2010.1.14 データ統合・解析システムH21年度最終報告会 @東京大学 安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発 溝口勝1・二宮正士2・石郷岡康史3 DIAS農 1 東京大学大学院情報学環(UT) 2 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO) 3 農業環境技術研究所(NIAES) 弥生講堂 DIAS農における全体目標 • コアシステムで提供されるデータ群を効率的に統合し 農業分野で利用できるようにする • 誰でも簡単に知ることができ,政策決定者の判断のよ りどころになるシステムを実現する 個人農家 – 農業生産管理支援情報 – 地球温暖化による食料生産への影響等 政策決定者 • 安全で安心かつ安定的で高品質な食糧供給を求める 公共益に供する DIASとして農業分野の“出口”を示す 2 アジアにおける栽培可能性 観測点のみ (H20年度) 4-8 安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発 溝口 勝(地球観測データ統融合連携研究機構/大学院情報学環)・二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)・石郷岡康史(農業環境技術研究所) a) アフリカ地域におけるイネの栽培可能性予測支援ツールの開発 ・観測・推定日射量データセットを整備し,各品種のイネ栽培可能性予測支援ツールをアフリ カ地域に展開する. [沖Gとの連携] SIMRIWモデルを用いて全球1度グリッドでイネ栽培可能性予測を表示できるようにした. (最終到達目標) 降水量を考慮した予測値を表示できるようにする. H21年度の目標 1.H20年度に開発した「Web版水稲栽培予測支援ツール」をアフリカ地域に展開し, 地球温暖化による食料生産への影響を予測する. 2.農作物データベースの整備に着手し、格子点値(GPV)データ、長期予測データ 等とシームレスに統合できるようにする. 3.生産者と消費者をつなぐ地上モニタリングデータの共有化技術を開発する. c) 農作物データベースの整備とデータ統合化 ・農作物栽培可能性予測支援ツールを検証するための農作物データベースの整備に着手し, これをコアシステムに投入されたGPVデータ,長期予測データ等とシームレスに統合する. イネ以外の作物成長モデルの開発状況について文献調査し,トウモロコシ、大豆の栽培 データベースが利用可能であることを確認した. (最終到達目標) 来年度に向けて各作物モデルのパラメータの推定方法を整理する。 b) 地域特性に対応できる農作物栽培可能性予測の基盤整備 ・土壌水分推定値と地上モニタリング実測値を用いて,土壌水分量を考慮したイネ以外の農 作物栽培可能性予測支援ツールを開発する. FSを設置しているタイ国コンケン市郊外の水田圃場を対象とした水田湛水状況および水稲 作付状況の調査を実施し,過去3年間における気候に対する現地農民の適応策の違いを明 らかにした. (最終到達目標) 地域の水利用の特性を整理し,乾期初期の利用可能土壌水分量の推定法 を提案する. d)地上モニタリングデータの共有化と情報伝達技術の開発 ・日本とタイに設置した地上モニタリングセンサーのデータを生産者と消費者が共有し,安全 な農作物生産管理につなげる技術を開発する. 地上モニタリングセンサーのデータを生産者と消費者が共有し安全な農作物生産管理につ なげる伝達ツールを公開し,一般消費者の反応をモニターした. (最終到達目標) 地上モニタリングデータとシミュレーター予測値を効果的に共有化する情報 伝達手法を提案する. H21年度の成果 a.アフリカ地域におけるイネの栽培可能性予測支 援ツールの開発 b.地域特性に対応できる農作物栽培可能性予測 の基盤整備 c.農作物データベースの整備とデータ統合化 d.地上モニタリングデータの共有化と情報伝達技 術の開発 成果a の要点 • 全球1度グリッド毎のデータセット作成 – 1990年のデータ (沖研とNAROの連携) – 気温 – 日射量 – 降水量が十分にある条件 • 年間降水量300mm以上を対象 • SIMRIWによる潜在収量予測 – イネの品種ごとに判定 http://www.env.go.jp/earth/suishinhi/jpn/sympo/h18sympo/Yokozawa.pdf より引用 イネの栽培可能性予測シミュレーター • 地球観測データ群を Web上で統合 – モデルとの結合 • ユーザフレンドリー – 誰でもが簡単に知るこ とのできる – 学術的成果を伝える 品種選択 温暖化パラメータ (気温・CO2) 最大収量 (色で区別) 温暖化の影響 北限が移動 イシカリ (寒さに強い品種) 品種による違い 地中海周辺で収量期待 コシヒカリ イシカリ (寒さに強い品種) 地域別 100 km グリッドで 栽培可能性を判定 コシヒカリ 最適品種 最大収量が期待 できる品種 降水量や灌漑水量の考慮 H21年度の成果 a.アフリカ地域におけるイネの栽培可能性予測支 援ツールの開発 b.地域特性に対応できる農作物栽培可能性予測 の基盤整備 c.農作物データベースの整備とデータ統合化 タイの天水田の湛水状況および水稲作付状況を 調査し、過去3年間における気候に対する現地 農民の適応策の違いを明らかにした。 d.地上モニタリングデータの共有化と情報伝達技 術の開発 水田の水位と降雨量の特徴およびフィールドサーバによる水田モニタリング (2007,2008,2009年の比較) 7/1 FS画像 1600 積算降水量(mm 1/1~) 1400 2007 2008 2009 1200 1000 800 600 400 200 12/1 11/1 10/1 9/1 8/1 7/1 6/1 5/1 4/1 3/1 2/1 1/1 0 50 -50 -100 -150 2007 2008 2009 -200 -250 12/1 11/1 10/1 9/1 8/1 7/1 6/1 5/1 4/1 3/1 2/1 -300 1/1 水田の水位(cm) 0 2009 250 水田筆数 200 移植 直播 コンケン郊外の調査圃場の概 要 全240筆,約10日毎に調査 150 100 50 調査項目: 水稲作付タイプ (移植,直播,苗床,放棄地) 湛水状況 (全湛水,部分湛水,無湛水) 0 6上 6中 6下 7上 7中 7下 8上 8中 8下 2008 300 水田筆数 250 移植 直播 200 150 100 350 50 300 6中 6下 7上 7中 7下 8上 8中 8下 2007 300 水田筆数 250 移植 直播 200 月降水量(mm) 0 250 2007 2008 2009 200 150 100 50 150 0 100 4月 50 5月 6月 7月 8月 調査圃場における各年月別降水量 0 6下 7上 7中 7下 8上 8中 8下 旬別水稲作付水田筆数の推移 (2009年は殆どが直播による) 2009年は6月の降水量が極端に少ない 気候変動に対する適応策 • 農民は経験的に適応する知恵を持つ • 知恵をサポートする情報提供が重要 DIAS農の貢献 DIAS農の将来展望 農業分野の“出口”を示す H21年度 H22年度 コアシステム H23年度以降 1.データセットの使いまわし 2.栽培可能性シミュレータの 拡充 3.検証ツールの開発 栽培可能性予測 シミュレータ イネ生育モデル SIMRIW 地上観測データ群 GPV予報データ群 改良モデル 水・土壌条件 他の穀物 生育モデル ・1990年観測値 ・1度グリッド ・多年観測値+予測値 ・0.5度グリッド 他の農作物 生育モデル モニタリング モデルパラメータ 推定 シミュレータ 検証ツール 安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発 (H22年度計画) 溝口 勝(地球観測データ統融合連携研究機構/大学院情報学環)・二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)・石郷岡康史(農業環境技術研究所) 全体目標 H22年度の目標 コアシステム等で提供されるデータ群を効率的に統合して,農業生産管理支援情 報や,地球温暖化による食料生産への影響等を,誰でも簡単に知ることができ, 政策決定者の判断のよりどころになるシステムとして実現し,安全で安心かつ安 定的で高品質な食糧供給を求める公共益に供する. H21年度に開発した「イネ栽培可能性予測シミュレーター」に水条件を加味し、より 現実的なものにする。そのために、国内外の研究者や技術者等にシミュレーター を実際に使ってもらい、普及の障害となる問題点を整理する。 研究方法と期待される成果 a) (スケジュール)[連携希望先] イネ栽培可能性予測シミュレーターの改良 (5月~10月) ・水条件を加味すると共に、より長期間の地球観測データに対応できるようにする。また、シ ミュレーターの多言語対応化(英語、タイ語)を図る。改良したシミュレーターをコアシステムに 移植し、多くのユーザの同時利用に耐えられるようにする。[沖G,喜連川Gとの連携] 水条件を加味することにより現実的なシミュレーターとなる。また、多言語化を図ることによ り、国際的なニーズにも対応可能となる。 b)イネ以外の農作物栽培可能性予測シミュレーターのための基盤整備 (8月~1月) ・共通の地球観測データを利用して、イネ以外の農作物(小麦、トウモロコシ、野菜等)に対 応できるようするために、各種生育モデルのコード化を図り、各地域で農作物の栽培可能性 を予測する農作物栽培可能性シミュレーターに発展させるための基盤を整備する. 世界の食糧戦略を考える政策決定に役立つと思われるイネ以外の穀物や野菜等の栽培 可能性の予測シミュレーターの基盤ができる. c) 農作物栽培可能性シミュレーターの現地試験 (10月~1月) ・国内外の研究者、技術普及員、コンサルタント技術者等にシミュレーターを実際に使ってもら い、普及の障害となる問題点を整理する。 イネ栽培可能性予測シミュレーターの現地試験により、より現実的な現場ニーズが把握で きるようになり、実際に使えるツール開発に繋がる。 コアシステム 地上観測データ群 GPV予報データ群 DIAS農 Thank you
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