2-2.研修サービス事業者の営業人材不足が露呈
新入社員向け研修を始めとして、様々な研修サービスが、全体的に需要を伸ばしている状況下にあっ
て、市場規模の成長を阻害しているのは、先述したように研修施設不足、講師不足があげられるが、更に
あげられるのは、研修サービス事業者における、営業人材の不足である。
これまでの企業向け研修サービスでは、単にモノを販売するビジネスと違い、ユーザー企業の要望を聞
き出し、その要望に応える形で様々な提案を行うコンサルティング型の営業スタイルが一般的であったが、
どの研修サービス事業者においても、しっかりと経験を積んだコンサルティング営業の要員は圧倒的に不
足しており、昨今の企業向け研修サービス全般の需要増を受けて、益々、営業人材の不足が成長阻害
要因として顕在化していると考える。
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