IPSJ-Z77-3R-03

情報処理学会第 77 回全国大会
3R-03
不応性を有する自己組織化特徴マップによる類似画像検索
— 類似度の計算方法変更による検索精度の向上 —
中島秀人
長名優子
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部
はじめに
1
画像蓄積過程
2.2
類似画像検索の手法の 1 つとして不応性を有する自
画像蓄積過程では,システムに記憶させる画像の特
己組織化特徴マップによる類似画像検索 [1] が提案さ
徴量を不応性を有する自己組織化特徴マップに学習さ
れている.このシステムでは,画像をキーとして検索
せる.画像蓄積過程は (1) 特徴量ベクトルの生成,(2)
を行うことができ,1 枚の画像をキーとした検索だけ
不応性を有する自己組織化特徴マップの学習の 2 つの
でなく,複数の画像をキーとした検索,画像の一部を
段階からなる.
キーとした検索なども行うことができる.このシステ
ムの検索精度 (F 値) は,キーワードを用いない場合
に 0.63,キーワードを用いた場合でも 0.90 となってい
る.この原因として,特徴量の類似度を計算する際に
ユークリッド距離を用いているため,共通する特徴が
存在しなくても距離が小さな値をとり,類似されてい
ると判断されてしまうことがあることが考えられる.
本研究では,不応性を有する自己組織化特徴マップ
による類似画像検索において,特徴量の類似度の計算
方法を変更することで検索精度の向上を目指す.
提案システムでは,不応性を有する自己組織化特徴
マップ [2] を用いて類似画像検索を行う.
2.1
特徴量ベクトル
このシステムでは,画像の特徴を特徴量ベクトルと
して表現し,それを用いて学習や検索を行う.特徴量
ベクトルは,(1) 領域ごとの色情報 (自然物) ,(2) 領
域ごとの色情報 (人工物),(3) 人工物の色の割合,(4)
人工物の割合,(5) 外接円からの距離,(6) SIFT,(7)
HOG,(8) スペクトル (自然物),(9) スペクトル (人工
物),(10) LBP,(11) キーワードを表す 11 の部分か
ら構成される.
不応性を有する自己組織化特徴マップに
よる類似画像検索
2
2.2.1
2.2.2
不応性を有する自己組織化特徴マップの学習
2.2.1 で作成した特徴量ベクトルを学習ベクトルと
して不応性を有する自己組織化特徴マップの学習を
行う.
構造
2.3
画像検索過程
提案システムは,不応性を有する自己組織化特徴マッ
画像検索過程では,検索キーとなる画像の特徴量ベ
プに基づいているため,入力層とマップ層の 2 層から
クトルを生成し,それを用いて検索を行う.提案シス
構成されている.入力層は,(1) 領域ごとの色情報 (自
テムでは,
然物),(2) 領域ごとの色情報 (人工物),(3) 人工物の色
の割合,(4) 人工物の割合,(5) 外接円からの距離 [3],
(6) SIFT (Scale-Invariant Feature Transform)[4],(7)
HOG (Histogram of Oriented Gradients)[5],(8) スペ
クトル (自然物),(9) スペクトル (人工物),(10) LBP
(Local Binary Pattern)[6],(11) キーワードを表す 11
の部分から構成されている.
Similarity-based Image Retrieval by Self-Organizing
Map with Refractoriness — Search Accuracy Improvement by New Calculation of Similarity —
Hideto Nakajima and Yuko Osana (Tokyo University of
Technology, [email protected])
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(1) 画像全体をキーとした,キーと画像全体が類似し
た画像の検索
(2) 画像の一部をキーとした,キーと画像全体が類似
した画像の検索
(3) 画像の一部をキーとした,キーと対応する部分が
類似した画像の検索
(4) 複数の画像をキーとした,複数のキーと共通する
特徴と類似した画像の検索
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(5) キー画像内に存在する人工物の位置ずれを考慮し
た画像の検索
のような 5 種類の検索を実現する.
(a) キー
(b) 結果
(c) キー
(d) 結果
画像の検索は以下のような手順で行う.
Step 1 : 特徴量ベクトルの入力
検索キーの特徴量ベクトルを入力層に入力する.
Step 2 : 内部状態の計算
マップ層のニューロンの内部状態の計算を行う.各
モジュールにおいて内部状態が最大となるニュー
(e) キー
ロンをそのモジュールの勝ちニューロンとする.
Step 3 :
画像の出力
勝ちニューロンの内部状態が閾値以上であればそ
(f) 結果
のニューロンに対応する画像が検索結果として出
力される.
Step 4 : 繰り返し
Step 3 において 1 つもニューロンが発火しなかっ
(g) キー
たモジュールやすでに発火したニューロンが 2 度
目に発火したモジュールはその時点で検索を終
了する.すべてのモジュールの検索が終わるまで
(h) 結果
Step 2, 3 を繰り返す.
図 1: 検索結果
従来のシステム [1] では,Step 2 においてマップ層
のニューロンの内部状態を計算を行う際に,検索キー
と重みのユークリッド距離を利用している.提案シス
テムでは,特徴量ベクトルは,ある特徴が含まれてい
3
計算機実験
提案システムによる検索結果の一部を図 1 に示す.
ることを表す 1 と含まれていないことを表す 0 とか
ら構成されている.ユークリッド距離を利用して類似
度を考える場合には,含まれている特徴が 1 つも一致
しなくてもユークリッド距離が小さくなり,類似して
いると判定されてしまうことがある.提案システムで
は,含まれている特徴のみに着目して類似度の計算を
行う.重みベクトル wi と検索キーの特徴を表す入力
ベクトル x の類似度 S(wi , x) は
∑
2
xj wji
S(wi , x) = ∑
j
j
xj +
∑
(1)
wji
j
で与えられる.この式は,キー画像と重みベクトルに
共通に含まれている特徴のキー画像に含まれている特
徴に対する割合とキー画像と重みベクトルに共通に含
まれている特徴の重みベクトルに含まれている特徴に
対する割合の調和平均を表している.
2-288
参考文献
[1] I. Miura and Y. Osana : “Similarity-based image retrieval considering shape and texture by selforganizing map with refractoriness,” Proceedings of
NOLTA, Luzern, 2014.
[2] H. Mogami, M. Otake, N. Kouno and Y. Osana :
“Self-organizing map with refractoriness and its application to image retrieval,” Proceedings of NOLTA,
Vancouver, 2006.
[3] 串間和彦, 赤間浩樹, 紺谷精一, 木本春夫, 山室雅司 : “オ
ブジェクトに基づく高速画像検索システム : ExSight,”
情報処理学会論文誌, Vol.40 No.2, pp.732-741, 1991.
[4] D. G. Lowr : “Object recognition from local scaleinvariant features,” Proceeding of ICCV, pp.1150–
1157, 1999.
[5] N. Dalal and B. Triggs : “Histograms of oriented
gradient for human deteciton,” Proceeding of CVPR,
pp.886–893, 2005.
[6] T. Ojala, M. Pietikäinen and D. Harwood : “A comparative study of texture measures with classification
based on feature distributions,” Pattern Recognition,
Vol.29, pp.51–59, 1996.
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