パラグアイ内政・外交報告(3月分) 政治情勢 2016年4月作成 内政では,10日,上院憲法委員会において,汚職や職務怠慢が指摘されている最高裁判事3 名の弾劾裁判の実施が決定され,4月以降,順次,3名の最高裁判事に対する上院における弾劾 裁判が行われる見通しとなった。また,17日,農民団体等主導によるデモがアスンシオン市で実 施され,①農地改革(小農への農地割り当て),②農産品の価格上昇,③小農に対する技術的・ 財政的援助(小農の負債の帳消しを含む)等を要求したものの,カルテス政権の反応がなかった ため,デモが継続されることが決定した。 外交では,22日~27日,ロイサガ外相が外務省賓客として訪日し,24日,岸田外相との会談 等を行うと共に,25日,広島市の平和記念公園を訪問し,原爆慰霊碑への献花を行った。外相会 談においては,二国間アジェンダ,地域情勢及びマルチ関係につき,幅広い協議が行われ,冒 頭,双方間で,日本人移住80周年の重要性を協調した。 1 内政 (1)最高判事に対する弾劾裁判の開始 ●10日,上院憲法委員会は,汚職や職務怠慢が指摘されている最高裁判事3名(セサル・ガライ 判事,シンドゥルフォ・ブランコ判事,オスカル・バハック判事)の弾劾裁判を実施することを決定し た。4月以降,順次,3名の最高裁判事に対する上院における弾劾裁判が行われる見通しとなっ た。 (2)農民団体等によるデモ ●17日,農民団体,左派政党等主導によるデモがアスンシオン市で実施され,約3,000名が参 加した。デモの要求項目は,①農地改革(小農への農地割り当て),②農産品の価格上昇,③小 農に対する技術的・財政的援助(小農の負債の帳消しを含む)等。カルテス政権は,昨年に引き続 き,今年も,農民団体等との交渉の場の設置等に関する声明を発出しておらず,右を不満とする デモ参加者は引き続きデモを開催する旨発表し,議会前広場を占拠している。 (3)妊婦のジカ熱感染 ●11日,厚生省は,アスンシオン近郊のルケ市在住の32歳の妊婦が,同市において,ジカ熱に 感染した旨発表した。同省によれば,昨年11月にアマンバイ県ペドロ・フアン・カバジェロ市におい て,6件の感染が報告されていたが,妊婦によるジカ熱関連は今回が初めてとなった。 2 外交 (1)ロイサガ外相の中東訪問 <カタール訪問> ●3日,カタールを訪問したロイサガ外相は,Rumaihi 市政・環境大臣との会談を行った。同会談に おいて,Rumaihi 大臣は,食糧生産国としてのパラグアイを評価した上で,カタールを含めた中東 市場向けのパラグアイ産牛肉の輸出に向け,今後、衛生面の調査のための技術ミッションを派遣 する旨述べた。 ●同日,ロイサガ外相は,サーニ外相との会談を行い,二国間アジェンダにつき,意見交換を行う と共に,地域情勢やマルチのテーマについて協議を行った。 <ア首連訪問> ●6日,ア首連を訪問したロイサガ外相は,アブダッラー外相との会談を行った。同会談において, ロイサガ外相は,パラグアイの良好なビジネス環境及びマクロ経済につき説明を行うと共に,パラ グ ア イ 政 府 が 構 築 し た 人 権 勧 告 モ ニ タ リ ン グ シ ス テ ム ( Sistema de Monitoreo de Recomendaciones (SIMORE))の導入を通じた協力を提案した。これに対し,アブダッラー外相は, パラグアイの農業とインフラへの関心を示すと共に,ア首連の人権理事会理事国入りに対するパ ラグアイからの支持に謝意を表明した。 (2)ロイサガ外相のフランス訪問 ●10日,フランスを訪問したロイサガ外相は,エロー外務・国際開発相との会談を行った。両外相 は,同会談において,両国間政策協議が同日フランス外務省で開催されたことを歓迎した。また, 両外相は,人権理事会を通じた協力を行う意志を表明した。更に,ロイサガ外相は,パラグアイ政 府が構築した人権勧告モニタリングシステムを二国間協力または三角協力として活用することを 提案し,これに対し,エロー外務・国際開発相が関心を示した。 (3)カルテス大統領のアルゼンチン訪問 ●15日,カルテス大統領は,ブエノスアイレスで開催された世界ユダヤ会議におけるシャローム 賞授与式に出席のためアルゼンチンを訪問し,同授賞式のマージンにおいて,マクリ大統領との 首脳会談を行った。両大統領は,同会談において,貿易拡大など二国間アジェンダにつき協議を 行うと共に,ヤシレタ条約付属書Cの見直し交渉を前進させることに関心を示した。 ●同日,カルテス大統領に同行したロイサガ外相は,マルコーラ外相との会談を行い,メルコスー ル・EU・FTA締結交渉,パラグアイ-パラナ水路の活用の他に,ヤシレタ水力発電所を巡る問題 等につき,協議を行った。 (4)ロイサガ外相の日本訪問 ●22日~27日,ロイサガ外相が外務省賓客として訪日し,24日,岸田外相との会談等を行うと 共に,25日,広島市の平和記念公園を訪問し,原爆慰霊碑への献花を行った。 <友好議連との朝食会> ●23日,ロイサガ外相は日本パラグアイ友好議連との朝食会に出席し,本年で移住80周年を迎 える歴史的な両国関係を強調すると共に,同議連メンバーがパラグアイを訪問することを期待す る旨述べた。これに対し,議連メンバーは移住80周年祝賀の重要性につき意見を一にすると共に, 日本人移民を受け入れたパラグアイの寛容さに言及した。 <北岡JICA理事長との会談> ●同日,ロイサガ外相は,JICA本部において,北岡JICA理事長との会談を行い,二国間協力の 主要点につき協議を行った。ロイサガ外相は,同会談において,カルテス大統領からの日本国民 と日本政府の協力の精神に対する謝意を伝達すると共に,貧困撲滅や社会的包摂など,日本政 府の援助分野がパラグアイ政府の優先分野に一致していることを歓迎した。 <岸田外相との会談> ●24日,ロイサガ外相は,飯倉公館において,岸田外相との会談を行い,二国間アジェンダ,地 域情勢及びマルチ関係につき協議が行われ,冒頭,双方が日本人移住80周年の重要性を協調 した。 ●岸田外相から,東アジア情勢及び東シナ海の島々の主権にかかる日本政府の立場を説明する と共に,両大臣は,核廃絶に向けた協働の重要性につき一致した上で,IAEAを通じた協力の継 続・深化の必要性につき一致した。 ●これに対し,ロイサガ外相は,パラグアイ-パラナ水路の適切な管理の重要性を説明した上で, バージ船やプッシャー船を製造する常石造船や自動車部品を製造する日本企業の役割が増大し ている点を説明し,日本からの投資への期待を表明した。また,ロイサガ外相は,内陸国に対する 日本の支援の重要性を強調すると共に,日メルコスール経済対話の再開の重要性を説明した。 (5)ロイサガ外相のドミニカ共和国訪問 ●30日,ドミニカ共和国を訪問したロイサガ外相は,ナバロ外相との会談を行い,二国間アジェン ダ,地域情勢,世界情勢につき協議を行った。両外相は,同会談において,両国の生産面での相 互補完性,地理的要因,良好な二国間関係を念頭に,二国間経済関係の強化の必要性につき一 致すると共に,二国間の経済・貿易関係の発展に向けた覚書の署名に向けた交渉を進めることに 合意した。なお,今次会談においては,二国間政策協議の開始にかかる覚書及び両国外交官学 校間の協力に関する協定の署名が行われた。 (6)ブラジル情勢に関するカベージョ外相代理の発言 ●22日,カベージョ外相代理は,ブラジル情勢に関する記者団からの質問に対し,パラグアイは ブラジルの内政問題を尊重するとともに,ブラジル政府とブラジル国民の自決を尊重する旨述べ た。また同外相代理は,ルゴ大統領(当時)が議会により弾劾された際に,パラグアイがメルコス ールや UNASUR から不当に資格停止を受けた悲劇が繰り返されないようにすることを意図してお り,(ルセーフ政権への)支持・不支持の声明を発出することは不要であり,バランスのとれていな い声明の発出はパラグアイ政府の望むところではない旨述べた。 (7)北朝鮮に対する安保理制裁決議の採択に関する外務省プレスリリース ●9日,パラグアイ外務省は,北朝鮮への制裁に関する安保理決議第2270号にかかるプレスリ リースを発出し,国連加盟国に対し,いかなる努力をも惜しまず,同決議を遵守するよう求めると 共に,6ヶ国協議の主要関係者に対し,朝鮮半島の緊張緩和及び正常化に資する建設的な対話 を再開するよう求めた。 3 要人往来 (1)来訪 ●31日,インカピエ・パナマ外務次官(カベージョ外相代理との会談) (2)往訪 ●2日~4日,レイテ商工相,ブラジル訪問(ブラジル企業視察) ●4日~13日,デ・バルガス内相,英国訪問(警備関係エクスポ出席) ●7日~9日,レイテ商工相,ウルグアイ訪問(投資誘致フォーラム出席) ●8日~12日,ヒメネス・ガオナ公共事業通信相,ペルー訪問(経済開発国際会議出席) ●9日~15日,バシガルーポ司法相,インド訪問(文化関連フェスティバル参加) ●15日~16日,カルテス大統領等,アルゼンチン訪問(シャローム賞授与式出席)
© Copyright 2024 ExpyDoc