彼と私の本棚

498E0002 歐芝岑
498E0078 劉亞雯
498E0081 楊舒涵





厄介(やっかい):めんどうなこと。扱いに手数が
かかり、わずらわしいこと。(65-1)
在庫(ざいこ):商品が倉庫などにあること。
(65-1)
手間取る(てまどる):思ったより手間がかかる。
(65-2)
振り込む(ふりこむ):振替口座や預金口座などに
金銭を払い込む。(65-2)
敷金(しききん):不動産、特に家屋の賃貸借にさ
いして賃料などの債務の担保にする目的で、賃借人
が賃貸人に預けておく保証金。(65-3)








積み上がる(つみあがる):すでにあるものの上に
積み重なって高くなる、また、多くなる。(65-6)
まじまじ:目を離さないで一心に見つめるさま。
じっと。(65-9)
持ち去る(もちさる):物を持って他の所へ行って
しまう。(66-4)
沸き上がる(わきあがる):盛んに煮え立つ。沸騰
する。(66-8)
抜き出す(ぬきだす):引き抜いて出す。取り出す。
選び出す。(66-10)
アスファルト(asphalt):瀝青、柏油。(67-3)
ぽつんと:孤立している様子。(67-3)
稼ぐ(かせぐ):働いて手に入れる。(68-6)






覗き込む(のぞきこむ):顔を近づけたり首をつ
き出したりして、中をのぞく。(68-11)
ミステリー (mystery):1 神秘的なこと。2 推
理小説。(68-14)
サブカルチャー(subculture):社会の正統的、
伝統的な文化に対し、その社会に属するある特定
の集団だけがもつ独特の文化。(68-15)
紀行(きこう):旅行中の体験・見聞・感想など
を書きつづった文章。(68-15)
順不同(じゅんふどう):順序不同に同じ。(69-1)
てんでん:「手に手に」または「手手」の音変化
か》1 各自。(69-2)

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


タイトル(title):1 表題。題名。2 肩書き。称号。
3 選手権。(69-5)
貪る(むさぼる): 飽きることなくほしがる。(69-8)
マグ‐カップ(mug+cup):マグ。(69-14)
細細(こまごま):1 細かくて雑多なさま。細かく
てあまり重要でないさま。2 細かいところまで行き
届くさま。(69-15)
釣り合う(つりあう):1 二つ以上のものの平均が
とれている。2 色や材質などの調和がとれている。
3 互いに相手にふさわしい。(70-14)
他愛ない(たわいない):詰まらない。(71-1)
結末(けつまつ):最後の締めくくり。最後に到達
した結果。(71-3)
 まじまじ: 目を離さないで一心に見つめるさま。
じっと。(71-10)
 卑しい(いやしい):1 身分・社会的地位が低い。
2 品位に欠けている。(71-14)

戸惑う(とまどう):どう対処してよいかわからず、
まごまごする。まごつく。(72-3)
 橙色(だいだいいろ):赤みがかった黄色。オレン
ジ色。(72-5)
 差し込む(さしこむ):(「射し込む」とも書く)
光が入ってくる。(72-5)

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




段ボール:波状に成形した中心(なかしん)紙の片面
または両面に厚紙をはり合わせた板紙。包装の箱に
する。(72-5)
陽射し(ひざし):日の光がさすこと。また、その
日の光。(72-5)
斜め(ななめ):1 、垂直・水平面や正面に対し、
方向がずれていること。また、そのさま。はす。は
すかい。2、 日や月が中天を過ぎること。「日ざし
が―になった」。(72-5)
切り取る(きりとる):1、 一部分を切って取る。
2 、武力で領地などを奪い取る。(72-5)
披読(ひどく):書籍などを開いて読むこと。(729)
たじろぐ:1 、相手の勢いに圧倒されて、ひるむ。
しりごみする。2、 ひけをとる。劣る。(72-9)

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



傷付ける(きずつける):1、 傷を負わせる。けが
をさせる。2 、物の表面に傷を生じさせる。物の一
部を損なう。3、 人の感情などを損なう。(72-12)
口にする:言葉に出して言う。話す。(73-1)
繰り返す(くりかえす):1、 同じことをもう一度、
あるいは何度もする。反復する。2 、本のページな
どをめくる。(73-2)
思い付く(おもいつく):1 、ある考えがふと心に
浮かぶ。考えつく。2 、忘れていたことを思い出す。
3 、思いを寄せる。好意をもつ。恋い慕う。(73-5)
見知らぬ(みしらぬ):見覚えがない。面識がない。
(73-6)
優位(ゆうい):位置・地位などが他よりまさるこ
と。また、そのさまや、そのもの、「―に立つ」。
(73-6)





むっつり:1、[副]口数が少なく、愛想のないさ
ま。2、[名]口数が少なく、愛想のないこと。ま
た、その人。(73-7)
然程(さほど):[副](多くは、あとに打消しの
語を伴って用いる)それほど。たいして。(73-9)
使い果たす(つかいはたす):全部使ってしまう。残ら
ず使ってしまう。(73-13)
惚ける(ほうける):1、聞かれたことに対して、わざ
と知らないふりをする。しらばくれる。2、どこと
なく間のぬけたこっけいな表情やしぐさをする。3、
老いて頭の働きが鈍くなる。ぼける。(73-13)
立ち位置(たちいち):1 、立っている場所。2 、周囲
の状況の中でその人が取る立場。立脚点。(73-15)
単なる(たんなる):それだけで、ほかに何も含ま
ないさま。ただの。(74-1)
 ルームメート【roommate】:下宿・寮などで同室
の仲間。
(74-1)
 余所余所しい(よそよそしい):1、 隔てがましく
冷淡である。親しみがない。他人行儀である。2 、
無関係である。(74-1)
 ウィークリーマンション【weekly mansion】:
敷金・礼金・保証人などが不要で、1日単位で契約
できる宿泊・居住施設の商標名。フロント業務や
ベッドメーキングなどのホテルのようなサービスは
なく、台所や炊飯器などの生活設備があるのが一般
的。(74-4)







荷造り(にづくり):品物を運送できるようにひも
をかけたり、包んだりすること。(74-5)
諸々(もろもろ):多くのもの。さまざまのもの。
また、多くの人。(74-6)
手続き(てつづき):1 、物事を行うのに必要な手
順。てはず。2 、あることをするのに必要な、一定
の順序・形式に従った処置。(74-6)
済ませる(すませる):なすべき物事を全部してし
まう。(74-6)
決行(けっこう):思い切って実行すること。(74-9)
さばさば:1、 気分がすっきりするさま。さわやか
になるさま。2 、物事にこだわらず、あっさりして
いるさま。さばけているさま。(74-13)
詰め込み(つめこみ): 物を入れ物にできるだけた
くさん入れる。(75-3)
 ガムテープ【gum tape】:梱包(こんぽう)などに
用いる、幅の広い粘着テープ。(75-3)
 蓋(ふた):1、 物の口にあてがってふさぐもの。
2 、サザエ・タニシなどの貝の口を覆うもの。3 、
スッポンのこと。(75-3)
 すっかり:1、残るもののないさま。ことごとく。
2、完全にある状態になっているさま。まったく。
3、すがすがしいさま。さっぱり。きっぱり。すっ
ぱり。4、難がなく、見ばえのするさま。すっきり。
(75-3)

手を付ける:1、 着手する。仕事などを始める。
2、 使い始める。また特に、使い込む。3 、料理
などを消費する。4 、目下の女性などと関係をもつ。
(75-4)
 呟く(つぶやく):小さい声でひとりごとを言う。
(75-6)
 立ち上がる:1 、座ったりかがんだりしている姿勢
から身を起こして立つ。2 、よくない状態に陥った
ものが再び勢いを取り戻す。3 、行動を起こす。
4 、上の方に立つ。立ちのぼる。5、 相撲で、仕
切りから身を起こし、勝負を始める。6、 機械が動
き始める。また、コンピューターのプログラムが起
動する。7 、(6からの派生)設置される。開設さ
れる。(75-6)

★文法
ものだ:本來就是… 就該、就是。(65-4)
人生なんて、はかないものだ。
(人生是短暫無常的。)
 わけではない 並不是、並非(69-5)
このレストランはいつも客がいっぱいだが、だからと
いって特別においしいわけではない。
(這間餐廳經常客滿,儘管如此,也並非特別好吃。)
 に違いない 一定是、肯定(69-7)
あそこにかかっている絵はすばらしい。値段も高いに
違いない。
掛在那裡的那幅畫真棒,價格也一定很貴。

~ということは~(ということ)だ:~也就是說~
(72-1)
車が一台しかないということは、私たちのうちだれか
バスで行かなければならないということだ。
(只有一輛車,也就是說我們之中有人必須搭公車去
了。)
 だらけ(Nだらけ):滿是、淨是()
彼の部屋は本だらけだ。
(他的房間裡到處都是書。)
 V-ようがV-まいが不管是~不是~、不管~不~
パーティは参加しようがしまいが、皆さんの自由です。
(參不參加派對是大家的自由。)

~とはいえ 雖然~但是~
男女平等の世の中とはいえ、職場での地位や仕事の内
容などの点でまだ差別が残っている。
(雖說是男女平等的社會,但是在工作單位的地位和工
作內容等方面上仍然存在歧視。)
 ~なくてはならない=~なければならない 必須、應
該
そろそろ、帰らなければならない。
(差不多該回去了。)
 こともなく=ことなく 不~(v-ることもなく)
ひどい雪だったが、列車はおくれることなく京都につ
いた。
(然雪下的很大,但列車還是準時到達了京都。)



これはひどく厄介だ、と、本棚の前で私は気づいた。
電化製品やCDや食品の在庫なんかは、ちっともてまど
らなかった。家賃振込みの通帳に残ったお金や、戻って
くる敷金の処理ですらも、さくさくと片づいた。それで
錯覚していた。ハナケンと別れることは、それらの分配
となんら変わるところなくかんたんなものだと。
在書架前的我察覺到,這是非常麻煩的。電器產品、
CD和食品的庫存甚麼的,一點也不費事。就連匯房租的
存摺裡剩下的錢和退回的保證金的處理,也都很順利的處
理完畢。因此有這樣的錯覺。和ハナケン分手這件事,與
這些的分配一點也沒有不一樣,是很簡單的事。


でも、やらなきゃしかたがない。真ん中の段に手をの
ばし、片手でつかめるだけの本を取り出して床に置いて
いく。本がだいぶ積み上がったところで床に座り、一冊
ずつ本を手に取る。これはハナケン。これは私。これも
私。私のぶんは組み立てた段ボールに入れ、ハナケンの
は棚に戻す。積んだ本の一番上を手にし、その下の一冊
もとり、二冊を膝の上に置く。まじまじと見る。まった
く同じ本が二冊。汚れ具合も同程度。マンシェット著
『殺戮の天使』というその本を、私は日にかざすように
して見比べる。
但是,沒有辦法不做。伸手到正中間那層,抽出一隻
手能抓住的書放在地上。在堆積很多書的地板坐下,一本
一本拿到手裡。這是ハナケン的。這是我的。這也是我的。
我的部分放進組裝好的紙箱,ハナケン的放回書架。拿起
堆起來的書的最上面那本,也拿起下面那一本,兩本放在
膝蓋上。目不轉睛的看著。完全一樣的書有兩本。髒的情
況也相同。有本マンシェット著的叫『殺戮的天使』的書,
我拿著書像是遮住陽光那樣比較著。


馬鹿らしいなあ、と我ながら思う。同じ本で、同じく
らい傷んでいるのだったら、どっちがどっちでもいい
じゃないか。あるいはいっそのこと捨ててしまったって
かまわない。とくに思い入れがある本ではないし、読み
返す可能性は限りなく低い。そう思うのだが、しかし、
じゃあと適当に一冊選ぶことができない。私が持ち込ん
だものは私が持ち去りたいし、ハナケンが持ち込んだも
のはハナケンに持っていくほしいのだ。
我覺得我就像笨蛋一樣。同一本書,如果損壞的程度
也大約相同的話,哪一本是誰的也無所謂不是嗎?。或者
乾脆丟掉也沒關係。也不是特別可以深思的書,而且重複
閱讀的可能性非常的低。原本是這麼想的,但是,也無法
隨便選出一本來。我帶來的東西我就想要帶走,ハナケン
所帶來的東西就希望ハナケン帶走。


しかし—床に正座したまま、天井まである本棚を見上
げる。これら全部、そんなふうに区別していったら、引
越しなんて来年になってしまうんじゃないだろうか。
なってしまったってかまわないや、炭酸の泡みたいにわ
きあがるかすかな思いには、気づかないふりをする。
『殺戮の天使』はわきへよけ、またあらたに片手で持て
るだけ本を抜き出し山を作る。この部屋に最初からつい
ていた古いエアコンの音が、急に大きく感じられる。遠
くを飛んでいく飛行機のような音だ。
但是---跪坐在地板,抬頭看堆到天花板的書,這些全
部都要那樣區別的話,搬家(之類的)就要變成明年了不是
嗎?就算是(變成)這樣也沒關係,就像碳酸的氣泡般浮現
出的隱約的想法,我假裝沒發現。『殺戮的天使』放到旁
邊,又抽出一隻手能抓住的書做成書的山。這間房子從一
開始就有的舊冷氣的聲音,突然感覺到很大聲。就像是飛
遠了的飛機那樣的聲音。




ハナケンと会ったのは五年前だ。短期のアルバイトが
いっしょだった。お歳暮を住所ごとに仕分けるアルバイ
トだったから、冬だったんだろう。
大勢いたアルバイトのなかで、煙草を吸う人は四人し
かいなかった。ゴールデンウィークに家族でハワイにい
くんだと話していた主婦と、絶対に人としゃべろうとし
ない年齢不詳の男の人と、ハナケンと私。
和ハナケン相遇是五年前的事情。一起做短期的打工。
因為是把過年賀禮按照住址分配的工讀,所以應該是冬天
吧。
在很多打工的人當中,吸菸的只有4個人。說了黃金
週一家人一起去夏威夷的主婦和絕對不會和別人聊天的年
齡不詳男子和ハナケン跟我。

喫煙場所は裏口を出たところにあった。駐車場に
続くアスファルトにぽつんと灰皿が置いてあるだけ。
休憩時間になると、この四人でいつも顔を合わせる
ことになった。そうだ、たしかに冬だった。囲いの
ないその喫煙所に集まる私たちは、いつもわざわざ
コートを着こんでいたから。

吸菸區在後門出去的地方。相連停車場的柏油路
上就只有放著煙灰缸(顯得孤伶伶)。一到休息時間,
這四個人總是聚在一起。對了,確實是在冬天。因為
在沒有圍欄的吸菸區聚集的我們,總是特別穿著外套。

たいてい主婦がべらべらしゃべり、私とハナケン
が聞き役だった。年齢不詳の男は少し離れたところ
でいつもそっぽを向いていた。十分の休憩にみな二
本ずつ草を吸った。その主婦が途方もなくおしゃべ
りだったせいで、私とハナケンのあいだに親近感み
たいなものが生まれた。短期アルバイトの最後の日、
みらったお給料をそのまま持ってふたりで飲みに
いった。

大部分都是主婦一直在說話,我和ハナケン只是
聽的角色。年齡不詳的男子在稍微離我們有點距離的
地方,臉總是向著另一邊。十分鐘的休息時間大家各
自抽了兩根菸。多虧主婦一直聊天,我和ハナケン之
間產生了像是親近感的東西。短期打工的最後那天,
收到的薪水兩人就直接拿去喝酒。

一軒目―バイト先に近い焼鳥屋―は、給料袋から
ハナケンが支払った。二軒目―新宿のバー―は同じ
給料袋から私が支払った。三軒目―大久保の韓国料
理屋―はハナケン、四軒目―韓国料理屋から三分ほ
ど歩いた場所にあったラブホテル―は、それぞれの
給料袋から同じだけ出して支払った。

第一間---靠近打工處附近的串烤屋,是從ハナケ
ン的薪水袋裡支付的。第二間---新宿的酒吧,一樣由
我從薪水袋裡拿出錢來支付的。第三間---大久保的韓
國料理是ハナケン。第四間---從韓國料理距離走路約
三分鐘的賓館,這是個別從薪水袋裡拿一樣的錢支付
的。

あれだけ汗水流して働いたのに、一日でこんなに
減った、と、のこ少ない中身を出してハナケンは笑
い、ほんとうだね、と私も笑った。次の朝近くの喫
茶店にいき、少ない残金でモーニングを食べた。

明明都是流那樣的汗工作明明流了那麼多汗水工
作賺來的錢,一天就少那麼多,拿出剩下不多的薪水
ハナケン笑了,真的耶我也笑了。隔日早上去了附近
的咖啡廳用少少的餘額吃早餐。

二週間働いた賃金が本当にその夜目減りしてしまっ
たので、これじゃなんのために働いたのかわからない、
と帰り道私は思い、なんのために、って、ひょっとし
てあの男の子に会うためにアルバイトに申しこんだの
かもしれない。そんなロマンチックなことをごくふつ
うに思いつくような年齢だった。私は二十二歳で、ハ
ナケンは二十一、まだ学生だった。

因為工作兩個禮拜的的工資在那一夜都花完了,這
樣的話也不知道為了甚麼工作,在回家路上的我這麼想,
是為了甚麼,突然想著會不會也許是為了遇到那個男孩。
不是為了賺錢,或許是為了遇到那個孩子而申請了打工
也說不定。當時正值容易(想到那樣浪漫的事的年紀)陷
入浪漫情懷的年紀。我二十二歲,ハナケン二十一歲,
還是學生。

ハナケンを自分のアパートに呼んだのはその二ヶ
月後で、部屋にあがったハナケンはまず本棚に近づ
いて、うわ、と声を出した。なになに?とのぞきこ
むと、自分ちの本棚みたい、とつぶやいた。

把ハナケン叫來我的公寓,是在那件事情的兩個
月後,在房間中的ハナケン首先靠近了書架,發出了
「哇」的驚訝聲。我伸出頭窺探怎麼了(怎麼了),和
我的書架好像…他小聲碎念著。

実際、ハナケンのアパートの本棚は私の本棚みた
いだった。さしこまれたほとんどの本に見覚えが
あった。私の本のこの好みはめちゃくちゃで、ミス
テリと近代文学と詩集と、哲学本と宗教本とサブカ
ルチャー本と、現代小説とアメリカ文学と紀行本と
が、順不同に並んでいる。

事實上,ハナケン公寓的書架很像我的書架。被
放入的書大部分都很眼熟。我喜歡的書很雜亂無章,
推理小說、近代文學、詩集、人生哲學、宗教、次文
化、現代小說、美國文學和旅行記,沒有按照順序的
排列著。

ハナケンの本棚もまるきり同じだった。アメリカ文
学ならアメリカ文学と、好みが一種類なら似るのは
理解できるけれど、そのてんでんばらばらさ加減ま
で似ていることは、本当に驚き以外の何物でもな
かった。うわ、と、ハナケンとおんなじように私も
声を出したと思う。

ハナケン的書架也完全相同。美國文學就美國文學,
喜好如果是一種的話那麼相似還能理解,但甚至連五
花八門的喜好都相似這件事,真的除了驚訝之外什麼
都沒有。我想,我也發出了像ハナケン一樣的聲音。

もちろん、全部が全部同じ本というわけではな
かった。私の聞いたこともないタイトルの本もずい
ぶんあった。私はそれらを数冊抜き出して、貸して、
とたのんだ。これだけ本棚が似てる人の本だから、
おもしろいに違いないように思えた。

當然,並非說全部都是相同的書。也有許多我完
全沒聽過的書名。我把這幾本拿出來,並拜託ハナケ
ン借給我。因為是書架十分相似的人的書,我想一定
會很有趣。

私たちはたがいの知らない本を貸しあい、むさぼる
ように読んで(実際ハナケンに借りた本はなんでも
おもしろかった)、次のデートのときに、本の感想
を延延言い合った。居酒屋や、レストランや、公園
や、ラブホテルで。

我們互相借彼此不知道的書,貪婪的閱讀著(事實上跟
ハナケン借來的書不管什麼都很有趣),下次約會的時
候,持續議論著書的感想。在居酒屋、餐廳、公園和
賓館。

一年と少し交際して、それから一緒に暮らし始め
た。一緒に暮らすのはごく自然なことに思えた。私
のアパートには、ハナケンの下着やシャツやCD、
それに借りた本が、自然繁殖するみたいに増えてい
たし、ハナケンの部屋には、化粧水だの歯ブラシだ
のマグカップだのがやはり同様に増えていた。

交往一年多後,開始一起生活。我想一起生活是非
常自然的事情。在我的公寓中,ハナケン的內褲衣服
和CD,還有借來的書,像是自然繁殖般增加,而在
ハナケン的房間,化妝水拉、牙刷拉和我的馬克杯等
等,同樣的也在增加中。

一緒に暮らすということは、そういうこまごました
ものを、いっしょくたにしてしまうだけのことだと
私は思っていた。

我想一起生活這件事,就只是把這樣零零碎碎的事情
全部混在一起如此而已。


私たちにはお金がなかったから、引っ越しを
しても、新しい家具はほとんど買わなかった。
ダイニングテーブルは私が使っていたもので、
ベッドはハナケンの部屋から持ってきた。唯一
買ったものといえば本棚だった。二倍に増えた
本を収納できる大きな本棚を、私とハナケン
三ヶ月探しまわって買った。
因為我們沒有錢,所以即使搬了家,也完全
沒有買新的家具。餐桌是我從以前用到現在的,
床是從ハナケン的房間搬過來的。如果要說唯一
買的東西,是書架。能夠收納增加到兩倍的書的
大書架,是我和ハナケン來回搜尋(找了)三個月才
買到的。


おんなじの、売っちゃおうか。真新しい本棚
に本を差し入れながら、ハナケンは言っていた。
ブコウスキーも高村薫も山田風太郎も、まった
く同じのが二冊ずつあるんだけど、これ一冊古
本屋に売る?そうすれば、もう少し収納できる
よ。どうせ本は果してなく増え続けていくんだ
から。と、いった。
一樣的書,就賣了吧。ハナケン一邊把書放
在全新的書架中一邊這樣說。ブコウスキ-、高
村薰和山田風太郎也是,完全一樣的書各有兩本,
一本賣去二手書店吧?要是這樣做的話,就能多
收納一點點。我說。反正因為書會無止盡的持續
增加下去。


それに私も同意して、実際、私たちおんなじ
本の一冊だけ―――傷んでいるほう―――を抜
き出して、近所の古本屋に売りにいったのだ。
三十冊以上はあったと思う。けれど売らなかっ
た。言われた値段が、びっくりするほど安かっ
たから。
我也同意了他的建議,實際上,我們拿出相
同的書的其中一本──受損比較嚴重那本,到附近
的二手書店要賣掉。我想應該有30本以上。但
是沒有賣掉。因為老闆說的價錢,便宜到令人驚
訝。


もちろん、一回くらいは飲める程度のきんがく
だった。でも、自分たちがその一冊一冊を買っ
たときのことを思い出すと、その値段はとうて
い釣り合わないように思えた。それで、そっく
りそのまま持ち帰ってきた。
當然,那大概是可以喝一次酒的金額。但是,回
憶起我們買一本又一本書的時候的事,我想那個
價值無論如何都是不符合的。於是,就原封不動
的帶回家了。


その日、売らなかった本を真新しい本棚に戻
しながら、私たちは他愛ないことを延延としゃ
べった。ブコウスキーの感想。山田風太郎の本
をはじめて買ったときのこと。読み終えあえる
のがつらかった本。けつまつに不満がある本。
窓の外はゆっくりと夜になっていった。
那天,我一邊將不賣的書放回書架中,我們
一邊談論著無趣的話題。ブコウスキ-的感想。
第一次買山田風太郎的書的事。很難讀完的書。
結局讓人不滿意的書。窗外慢慢的變黑了。


この本棚がいっぱいになったらまた新しい本
棚を買えばいいよね、と私は言った。そうだな、
二年後に引っ越したっていいんだし、とハナケ
ン言った。
要是這個書架擺滿了的話就再買新的就好了,
我說。是呀,兩年後再搬家也沒關係,ハナケン
說。


本棚がいっぱになって、新しい本棚を据え置い
て、部屋がどんどん狭くなったら引っ越しをして、
その先の、ずっと先まで、一緒にいられると信じ
ていたのだ。私も。ハナケンも。
書架擺滿了後,擱置新的書架,房間漸漸變
得狹窄的話就搬家,未來,甚至到更遙遠的未來,
相信會一直在一起。我和ハナケン都是。


私は一冊を手にとって、まじまじと眺め、自
分の段ボールに入れるべきかどうか悩み始める。
これはハナケンの本だ。私が借りて、気に入っ
て、おんなじものを買いたいと言ったら、笑わ
れたのだ。
我拿起一本書,目不轉睛的凝視,開始煩惱
是不是應該放入自己的紙箱中。這是ハナケン的
書。我借來,並且很喜歡,我說想要買一樣書,
結果被笑了。


二冊揃えることはないだろ、ここにある本は
君の本でもあるじゃんか。ハナケンはそう言った。
私の本でもあるんなら、もらっていってもかまわ
ないのじゃないかと、卑しいことを考えたのだ。
沒有必要收集兩本相同的書吧,在這邊的書不也是
你的嗎。ハナケン這樣說。要是也是我的書的話,
就算拿走也沒關係不是嗎,心中想著這樣卑鄙的念
頭。


けれど結局、私はその本を本棚に戻す。この本
を引越し先に持っていくということは、ハナケ
ンの気配を持っていくということと同じことだ。
いつか私はその気配に戸惑うだろう。持ってき
たことを後悔するだろう。だから置いていく。
読みたくなったら、あたらしく買えばいい。
但結果我還是把那本書放回了書櫃。把這本
書拿到搬家的地方和把ハナケン的影子拿過去是
一樣的。有一天我也許會對於(他的)那個影子不知
所措吧。也許會後悔(把書)拿過去。所以就不帶過
去。如果想要讀的話再買新的就好了。


西の窓から橙色の日が射し込む。段ボールだ
らけの床を陽射しは斜めに切り取る。同じの、
売っちゃおうかと言ったハナケンを思い出す。
別れることになるなんて、あのとき彼も思いも
しなかったんだと思うと、少し気持ちが楽にな
る。
橙色的太陽從西邊的窗戶照射進來。陽光斜
照著充滿箱子的地板。想起”相同的書,就賣掉吧”
這麼說的ハナケン。我一想到那個時候的他想都
沒有想到會分手,心情就稍微輕鬆一點。


本棚の本が似ていたって恋は終わる。当たり
前のことだけれど、好きな人ができたと打ち明け
られたとき、私はひどくたじろいだ。裏切られた
気がした。ハナケンに、ではなくて、共通の本に、
だ。
即使書櫃的書相似,戀情也是會結束的。雖然
是理所當然的事,但對方坦率說出有喜歡的人的時
候,我非常的退縮。感到被背叛。不是被ハナケン
而是被共同的書本。

好きな人ができたからここできみと一緒に暮ら
していくことはできないんだと、まるで自分が
傷つけられたようにハナケンは言った。梅雨ど
きのことだ。今年の梅雨は、雨があんまり降ら
なかった。

因為有喜歡的人所以無法和你一起生活在這
裡,宛如自己被傷害了般,ハナケン這麼的說著,
梅雨時候的事情。今年的梅雨,沒怎麼下雨。
その人、本を読むの?

思い出すと笑ってしまう。こともあろうに、
好きな人ができたと告白されて、私がまず口に
する質問がそれだったから。え、と少し驚いた
ような顔をして、読まない、とハナケンは答え
た。読まないと思う、とちいさくくりかえした

那個人,看書嗎?

一想到就笑了出來。因為偏偏被告知說有喜歡
的人,我首先問的問題是那個。欸~做出像是有點
驚訝的表情,ハナケン回答說:不看,小聲的反覆
再說一次: 我想(她)不看。
