本年の株主総会を迎えるにあたって

第52号(2016年4月発行)
本年の株主総会を迎えるにあたって
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次>
本年の株主総会を迎えるにあたって
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コラム-ワンポイント会社法実務(第 47 回) ……………… 8
※本ファイルは、内容を抜粋して掲載しております。
証券代行コンサルティング部
証券代行ニュース第 52 号(2016 年 4 月)
本年の株主総 会を 迎えるに あたって
【本紙の内容】
本年株主総会を迎えるにあたっては、法令遵守に重きを置くことは当然のこととし
て、さらに、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます)を
踏まえた対応等が求められることになります。一方で、CGコードと車の両輪といわ
れるスチュワードシップ・コードを、より一層意識した対応が求められる場合がある
ものと思われます。
本稿では、それらの中でも、招集通知作成にあたって昨年5月1日に改正された会
社 法 施 行 規 則 の 経 過 措 置 に 関 連 し 、本 年 初 め て の 適 用 と な る 事 項 を 解 説 す る と と も に 、
CGコードの招集通知への影響なども概観することといたします。
1.会社法施行規則の改正に伴う株主総会招集通知への影響
(1)経過措置
昨年5月1日により会社法施行規則が改正されました。改正後の会社法施行規則
は、同日以後に末日が到来した事業年度に係る定時株主総会(具体的には昨年8月
開催)の招集通知から全面的に適用されています。本年の招集通知の作成にあたっ
ては、改正後の会社法施行規則の適用に係る経過措置を再確認し、新たに適用され
る事項を把握する必要があります。
(2)株主総会参考書類
3月決算会社における昨年の定時株主総会に関連して、同年5月1日以後に招集
の手続が開始されたものに係る株主総会参考書類の記載は、一部を除き、改正後の
会社法施行規則の規定が適用されました(会社法施行規則等の一部を改正する省令
( 平 成 27 年 法 務 省 令 第 6 号 、以 下「 改 正 省 令 」と い い ま す )附 則 2 条 2 項・5 項 )。
当 該 一 部 と は 、同 規 則 74 条 3 項 、76 条 3 項 お よ び 77 条 8 号 の 規 定 と な り ま す が 、
いずれも会社の経営を支配しているオーナーを意識したものですので、3月決算会
社において、新たに適用される事項は限定的です。なお、昨年5月1日の会社法改
正に伴い、社外取締役・社外監査役の要件につき厳格化されている部分(会社法 2
条 15 号 ・ 16 号 ) が あ り ま す 。 そ の 適 用 に 係 る 経 過 措 置 は 、 昨 年 5 月 1 日 後 最 初 に
終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとなっていますので(改正
省令附則 4 条)、留意を要します。
また、監査等委員会設置会社に移行している場合、監査等委員である取締役以外
の 取 締 役 の 選 任 議 案 に 関 連 し 、株 主 総 会 で 述 べ る こ と と な る 監 査 等 委 員 会 の 意 見( 会
社 法 342 条 の 2 第 4 項 )が あ る と き は 、そ の 意 見 の 内 容 の 概 要 を 記 載 す る こ と に な
(注)無断転写を禁じます。
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証券代行ニュース第 52 号(2016 年 4 月)
り ま す ( 会 社 法 施 行 規 則 74 条 1 項 3 号 ) 。
(3)事業報告
3月決算会社の事業報告において、昨年は「社外取締役を置くことが相当でない
理由」の記載を除き、改正前の会社法改正規則が適用されたため(改正省令附則 2
条 6 項)、本年作成する事業報告より、改正後の会社法施行規則が新たに適用され
ることになります(上記理由の記載を除きます)。
以下では、新たに適用される事項をとりあげます。
①業務の適正を確保するための体制の運用状況の概要
事業年度中に存在した「業務の適正を確保するための体制」の決定または決議
の内容の概要に加え、当該体制の運用状況の概要の記載が必要となります(会社
法 施 行 規 則 118 条 2 号 ) 。 上 記 運 用 状 況 の 概 要 は 、 経 過 措 置 に よ り 昨 年 5 月 1 日
以後のものに限定されていますが(改正省令附 則 2 条 7 項)、当該限定につき特
段の明示をすることなく記載される事例が多くなるものと思われます。
な お 、会 社 法 改 正 に 伴 い 、当 該 体 制 の 内 容 の 変 更 を 取 締 役 会 で 決 議 し た 場 合 で 、
昨年作成した事業報告への記載が間に合わなかったときは、本年は変更後の内容
の概要の記載が求められますので留意が必要です。
②会社が親会社等との間の取引をするに当たり、会社の利益を害さないように留
意した事項等
会社とその親会社等との間の取引(会社と第三者との間の取引で会社とその親
会社等との間の利益が相反するものを含みます)であって、会社の当該事業年度
に 係 る 個 別 注 記 表 に お い て 関 連 当 事 者 と の 取 引 に 関 す る 注 記 ( 会 社 計 算 規 則 112
条 1 項、同項ただし書の規定により同項 4 号から 6 号までおよび 8 号に掲げる事
項を省略するものを除きます)があるときは、次に掲げる事項を記載します。
( a)取 引 を す る に 当 た り 会 社 の 利 益 を 害 さ な い よ う に 留 意 し た 事 項( 当 該 事 項 が
な い 場 合 に あ っ て は 、 そ の 旨 ) ( 会 社 法 施 行 規 則 118 条 5 号 イ )
( b)取 引 が 会 社 の 利 益 を 害 さ な い か ど う か に つ い て の 会 社 の 取 締 役 会 の 判 断 お よ
びその理由(同号ロ)
( c) 社 外 取 締 役 を 置 く 会 社 に お い て 、 ( b) の 取 締 役 会 の 判 断 が 社 外 取 締 役 の 意
見と異なる場合には、その意見(同号ハ)
なお、上記①と同様に、昨年5月1日以後の取引に限って記載すればよい旨
の経過措置があります(改正省令 2 条 8 項)
(注)無断転写を禁じます。
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証券代行ニュース第 52 号(2016 年 4 月)
③特定完全子会社の状況
当社に特定完全子会社
がある場合には、次に掲げる事項を記載します。
( a) 特 定 完 全 子 会 社 の 名 称 お よ び 住 所 ( 会 社 法 施 行 規 則 118 条 4 号 イ )
( b)会 社 お よ び そ の 完 全 子 会 社 等 に お け る 当 該 特 定 完 全 子 会 社 の 株 式 の 当 該 事 業
年度の末日における帳簿価額の合計額(同号ロ)
( c)会 社 の 当 該 事 業 年 度 に 係 る 貸 借 対 照 表 の 資 産 の 部 に 計 上 し た 額 の 合 計 額( 同
号ハ)
④会計監査人関係
「会計監査人の報酬等について監査役会等が同意をした理由」の記載が求めら
れ ま す ( 会 社 法 施 行 規 則 126 条 2 号 ) 。
また、会社法改正に伴い、株主総会に提出する会計監査人の選任、解任、不再
任 に 関 す る 議 案 の 内 容 の 決 定 は 監 査 役 会 が 行 う こ と に な り ま し た が ( 会 社 法 344
条)、昨年作成した事業報告において「会計監査人の解任または不再任の決定の
方針」の内容を変更していない場合、新たに上記への対応が必要になります。
⑤「直前三事業年度の財産及び損益の状況」等における 記載項目の変更
昨 年 4 月 1 日 以 後 に 開 始 す る 事 業 年 度 に 係 る 連 結 計 算 書 類 よ り 、こ れ ま で の「 当
期純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」とするとともに、「1株当た
りの当期純利益(当期純損失)」は「1株当たりの親会社株主に帰属する当期純
利 益( 当 期 純 損 失 )」と し て 表 示 さ れ る こ と に な り ま す( 会 社 計 算 規 則 94 条 4 項 、
113 条 ) 。 こ れ に 伴 い 、 「 直 前 三 事 業 年 度 の 財 産 及 び 損 益 の 状 況 」 お よ び 「 事 業
の経過及び成果」において、上記への対応をすることが考えられます。なお、連
結注記表上の「1株当たり当期純利益」の記載は、これまでどおり「1株当たり
当期純利益」を用いることで差し支えないとする見解(※)もあります 。
※週刊
経団連タイムズ
No.3 2 2 4 ご 参 照
http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2015/0521_08.html
⑥その他
責 任 限 定 契 約 を 締 結 で き る 対 象 が 拡 大 さ れ た こ と に 伴 い ( 会 社 法 427 条 ) 、 当
該契約の内容の概要の記載対象も同様に拡大されるとともに(会社法施行規則
121 条 3 号 ) 、 前 記 ( 2 ) と 同 様 に 会 社 の 経 営 を 支 配 し て い る オ ー ナ ー を 意 識 し
た 規 定 ( 会 社 法 施 行 規 則 124 条 1 項 3 号 イ 、 7 号 ) 等 が 新 設 さ れ て い ま す 。
また、事業年度の末日において監査等委員会設置会社または指名委員会等設置
(注)無断転写を禁じます。
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