キャットゥルフシナリオ 「オサカナ返却大作戦」 このシナリオは、本来忌むべき神話生物の手 助けのために探索するという導入となっていま す。そのため、ややコミカルな演出のほうがしっ くりくるかも知れません。しかし、目標を達成で きなければ待っているのは破滅という部分は変 わりません。卓の雰囲気に気を使ってください。 また、基本のルールブックにはないハウスルー ルの演出がいくつかあります。邪魔だと感じる のなら排除しても構いませんし、もっと良いアイ デアがあれば差し替えても構いません。とにか く、みんなでワイワイ楽しんで! ■KP への情報 現在、上海租界界隈に深きものどもが入り込ん できています。実は彼らは、人間に奪われて上 海に持ち込まれた自分たちの祭器を探してい ます(この上海という新しい地に自分たちの拠 点を築く準備もかねているのですが)。祭器は 緑魚と呼ばれ、上海の人々や猫たちの間を 転々としています。祭器を深きものどもに返すこ とができなければ、彼らのあやつるショゴスに よって上海の地が大きな災いに見舞われます。 ■アーティファクト ・緑魚 一見すると魚のような形をした深緑色の小さな 石。深きものどもが崇拝の儀式に使用する。ご 本尊のようなもので特別な力はない。 ■舞台 虹口地区がメインになります。 ■深きものあらわる PC たちは夜のパブリックガーデンで猫会議に 参加しています。しかし例によって議題を真剣 に考えるものはおらず、どの猫も自分たちの好 きなことをしています。<目星>などに成功す ると、すぐ隣を流れる黄浦河の川面に何か生物 の泳ぐ影を見つけ、それは虹口地区のほうに 向かっていきます。その影は虹口クリークにか かっている桟橋から上陸し、深きものがその姿 を現します。これを見たものは<SEN チェック 0/1d6>を行います。 深きものが上陸すると、1 人のフードを目深に かぶったローブの人間が彼を出迎えます。彼 はインスマス面です。彼らに見つかると、探索 猫に黒と灰のぶち柄の猫がいた場合は男が捕 まえようと襲い掛かってきます(彼らは黒灰のぶ ち猫が祭器を持っていってしまったので困って いるのです)。 <敏捷>などで判定に成功すれば逃げること ができますが、捕まってしまった場合、深きもの が PC の顔を覗き込み、ゴボゴボとくぐもった声 でなにやら呪文を唱え始めます。深きもののひ れのある手の指先に何かうごめく不定形の粘液 のようなものが染み出してきて、それは意識を 持っているかのように PC の耳の中に入ってい きます。これは記憶をさぐる魔術です。体に害 はありませんが、<SEN チェック 0/1d6>を行 います。これを見ていたものは<SEN チェック 0/1d3>を行います。PC が緑魚を盗んだ猫と別 固体だとわかると、その場でぞんざいに投げ出 され以後興味を失います。 黒灰ぶちの猫がいなかった場合、彼らは PC た ちを一瞥しただけで特に興味を示しません。様 子を隠れ見ていた場合も同様で、彼らはなに やら深刻そうに会話を始めます。<人間語> に成功すれば内容がわかりますが、失敗しても いくつかの単語はわかるとしてある程度情報を 渡したほうが良いでしょう。捕まった場合も同じ 内容の会話をします。 ・我々が大いなる神に定例の祈りを捧げるため に使うあの祭器は黒灰ぶちの猫がくわえていっ てしまったので目下捜索中。 ・きっと緑色で魚のような形をしていたので持っ ていったのだろう。食べられないと分かればど こかに捨てるか隠しているはず。 ・あれに強力な力はないが、我らにとっては命 に代えても守らねばならぬものだ。 ・祭器が手元に戻らない場合は不本意だが奥 の手を使わざるを得ない。おそらく上海の広い エリアが壊滅してしまうかも知れない。良い前線 基地が作れそうなのに残念なことだ。 ・我ら(深きもの)は数日中にはこの地を立たね ばならない。それまでの間は善処することとしよ う。 ※あくまでもこの祭器を使って悪事を働くという わけではないことを強調すること。<アイデア> などに成功したら、緑魚を彼らに返せばおとな しく引き上げるのではないかと気付くようにして も良いです。 奥の手の台詞が終わったところで、<聞き耳> か<目星>で判定を指示します。成功した PC は深きものの背後、遠目に黄浦江の水面が異 様に盛り上がりところどころ燐光を発しているこ とがわかります。そしてどこからともなく「テケリ・ リ テケリ・リ・・・」という不気味な鳴き声のような ものが聞こえます。これに気付いた PC は< SEN チェック 0/1d3>を行います。これは深きも のの操るショゴスです。深きものが男に重々作 戦の成功を命じて水中に戻っていくと、ショゴス もこのあとに続いて去っていきます。 三味線弾きと猫のヒロシ 北四川路の三味線弾きが持っているのは緑魚 ではなく、緑色に染色されただけのただの象牙 のバチです。そのそばには三味線の音色に合 わせて踊っている猫がいます。白黒ぶちの雄 猫ヒロシです。彼は頭に手ぬぐいでほっかむり をし、三味線の軽快なリズムに合わせて調子を とっています。PC たち猫にはちゃんと見えます が、人間たちには普通にしているように見える のです。 ヒロシに緑魚の情報を聞けば、「そういえば・・・」 と思い出します。ただし、彼から情報を聞き出 すには、代替条件として彼の主人の三味線弾 きのライブパフォーマンスの客引きをせねばな りません。<敏捷>に成功して軽快な動きを見 せたり、<鳴き声>で集客したり、<可愛らしさ >に訴えかけるなどすれば条件を達成できま す。ただし、失敗すれば「大根役者表」を振っ てペナルティを受けなければなりません。 1d6 ■緑魚を探す いくつか候補地を記します。ボス猫リカルドから 順番につなげてもいいし、PC が<ドルトル先生 >などで自主的に情報 NPC と接触する場合も ありますので、適当な順番でイベントをつなげ ても問題ありません。 虹口クリークのボス猫リカルド 虹口地区のボス猫リカルドは地域の裏社会に もよく通じています。強面の彼ですが、案外と おしゃべり好きで大抵は何もせずに情報を話し ます。普段は虹口クリークのボート屋の近くにた むろしていて、チクタクとエイハブという 2 匹の 猫を従えています。PC たちがかつて彼に恩を 売ったことがあったり、あるいは何か「誠意」を 見せるかうまくおだてることができれば情報を話 します。 「俺っちの仲間にはそんな食べられないような魚を盗む ヤツぁいねえよ!・・・そういえば、日本人街の通りでいつ もシャミセンライブをやってる人間が、魚みてえなつくりも のを持ってやがったかな・・・?」 大根役者表 チュンと呼ばれる謎の中国人が現れ、シャミセンライブ と猫たちのパフォーマンスにいたく感心して大金のご 1 祝儀をくれる。全員、三味線弾きから豪勢なご褒美を もらえる。情報もばっちりゲット! 近所の家の壁の穴からネズミが出てきてあなたをから かう。何が何でも捕まえてやりたい!狡猾なネズミの 2 罠にかかり店先の商品を倒してしまう。棒を振りかざし た店主と鬼ごっこ。 目つきの悪い根性のひねくれていそうなブルドッグの 3 興味を引いてしまった!お互いにニッコリと微笑みあっ たあと犬が襲撃してくる。鬼ごっこを行う。 「うるさい!」とギャラリーに追いたてられる。逃げなけ 4 れば石をぶつけられる。避けられなければ1ダメージを 受ける。しばらく戻れない。 他の魚泥棒と間違えられパーマの女性がはだしで追 いかけてくる。そちらのほうが愉快そうだと見物人が 5 1d20人減る。パーマの女性と人間の群れを相手に鬼 ごっこを行う。 1d6人の子供たちが集まってきてあっという間に捕ま る。<引っ掻く>に失敗すれば半日おもちゃにされて 6 ボロボロになる。POWを-2する(セッション中のみ)。 成功の場合は子供たちと鬼ごっこ。 ※鬼ごっこ(ケチャップライクな追いかけっこ) ラウンド 1 エネミー PC 2 3 バイバイ 図のようにマスを作りコマを配置します。PC たちは何か 自分の持つ技能を、状況にあった理由をこじつけてロー ルします。同じ技能は 2 度使えません。成功すれば1コ マ進めます。PC ごとにするか、全体の成功度を見て全 体を進めるかは自由です。エネミーは毎ラウンド 1 コマ前 進します。同じマスに入った場合は、ペナルティがありま す。KP が自由に決めてください。バイバイにたどり着け たら無事に逃げ切れたということになります。 「実は三角市場の近くに住んでいるネギトロのヤツが、最 近珍しい魚を手に入れたっていうんだ。魚屋に面倒を見 てもらっている彼が珍しいっていうなら相当なものだよ、 どうかな?」 三角市場のネギトロ ネギトロは虹口マーケット1 F の魚屋さんからよ く餌を貰っている真っ白な猫です。PC たちが 珍しい魚について聞くと、奇妙なカエルの干物 のようなものを持ってきます。<自然界>に成 功すれば、それはギザギザの歯があったり、骨 格も人間に近いでたらめな生物の干物だと思 います。実はこれは小さな深きものの干物で、 最近このあたりに多く珍しい生き物がいるのを 知った店主が試しに作って一つも売れなかっ たのを彼にあげたのです。この妙な事実に気 付いた PC は<SEN チェック 0/1>を行います。 ネギトロから緑魚の情報を引き出すには彼の無 理難題を聞いてあげなくてはなりません。彼は この干物を食べてよいものか考えあぐねていま す。確かにおいしそうな魚の臭いはするのです が、彼の本能が警鐘を鳴らしています。そこで 毒見役の出番というわけです。 これを食べた PC は「1d20 をロールして 20 引く 出た目の値を能動側として POW10 と対抗」を しなければなりません。シークレットに判定しま す。これに失敗した猫は青白く光り輝いたあと 爆発して死にます。周囲はダイナマイトと同じ 威力の爆発のダメージを受けます。比較的理 不尽なイベントですので、爆発に巻き込まれる 可能性があることをネギトロが気付いたら逃げ 出しているなどの演出で PL たちに察してもら いましょう。パラノイアのオマージュですので、 UV 様のように振舞ってできるだけコミカルに演 出してください。<九つの命>で復活する場合 は食べる前までまき戻り、ネギトロが察して情報 を教えてくれるようにしましょう。 「おいらにもわからねえ魚となると、そりゃ学者先生に聞く しかあるめぇ。虹口公園の近くの本屋に住んでるハカセ のやつに聞いてみな!」 内山書店のハカセ 内山書店で飼われているハカセは見識豊かな 学者猫です。彼は手持ちの蔵書によるならば その謎も解けるのではないかと提案します。< 人間学><オカルト><夢の知識>などに成 功することで蔵書の中から知識の有無を確認 できます。これらに成功すると、「妖蛆の秘密」 「黄衣の王」「幻夢郷生物目録」などの魔導書 を発見してしまいます。内容を読むことはできま すが、<人間語>に成功する必要があるのと 規定の SEN を喪失するペナルティがあります。 通常はこれらを持ち出そうとするとハカセと店主 に追いかけ回されることになります。 ※魔導書を読むことによる SEN 喪失 妖蛆の秘密(ラテン語)1d6/2d6 クトゥルフ神話技能+12 黄衣の王(英語)(表紙を見ただけで 0/1d6)1d3/1d6+1 クトゥルフ神話技能+5 幻夢郷生物目録(中国語)1d4/1d8 夢の知識+10 クトゥ ルフ神話技能+5 「我輩の知識にもないとはよほど秘匿された知識に違い ありませんぞ。かくなるうえは我が主人の知識に頼ってみ るしかありますまい!」 ハカセはペンを持って紙に緑魚の絵を描き始 めます。それは人間の目にはとても拙いもので すが彼のご主人内山完造は何か思いつきます。 「そういえば先ほど仕事でアスターハウスホテルにいった ときにこんなものをくわえて走っている黒灰ぶちの猫が おったなぁ」 ■夜の虹口と深きもの 探索中に PC たちがトラブルに巻き込まれると 時間が経過し、やがて夜になります。実際に時 間がどのタイミングで大きく進むのかは、各 KP が決定してください。夜になると、インスマス面 の人間たちと深きものが行動を開始します。彼 らは昼間はその風貌を見咎められることを恐れ て大胆な行動はしません。 出します。<地位>や<鳴き声>などの交渉 系技能やトリックに成功することでいうことを聞 かせられるでしょう。 パブリックガーデンの沖合い、黄浦江の水中で 深きものたちが崇拝の祈りを捧げています。黄 浦江に近付くなら、水面が淡く緑色に光り、どこ からともなく不気味なくぐもったような声の詠唱 が聞こえてきます。POW20 との抵抗に失敗す るとルルイエの幻覚を見ます。非ユーグリット幾 何学的な建造物が立ち並ぶ空間を垣間見た PC は<SEN チェック 0/1d5>を行います。 ベンダンが情報を話そうとすると、突如苦人が 数人網を持って襲い掛かってきます。またイン スマス面の男と目深にフードとマフラー、手袋 などで変装した深きものもその背後に現れます。 これは<危険察知>や<聞き耳>で事前に気 付くことができます。失敗した場合は不意打ち 攻撃で網に捕まりますが、<回避>で避けたり、 また黒灰のぶち柄猫以外は次のラウンドが終 わると同時に「なんだ聞いてたのと違う猫か!」 と放りだされます。 インスマス面は虹口地区を中心に灰黒ぶちの 猫を探し回っています。昼間は「ダゴン秘密教 団」と看板のかかった平屋の一軒家で質素な 生活をしており、事情を知らない苦人に金を握 らせて猫を探させていますが、夜になると自分 で出向いて捜索を行います。<嗅ぐ>に成功 すると、おいしそうな餌のにおいを感じることが あります。においを追跡すると点々とおいしい 餌が落ちており、最期には捕獲カゴが口をあけ て待っています。万が一捕まった場合は、導入 のように記憶を探られて SEN が喪失します。 <聞き耳>に成功すると、フードの男がなにや ら呪文の詠唱のようなものを口ずさんでいること に気付きます。これはショゴスを操っているので す。PC がその場から逃げようとするなら、周囲 をコールタールのようなもので囲まれていてあ まり遠くまで逃げることができません。コール タールの表面に無数の目や口が発生し、一斉 に「テケリ・リ テケリ・リ」というあざけるような鳴き 声が響き渡ります。<SEN チェック 1d3/1d10> を行います。 ■泥棒猫のベンダン アスターハウスホテルはゴシック調の荘厳な建 築様式のビルディングです。<目星>や<追 跡><嗅ぐ>などに成功すれば、今まさに排 煙窓の隙間からホテルの厨房にどうにかして忍 び込もうと四苦八苦している黒灰ぶちの猫ベン ダンの姿を見ます。見たところ今は手ぶらで、 緑魚はどこかに置いてきたようです。彼から緑 魚のアリかを聞き出すには、彼の要求を呑まな くてはいけません。 この事態を打開するには、彼らに緑魚を渡すこ とです。この非常事態に至って、ようやくベンダ ンは協力的になります。彼の指定した場所を< 引っ掻く>に成功することで掘り起こせば、つ いに緑魚が出てきます。これをインスマス面、 深きもの、ショゴスのいずれかに渡せば彼らは 引き上げていきます。黄浦江か蘇州河に投げ 入れることでも同様です。 「んー?猫にものを聞くのにまさか手ぶらでやってきたの かニャー?そうだにゃあ、全然関係ないんだが、あーな んか魚が食べたい気分だニャー、3ひきくらい」 ■報酬 無事に深きものとショゴスを引き上げさせること ができた PC は 1d8 の SEN 値を得ます。また、 以下の条件を満たしていれば、追加で1d2×満 たした数の SEN 値が贈呈されます。 魚は水辺で<引っ掻く>や<魚を捕まえる> によって入手できます。<幸運>に成功すれ ば、ベンダンも満足するようなサイズのものを捕 まえられるでしょう。もしくは虹口マーケットには 上等な魚がいくらでも陳列してあります。魚を3 匹彼に渡すと、彼は「魚を食べたい気分とは いったが渡すとは誰もいってない」などと言い 1.リカルドから情報を聞き出すロールに成功した(RP も 含む)。 2.大根役者表を振って鬼ごっこをした。 3.深きものの干物を食べた。 4.内山書店で見つけた魔導書を読んだ、もしくは持ち 帰ってこれから読む。
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