NX― Web一 時事 通信社 ― 1/3ペ ージ 2016/07/11 08:03 ◎ 〔 円債投資ガイ ド〕理解ありし国際機関からの警告=日 本総研・河村氏 (11日 ) 河村小 百合 H日 本 総合研究 所 上 席 主任 研究 員 =毎 年 、 IMFが わ が 国 の 財 政 日金 融 当 局 との 間 で行 う 4条 協議 は 、近 年 で は通常 、協議終 了に当た つての 声 明 が 5月 末 に公 表 されてきたが、今年はそれが 6月 20日 にずれ込んだ。 これは、安倍晋 三首相 が去る 6 月 1日 、一度 目の延期後、 2017年 4月 に予定されて いた消費税率の再引き上 げ (80/o→ 10%)を 再度、延期する ことを明 らかに した ことが影響 したとみ られる。 IMF、 OECD、 BISと いった国際機関が これまで、各国の財政 日金融 日経済政 策運営に対 して、 どのよ うな考え方やス タンス をとつてきたのかには、差があ ったよ う に見受けられる。それはどうも、各機関が加盟各国の いか なる政策当局の メンバー を中 心に構成 されて いるか等の事情にも大き く影響 されてきたようだ。例 えば、各国の中央 銀行 で構成 される BISは 、当然ではあるが、各国の金融政策運営、とりわ け近年の 「大規模な資産買 い入れ」や 「マイナス金利」 といつた非伝統的な手段 による金融政策 運営がもた らす リス クや副作用にもっとも鋭 い感覚を持ち、情報発信を行 つてきてい る。 OECDは 安定 的 な経済 政策運 営 へ の志 向が 強 く、 中央銀行 の金融 政策運 営 には あま り踏み 込 む ことはな い 、 とい う印象 だ。 これ に対 して IMFは かね て よ り、 この 3機 関 の なか で は最 も、経 済 成長 重視 で “リフ レ派 "的 な色 彩 の 強 い 国際機 関 で あ つた よ うに 見 受 け られ る。 IMFは 、 国銀 が 13年 に 「量 的 H質 的金融緩和 」 を導入す る前 か ら、 日本経済 をデ フ レか ら脱却 させ るため、その よ うな 「大規模 な資産 買 い入れ 」 に よる超 金 融緩和 政策 へ 転換 す べ きで ある と声高 に提 唱 し、実際 に 日銀 が 導入 した後 はそ う した 金融 政策運 営 を支持 す る姿勢 を鮮 明 に打 ち出 して きた 。 IMFは このほか、 “リフレ派"色 の濃 い安倍晋三政権の政策運営を、もっとも強力 に後押 ししてきた国際機関であつたと言 つても過言ではなかろう。 その IMFが 、 6月 20日 に打ち出 した、 「対 日 4条 協議終了にあた っての声明」を 読む と、昨年までの、さなが ら「基本的にアベ ノミクスと日銀の量的 E質 的金融緩和 を 支持 しつつ も、それ らがもた らす先行きの リスクについても、確実 に一言ず つだけは指 摘 してお く」 といった書きぶ りとは、様変わ りして いるのが見 てとれ る。今回は、日本 経済 が抱える中期的に深刻な リス クについても、表現 は選びつつ も、かな りの分量 を割 いて、相当ス トレー トに指摘するに至 っていることに驚かされ る。 まず、財政政策の面では 「追加的財政パ ッケージを採用 B編 成 し、 17年 に予定され ていた消費税率引き上 げを 2年 半延期するとい う当局 の決定は、短期 において経済 を刺 激すると同時に財政の持続可能性確保に向けて前進する ことの難 しさを示 した。 これ ら の決定は、デ フレの リスクを低下 させ、短期的に成長を下支えする一方、 リフレの可能 性 を再び損なうような性急な収支改善な くしては、当局の中期的な財政 目標の達成 に影 響 を及ぼすであろう」 (IMF『 日本 :16年 対 日 4条 協議終了にあた つての声明』 1 http訪 輌騨w.=Ⅸ webjtti.∞ m/gWCb/View 2016/07/11 NX― Web一 時事 通信社 ― 2/3ペ ージ 6年 6月 20日 )と 指摘 されている。 次 に金 融政 策運 営 の面 で は、 「経済 見通 しが 悪化 し世界 的 に不 確 実性 が 高 ま る中での マ イナ ス金 利政 策 の 採 用 は、 物価 目標 に対 す る 日銀 の コ ミッ トメ ン トを よ り強 固な もの と し、政策枠組 み の 新 たな ツー ル を加 え、 それ は よ り期 限 の 制 約 に縛 られ に くい もの と な つた 」 と評価 す る一 方 で 、 「現在 の政 策 の下 で は物価 上 昇 は 日銀 の 2%目 標 を大 き く 下 回 つた ま ま と期 待 され る」 とも述 べ られ て い る。 これ らの所見 を総 じて、 IMFは 日本経済 の先行 きに対 して、 「 中期 的 には下方 リス クが支配 的だ。短期 的 には上 振れ リス クの方が大 き い 。大規 模 に な る可能性 の ある 16 年か ら 17年 にか けての財 政刺激 策 が上 方 リス ク を もた らす 一 方 、予想 を上 回 る中国経 済 の減速 、先進 経済 の成 長 の下 振れ及 び ブ レク ジ ッ ト等 の 国際 的要 因 は 負 の 効 果 をもた ら し得 る。 しか しなが ら、中期的には、弱い内需、公的債務が高水準な中での低金利の持続可能 性 に関する不確実性、そ して空前の非伝統的金融政策 とい う文脈 での金融の安定性に関 するリス クといつた重要な リス クが存在する。 これ らの リス クはスタグネーシ ョン (引 用者注 :不 況、停滞)を もた らすかも しれず、その場合には、財政の長期的な持続可能 性 に関する疑念が国債の リス ク 出プレミアムの上昇を招 き、金融システム と実体経済 に 負の循環 をもた らす性急なさらなる財政調整を強 いる可能性がある」 とい うス トレー ト な表現で指摘 している。主要先進国の一角を占める国が、 IMFか らここまであか らさ まに リスクの指摘 を受ける ことは、めったにある ことではない。 消費税率引き上 げ再延期後、わが国の中期的な財政運営をどのよ うに立て直すのか、 「マイナス金利付き量的 日質的金融緩和」を、出 口局面 も含めて、果た して今後 どのよ うに運営 してい くのか、わが国の財政当局、中央銀行は、国民に対 して明確な説明はで きて いな いが 、それ と同 じく、協議 のために訪 日した国際機関に対 しても、ク リアで説 得力の ある説明 はおそ らく、できていなか つたのだろ う。 そ して、今後の政策運営の方向性に関 して IMFは 、 「あるいは、長期 にわ たって目 標 を徐 々に達成できるよう、アベ ノ ミクス を再調整すべ きである」、今後の財政運営 に 関 しては「大胆な所得政策 と、関連する包括的な改革 がない限 り、財政拡張 による影響 は限定的である」、さらに 「財政刺激策が大規模な場合 は、 リスク ロプレミアムの上昇 を招 き逆効果にな りかねな い」、 「結果 として生 じる物価 と成長の低迷は、調整過程が 長引 くことを示唆する。高 い名 目成長が達成 されなければ、財政調整はよ り大規模 に、 またよ り長 い時間がかかることにな り、シ ョックヘ の脆弱 (ぜ い じゃく)性 が高まる。 毎年 GDP比 1/4∼ 1/2程 度 の漸進的な構造的財政調整が債務の引き下げに必要な 限 り持続 され る必要がある」 とまで指摘 している。 金 融 政策運 営 に 関す る指摘 は、 「 同様 に 、物価 目標 の達 成 に よ り時間がか か る ことか ら、緩和 的 な金 融環境 は長期 間保 たれ な けれ ばな らな い 。 したが って 、金 融 政策 は 長期 の 調 整 に向 けて再 設定 され るべ きで あ り、」 、 「金 融政 策 の 枠組み は、物価 目標 を達 成 す る具体 的 な期 限 を撤廃 し、 よ り柔軟 にな る必要 が ある」 、 とい う具 合 だ 。 http://― .nXWebjも i.coI動/gwebノ View 2016/07/11 NX― Web一 時事通信社 一 3/3ペ ージ 本稿が配信される頃には、参議院選挙の結果も判明 し、安倍政権は新たな政治基盤を 背景に、政策運営に臨む ことになる。政府 口日銀は、これまでの 自らの政策運営に理解 のあつた国際機関か らです ら、 このような厳 しい警告が発信されている ことを謙虚 に受 け止め、国民に対 して責任ある政策運営にか じを切つていくことが望まれる。 (了 ) [/201 6071lNNN0033] (c)Copyright Ji」 I Press Ltd. AIl rights reserved http=イ 1螂 。 lⅨWebjも iocoHVgweb/View 2016/07/11
© Copyright 2024 ExpyDoc