平 成 二 十 八 年 度 学 力 検 査 問 題 解 説 ( 国 語 )

平成二十八年度
学力検査問題解説(国語)
国語の基礎的・基本的な内容について、できるだけ広範囲にわたって出題し、国語を適切
〈出題方針〉
1
に表現し、正確に理解する力をみるように努める。
文 学 的 な 文章 と 説 明 的な 文 章 を 理解 す る 力 をみ る よ う に努 め る 。 また 、 平 易 な 古 典を読 む 基
・大問3…説明的な文章
(
(
合計
)内は配点
点)
点)
点)
点)
点)
点
作文と言語事項についての問題を出題し 、文章表現力や基礎的な言語能力をみるように努める 。
本 的 な力 をみ る よ う に 努 め る 。
2
3
(
大問1~大問5の5問構成(
〈出題形式〉
◇
・大問1…文学的な文章
・大問4…古典
(
・大問2…漢字・言語事項(
・大問5…作文
大問1
【出題のねらい】
文字どおりの意味で荷が勝っている。
①
たか すぎ
とありますが、これは、はっちのどのような様子を
表していますか。最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。
ウ
イ
ア
はっちが、背負ったリュックサックに負けないほどの大きな夢を抱えている様子。
はっちが、東京でカメラの勉強をするには必要のない荷物まで背負っている様子。
はっちが、父親のお下がりのフィルムカメラをこだわって使い続けている様子。
はっちが、その小さな身体には不釣り合いなほどの巨大な荷物を持っている様子。
(4点)
エ
ア
ま た 、 負 担 や 責 任 が 重 す ぎ る 。」 と い う 意 味 の 慣 用 句 で す が 、 こ こ で は 、 小 柄 な は っ ち が 、「 文 字
た う え で 、 そ の 説 明 と し て 最 も 適 切 な 選 択 肢 を 選 び ま す 。「 荷 が 勝 つ 」 と は 、「 荷 物 が 重 す ぎ る 。
は っ ち の 様 子 を 表 現 し た 一 文 に つ い て 、「 荷 が 勝 つ 」 と い う 表 現 の 本 文 中 に お け る 意 味 を と ら え
【解説】
【正答】
問1
す。出典は、壁井ユカコ著『強者の同盟』です。
かべ い
なっていた赤緒と初田が和解に至るまでの心情の変化が、高杉の視点を中心にして描かれていま
あか お
資料文には、中学校の同級生であった三人が、初田(はっち)の旅立ちを機に再会し、不仲と
はつ た
文学的な文章を理解する力をみようとしたものです。
100
どおりの意味」で大きな荷物を持っていることを表現したものです。ア~エの選択肢は、本文の内
- 1 -
16 12 25 22 25
容を含んでいますが、その全部または一部が本文の内容にふさわしくないもの、本文の言い換えと
して適切でないものがあります。それぞれの選択肢をみてみましょう。
ま ず ア で す が 、本 文 中 に「 そ の 小 さ い 背 中 に の し か か る ほ ど の 巨 大 な リ ュ ッ ク サ ッ ク を 背 負 い … 」
という表現があり、小柄なはっちが大きな荷物を持っている様子として適切な内容です。次にイで
すが、本文中で、フィルムカメラは父親との心情的なつながりを示していますが、ここでははっち
の荷物が重いことを表現するものではありません。次にウですが、はっちがカメラの勉強をするの
は 海 外 で あ り 、 東 京 で は あ り ま せ ん 。 最 後 に エ で す が 、 本 文 中 に 、「 背 負 っ た リ ュ ッ ク に 負 け な い
とありますが、高杉は、はっちのどのような決断をすごいと
たか すぎ
ほ ど の 大 き な 夢 」 と い う 比 喩 表 現 が あ り ま す が 、「 文 字 ど お り の 意 味 」 と し て は 適 切 で は あ り ま せ
わからんって……すげぇな。
②
ん。したがって、正答はアになります。
問2
感じたのですか。次の空欄にあてはまる内容を、三十字以上、四十字以内で書きなさい。
(6点)
(例)先のことがはっきりしなくても、父親のもとでカメラの勉強をしながら世界を
というはっちの決断。
【正答】
まわる(三十八字)
そのプレー姿
③
ます。
問3
【解説】
【正答】
鍛えられた
ら 探 し 、 最 初 の 文 の は じ め の 五 字 を 書 き 抜 き な さ い 。( 4 点 )
とありますが、それが具体的に表現されている連続する二つの文を本文中か
勉強をしつつ世界をまわるという決断をしたことを、高杉は「すごい」と感じていることがわかり
これらの表現から、はっちが、この先にはっきりした計画もないのに、父親に同行してカメラの
ん や っ て 。 あ と の こ と は ま だ わ か ら ん け ど 、 ま ず は ア ジ ア ま わ る ん や と 思 う 。」
②「東京でお父さんと合流して、ちょっとのあいだ東京にいると思うけど、五月から中国行く
分も世界をまわりたいと、はっちもついていくことにしたらしい。
①その父親がフリーに転身して海外へ赴くというので、父親のもとでカメラの勉強をしつつ自
現は、次の二つです。
人物の心情や言動に着目し、本文中からその決断の内容が読み取れる表現を探します。具体的な表
高杉がすごいと感じたはっちの決断の内容を、指示された文脈と字数で適切に表現します。登場
【解説】
40
「そのプレー姿」は、はっちが撮った写真の中の「高校生になってから赤緒がテニスをしてい
- 2 -
30
る 姿 」を 指 し て お り 、そ れ が 具 体 的 に 表 現 さ れ て い る 部 分 を 本 文 中 か ら 探 し ま す 。指 示 文 に は 、
「連
続 す る 二 文 」 と い う 条 件 が あ り 、 こ れ に 照 ら す と 、「 鍛 え ら れ た ~ 構 え る 姿 。 唇 を す ぼ め て ~ 放 つ
姿 。」 が 該 当 部 分 に な り ま す 。 求 め ら れ て い る 解 答 の 単 位 が 「 文 」 で あ る こ と に 注 意 し 、 そ の 最 初
い い 写 真 や な 。 と あ り ま す が 、次 は 、高 杉 が こ の よ う に 発 言 し た 理 由 を ま と め た も の で す 。
④
の五字を書き抜くようにしましょう。
問4
と思ったから。
空 欄 に あ て は ま る 内 容 を 、 三 十 字 以 上 、 四 十 字 以 内 で 書 き な さ い 。( 6 点 )
あか お
この写真は、赤緒が中三の惨敗のときの悔しさを
【正答】
(例)忘れることなく、不屈の根性ではいあがってつかみ取った一勝の喜びを伝えて
いる(三十七字)
す。具体的な表現は、次の三つです。
うれ
「こんなに、嬉しかったんやな…
大きな荷物と赤緒のあいだに挟まれた小さいはっちが、泣き笑いの顔で首を振った。
⑤
の根性で一勝をつかみ取った赤緒の喜びを伝えていたことに対するものであるとわかります。
問5
りますが、このときのはっちの心情を説明したものとして最も適切なものを、次のア~エの中
とあ
これらの表現から、高杉の発言は、はっちの写真が、中三の惨敗のときの悔しさを忘れず、不屈
③ 「 お ま え が 一 年 間 向 き 合 っ て き た も ん が 、 こ こ に 詰 ま っ て る 。 い い 写 真 や と 思 う ぞ 。」
てきて、つかみ取った一勝だ。
② あ の と き 一 人 で コ ー ト に ぶ つ け た 感 情 を 、自 分 だ け の 胸 に 刻 み つ け 、不 屈 の 根 性 で は い あ が っ
… 。」
①この写真を見なければ知ることができなかっただろう
―
ちの写真が高杉に伝えてくれた内容に着目し、それを本文中の心情表現や会話表現から読み取りま
高 杉 が 「 い い 写 真 や な 。」 と 発 言 し た 理 由 を 、 指 示 さ れ た 文 脈 や 字 数 で 適 切 に 表 現 し ま す 。 は っ
【解説】
40
赤緒の謝罪の言葉をきっかけに、それまで感じていた不安から解放され、自分の写真への
してくれる赤緒に対して感謝している。
自分の写真が再び赤緒を傷つけてしまったことを悔やむ一方で、それでも自分の夢を応援
が喜んでくれたことに安心している。
赤緒を激怒させてしまった自分の写真の技術に不安を感じていたが、手渡した写真を赤緒
せたことに満足している。
赤緒が泣きながら抱きしめてきたことに照れ笑いしながらも、自分の写真の実力を認めさ
か ら 一 つ 選 び 、 そ の 記 号 を 書 き な さ い 。( 5 点 )
ア
イ
ウ
エ
思いが赤緒に伝わったことを喜んでいる。
- 3 -
30
【正答】
【解説】
エ
「泣き笑いの顔で首を振った」ときのはっちの心情を、本文中の表現から読み取り、その説明
と し て 最 も 適 切 な 選 択 肢 を 選 び ま す 。 は っ ち の 心 情 が 読 み 取 れ る 具 体 的 な 表 現 は 、次 の 部 分 で す 。
う かが
①すこしおそるおそるといった、尻すぼみの声になって高杉の隣に顔を向けた。
②手もとで一枚ずつ写真をめくる赤緒の顔を、はっちが不安そうに 窺 っている。
の
③ 「 あ っ 、 誰 に も 見 せ て え ん よ 。」
息を呑んで写真を凝視するだけの赤緒に、はっちが慌てたように言った。
④ 「 ほ や け ど わ た し は こ れ 、 い い 写 真 や と 思 う 。 ほ ん と は み ん な に 見 て 欲 し い … … 。」
上 目 遣 い に 赤 緒 の 顔 色 を 窺 い な が ら 怖 々 と 、け れ ど 頑 固 に あ の と き と 同 じ 主 張 を 繰 り 返 し た 。
あん ど
⑤ずっと不安なまなざしで赤緒を見つめていたはっちが、ほっとしたようにくしゃっと表情を
崩した。
こ れ ら の 表 現 か ら 、再 会 当 初 の 不 安 が 、赤 緒 と 和 解 で き た こ と へ の 安 堵 と 、写 真 へ の 思 い が 伝 わ っ
た 喜 び に 変 化 し て い く 様 子 を 読 み 取 る こ と が で き ま す 。 ま ず ア で す が 、「 照 れ 笑 い 」 は 高 杉 の 描 写
であり、はっちの心情を表すものではありません。また、はっちが自分の写真の実力を認めさせた
こ と に 満 足 し て い る 表 現 は あ り ま せ ん 。次 に イ で す が 、④ か ら わ か る よ う に 、は っ ち は 、自 分 の「 写
真の技術」に不安を感じてはいません。次にウですが、はっちが渡した新人戦の写真について、赤
緒 は 、「 ひ ど い 顔 」 と 言 っ て い ま す が 、 そ の あ と に 写 真 の よ さ を 認 め る 発 言 を し て お り 、 傷 つ い た
様 子 は あ り ま せ ん 。 最 後 に エ で す が 、 赤 緒 の 「 中 学 ん と き 、 … … … ご め ん 。」 と い う 謝 罪 の 言 葉 を
聞 い た は っ ち は 、「 ほ っ と し た よ う に 」 表 情 を 崩 し ま す 。 こ れ は 、 は っ ち が 不 安 か ら 解 放 さ れ た こ
とを表現したものです。また、はっちの「泣き笑いの顔」から、高杉と赤緒が、自分の写真のよさ
を理解してくれたことへの喜びを読み取ることができます。したがって、正答はエになります。
- 4 -
大問2
【出題のねらい】
部 の 漢 字 に は 読 み が な を つ け 、 か た か な は 漢 字 に 改 め な さ い 。( 各 2 点 )
漢字の読み書きを含む、基礎的・基本的な言語能力をみようとしたものです。
次の
す 。「 衡 」 と い う 字 は 、 音 読 み で 「 こ う 」、 訓 読 み で 「 は か り 」「 は か ( る )」 と 読 み 、「 平
衡 」「 度 量 衡 」 な ど の 熟 語 を つ く り ま す 。「 均 衡 」 は 、 二 つ 以 上 の 物 ・ 事 の 間 に 、 つ り あ
いがとれていることを表す熟語です。
「 し ゅ ん び ん 」 と 読 み ま す 。「 俊 」 と い う 字 は 、「 俊 足 」「 俊 才 」 な ど の 熟 語 に 用 い ら れ
ま す 。「 敏 」 と い う 字 は 、「 敏 感 」「 敏 速 」 な ど の 熟 語 に 用 い ら れ ま す 。「 俊 敏 」 は 、 頭 が
よくて行動がすばやいことを表す熟語です。
「 さ と ( す )」 と 読 み ま す 。 音 読 み で 「 ゆ 」 と 読 み 、「 教 諭 」「 諭 旨 」 な ど の 熟 語 に 用 い
ら れ ま す 。「 お し え み ち び く 」 と い う 意 味 の 言 葉 で す 。
「 紅 潮 」と 書 き ま す 。
「 顔 に 血 が の ぼ っ て 赤 み を お び る こ と 」と い う 意 味 の 言 葉 で す 。
「潮 」
の音読みは「ちょう」です。
「 操 」 と 書 き ま す 。「 そ う 」 と 音 読 み す る と 、「 操 作 」「 体 操 」 な ど の 熟 語 を つ く り ま す 。
ま た 「 操 」 の 部 首 は 、「 て へ ん ( 手 偏 )」 で す 。
漢字の習得においては、音訓両方について、意味や用法を確認することが大切です。ま
た 、複 数 の 読 み 方 が あ る 漢 字 の 熟 語 の 意 味 を 調 べ る と 、語 句 の 理 解 が 深 ま り ま す 。さ ら に 、
漢 和 辞 典 等 を 使 い 、漢 字 が も つ 意 味 や 成 り 立 ち に も 興 味 を も っ て 学 習 す る と よ い で し ょ う 。
日ごろから漢字の筆順や点画などに注意しながら、文字を丁寧に書く習慣を身につける
部が連用修飾語になっているものを、ア~カの中から二つ選び、その記号を書きな
とともに、漢字を正しく用いることが大切です。
次の
てん し ばん
箱にも見つからなかったが、やがて、そのチョウはまだ展翅板にのっているかもしれない
されて、ヤママユガは展翅板に留められていた。ぼくはその上にかがんで、毛の生えた赤
エ
茶色の触角や、優雅で、果てしなく微妙な色をした羽の縁や、下羽の内側の縁にある細い
(ヘルマン・ヘッセ著
高 橋 健 二 訳 『 少 年 の 日 の 思 い 出 』 に よ る 。)
たか はし けん じ
羊毛のような毛などを、残らず間近から眺めた。
カ
問1
勢力の均衡を保つ。
俊敏な動きを見せる。
命の大切さを諭す。
興奮して頰をコウチョウさせる。
巧みに機械をアヤツる。
「 き ん こ う 」 と 読 み ま す 。「 均 」 と い う 字 は 、「 均 等 」「 平 均 」 な ど の 熟 語 に 用 い ら れ ま
【正答】と【解説】
問2
さ い 。( 3 点 )
イ
そしてすぐに、エーミールが収集をしまっている二つの 大 き な 箱を 手に取っ た。 ど ち ら の
ア
(5) (4) (3) (2) (1)
と思いついた。はたしてそこにあった。とび色のビロードの羽を細長い紙切れに張り伸ば
ウ
- 5 -
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
オ
【正答】
【解説】
ウ
と
カ
連用修飾語についての理解を問う問題です。連用修飾語は、用言(動作・作用・存在・性質・状
態などを表す言葉)を含む文節を修飾し、どのようにするのかをくわしくする修飾語です。また、
連体修飾語は、体言(事物や人などを表す言葉)を含む文節を修飾し、どんなことやものであるの
かを詳しくする修飾語です。ア~カのそれぞれの言葉が何を(どの言葉を・どの部分を)修飾して
いるのか(被修飾語)を探し、用言が含まれている文節を修飾しているものが正答となります。
ア の 「 大 き な 」 は 「 箱 を 」( 体 言 を 含 む 文 節 ) を 修 飾 し て い る の で 連 体 修 飾 語 で す 。
イ の 「 ど ち ら の 」 は 「 箱 に も 」( 体 言 を 含 む 文 節 ) を 修 飾 し て い る の で 連 体 修 飾 語 で す 。
ウ の 「 は た し て 」 は 「 あ っ た 」( 用 言 を 含 む 文 節 ) を 修 飾 し て い る の で 連 用 修 飾 語 で す 。
エ の 「 生 え た 」 は 「 触 角 や 」( 体 言 を 含 む 文 節 ) を 修 飾 し て い る の で 連 体 修 飾 語 で す 。
オ の「 羊 毛 の よ う な 」は「 毛 な ど を 」
( 体 言 を ふ く む 文 節 )を 修 飾 し て い る の で 連 体 修 飾 語 で す 。
カ の 「 残 ら ず 」 は 「 眺 め た 」( 用 言 を 含 む 文 節 ) を 修 飾 し て い る の で 、 連 用 修 飾 語 で す 。
したがって、正答はウとカになります。
文章の内容を理解するためには、それぞれの文の中での語句の役割や語句相互の関係に気をつけ
次の
豊富
出納
エ
雷鳴
部と同じ構成(成り立ち)になっている熟語を、あとのア~エの中から一つ選び、
て、文がどのように組み立てられているのかを理解することが大切です。
問3
イ
勝利に歓喜する。
匿名
イ
ウ
そ の 記 号 を 書 き な さ い 。( 3 点 )
ア
【正答】
【解説】
熟 語 の 構 成( 成 り 立 ち )に つ い て の 理 解 を 問 う 問 題 で す 。ア ~ エ の そ れ ぞ れ の 熟 語 の 構 成 を 考 え 、
例 文 の 「 歓 喜 」 と 熟 語 の 構 成 が 同 じ も の を 選 択 し ま す 。「 歓 喜 」 は 「 歓 」 と 「 喜 」 の 二 つ の 漢 字 が
似た意味をもつ語の組み合わせです。
アの「匿名」は「名をかくす」という意味で、あとの漢字が前の漢字の目的や対象を示している
語の組み合わせです。
イの「豊富」は二つの漢字が似た意味をもつ語の組み合わせです。
ウの「出納」は二つの漢字が反対の意味をもつ語の組み合わせです。
エの「雷鳴」は「雷が鳴る」のように前の漢字が主語、後の漢字が述語の関係をもつ語の組み合
わせです。したがって、正答はイになります。
- 6 -
問4
次の会話の空欄にあてはまる最も適切な敬語の表現を、あとのア~エの中から一つ選び、そ
ウ
おいでになる
エ
まいられる
) と 伝 え て お き ま す 。」
生 「 お う ち の 方 に 、 明 日 、 家 庭 訪 問 に う か が い ま す と 伝 え て く だ さ い 。」
うかがわれる
先
イ
徒「はい。明日、先生が(
ウ
おじゃまする
生
の 記 号 を 書 き な さ い 。( 3 点 )
ア
【正答】
【解説】
会話の中で敬語を適切に使うことができるかを問う問題です。会話の内容から、敬意の対象であ
る「先生」の「来る」という動作を適切に敬語(尊敬表現)にできるかがポイントになります。
ま ず ア の 「 お じ ゃ ま す る 」 は 、「 行 く 」 の 謙 譲 表 現 で あ り 、 適 切 で は あ り ま せ ん 。 次 に イ の 「 う
か が わ れ る 」 は 、「 行 く 」 の 謙 譲 表 現 「 う か が う 」 に 、「 ~ れ る 」 と い う 尊 敬 表 現 が 続 い た も の で
あ り 、 敬 語 表 現 と し て 適 切 で は あ り ま せ ん 。 次 に ウ の 「 お い で に な る 」 は 、「 来 る 」 の 尊 敬 表 現 で
あ り 、 適 切 で す 。 最 後 に 「 エ 」 の 「 ま い ら れ る 」 は 「 来 る 」 の 謙 譲 表 現 「 ま い る 」 に 、「 ~ れ る 」
という尊敬表現が続いたもので、敬語表現として適切ではありません。したがって、正答はウにな
ります。
敬語は、相手や周囲の人と自らとの人間関係・社会関係を形成したり、維持したりする働きがあ
次のことわざや慣用句、故事成語などに関する会話の空欄Ⅰにあてはまる内容として最も適
り ま す 。社 会 生 活 の 中 で 、相 手 や 場 面 に 応 じ て 、適 切 に 使 い 分 け る こ と が で き る よ う に し ま し ょ う 。
問5
切なものを、あとのア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。また、空欄Ⅱにあては
先
生
イ
Ⅰ
)』 と い う 意 味 だ と は じ め て 知 り ま し た 。」
落ち着きがない
る 』 と い う 意 味 で も 使 わ れ ま す 。」
遠慮がいらない
助長
ア
Ⅱ
Ⅰ
ウ
関係がない
Ⅱ
エ
は 、『 不 要 な 力 添 え
油断ができない
を し て 、 か え っ て 害 に な る 』 と い う 意 味 で す が 、『 力 を 添 え て 成 長 ・ 発 展 を 助 け
ら転じて、別の意味をもつ言葉もあります。例えば、
生 「『 気 が お け な い 』 は 『 気 の お け な い 』 と も い い ま す ね 。 一 方 で 、 本 来 の 意 味 か
ま し た が 、 正 し く は 『(
徒「私は『気がおけない』という言葉を『安心できない』という意味で理解してい
ま る 言 葉 を 漢 字 二 字 で 書 き な さ い 。( 3 点 )
ア
【正答】
【解説】
こ と わ ざ や 慣 用 句 、 故 事 成 語 に つ い て 理 解 を 問 う 問 題 で す 。「 気 が ( の ) お け な い 」 は 、 本 来 の
「 遠 慮 を す る 必 要 が な い 」 と い う 意 味 が 忘 れ ら れ 、「 油 断 が で き な い 」 や 「 安 心 で き な い 」 と い っ
た誤った意味で使われることが多くなった言葉です。したがって、正答はアになります。このほか
に も 、「 情 け は 人 の た め な ら ず 」「 役 不 足 」 な ど の 言 葉 が 誤 っ た 意 味 で 使 わ れ る こ と が あ り ま す 。
誤った使い方をすることによって、誤解や失礼を生むこともあるので注意しましょう。
- 7 -
一 方 で 、 本 来 の 意 味 か ら 転 じ て 複 数 の 意 味 を も つ 言 葉 も あ り ま す 。 助 長 と い う 言 葉 は 、「 不 要 な
力 添 え を し て 、 か え っ て 害 に な る 」 と い う 意 味 の ほ か に 、「 力 を 添 え て 成 長 ・ 発 展 を 助 け る 」 と い
う意味をもっています。
ことわざや慣用句、故事成語を学習することによって、先人の知恵や教訓、機知に触れることが
できます。言語感覚を豊かにするために、これらの言葉の意味を知り、実際の言語生活で正しく用
いることができるようにしましょう。
大問3
【出題のねらい】
説 明 的 な 文 章 を 理 解す る力 を み よ う と し た も ので す 。
本書は、進化生物学者である筆者が、ヒトがいつ、どこで生まれ、どのような進化を経て現在の
姿になったかを、自然人類学の最新の研究成果をふまえて説明したものです。資料文は、直立二足
は
せ がわ ま
り
こ
歩行を獲得したヒトが、社会関係を理解し、脳の前頭前野を拡大させることで過酷なサバンナの環
とありますが、ヒトが生活の場を森から平原に移した
中学生からの大学講義3』所収)です。
境の中を生き抜き、現在の繁栄を築いたことを述べています。出典は長谷川眞理子著「ヒトはなぜ
ヒトはもう一度地上に降りてきた。
①
ヒ ト に な っ た か 」(『 科 学 は 未 来 を ひ ら く
問1
理由について述べている段落(形式段落)を本文中から探し、その最初の五字を書き抜きなさ
では、なぜ
い 。( 4 点 )
【正答】
【解説】
段落とは、文章の中でまとまった内容を表しているひとくぎりをいいます。文字で書く場合、段
落の変わりめでは行を改め、最初の一字文を空けて書きます。この段落のことを形式段落(または
小段落)といいます。
ヒトが生活の場を森から平原に移した理由について、具体的に述べている記述を探します。する
と 、「 な ぜ 、 ヒ ト は 過 酷 な 平 原 ・ サ バ ン ナ に 進 出 し て い っ た の か 。」 と い う 問 い か け を し た う え で 、
地 球 上 の 森 林 の 減 少 に 触 れ 、「 環 境 変 化 の た め に サ バ ン ナ に 出 て 行 か ざ る を 得 な か っ た の が ヒ ト で
あ っ た 。」 と い う 記 述 が 見 つ か り ま す 。 こ の 部 分 を 含 む 段 落 ( 形 式 段 落 ) の 最 初 の 五 字 を 書 き 抜 き
ます。
- 8 -
問2
ヒトとほかの霊長類との決定的な違い
②
とありますが、筆者は、ヒトとほかの霊長類との決
定的な違いは、どのような点にあると考えていますか。次の空欄にあてはまる内容を、二十五
字 以 上 、 三 十 五 字 以 内 で 書 き な さ い 。( 6 点 )
ヒトは、足を
と
(例)完全に移動するための道具にすることで、手が自由に使えるようになった
いう点。
【正答】
(三十三字)
サバンナに適応し生き抜くための、ヒトの進化
③
とありますが、筆者が考えるサバンナにお
けるヒトの進化として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさ
ウ
イ
ア
水場から次の水場へと長距離の移動ができるようになった。
汗腺がほかの哺乳類同様に増え、汗を多くかくようになった。
地球上で進む乾燥や寒冷化に適応するために体毛が増えた。
頭上の木々の果実や葉っぱを食べるために歯を変化させた。
い 。( 4 点 )
エ
エ
記 述 は あ り ま せ ん 。 次 に ウ で す が 、 本 文 中 に 、「 私 た ち ヒ ト は 暑 さ で 汗 び っ し ょ り に な る が 、 こ う
す が 、 環 境 へ の 対 応 と し て ヒ ト は 体 毛 を 失 っ た 、 と 述 べ ら れ て い ま す が 、「 体 毛 が 増 え た 」 と い う
の変化は、ヒトが森林にいたときの進化であり、サバンナにおける進化ではありません。次にイで
せ 、 最 も 適 切 な も の を 選 び ま す 。 ま ず ア で す が 、「 頭 上 の 木 々 の 果 実 や 葉 っ ぱ を 食 べ る た め 」 の 歯
と「私たちヒトは…」の連続する二つの段落です。この二つ段落の記述と選択肢の内容を読み合わ
本 文 中 で 、 筆 者 の 考 え る サ バ ン ナ に お け る ヒ ト の 進 化 に つ い て 述 べ て い る の は 、「 森 林 か ら … 」
【解説】
【正答】
問3
これらの内容を、指示された文脈と字数でまとめます。
使えるようになった。
②ヒトの手の仕組みはほかの霊長類と変わらないが、移動に手を使うことがなくなり、自由に
① ヒ ト は 二 本 足 で 地 上 を 歩 行 す る こ と を 選 び 、足 を 完 全 に 移 動 す る た め の 道 具 に し て し ま っ た 。
リラやチンパンジーなどの類人猿との「決定的な違い」は、次の二つになります。
までしたのに…」と「人間の足は…」の連続する二つの段落です。この段落に示された、ヒトとゴ
本 文 中 で 、 筆 者 が 考 え る ヒ ト と ほ か の 霊 長 類 と の 決 定 的 な 違 い に つ い て 述 べ て い る の は 、「 そ う
【解説】
35
い う 哺 乳 類 は 実 は あ ま り い な い 。」 と あ り 、「 汗 腺 が ほ か の 哺 乳 類 同 様 に 増 え 」 た 、 と は い え ま せ
- 9 -
25
ん 。 最 後 に エ で す が 、 本 文 中 に 、「 水 場 か ら 水 場 へ 歩 い て 移 動 す る に も 長 距 離 を 移 動 し な く て は い
け な い 。」「 ヒ ト の 特 徴 の 一 つ と し て 、 長 距 離 移 動 が 可 能 で あ る こ と が 挙 げ ら れ る 。」「 こ れ も 汗 腺
と 同 じ よ う に 、 サ バ ン ナ に 適 応 し 生 き 抜 く た め の 、 ヒ ト の 進 化 で あ る 。」 と い う 記 述 が あ り 、 こ れ
ら か ら 、 筆 者 は 、「 水 場 か ら 次 の 水 場 へ と 長 距 離 の 移 動 が で き る 」 こ と を 、「 サ バ ン ナ に お け る ヒ
過酷な環境でヒトが編み出した、生き抜くために必要な進化
④
とありますが、次は、筆者が
トの進化」と考えていることがわかります。したがって、正答はエになります。
問4
考える過酷な環境を生き抜くためのヒトの進化について説明したものです。空欄にあてはまる
内 容 を 、共 同 作 業、 前 頭 前野の 二 つ の言 葉を 使 って 、 五十 五字 以上、 六十 五字以 内で 書き なさ
い 。 た だ し 、 二 つ の 言 葉 を 使 う 順 序 は 問 い ま せ ん 。( 6 点 )
を営むように進化した。
ヒトは、 二 足 歩 行 に 加 え 、 大 き な 脳 を 持 つ よ う に な っ た が 、 そ の 中 で も 、
【正答】
(例)自分を客観的に見る感覚を司り、物事の優先順位を決める機能を持つ前頭前野
が特に大きくなり、他人の心を読んで共同作業をし社会生活(六十二字)
このうち、②③④は大きくなった脳の中心である前頭前野の働き(機能)について、①⑤は社会
うになった、という進化の過程がわかるのである。
⑤…サバンナに出て環境に適応したヒトが、他人の心を読んで共同作業をし社会生活を営むよ
役割もある。
…目標を達成するために、次に何をしなければいけないかといった物事の優先順位を決める
④ 近 年 よ う や く 、 前 頭 前 野 は 、「 自 分 を 客 観 的 に 見 る 」 感 覚 を 司 っ て い る こ と が わ か っ た 。
大きくなっているのだ。
③…目の裏側の部分から頭のてっぺんにかけて、おでこ周辺にある前頭前野という部分が特に
である。
②人類は二足歩行に加え、大きな頭部を持つように進化したが、その頭部で特に大きいのが脳
①…目標のために役割分担し複数で共同作業をすることを知ったのである。
う言葉に着目しながら読み取ります。該当するのは、次の部分です。
筆 者 が 考 え る 過 酷 な 環 境 で 生 き 抜 く た め の ヒ ト の 進 化 に つ い て 、「 共 同 作 業 」「 前 頭 前 野 」 と い
【解説】
55
関 係 の 理 解( 社 会 生 活 の 成 立 )に つ い て 述 べ て い ま す 。こ の 二 点 に 触 れ な が ら 、示 さ れ た 文 脈 に 従 っ
て要旨をまとめます。
- 10 -
65
問5
本文に書かれている内容として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号
ヒトは、600万年前に類人猿から分かれた後、過酷なサバンナの生活環境に適応するた
くなった。
時点で一度急激に大きくなり、その後、現在のホモ・サピエンスが登場したときに再び大き
ヒトの脳は少しずつ大きくなったのではなく、チンパンジーと分かれて二足歩行を始めた
で現在の繁栄を築いた。
バンナの過酷な環境に適応し、さらに個々が果たすべき役割を意識した集団を形成すること
ヒトは、減少する森林にしがみつくことをせず、足を独自のかたちに進化させることでサ
瀕している。
ひん
料を安定して確保できるようになったが、二足歩行をしなかったため、現在は絶滅の危機に
ヒトがサバンナに進出していったとき、チンパンジーは森林にとどまることによって、食
を 書 き な さ い 。( 5 点 )
ア
イ
ウ
エ
めに、二本足で歩くように骨格を進化させ、また食料を確保するために、自然を利用した道
イ
具の製作を覚えた。
【正答】
【解説】
本文の記述と選択肢の内容を読み合わせ、最も適切なものを選びます。まずアですが、環境変
化 で 減 少 す る 森 林 に と ど ま る こ と は 、「 食 料 を 安 定 し て 確 保 で き る 」 と は い え ま せ ん 。 ま た 、 チ ン
パ ン ジ ー が 絶 滅 の 危 機 に 瀕 し て い る の は 、「 二 足 歩 行 を し な か っ た た め 」 で は あ り ま せ ん 。 次 に イ
おう か
で す が 、 現 在 の ヒ ト の 繁 栄 と 進 化 に つ い て 、 本 文 中 に 、「 現 在 、 世 界 中 至 る と こ ろ で 文 明 社 会 を 築
き 、 繁 栄 を 謳 歌 し て い る 」「 人 間 の 足 は 独 自 の か た ち で 進 化 を 続 け た 」「 環 境 変 化 の た め に サ バ ン
ナ に 出 て 行 か ざ る を 得 な か っ た 」「 自 分 と 相 手 の 果 た す べ き 役 割 を 理 解 し 、 目 標 達 成 の た め に 何 を
するかを考え、いっしょに行動する」などの記述があり、適切な内容です。次にウですが、ヒトの
脳 の 進 化 に つ い て 、 本 文 中 に 、「 サ バ ン ナ に 出 て 行 き 環 境 に 適 応 し た ホ モ 属 が 出 て き た 頃 か ら 、 一
度急激に大きくなる」とあり、急激に大きくなったのは「チンパンジーと分かれて二足歩行を始め
た時点」ではありません。最後にエですが、ヒトが600万年前に分かれたのはチンパンジーであ
り 、「 類 人 猿 」 で は あ り ま せ ん 。 ま た 、 二 本 足 で 歩 く よ う に な っ た の は 、「 森 で の 生 活 の 時 点 」 で
す。したがって、正答はイになります。
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大問4
【出題のねらい】
古 典を 理解す る基 本的な 力をみ よう とした もので す。 難しい 語句 にはそ の左側 に口 語訳を 付け、 理解
うき よ もの がた り
し やす いよう に配 慮しま した。 中秋 の名月 や、 月見の 会で披 露さ れる詩 歌の 作られ 方など の記 述から 、
ふかるるやうに
とありますが、この部分を「現代仮名遣い」に直し、ひらがなで書きなさ
古 典 に 表 れ た も の の 見 方 や 考 え 方 を 読 み 取 る 力 を み ま す 。 出 典は 『 浮 世 物 語 』 で す 。
問1
ふかるるように
い 。( 3 点 )
【正答】
【解説】
「歴史的仮名遣い」についての理解を問う問題です。中学一年生から繰り返し学んでいる学習内
容 で す 。 現 代 仮 名 遣 い と 異 な る 部 分 は い く つ か あ り ま す が 、 こ の 問 題 で は 、「 や う 」 を 「 よ う 」 に
改 め ま す 。 ほ か に も 、 語 中 ・ 語 尾 の 「 は 行 」 を 「 わ 行 」 に 改 め ま す が 、 こ の 問 題 で は 、「 ふ 」 は 語
とありますが、これはどのようなことを述べたものですか。
頭(語のはじめ)であるので、そのまま「ふ」と読みます。歴史的仮名遣いは音読を通して体感的
かねて作りける詩歌相違して
①
に身につけましょう。
問2
(例)ふさわしくなくなった(十字)
ということ。
月見 の 会 の た め に 前 も っ て 用 意 し て お い た 詩 歌 が 、 雨 が 降 っ た た め に 、 そ の 場 に
次 の 空 欄 に あ て は ま る 内 容 を 、 十 字 以 内 で 書 き な さ い 。( 3 点 )
【正答】
【解説】
「かねて作りける詩歌」が「相違」するとはどのようなことであるかを、本文の内容をふまえて
説明します。本文から、詩人・歌人たちは、満月(中秋の名月)を題材にした詩歌を「含み句」と
い
して用意したものの、予想外の雲と雨で月が隠れ、含み句と実景が異なってしまったことがわかり
ま す 。 ま た 、「 た だ 今 作 り し や う に も て な し 、 う め き す め き て 詠 み 出 だ す 。( そ の 場 で 作 っ た よ う
に と り つ く ろ っ て 、 苦 心 し う ん う ん 言 っ て 披 露 す る )」 と も あ り 、 実 景 と 異 な っ て し ま っ た 含 み 句
は、月見の会での披露にふさわしくないことが読み取れます。
こ れ ら か ら 、「 か ね て 作 り け る 詩 歌 相 違 し て 」 と は 、 前 も っ て 用 意 し て お い た 詩 歌 が 、 雨 が 降 っ
たために、その場にふさわしくなくなった、ということを述べていることになります。
- 12 -
問3
かくぞ詠みける。
②
うき よ ばう
じ せん り
とありますが、浮世房が詠んだ「雨ふれば三五夜中の真の闇二千里わた
ぐ やま
るくらかりの声」と同じ季節が詠まれている和歌として最も適切なものを、次のア~エの中か
ら 一 つ 選 び 、 そ の 記 号 を 書 き な さ い 。( 3 点 )
か
春過ぎて夏来たるらし白たへの 衣 干したり天の香具山
あめ
ア
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
ころ も
イ
人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
き
ウ
冬枯れの森の朽葉の霜の上に落ちたる月の影の寒けさ
イ
くち ば
エ
【正答】
【解説】
まず、浮世房が披露した和歌に詠まれた季節を読み取ります。本文から、この和歌が披露された
の は 、八 月 十 五 日( 三 五 夜 中 )の 月 見 の 会 で あ る こ と が わ か り ま す 。古 典 で は 現 代 と 暦 が 違 う の で 、
八月十五日の季節は秋になります。また、和歌の中には「くらかりの声」とあり、動物の「雁」が
詠まれています。雁は、本文中では「鴈」とも表現されていますが、秋の風物として『枕草子』の
「春はあけぼの」にも登場しています。これらから、浮世房が披露した和歌に詠まれた季節は、秋
であることがわかります。
次 に 、 そ れ ぞ れ の 選 択 肢 の 和 歌 で 詠 ま れ た 季 節 を み て み ま し ょ う 。 ま ず ア で す が 、「 春 過 ぎ て 夏
来 た る ら し 」 と あ り 、( 晩 春 か ら ) 初 夏 を 詠 ん だ も の で す 。 次 に イ で す が 、「 秋 来 ぬ 」 は 、 秋 が 来
た と い う 意 味 で あ り 、 秋 ( 立 秋 ) を 詠 ん だ も の で す 。 次 に ウ で す が 、「 花 ぞ 昔 の 香 に に ほ ひ け る 」
の 「 花 」 は 梅 の 花 で あ り 、 春 を 詠 ん だ も の で す 。 最 後 に エ で す が 、「 冬 枯 れ の 森 の 朽 葉 」 と あ り 、
冬を詠んだものです。したがって、正答はイになります。
かけ こ と ば
なお、浮世房の詠んだ和歌に出てくる「くらかりの声」には、二つの意味がかけられています。
かり
① 「 三 五 夜 中 の 真 の 闇 」 か ら 、「 暗 が り 」
② 「 鴈 の わ た る 声 」 か ら 、「 雁 ( 鴈 ) の 声 」
こ の よ う に 、一 つ の 語 に 二 つ の 同 音 の 語 の 意 味 を 重 ね る 技 法 を 、掛 詞 と い い ま す 。歌 人 た ち は 、
本文の内容について述べたものとして最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、そ
こうした技法を駆使して和歌の世界を豊かに表現しようとしたのです。
問4
がん
主君から和歌を詠むように催促された浮世房は、あれこれと悩み抜いたが、闇夜をわたる
悩んだふりをして和歌を披露した。
前もって鴈の声を題材にした和歌を用意していた浮世房だったが、月見の会ではいかにも
も主君の期待に応えた和歌を披露した。
八月十五日の月見の会に集まった歌詠みたちは、鴈の声を題材に和歌を詠んだが、浮世房
をまるい餅にたとえた和歌を披露した。
とりわけまんまるに満ちる八月十五日の月を餅月とも呼ぶが、浮世房は、月見の会で満月
の 記 号 を 書 き な さ い 。( 3 点 )
ア
イ
ウ
エ
エ
鴈の声をきっかけに和歌を披露した。
【正答】
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【解説】
本文の記述と選択肢の内容を読み合わせ、最も適切なものを選びます。まずアですが、浮世房
が披露した和歌に、満月を餅に例えた表現はありません。次にイですが、歌詠みたちは、満月を詠
あふ
んだ和歌を「含み句」として用意してきたと考えられますが、鴈の声を題材にした和歌は詠んでい
ま せ ん 。 次 に ウ で す が 、「 仰 の き う つ ぶ き 麦 穂 の 風 に ふ か る る や う に 案 じ 」 は 落 ち 着 き な く 考 え る
様子を表現しており、浮世房が前もって用意した和歌を悩んだふりをして披露したのではないこと
が わ か り ま す 。 最 後 に エ で す が 、 浮 世 房 が 、「 い か に い か に 」 と い う 主 人 の 催 促 に 対 し 、「 仰 の き
う つ ぶ き 麦 穂 の 風 に ふ か る る 」 よ う に 考 え 悩 み ま し た が 、「 鴈 の わ た る 声 」 を 聞 き 、「 ふ と 思 ひ よ
りて」和歌を詠んだと述べられており、適切な内容です。したがって、正答はエになります。
大問5
【出題のねらい】
「家庭ごみの減量」についての自分の考えを「家庭ごみの容積の割合」を示した資料から正確に
読み取った情報や自分の体験(見たこと聞いたことなども含む)を自分の考えの根拠として、段落
や構成に注意しながら書く力をみようとしたものです。
【解説】
すい こう
まずは、自分のものの見方や考え方を整理するために、作文の構成メモ(一例)を書きます。構
成メモなどをつくることで、文章の柱がぶれなくなります。また、見直しや推敲がしやすくなり
ます。
①「家庭ごみの減量」についての自分の考えを書きます。
②「家庭ごみの容積の割合」の資料から必要な情報を正確に読み取ります。①の自分の考えの
根拠になる情報を正 確に読み取ります。
③①の考えの根拠になる「家庭ごみの減量」についての自分の体験を書きます。
次に、右のメモの①~③を書く順番、段落や構成について考えます。
- 14 -
次 に 、( 注 意 ) に 従 い な が ら 、 記 述 に 入 り ま す 。 字 数 が 限 ら れ て い ま す の で 、 同 じ 内 容 や 言 葉 が
重複しないようにしましょう。自分の考えや意見を述べるときには、自分の立場を明確にして、
論理の筋道が通るように記述することが大切です。筋道を立てて書くと、自分の考えや意見を相
手に説得力をもって伝えることができます。具体的には、次の点に留意しましょう。
①自分の考えや意見、判断の根拠(理由)を明確にする。
②根拠(理由)は、客観性や信頼性の高いものを選ぶ。
③最初から最後まで、自分の立場がぶれない(自分の意見が揺れない)ようにする。
④資料(グラフなど)からの情報、本の内容や他から聞いた言葉などを含む場合は、適切に引
用する。
⑤論理の展開を工夫し、順序立ててわかりやすく説明する。
理由をあいまいにしたり、体験の内容が意見とずれていたり、途中で「どちらとも言えない」
と い う よ う に 立 場 が ぶ れ て し ま う と 、説 得 力 が 弱 い 文 章 と な っ て し ま い ま す 。意 見 ・ 根 拠( 理 由 )・
体 験 が 一 貫 し て い る こ と が 大 切 で す 。 ま た 、「 論 理 の 展 開 」 に つ い て は 、 初 め に 自 分 の 考 え や 意 見
」
を述べ、それを裏づける事実(体験)を述べたうえで、具体的な事実(体験)を一般化すると、
自 分 の 意 見 の 正 当 性 や 妥 当 性 を 示 す こ と が で き ま す 。他 の 人 の 言 葉 な ど を 引 用 す る と き に は 、
「
でくくったり、出典を明示すると、信頼性が高まります。記述に際しては、対象となる事柄を順
に 、「 原 稿 用 紙 の 正 し い 使 い 方 に 従 っ て 、 文 字 、 仮 名 遣 い も 正 確 に 書 く こ と 。」 と
序立ててわかりやすく説明しましょう。
また、注意
ありますが、句読点、符号、改行など、原稿用紙の使い方に従って文章を書き、書いた文章を推
敲する習慣を身につけることが大切です。普段から、文章を書く際に、学習した漢字を正しく用
いて丁寧に書く習慣を身につけるようにしましょう。
説得力のある文章を書くには、説明したい内容を端的に表す言葉や接続語などを適切に使える
ということも大切です。論理的な文章を読んだり、客観的な説明を聞いたりする学習活動を大切
にしましょう。答案の中には、話し言葉をそのまま書いたり、文末表現に常体と敬体が混じった
りしているものがありました。相手や目的に応じた、適切な表現を心がけましょう。そのために
は、日ごろから、読み手を意識して、わかりやすい文章にすることが大切です。また、書き上げ
たあとには必ず読み返して、自分の文章を確認しましょう。
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