PLOS ONE, vol.9,e102732 (2014) Ultraviolet A-induced Cathepsin K Expresstion Is Mediated Via MAPK/AP-1 Pathway in Human Dermal Fibroblasts 2015/6/29 M1 小松 俊之 ヒト真皮線維芽細胞において、UVAによって誘導されるカテ プシンKの遺伝子発現はMAPK/AP-1経路を介している Qingfang Xu1., Wei Hou1,2., Yue Zheng1, Chen Liu1, Zijian Gong1, Chun Lu1, Wei Lai1*,Howard I. Maibach3 1 Department of Dermato-Venereology, the Third Affiliated Hospital of Sun Yat-sen University, Guangzhou, PR China, 2 Department of DershigisenmatoVenereology, the FirstTeaching hospital of Xinjiang Medical University, Urumqi, PR China, 3 Department of Dermatology, School of Medicine, University of California San Francisco, SanFrancisco, California, United States of America [背景と目的] 紫外線に起因する老化現象は、光老化と呼ばれる。光老化におけるもっとも大きな組織学的特徴は、コラーゲン線維の 分解と、変性したエラスチン様物質の蓄積であり、光線性弾性線維症(Solar elastosis)と呼ばれる。コラーゲン線維の減少 の研究は進んでおり、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の関与など様々な知見が得られている。しかし、Solar elastosisに関してはほとんど研究が進んでいない。 カテプシン K(Cat K)は、極めて強力なエラスターゼ活性を持つリソソーム内のシステインプロテアーゼであり、破骨細胞 において骨吸収に関わるなど、様々な組織の細胞外マトリックスの恒常性に関与している。そして近年、UVA照射によっ て、線維芽細胞において発現が上昇することが報告された。このことから、Cat Kがsolar elastosisに何らかの関わりを持つ ことが示唆された。 UVA照射によって、線維芽細胞においてMAPKが活性化することが知られてる。さらに、Cat Kは、他の組織において、 MAPK/AP-1経路を介して発現が誘導されるとの報告がある。そこで本研究では、線維芽細胞において、UVA照射による Cat Kの発現上昇が、MAPK/AP-1経路を介しているか検証した。 [略語] Cat K: Cathepsin K,UVA:Ultraviolet A,MAPK:Mitogen-activated Protein Kinase,JNK:c-jun N-terminal kinase ERK: Extracellular Signal-regulated Kinase,AP-1:Activator proein1 ・UVA照射から24,48,72時間後に おいて、Cat KのmRNAとタンパク 質の量がそれぞれ増加した。 ・UVA照射から48時間後において、1030J の照射強度内で、Cat KのmRNAと タンパク質の量は強度依存的にそれ ぞれ増加した。 ・p-JNK,P-p-38,p-Junは、UVA照射後 0.75-1.5時間で、有意に増加した。(そ の後減少した。) ・JNKとp38MAPKの全体量は変化がな かった。 ・Junの発現量は、0.75時間後に増加 した。 ・Fosの発現量は0.75-6時間後、まで増 加した。 ・JNKの阻害剤であるSP600125は、UVA照射によって誘導されるP-Junを有意に減少させた。(p38に影響なし) ・p38の阻害剤であるSB203580は、UVA照射によって誘導されるP-MAPKAPK2の上昇を抑制した。(JNKに影響なし) ・SP60015とSB203580は、UVA照射によって誘導されるCat KのmRNAとタンパク質の増加を抑制した。 ・SB203580は、UVA未照射時においても、Cat Kの発現を低下させた。 ・SP600125の方が、Cat Kの発現を強く抑制した。 ・JunとFosのsiRNAは、Cat KのmRNAと タンパク質の発現を低下させた。 まとめと考察 1.UVA照射によって、JNKとp38MAPKの リン酸化が促進された。(活性化) 2.JNKとp38の活性化によって、AP-1の 発現が上昇した。 3.AP-1は、Cat Kの発現を増加させた。 4.UVA照射に伴うCat Kの発現上昇は、 エラスチンの過剰な蓄積を抑え、Solar elastosisを軽減するのかも知れない。 5.若い人の線維芽細胞ではUVA照射に よってCat Kの発現は増加するが、高齢 者の線維芽細胞では増加せず、むしろ 減少するとの報告がある。 (J Investig Dermatol Symp Proc 3: 61–68.) 歳をとるとシワ形成が増加するのは、 Cat Kによる細胞外基質のターンオー バーが減少したからなのかもしれない。
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