電子回路 放射線計測エレクトロニクスの信号処理の為の アナログ電子回路の基礎 第六回 村上浩之 Jun.23. 2010 目次(4) • 増幅器の原理的なモデル – 原理的な増幅器の等価回路 – 増幅器の構成 – 利得帯域幅積 • 多段増幅回路 – 多段増幅器が必要な理由 – 多段増幅器の構成 Jun.23. 2010 目次(5) • 増幅回路 – ミラー効果 – カスケード接続 – 開ループ利得 • • • • Jun.23. 2010 開ループ利得を大きくする方法 定電流負荷インピーダンス ブートストラップ 正帰還 増幅器の原理的なモデル Zs 〜 Vs -gmVi Vi 入力信号電圧Viは Z i Vi Vs Z Z s i Zi Jun.23. 2010 Vo ZL Z o Z L Vo gmVi Z o Z L Zo 出力電圧はViは Zs<<Zi ならば Vi Vs Zo<<ZL ならば Vo gmVi Zo ZLの利得に対する影響 増幅器の原理的なモデルでは ZoとZLが並列に」接続されるので 利得が変化するので実用的には好ましくない。 ZoとZLの間に緩衝増幅器を入れてZLが増幅器の利得に影響しない 様な構成にする。 理想的な緩衝増幅器は利得は+1、入力インピーダンス無限大、 出力インピーダンスゼロ、利得帯域幅積無限大の増幅器ですが 実際には理想通りでは無い。 Zs 〜 Vs -gmVi Vi Zi Zo Vo Jun.23. 2010 Zi Zo 0 G 1 緩衝 増幅器 このブロックで増幅器が構成されている。 Vo ZL 増幅器内部の負荷インピーダンス Zo Z o はRoとCoの並列 Ro Ro Co 接続したもの Ro Co Co Ro Co C Zo Zo 1 Ro 2 1 Zo sCo Jun.23. 2010 Aの領域 ωCは高域遮断 角周波数 C Bの領域 C 利得帯域幅積 G( f ) Vs<<Vi 、 Zo<<ZL ならば 105 G0 G( f ) gm Z o ( f ) Vi ( f ) G G GC 0 2 100 Vo ( f ) Ro Co Bの領域 10 fC 6 10 fT f 10 9 G( f ) G0 gm Ro G( fC ) GC Ro Co 1 103 Ro Co Aの領域 102 G( f ) gm Aの領域 G0 2 1 2fCo Bの領域 B領域の利得は周波数に逆比例する 周波数が2倍になると利得は半分になる。 gm 利得帯域幅積(GBW) fT 2Co Jun.23. 2010 多段増幅回路 • 増幅回路の利得帯域幅積は一定なので利得を大きくすると 帯域幅が狭くなる。 – 利得帯域幅積は増幅器の個性として構造で決まってしまうので1段 の増幅器では帯域幅を決めると利得が決まるので利得を大きくする ためには複数の増幅器を縦続接続して多段で増幅しないと利得を大 きくできない。 • 単純な増幅器の伝達関数はRC積分回路とK倍の理想増幅器 の組み合わせと考えて良い。 • N段増幅器の伝達関数G(s)は1段の増幅器の伝達関数G1(s) をN回掛けたものになる。 Jun.23. 2010 多段増幅回路の等価回路 K1倍の 理想増幅器 K2倍の 理想増幅器 R1 +K2 +K1 KN倍の 理想増幅器 R2 C2 C1 RN +KN CN 1 2 N G(s) K1K 2 K N s 1 s 2 s N K1 K2 KN CN N G(s) K N s C Jun.23. 2010 、 但し N 1 2 N C とすると 利得はA領域でKN倍となり、 B領域で利得は周波数 f のN乗に逆比例する。 1 RN CN 多段増幅器の利得帯域幅積 高域遮断周波数fC1、 利得104の増幅器(N=1,K=104) G 105 高域遮断周波数f ’C1、 利得104の増幅器(N=4,K=10) 利得 104 103 高域遮断周波数fC、 利得10の増幅器(N=1,K=10) 102 10 1 10 103 fC1 f 105 106 f ’C1 C 108 104 107 周波数(Hz) f 109 遮断周波数と利得が同じ 増幅器をN段接続した時の 遮断周波数ωC’ は 2 C N N 2 2 C C 1 N C 2 1 C Jun.23. 2010 増幅回路のミラー効果 帯域幅を制限する入力回路側の要素 CdgはFETのゲートとドレイン 間の静電容量 FET増幅回路の場合 Rs Cdg 〜 Vs Vi Rig Csg Zo Vo ZL ZoZL Zo ZL Z Z Vio Vi Vo 1 gm o L Vi GioVi Z o Z L Vo gmVi Qgd CgdVio GioCgdVi Z o Z L Ci Csg Cdg 1 gm Z Z o L 見かけの入力容量がCdgのGio倍に なった様に見える。 ミラー効果 信号源の内部抵抗がRSとすると入力の高域遮断角周波数は1/RS(Csg+Cds・Gio)に低下する。 Jun.23. 2010 ミラー効果の低減策 • ミラー効果に依る入力容量の増加はCdg・Gioなのでミラー効 果を低減するにはCdgを小さくするか、Gioを小さくする。 – Cdgは能動素子の固有の特性なのでCdgの小さな素子を選択する。 – Gioを小さくする様に回路構成を工夫する。 • Gioを小さくするにはZLを小さくする。 – ZL小さくすると利得が小さくなるので次の段で大きなZL接続して利得を 確保する。 – 次の段の出力と入力の間の静電容量が小さくなる様に回路を組み立 てる。 Jun.23. 2010 カスケード接続増幅回路 トーテムポール回路 Q1のドレイン電圧VQ1dは +V VQ1d gmVi rQ 2e rQ2はQ2のエミッタ抵抗で 数十Ω程度の値になる。 RL CQ2Cg VQ2o Q2 Cdg RS Vi 〜 VS VQ1d VQ2B Q1のミラー効果に依る入力容量は CQ1m 1 gm rQ2e Cdg となり、Cdgの1〜2倍程度になる。 Q1 Q2とQ1は幾何的に離れているので CQ2Cgを非常に小さな値にできるので ミラー効果は小さくなる。 二つの能動素子を縦に並べて接続して一の能動素子として 動作させる形状からトーテムポール回路とも呼ばれている。 Jun.23. 2010 開ループ利得を大きくする回路構成 負帰還増幅器では大きな開ループ利得が必要になる • 開ループ利得Goは Go gm Zo gmは能動素子の特性で決まる量で数mSから数十mSである。 Goを大きくするにはZoを大きくする必要がある。 • 開ループ利得を大きくする為の回路構成 1. ブートストラップ 2. 定電流負荷 3. 電流正帰還 Jun.23. 2010 ブートストラップ回路 Vo Vo A点の電圧変化分ΔVとするとB点 の電圧変化分はコンデンサーの 容量が十分に大きければVoの変 化分に等しく αΔV となる。 αはコレクター接地増幅器の 利得で1に近い値である。 A Ro Vo’ Vo B CB A点の電圧がΔV変化した時抵抗Roの 両端の電位差は近似的には変化しな いのでRoに流れる電流は一定になる ので無限大になった様に見える。 A点の電圧が変化した時B点の電圧がA点に追従し て変化するのでB点の電圧が編み上げ靴の靴紐を 編み上げる様に変化のでブートストラップ回路と呼 ばれている。 Jun.23. 2010 定電流負荷回路 定電流回路の出力インピーダンスは 非常に大きいのでは開ループ利得 は無限大に近づく。 I1 I2 定電流回路 I1=I2 Jun.23. 2010 カレントミラー回路も定電流回路の 一種なので定電流負荷回路として 集積回路では開ループ利得を大き くする為に多用されている。 電流正帰還 R fp 1 I1 I2 2 I2 Ro re 3 R fp R fp I2 Q2 I1 Q1 αI2 Q3 R fp re 3 2 Ro Rfp Ro Ro I2 1 2 r R e3 fp I2 ならば となるので 開ループ利得 G は Jun.23. 2010 G Vo gm 2I2Ro Vi I1 Jun.23. 2010 閉ループ利得 • 閉ループ利得は帰還増幅器の開ループ利得が十分に大き ければ帰還回路網で決められる。 • 閉ループ利得は増幅器(帰還増幅器)の伝達関数で表され る。 • 伝達関数の次元は – – – – 伝達電圧比 ・・・・ 電圧直列帰還 伝達電流比 ・・・・ 電流並列帰還 伝達インピーダンス ・・・・ 電圧並列帰還 伝達コンダクタンス ・・・・ 電流直列帰還 Jun.23. 2010 Jun.23. 2010 入力・出力インピーダンス • 電圧直列帰還 – 入力インピーダンス – 出力インピーダンス • 電圧並列帰還 – 入力インピーダンス – 出力インピーダンス • 電流直列帰還 – 入力インピーダンス – 出力インピーダンス • 電流並列帰還 – 入力インピーダンス – 出力インピーダンス Jun.23. 2010
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