DOI: 10.3179/jjmu. JJMU.T.1 ◇ TUTORIAL シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか ◇ 実験で使用する超音波の特徴を知ろう -その 1 - 音響照射量をどう報告するか 内藤 みわ 超音波生体作用の論文は一般的に難しいといわれ 超音波生体作用の研究は一切できないのでしょう ます.何故でしょうか? か?いいえ.そんなことはありません.The British 超音波が原因で生体に何らかの作用を起こすこと Medical Ultrasound Society(BMUS,英国超音波医 をきちんと立証するためには,生体の関心領域に照 学会)の安全委員会は,生体作用論文での音響照射 射した超音波の質や量を正確に見積もる必要があり 量の報告に関して 4 種類のレベルを定義しました1). ます.ところが,診断や治療に用いられる超音波は これらは,論文の目的に応じて許容できるレベルと 質(周波数・パルス形状・ビーム形状など)や量 いうことです.例えば研究の目的が所定の生体作用 (トータルパワー・音圧・強度)が様々です.さらに, が超音波照射量と相関する(または,相関しない) 一つの超音波ビームでも空間的な分布を持つため, ことを証明することであれば,音響出力を実測する 位置によって音圧の大きさが変化しますし,生体組 レベル 2 以上が求められますが,予備的な研究であ 織内での反射・散乱・減衰も考慮に入れる必要があ れば,画面上に表示される指標だけを引用するレベ ります. ル 1 でも許容できるとしています. では, 超音波出力を測定する手段を持たなければ, 1) Table 1 4 つの照射量レベルの定義(BMUS) レベル 0 音響出力情報はなし,または,装置取扱説明書からの最大出力値のみ 1 画面に表示される値のみ(TI,MI 指標値など) 2 音響出力を実測して,トータルパワー,音場の負音圧最大値・空間ピーク時間平均強度(およびそれが起こる振動子の位置) 音響周波数,パルス繰返し周波数,パルス持続時間(または音響サイクルの数) 測定に用いたハイドロホンおよび測定システムの説明 3 レベル 2 に加えて,最大負音圧または時間平均強度の関心領域・関心体積における空間的な変化のグラフを少なくとも 3 つ の直交軸に沿って与え,そのうちの一つは超音波ビームの伝搬方向であること ではまず,超音波診断装置について Table 1 のレ プローブ毎モード毎の指標の最大値とその条件の表 ベルをひとつひとつ見ていきましょう. を添付することになっています.TI は,臨床での 超音波診断装置の場合,超音波診断装置安全性個 検査を想定した生体組織モデルとして,軟部組織の 別規格 JIS T 0601︲2︲37 に音響出力の表示に関する サーマルインデックス TIS,骨のサーマルインデッ 2) 要求が規定されています .具体的には,超音波に クス TIB,頭蓋骨のサーマルインデックス TIC の 3 よる熱的作用の安全性を評価する指標サーマルイン 種類があります.これらの指標については,超音波 デックス TI および,超音波による非熱的作用の安 医学会ホームページの「超音波診断装置の安全性に 全性を評価する指標メカニカルインデックス MI を 関する資料」に詳しく説明してあります. リアルタイムで装置画面上に表示し,取扱説明書に レベル 0 では使用する装置の取扱説明書に記載さ Miwa NAITO Characterize ultrasound exposure used for experiments Part 1. How to report ultrasound exposure conditions 株式会社日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット 第一製品開発本部 Hitachi, Ltd., Healthcare Ultrasound R&D Center, 3︲1︲1, Higashikoigakubo, Kokubunji-shi, Tokyo 185︲0014, Japan Received on March 11, 2016; Accepted on April 21, 2016 J-STAGE. Advanced published. date: June 23, 2016 Jpn J Med Ultrasonics
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