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会社法Ⅰ
第1回
会社法1第1回
会社(法)総論
2016/4/7
千葉2016
2
「会社」の経済的構造
2016/4/7
個
人
企
業
個人
ビジネス
• 出資
• 事業経営
• 取引
• 利益
会
社
個人
会社
ビジネス
• 出資
• 事業経営
• 配当
• 取引
• 利益
千葉2016
3
個人事業と会社(1)
個人事業
出
資
事業
組合事業
出
資
出
資
会社
出
資
出 出 出
資 資 資
会社
事業
事業
2016/4/7
千葉2016
4
個人事業と会社(2)
個人事業
組合事業
(株式)会社
選
業
務
執
行
事業
執
行
株式会社
業
務
任
事業
取締役
執業
行務
事業
出資者が事業活動を行うのが原則
2016/4/7
千葉2016
所有と経営の分離
5
会社の経済的合理性
I. 会社制度の存在意義
 端的に言えば「富国強兵」
より多くの利潤を稼得して国家を豊かにすること
II. 会社の(国家にとっての)メリットとデメリット
1. メリット
① 多数の出資者からの出資による資本の拡大
② 「出資」と「株主有限責任」による資本調達コストの低
減
③ 専門的経営者への経営の委任による効率的経営
2. 会社制度のデメリット
 エージェンシー・コストの発生
2016/4/7
千葉2016
6
エージェンシー問題
• 意義
 委任者(プリンシパル)と受任者(エージェント)の間で
おきる問題
〔例〕株主=取締役、依頼者=弁護士、患者=医師、国民=政
治家、政治家=官僚
 エージェントはプリンシパルの利益のために行動すべ
きなのに、エージェント自身の利益を優先して行動す
る(合理的経済人ならそうする)
利益相反
プリンシパル
2016/4/7
利益相反
エージェント
千葉2016
取引相手
7
• 原因
 委任者(プリンシパル)が受任者(エージェント)
の行動を把握できない(情報の非対称性)
※情報自体を把握できない場合もあれば、情報は得ら
れてもその意味を理解できない場合もある
• 対策
 委任者が受任者を監視する(モニタリング)
 受任者が委任者のために働くような動機付けを
する(インセンティブ)
 報酬などによるプラスのインセンティブ
 損害賠償などによる抑止
2016/4/7
千葉2016
8
• エージェンシー・コスト
=エージェンシー問題(とその予防や解決)のため
に委任者が支払う「コスト」
 エージェンシー問題で失われる委任者の利益
 モニタリングのコスト
 インセンティブのコスト(=報酬)
⇒委任者の立場からすると、エージェンシー・コスト
を極小化することが利益になる
⇒経営者(エージェント)のコントロールが必要
2016/4/7
千葉2016
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会社法の立法目的
I. 教科書的な説明
 会社における私法上の利害関係の調整
II. 上記の検討からの結論
① 低コストの資金調達
② エージェンシー・コストの低減
※「株主保護」「債権者保護」は①から導かれるに過ぎない
2016/4/7
千葉2016
10
会社とステイク・ホルダー
古典的会社観
現在の会社観
株主
株主
所
有
経営者
銀行
会社
資
金
配
当
経営者
会社
取引先
従業員
債権者
2016/4/7
千葉2016
11
会社法1第1回
(株式)会社の基本概念
2016/4/7
千葉2016
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会社の定義
I.
法的な会社の定義
①営利 ②社団 ③法人
II.
それぞれの性質
1. 営利性
① 対外的活動によって利益を獲得し
② その利益を構成員に分配すること
2. 社団性
3. 法人性
⇒2つの大きな論点
2016/4/7
千葉2016
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会社の権利能力の範囲
条文
I.
 法人の権利能力の範囲は定款所定の目的に限
定(民34)
⇒英国のultra vires(能力外)理論の輸入(ただし英国では
廃止済み)
問題点
II.
 権利能力の範囲外=会社に権利義務帰属せず
⇒善意の相手方も保護されず取引の安全を大きく害する
2016/4/7
千葉2016
14
III. 検討
i. 判例(多数説?)
(目的の範囲は)「目的を遂行するうえに直接
または間接に必要な行為(も)・・・すべてこれ
に包含される・・・。そして必要なりや否や
は、・・・客観的・・・、抽象的に判断され」る(最
判S27.2.15百-1等)
⇒会社にも民34の適用はあるが、実質骨抜き
ii. (旧)有力説
 民34は公益法人の規定であり、会社には
適用がない
2016/4/7
千葉2016
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法人格否認の法理
趣旨
I.
 法人の形式的独立性を認めることが正義・衡平に
反する場合に、法人とその背後の者(支配株主や
経営者等)とを同一視すること
財
産
移
転
2016/4/7
設
立
千葉2016
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II.
要件(最判S44.2.27百-3)
① 法人格の濫用(濫用事例)
• 背後者が会社の法人格を意のままに支配し(支配要件)、
かつ違法な目的で法人格を利用(目的要件)
② 法人格の形骸(形骸事例)
• 法人と背後者が全く同一であるような場合。具体的には、
㋐業務活動の混同、㋑義務・財産の混同、㋒会計の混
同、㋓会社法の強行法規不遵守
III.
効果
1. 会社法上の効果
 当該事案限りかつ当事者間に限って、法人格を
否認し、会社と背後者を同一視
2016/4/7
千葉2016
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2. 手続法上の効果
i.
既判力の主観的範囲については法人格否認
の法理の適用はない(最判S53.9.14民訴百89)
⇒A会社と背後者Bがいる場合に、Bを被告とする勝訴
判決について、A会社を債務者とする執行文付与の
申立てはできない
ii. 民事執行における第三者異議の場面では、法
人格否認が適用される(最判H17.7.15百-4)
⇒A会社に対する強制執行において、背後者Bの第三
者異議の申立ては許されない
※第三者異議は執行を受忍すべき地位にないこと
の主張だから、執行力の範囲の問題ではない
2016/4/7
千葉2016
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会社の種類
根拠法
種類
株式会社
会社法
保険業法
2016/4/7
取締役会
設置
取締役会
非設置
責任
所有と経営
の分離
株式の発行
備考
分離
間接有限
可能
事実上一致
合名会社
直接無限
一致
合資会社
直接無限
直接有限
一致
合同会社
間接有限
一致
相互会社
間接有限
特殊会社
間接有限
千葉2016
不可能
持分
会社
分離
不可能
生保
一応分離
ものによる
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株主(社員)の責任
 「責任」=会社債権者に対する会社債務の弁
済義務の有無
1.
無限責任と有限責任
 無限責任 ・・・会社債務の(会社が払いきれない)全額
について社員が弁済の責任
 有限責任 ・・・社員は自らの出資を限度として会社債務
の弁済責任を負うのみ
※合資会社の有限責任社員を除いて出資は履行済みなの
で、実質的には出資が返還されないにとどまる
2. 直接責任と間接責任
 直接責任 ・・・会社債権者が社員に対して直接に請求
可
 間接責任 ・・・会社債権者は会社に対してのみ請求可
2016/4/7
千葉2016
20
会社の種類と社員の責任の態様
直接責任
2016/4/7
無限責任
• 合名会社社員
(会576Ⅱ,580Ⅰ)
• 合資会社無限責任社員
(会576Ⅲ,580Ⅰ)
有限責任
• 合資会社有限責任社員
(会576Ⅲ,580Ⅱ)
千葉2016
間接責任
• 合同会社社員
(会876Ⅳ,580Ⅱ)
• 株主(会104)
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(株式)会社とステイク・ホルダー
最も狭い「会社」
(会330等)
債権者
社員契約
会
社
委
任
契
約
株主
通常の「会社」
(会204Ⅰ等)
効果帰属
法律行為
最も広い「会社」
(会429の議論)
取締役
2016/4/7
取引
千葉2016
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会社法1第1回
株式会社総論
2016/4/7
千葉2016
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株式会社の特色
 株主有限責任
 株式制度
 株式譲渡の自由 ⇒制限可(会107Ⅰ①
等)
 株券の発行 ⇒原則廃止
 所有と経営の分離 ⇒取締役会設置会社
のみ(会295Ⅱ)
2016/4/7
千葉2016
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株式会社の種類と機関の分化
機関の基本的な分化(三権分立)
決定
執行
2016/4/7
監督
千葉2016
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公開会社・非公開会社の別と
「所有と経営の分離」
株式譲渡
機関の分化の有無
所有と経営 株主総会
取締役会
の分離
の権限
監督機関
公開会社
(会2⑤)
譲渡制限がないか、
一部株式に譲渡制限
必然
限定
(295Ⅱ)
必置
(327Ⅰ)
必置
(327Ⅱ)
非公開会社
(会2⑤反対)
全株式に譲渡制限
一致でも
かまわない
限定なし
(295Ⅰ)
任意
任意
• 公開会社においては株主は自由に会社から離脱で
きるため、経営に対する意欲、能力に期待できない。
よって、経営は出資者とは異なる専門家に委託せ
ざるを得ない(所有と経営の分離)〔会331Ⅱ参照〕
• 非公開会社は任意に取締役会を設置して所有と経
営を分離してもよい
2016/4/7
千葉2016
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※□は規定上の本則
全
株
式
譲
渡
制
限
2016/4/7
公
開
会
社
所
有
と
経
営
の
分
離
株
主
の
経
営
無へ
の
関
心
非
公
開
会
社
所
有
と
経
営
の
一
致
株
主
の
経
営
参
加
千葉2016
重
要
決な
定経
は営
経事
営項
陣
重
決要
定な
は経
株営
主事
総項
会
株主総会権限
は限定
取締役会制度
法定
株主総会権限
に限定なし
取締役会制度
は不要
監
督
機
関
必
置
監
督
機
関
不
要
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株式会社の機関構成(主要なもの)
取締役会
非設置
取締役
+監査役
+会計監査人
取締役会
+監査役
監査役会設置
監査等委員会
設置
指名委員会等
設置
総会の権限
万能
限定
業務執行の
意思決定機関
取締役
取締役会*
取締役会/
執行役
業務執行機関
取締役
代表取締役
(代表)執行役
業務監査
取締役
取締役/
監査役
取締役会/
監査役
取締役会/
監査役会
取締役会
(監査等委員会)
取締役会
(監査委員会)
会計監査
なし
会計監査人
監査役
会計監査人
会計監査人
会計監査人
会計参与
オプション
会計参与
監査役会
会計参与
会計監査人
非公開
選 非公開
択
(大)
可
公開
能
公開(大)
○
○
○
○
×
○
△
(会計監査人)
○
×
×
○
○
×
×
×
○
*監査等委員会設置会社における業務執行の決定は、一定の要件を満たせば代表取締役に委任可
2016/4/7
千葉2016
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取締役会設置会社の統治機構
監査役設置会社
代表取締役
取締役会
監査等委員会設置会社
代表取締役
指名委員会等設置会社
執行役
取締役会
取締役会
取締役
監査役
株主総会
2016/4/7
監査等委員
でない取締役
監査等委員
である取締役
株主総会
千葉2016
取締役
株主総会
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