詳細はこちら - 大阪大学工学部/大学院工学研究科

平成 28 年 7 月 1 日
然科学系 キーワード:ハイ
キ
イパワーレーザ
ザー・鉄・相転
転移・地球深部
部・高エネル
ルギー密度
分野:自然
パワーレーザ
ザーの超
超高圧力
力下で、鉄原子
子配列が
が高速変
変化!
-夢の技術“惑星深部環境を地上
上で利用した
た「物質・材料
料工場」”実
実現に近づ
づく本研究成
成果のポイン
ント
● パワーレー
ーザーで地球
球の核※1 に相当する超高圧
圧状態を生成
成し、鉄原子配
配列の高速変
変化の観察に
に成功
●
これまで、
、超高圧構造
造変化にかかわる原子の運
運動の速さに関する知見は
はほとんどなか
かったが、パワ
ワーレーザーシ
ョック超高
高圧法※2と X 線分光技術を応用した独
独自の X 線回
回折イメージン
ング※3によって
て実証。
● これまで実
実現されていな
なかった極端
端・極限条件下
下での、新物質、新構造、新物性などの
の発見に期待
待。
概要
大阪大学大
大学院工学研
研究科の尾崎
崎典雅准教授
授、
兒玉了祐教授
兒
授らと、仏エ コールポリテ
テクニークの A.
Denoeud 博士
士ならびに仏国
国立科学研究
究センターの A.
Benuzzi-Mounnaix 博士らを
を中心とする日
日仏英の研究
究グ
ループは、大阪
ル
阪大学レーザ
ザーエネルギー
ー学研究セン
ンタ
ーのハイパワー
ー
ーレーザー激光 XII 号※4およびエコール
お
ルポ
リテクニーク LULI 研究所の
の LULI2000 レーザーを用
用い
て、地球の核に
て
にも相当する
るような超高圧
圧状態を生成
成し、
超高圧環境下
超
下で鉄の結晶
晶構造※5が高速に大きく変
変化
することを初め
す
めて実証しまし
した。
鉄は、人類
類にとって非常
常に馴染みの深い金属で、
、こ
れまで最も調べ
れ
べられてきた
たと言っても過
過言ではありま
ませ
んが、その超高
ん
高圧下の振る
る舞いには未だ多くの謎が
が残
されています(
さ
(図1)。特に 、ダイナミック
クな超高圧下
下の
構造変化その
構
のものを直接見
見ることはこれ
れまで極めて
て困
難でしたが、本
難
本研究グルー
ープはパワーレ
レーザーショッ
ック
超高圧法と
超
X 線分光技術
術を応用した独
独自の X 線回
回折
※6
イメージングに
イ
によって直接観
観察し、200 万気圧
万
に迫
迫る
超高圧下でそ
超
その構造を明ら
らかにすること
とに成功しまし
した
図1 鉄の相関係を表
鉄
表す模式図。
実線は
は既に調べられている相間の境
境界を表す。ピン
ンクの囲まれ
た円部
部分が、今回のレ
レーザー実験で
で構造変化を直
直接観察した
超高圧
圧領域であり、α
α相から ε 相 への変化の速さ
さが証明され
た。波線と「?マーク」の領域は未踏
踏領域であり、今
今後パワーレ
ーザー
ーで調べられていくことが期待 される。α相と
とδ相は体心
立法構
構造、γ相は面心立法構造、ε
ε相は六方細密
密構造。
(図2)。
高温域の惑星
星深部環境において様々な
な物質構造を
を生成し、調べ
べられることが
が証明された
たことから、物質
質
超高圧超高
科学や惑星科
科
科学の世界に新たな可能性
性が開かれる
るとともに、パワ
ワーレーザーを用いた極短
短時間の超高
高圧法で、新物
物
質や新構造、
質
を発現させる、
、いわば「惑星
星深部環境を
を利用した物質工場」のよ
ような夢のある
る応用が期待
待さ
新物性などを
れます。
れ
果は、平成 28
8 年 6 月 28 日(火)午前 4 時(日本時間)に米国科
科学アカデミー
ー紀要 PNAS 誌掲載に先ん
本研究成果
じてオンライン
じ
ンにて公開され
れました。
研究の背
背景
物質に圧力
力をかけると原
原子の配列に
に変化が起こ り、結晶の
構造が変化す
構
することは古くから知られて
ていました。しか
かしながら、
結晶における
結
集団的な原子の運動の`速
速さ`に関す
このような集
る知見はこれま
る
までほとんど得
得られていませんでした。
鉄は、日常的に利用され
れ、地球の核を構成してい
いることなど
から、非常に馴
か
馴染みが深く
く、これまで最
最も調べられて
てきたと言
っても過言では
っ
はないのですが、やはりその
のダイナミック
クな極限環
境下の振る舞
境
舞いには多くの
の謎が残され
れていました。 とりわけ、
100 万気圧を
を超える、地球
球の核をも超え
えるような超高
高圧力でど
のような構造を
の
を持つのか、ま
またその構造
造の変化がどの
のような速
度で起こるのか
度
かは全くの未知
知の領域にな
なっています。
本研究成
成果が社会
会に与える影
影響
200 万気圧
圧にも迫るダイ
イナミックな超
超高圧の極限
限環境にお
いて物質の構
い
造を変化させ
せられること、そして調べら
られることが
証明されたため
証
め、地球の深
深部だけでなく
く、相次いで発
発見される
太陽系外の惑
太
惑星内部※8 で物質がどのよ
で
ような構造を しているか
を調べる方法
を
が確立された
たと言えます。
パワーレーザー
ーというツール
ルを用いたナ
ナノ秒(10-9
さらには、パ
秒)やピコ秒(1
秒
10-12 秒)※9といった極短時
と
時間の超高圧
圧環境で、
図 2 上は、独
独自のフラッシュ
ュ X 線※7 回折イメージング部
の実験配置模
模式図。下は、 この計測装置を
を含むハイパワ
ーレーザー照
照射前の真空容
容器内部の写真
真。直径 2m 程
の容器の中心
心に数 mm のター
ーゲットを正確に配置し、レー
ザーを集光、高圧現象を詳
詳細に観察する。
。
新物質や新構
新
構造、新物性などを発見し
したり発現させ
せたりする、
いわば「惑星深
い
深部環境を利
利用した物質・
・材料工場」の
のような夢のあ
ある応用が期
期待されます。
特記事項
項
本研究成果
果は平成 28
8 年 6 月 28
2 日(火)午
午前 4 時(日
日本時間)に
に米国の科学
学アカデミー刊
刊行の学術誌
誌
my of Scienc e of the Unitted States of America)で
でオンライン公
公開されました
た。
PNAS(Proceedings of National Academ
題名:「Dynam
題
mic X-ray diffraction observation of sshocked solid
d iron up to 170 GPa」
邦訳:「170
邦
万
万気圧までショ
ョック圧縮され
れた鉄の動的
的 X 線回折観
観察」
著者:Adrien
著
D
Denoeud, Norrimasa Ozaki, Alessandraa Benuzzi-Mo
ounaix, Hiroyuki Uranishi, Yoshihiko Ko
ondo, Ryosuk
ke
Kodama,
K
Erik Brambrink, Alessandra
A
Ra
avasio, Maim ouna Bocoum
m, Jean-Mich
hel Boudennee, Marion Harm
mand, Franço
ois
Guyot,
G
Stephaane Mazevett, David Riley
y, Mikako Ma kita, Takayo
oshi Sano, Yo
ouichi Sakaw
wa, Yuichi Inubushi, Gianlucca
Gregori,
G
Micheel Koenig, annd Guillaume Morard
本研究成果は、日本学術
術振興会の研
研究拠点形成
成事業「X 線自
自由電子レーザーとパワー レーザーによ
よる極限物質科
科
学国際アライア
学
アンス」、文部
部科学省委託
託事業の X 線
線自由電子レー
ーザー重点戦
戦略研究課題
題「XFEL とパワ
ワーレーザーに
よる新極限物
よ
質材料の探索
索」、および大
大阪大学国際
際共同研究促
促進プログラム
ム 日仏連携 「光・量子ビー
ーム技術によ
よる
高エネルギー
高
密度物質探査
査に関する日
日仏連携研究
究」に基づくもの
のです。
究成果は、フラ
ランス国立科学
学研究センタ ーからもプレス
スリリースされ
れる予定です。
。
また本研究
用語解説
説
*1 地球
球の核
地球の中
中心部(核)は、薄い地殻と
と厚いマントル に覆われ、液
液体と固体の鉄
鉄合金からな
なる 2 層構造と考えられてい
ます。地表
表から約 300
00 km 以上の
の深部であり、
、核の中心は
は約 350 万気
気圧にも達しま
ます。
ーレーザーショック超高圧法
*2 パワー
パワーレー
ーザーを集光
光照射すると、
、物質の表面
面が瞬時に蒸発し爆発的に
に膨張します。
。この膨張の反作用として
て、
物質その
のものがロケットトのように推進
進力を得ます
す。この推進力
力で加速される
る物質の速度
度が音速の領
領域を超えると
と、
物質内部
部に衝撃波(シ
ショック)が駆動
動され超高圧
圧が生成されます。
*3 回折
折イメージング
原子が周
周期的に並んで
でいる物質に
に X 線を入射
射させると、X線の波長と入
入射角に依存
存した位置に強
強いX線の散乱
乱
が観測されます。この現象をX線回
回折といい、こ
この X 線の回
回折パターンを
を記録(イメー ジング)するこ
ことで物質内部
部
の並び方を決定
定することがで
できます。
の原子の
パワーレーザー
ー激光 XII 号
*4 ハイパ
大阪大学
学が所有し、日
日本で稼働す
する唯一の大型
型レーザーで
です。宇宙物理
理や惑星科学
学、極限物質
質科学、核融合
合
科学、そしてこれらを含
含む分野横断
断的学問であ
ある高エネルギー密度科学
学がこのレー ザーを用いて
て展開されてい
ます。
*5 結晶構造
変えます。物
圧力と温度に応
応じて固体や
や液体に姿を変
物質固有の凝固点を下回る
ると、多くの物
物質において原
原
物質は圧
子が秩序
序的に並んだ結
結晶構造が現
現れることが知
知られています
す。
*6 200 万気圧
暮らす地表は
は 1 気圧の圧
圧力です。マリ
リアナ海溝の超
超深海が約 1000
1
気圧、地
地球の中心が
が 350 万気圧
圧
私たちの暮
程度とされ
れています。
*7 フラッ
ッシュ X 線
計測器も
もしくは計測法
法に対して十分
分に短い時間 で発光させる
る X 線光源の
のことです。
陽系外惑星
*8 太陽
太陽系の
の外にある惑星
星。観測技術
術の進歩により
り、1990 年代
代以降、1000
0 以上の系外
外惑星が見つかっています
す。
*9 ナノ秒
秒(10-9 秒)お
およびピコ秒(10-12 秒)
一秒間に
に地球を 7 周半
半できる光が
が、1 ナノ秒だと
と約 30 センチ
チ、1 ピコ秒だ
だとさらにその 1/1000 しか
か進めない非常
常
に短い時
時間です。この
の極めて短い時
時間の中にエ
エネルギーを集
集中するので
で、トータルで
では非常に小さ
さいエネルギー
ー
で前人未
未到の超高圧を生成するこ
ことができます
す。