「 桃 太 郎 ピ ー ス 」

農業
列
産地 島
ルポ
た
ろう
やつしろのトマト栽培
熊 本 県 八 代 市。 メ ロ ン と ト マ ト の ハ
ウ ス 栽 培 で 名 高 い、 九 州 屈 指 の 農 業 地
帯 で す。 特 に 八 代 海 に 向 か っ て 広 が る
干 拓 地 に は、 区 画 に 合 わ せ て 奥 行 1 0
の ハ ウ ス 群 が 立 ち 並 び、 壮 観 な 八
・
八代市
JAやつしろ
(編集部)
と れ て い る と 評 価 が 高 く、 主 力 品 種 と
し て 定 着 し て き ま し た。
TYLCV 耐 病 性 ト マ ト
桃太郎ピースの栽培特性
も少なかったことから導入されること
千 代 永 さ ん は、 前 作 で 「桃 太 郎 ピ ー
ス」 が、 肥 大 の よ さ と 収 量 の 落 ち 込 み
代 の 風 景 を 作 っ て い ま す。
は、 今 期 初 め て 作 付 け さ れ た ハ ウ ス で
0
八 代 全 域 で は、 4 5 0 を 超 え る 栽
培 面 積 も あ る ト マ ト 栽 培。 J A や つ し
す。 準 備 が 遅 れ た 関 係 で
月3日の定
に な り ま し た。 案 内 い た だ い た ハ ウ ス
ろ管内で4エリアに生産者の所属が分
か れ て い ま す。 八 代 地 域 農 業 協 同 組 合
植 と な り、 2 月 下 旬 で 5 ~ 6 段 収 穫 の
培 さ れ る 千 代 永 博 昭 さ ん で す。 千 代 永
を抑制長期で栽
のは、「桃太郎ピース」
‌の栽培面積を占めています。同セ
ンター上田誠指導員に紹介いただいた
復 が 見 込 ま れ て い ま し た。
で し た が、 気 温 上 昇 に 伴 っ て 収 量 の 回
永さんのハウスも一休みといった状態
果 ラ イ ン を も つ 南 部 館 と、 管 内 最 大
の 栽 培 面 積 を も つ 中 央 館 (8 レ
が 太 く て 馬 力 が あ る の で、 春 先 か ら 力
は 小 葉 で 日 差 し も 当 た り や す く、 早 生
を 発 揮 し て く れ る と い う の で す。 草 姿
ー ン) を 管 理 ・ 運 営 す る 責 任 者 で す。
だ と 言 い ま す。
で生育が早く色回りがいいことが利点
千 代 永 さ ん が 使 う 品 種 の 一 つ 「桃 太
郎 ピ ー ス」 は、 黄 化 葉 巻 病 耐 病 性 品 種
「技 術 の あ る や つ し ろ の 生 産 者 は 桃 太
00
1
の 中 で、 収 量 面 と 品 質 面 で バ ラ ン ス が
ha
ま し た。 取 材 で お 伺 い し た 2 月 は 千 代
さ ん は、 2 5 0 名 が 登 録 す る ト マ ト 機
83
千代永さんは、「桃太郎ピース」
につ
い て 回 復 が 早 い 品 種 だ と い い ま す。 茎
南 部 営 農 セ ン タ ー は、 生 産 者
状 態。 年 内 の 収 量 は 順 調 に 推 移 し て い
ha
械 利 用 組 合 の 組 合 長 で、 5 レ ー ン の 選
50
ha
熊本県
長崎県
m
名、 約
10
食味と肥大力のある
もも
・
熊本市
「桃太郎ピース」で産地の主力を担う
熊本県 マト
JA
機械利 やつしろ
用組合
ト
13
2016 タキイ最前線 秋種特集号 を の ぞ か せ ま し た。
と、 馬 力 と 肥 大 の よ さ を 生 か せ る 自 信
郎 ピ ー ス を 作 り こ な せ る と 思 い ま す」
年 内 の 平 均 糖 度 は 5 ・ 5 度、 M ~ 3 L
で あ る こ と で す。 選 果 場 の デ ー タ で は、
TY品種の中では、際立って「良食味」
%。 大
サイズ分布が
と「チッソ過多」だと考えられ、特に育
意 が 必 要 で し た。 そ の 原 因 は、
「暑 さ」
に比例して花落ちが大きくなる点は注
寒 期 の 肥 大 力 が あ り ま す。 但 し、 肥 大
えてきました。「桃太郎ピース」は、厳
つつ越冬しなければならない作型が増
ト 長 期 作 が 増 え る 中、 高 温 期 に 定 植 し
き た と い い ま す。 や つ し ろ で は、 ト マ
分の経営を顧みながら、「これ以上、面
そ の た め の 投 資 で す。 千 代 永 さ ん も 自
平 成 年 以 来、 選 果 場 の 機 械 や 光 セ
ン サ ー、 カ メ ラ セ ン サ ー の 導 入 な ど も
持 し て い か な け れ ば な り ま せ ん」
に 加 え 品 質 を 追 求 し、 産 地 の 信 頼 を 維
の 世 代 に 引 き 継 い で い く た め に は、 量
や つ し ろ は 後 継 者 の 多 い 産 地 で す。
千代永さんは産地の存続について、「次
わ か っ て き ま し た。
格 差 を つ け て い け れ ば」 と 分 析 さ れ て
界。 品 質 を 上 げ て 単 価 を 上 げ て い く し
かない。“味”でリピーターを掴み、価
ま た、 馬 力 を 生 か す た め の 草 勢 管 理
も 大 切 で す。 3 ~ 4 果 の 摘 果 を 基 準 に、
やつしろでは一人平均栽培面積が
aは多
過ぎないで余裕をもたせた作りが望ま
ま す。 や つ し ろ 全 体 で は、 ト マ ト の 栽
い 部 類 で す。 単 収 は 上 限 に 近 づ い て い
a 程 度。 全 国 的 に 見 れ ば
し い と い い ま す。 温 度 が 上 が ら な い 冬
培 面 積 は 増 え 続 け て い ま す が、 受 け 皿
~
場 は、 着 果 数 を 控 え て 草 勢 を 維 持 す れ
だ さ い ま し た。 前 組 合 長 か ら 継 承 し た
向ではないかと千代永さんは話してく
質」に力を入れ「単価」を上げていく方
と な る 選 果 場 に も 限 界 が あ り ま す。 今
責任産地として「品質」と
「収量」のバランスを
ば、 春 先 の 回 復 が 早 く、 後 半 に 備 え ら
ス」 は 馬 力 を 生 か し な が ら、 強 勢 に し
60
後は冬春トマトの責任産地として、「品
60
す る こ と が 望 ま れ ま す。 「桃 太 郎 ピ ー
い ま す。
苗期と春先
積を増やしても経費がかかるだけで限
玉 傾 向 で 出 荷 量 も 順 調 で し た。
%、 秀 優 等 級
南部営農センター指導係の上田さん
は、 管 内 で 2 年 目 を 迎 え た 「桃 太 郎 ピ
54
月の高温対策が重要だと
ー ス」 に つ い て、 栽 培 の コ ツ が 掴 め て
88
栄養生長と生殖生長のバランスを維持
25
れ る そ う で す。
70
奥様の由美子さん。
「桃太郎ピー
ス」
は裂果が少なく割れないので
収穫も楽だと笑顔でピースサイン。
千代永さんは7連棟ハウスを6カ
所で栽培。選果場の完成を機にト
マト専作に。
「トマトは肥料やって、
水やって、温度管理して…、あれ
これやっても思った通りならない
ところが面白い」
と、36年目のベテ
ラン。
JAやつしろは後継者が多い
魅力ある産地。高糖度トマト
の香港出荷など今後の取り組
みも模索されている。
4
「桃太郎ピース」の魅力は、肥大性が
「品質重視」の姿勢で今後も取り組んで
あ り 2 L 〜 3 L の 大 玉 比 率 が 高 い こ と。 い き た い と の こ と で し た。
14 2016 タキイ最前線 秋種特集号
台木は
「グリーンセーブ」
が増加傾向。コントロー
ルしやすく栽培も安定し
「JAでもすすめやすい」
と当地に適していると評価。
選果場で出荷される
「桃太郎ピース」
を手にする南部営
農センターの上田さん。糖度や等級分布などすべてデ
ータで把握できる南部営農センターの選果場では、
「品
質」
と
「等級」
分布を数値で管理。早生で大玉の
「桃太郎
ピース」
は、JAとしても魅力的な品種だと評価。
「桃太郎ピース」
は馬力があるので、
収穫のメリハリが出過ぎないよう、
3~4果の摘果で余裕をもった草勢
管理を行っていく。
千代永さんは
「桃太郎ピース」
について、
「水分の多い圃場向
き。うまく作れば稼いでくれ
る」
とポテンシャルを認めてい
る。葉先枯れの発生も気温を
保つことで解決。
■九州熊本地方を中心に発生した地震で、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。