減災都市 多賀城 多賀城市長 菊地 健次郎 1.被災状況と震災からの復興状況全般 多賀城市の被災状況についてですが、最大震度5強、市域の3分の1(662ha 90% が市街地)が津波による被害を受けた。 住宅の被災状況としては全壊1,746件、大規模半壊1,634件、半壊2,096 件、一部損壊をあわせると全体で11,000戸以上を数え、最大浸水深 4.6m、市 内死者数 188名、仮設への避難者 1,400世帯、流入物推計 約8,500台の 自動車が市街地へ流入し、がれき推計 35.3万トンにもなり、甚大な被害を被った。 復旧状況としては、平成23年6月までに電気、都市ガス、水道が全域復旧、平成25 年3月に全域下水道が復旧、また公共施設(道路、学校、被災した雨水管・汚水管など) についても復旧工事が完了している。 多賀城市の復興事業としては、市内4箇所に災害公営住宅を建設し、平成28年3月に は482戸の住宅が完成し、残りの50戸の災害公営住宅を建設中である。 また、宮内地区土地区画整理事業、津波復興拠点整備事業(工事施工中。企業誘致状況: 面積率77%) 、緊急避難路整備事業(笠神八幡線、清水沢多賀城線) 、緊急避難路整備事 業(橋梁耐震化 全4橋の耐震化工事完了)雨水対策事業(浸水対策下水整備事業、内水 排除困難地域側溝整備事業)等の復興事業に着手している。 2.復興の取組の中で、防災・まちづくりが進んだ事例、また、このうち震災前からの取 組が効果を発揮したもの まちづくりが進んだ事例としては、災害公営住宅に入居した住民のコミュニティ形成に 寄与するためコミュニティ支援事業を展開し、支援を行っている。 防災の状況としては、震災の記録・記憶を伝承するアーカイブ事業、防災教育(小中学 校向けの防災副読本の作成、地域単位での防災教育の実施) 、地域防災計画を全面的に見直 し、津波対策等を追加した。毎年総合防災訓練を開催し、津波避難ビルの協定締結を行い、 自主防災組織が全自治会に設立、防災手帳及びハザードマップを全戸配布するなど防災に 関する意識醸成し、次の災害に対する備えを進めている。 3.震災前からの防災に関する取組が十分ではなかったと感じている事例、またこれを踏 まえて改善した点又は今後改善が必要と考えている点 貞観地震の時に内陸部まで津波が襲来し、大きな被害を被った歴史が残っているにもか かわらず、津波から逃げる意識が浸透していなかったということは、やはり、経験の伝承 が十分でなかったものと思われる。このことを反省し、防災教育や情報発信等を通し、東 日本大震災における教訓を積極的に、後世に語り継いでいかなければならないと考えてい る。 4.次の災害に備えた提言・メッセージ 平成25年に災害に備え、災害による被害を極力減じ、迅速に復旧復興するまちを目指 し、 「減災都市宣言」を発表し、減災都市戦略を推進している。 戦略の目的としては、災害に対する安全性向上、地域経済活性化、住みやすさ向上、ま ちの活力向上の相互作用により、命が守られ・災害に備え・被害を減じ・早期に回復する ことを目指している。 戦略1 津波対策・多重防御戦略 内容)防潮提の整備や緊急避難路等の整備を進め、現地再建を支える礎として、大津 波による被害を軽減させるための施設・仕組みを構築する。 戦略2 地震に強いまちづくり戦略 内容)市内の道路、橋梁等の耐震化を行い、木造建築物の耐震化を促進する。 戦略3 雨水浸水被害軽減戦略 内容)雨水幹線整備、雨水ポンプ場・増設、内水排除困難地域側溝整備等をとおし、 大雨による浸水被害を軽減する。 戦略4 災害体制確立戦略 内容)避難所のマニュアル整備、防災備蓄倉庫の整備等を行い、災害発生時の救助、 避難、復旧などの実施体制を確立する。 戦略5 自助力強化戦略 内容)防災・減災講座の実施、津波ハザードマップ作成をとおし、災害に対する自助 としての備えを強化する。 戦略6 地域防災力・減災力向上戦略 内容)地域防災訓練実施等をとおし、共助としての地域の防災・減災力を高める。 戦略7 震災経験伝承戦略 内容)防災・減災アーカイブス「たがじょう見聞憶」を開設し、記憶や教訓の伝承に 努め、平成26年度からは、災害による被害を最小限のものとする「減災」につ いて、多くの方と話し合い、考え、発信し、未来へ伝えるきっかけとするため、 減災市民会議を毎年開催している。 戦略8 減災リサーチパーク構想戦略 内容)企業・大学等との連携を強化し、災害による被害を軽減させる様々な技術・製品 を集積・創出する。
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