展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 伊藤若冲 《動植綵絵》30 幅 /《釈迦三尊像》3 幅 宝暦 8 年~明和 3 年(1757~1766 年) 絹本着色 東京、宮内庁三の丸尚蔵館 / 京都、相国寺 ■出典 若冲・応挙、みやこの奇想 / 辻惟雄責任編集 (日本美術全集 14 巻. 江戸時代Ⅲ) ■出版事項 小学館 , 2013 年 ■請求番号 L-708-N71b-14 ■資料 ID 398400306 ■解説 176-177(辻惟雄), 180-187(岡田秀之), 206-208(太田彩)ページ 伊藤若冲(1716-1800 年)は、与謝蕪村と同じ年の正徳六年(享保元年 6 月改元)に、京都錦 小路の青物問屋の長男として生まれた。京都・相国寺の僧・大典顕常(だいてんけんじょう)と親 交が厚く、若冲の人柄は、大典の証言により後世に伝わるところが大きい。 若冲は 23 歳で家業を継いだが、絵を描くことに熱中し、40歳のときには家業を弟に譲って隠 居し、みずからは制作にあけくれた。最初狩野派に学んだが、粉本(手本)写しに飽き足らず、京 都の寺院にある中国画を模写してまわり、独学で技法を身につけた。 《動植綵絵》は若冲が弟に家督を譲り渡した後、青物問屋の隠居として、なんら心配のない生 活のなかで制作に邁進できるという恵まれた時期に描かれた。なんの邪心もなく、描きたいか ら描く、描こうと思うから描く、描き表わしたいから描く、という姿勢が伝わってくる。 《動植綵絵》を描きつづけた 10 年のあいだに、彼はモティーフの脚色をさらに進化さ 展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 せて装飾性も加味している。若冲の飛躍的成長期、そして充実期の作品である。 《釈迦三尊像》3 幅は、元画から模写したもので、明和 2 年(1765年)にまず《動植綵絵》24 幅とともに、相国寺に寄進された。《動植綵絵》の残る6幅は、翌年、あるいは明和 7 年までに、 相国寺に寄進された。草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)-草も木 も土も石も、花も鳥も獣も虫も、すべてが仏性を備えている、という仏教アニミズムの思 想は、大陸から日本に渡り禅宗に受け継がれていたが、若冲は熱心な仏教信者であり、こ れらの作品にも影響を与えたとみられる。若冲は、当初から、この花鳥画連作を鑑賞画と してではなく、寺の法要の場を飾る荘厳具(しょうごんぐ)として計画したと考えられて いる。 《動植綵絵》はその後、明治 22 年になり、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)のあおりで困窮して いた相国寺から、その保護を願って皇室へ献上され、平成元年の国への寄贈後は、宮内庁三の 丸尚蔵館の収蔵品として管理されている。 展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 伊藤若冲 《大鶏雌雄図(動植綵絵)》 宝暦 9 年(1759 年) 絹本着色 142.3×79.1cm 東京、宮内庁三の丸尚蔵館 ■出典 伊藤若冲・動植綵絵 : 全三十幅 / 伊藤若冲 [画] ; 宮内庁三の丸尚蔵館, 東京文化財研 究所, 小学館編集 ■出版事項 小学館 , 2010 年 ■請求番号 L-721.4-I89A-1 ■資料 ID 397432239 ■解説 73 ページ (辻惟雄) 添景となるモティーフをいっさい省き、種類の異なる雄雌の鶏のみを描いた一図。斜線によってわず かに地面が暗示されるのみである。30 幅の中では単純な構図だが、得意の鶏に画題を絞っただけに、 雄鶏の頭部など、「紫陽花双鶏図」のそれを上まわる迫力をもっている。30 幅中 9 図に描かれた鶏の中 ではもっとも写生的ではないかと、かつてニワトリの専門家の感想を求めたところ、雄鶏のトサカが三枚 冠でありながら不自然に大きく、トサカの切り込みが深すぎたり、肉髭に切り込みがあったり、尾羽が大き すぎたり、この場合でも実際にはありえない形の誇張や変形が認められるという。写生とは対象の外形の 正確な再現(形似)のみではない、その<生態>を観察し写し取ることこそ肝要だと中国の写生画論は いう。若冲はそれを知っていただろうか。 展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 伊藤若冲 《老松鳳凰図(動植綵絵)》 明和3年(1766 年)頃 絹本着色 141.8×79.7cm 東京、宮内庁三の丸尚蔵館 ■出典 若冲・蕭白 / 辻惟雄[ほか]著 (日本美術絵画全集 23 巻) ■出版事項 集英社 , 1977 年 ■請求番号 L-721.08-N71-23 ■資料 ID 181840731 ■解説 伊藤若冲作品集 / [伊藤若冲画] ; 太田彩著 東京美術 , 2015 年 (721.4-I89i), 54 ページ 若冲がその表現にこだわって描いてきた白い羽の鳥。《動植綵絵》では最後に描かれた白い鳥となる。 本図の白鳳は白羽の美しさが一層に際立ち、優雅で妖艶なその姿は、他に例を見ない。白羽の輝きは、 裏面の黄土と胡粉、表面の丁寧で精緻な胡粉の描写が、絹を通して融合して視覚的に見えるもの。若 冲の描写マジックを象徴する一図である。松、桐、鳳凰を取り合わせた本図は、30 幅のなかで最も格の 高い位置づけになろう。 展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 伊藤若冲 《葡萄小禽図(鹿苑寺大書院障壁画)》 宝暦 9 年(1759 年)(一の間の床の間 襖四面 京都、鹿苑寺(金閣寺) 部分) 紙本墨画 ■出典 若冲・蕭白・蘆雪 / 小林忠 [ほか] 著 (水墨美術大系第 14 巻) ■出版事項 講談社 , 1973 年 ■請求番号 L-721.3-Su51-14 ■資料 ID 183567153 ■解説 伊藤若冲作品集 / [伊藤若冲画] ; 太田彩著 東京美術 , 2015 年 (721.4-I89i), 26 ページ もっと知りたい伊藤若冲 : 生涯と作品 / 佐藤康宏著 東京美術 , 2011 年 (721.4-I89Ys2), 60 ページ 宝暦 9(1759)年、若冲は、《動植綵絵》の制作と並行して、鹿苑寺大書院の障壁画 50 面も制作した。 画家となってわずか 4 年での大抜擢である。鮮やかな色彩で描く《動植綵絵》に対し、後者は墨のみで 花鳥を表現した墨画であり、着色画と墨画の表現追及を同時期に意欲的に行った年である。 壁、床、違棚から成る折れ曲がる画面を立体的に把握して、複雑に蔓を伸ばす葡萄と地面と小禽を 描く。初期の葡萄図の固さをとどめながらも、蔓が鋸の刃のような形で巻きついたり、蔓先が螺旋形を描 いたりする自由な動きが増している。葉も実もひとつずつに微妙な濃淡がつけられ、たいへん触覚的で ある。 展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 伊藤若冲 《『玄圃瑤華』より糸瓜(ヘチマ)・水葵(ミズアオイ)》 明和 5 年(1768 年) 紙本拓版 個人蔵 各 28.2×17.8cm ■出典 若冲の拓版画 / 若冲 [画] ; 山内長三 [ほか] 編 ■出版事項 瑠璃書房 , 1981 年 ■請求番号 733-I89 ■資料 ID 181799022 ■解説 伊藤若冲作品集 / [伊藤若冲画] ; 太田彩著 東京美術 , 2015 年(721.4-I89i), 122 ページ 若冲 box : five colors / [伊藤若冲画] ; 安村敏信著 講談社 , 2015 年 (721.4-I89Yy), 188 ページ 拓版技法で花卉蔬菜と虫をさまざまに表した 48 図からなり、そのうち 27 図に大典顕常(だいてんけん じょう・1719-1801 年)の詩句を伴う。拓版画とは、彫刻した板の上に濡らした紙を置いて凹部に紙を押し 込んで、表から墨を塗ったりタンポでつけたりする技法で、拓本を取る手法に似ているので拓版と言わ れ、石摺とも呼ばれる。 題名の“玄”は黒、天の色を意味し、“玄圃(げんぽ)”という語句が昆崙山(こんろんさん)上にあるとい う仙人の住む場所を示すことから、黒という色の無限の広がりを表している。そして“瑤華(ようか)”は 玉のように、玉をちりばめたように美しい花を示すことから、何ものにもかえがたい生命から生み出される 美しい花を意味すると考えられる。題名から想像されるような鮮やかな色彩で生命美を巧妙に表した作 品のイメージを、若冲は工夫を重ねて、白と黒だけで表現しようと、その可能性を追求していたことがうか がえる。 展示期間:2016 年 7 月 11 日~7 月 23 日 伊藤若冲 《象と鯨図屏風》 寛政 7 年(1795 年)頃 紙本墨画 六曲一双 滋賀、MIHO MUSEUM 各 159.4×354.0cm ■出典 伊藤若冲作品集 / [伊藤若冲画] ; 太田彩著 ■出版事項 東京美術, 2015 年 ■請求番号 721.4-I89i ■資料 ID 199752890 ■解説 若冲への招待 / 朝日新聞出版編 朝日新聞出版 , 2016 年 (721.4-I89Yjb), 69 ページ 北陸の旧家に明治時代から伝わったという作品で、2008 年に若冲の作品と確認された。鼻を高く上 げた象と潮を噴き上げる鯨。巨大な陸と海の王者が、まるで会話をするように向かい合う。若冲 80 代のと きの作品。 身体が白く、鼻を上げる象は、前脚を折り曲げ、耳はゆで卵を半分に切ったような形をしている。背後 の崖から伸びた牡丹が、背中をそっとなでる。鯨はまわりを蛸の触手のような波に囲まれており、黒色の 胴体は墨の滲みによって微妙に変化させている。江戸時代の人は鯨を魚と認識していたようで、背びれ が描かれている。白と黒を対比させた典型的な黒白(こくびゃく)屏風。
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