2012年11月19日 北里大学チーム医療論講義 大学病院におけるチーム医療 海野信也 北里大学病院長 チーム医療推進の流れ • 2008年9月：厚生労働省「安心と希望の医療確保ビジョン」 具体化に関する検討会 中間とりまとめ – 将来的には50％程度医師養成数を増加させることを目指す – コメディカルが専門性を持ち、キャリアアップできる仕組みが必 要。そうしたことへのインセンティブの付与や支援が必要である。 同時に、コメディカルの数を増加させることについて具体的な 検討が必要 – チーム医療を実践することや各職種が専門性を発揮し、患者 のためのよりよい医療が行われる体制がとられることを前提に、 その職種でなくても行いうる業務を他の職種に担わせるスキル ミックスを進める • 2009年9月：チーム医療推進協議会 発足 • 2010年3月：チーム医療の推進に関する検討会 報告書 「チーム医療」推進の背景 • チーム医療とは – 「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門 性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに 連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供 すること」 – 質が高く、安心・安全な医療を求める患者・家族の声の高まり – 医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲 弊 – 医療スタッフの不足感 • 医療の在り方が根本的に問われる今日、「チーム医療」は、 我が国の医療のあり方を変え得るキーワードとして注目を 集めている。 2010年3月：チーム医療の推進に関する検討会 報告書 チーム医療推進協議会 • 公益社団法人 日本医療社会福祉 協会（医療ソーシャルワーカー） • 特定非営利活動法人 日本医療リン パドレナージ協会 • 公益社団法人 日本栄養士会 • 公益社団法人 日本看護協会 • 一般社団法人 日本救急救命士協 会 • 一般社団法人 日本言語聴覚士協 会 • 一般社団法人 日本作業療法士協 会 • 日本細胞診断学推進協会細胞検 査士会 • • • • • • • • • 公益社団法人 日本歯科衛生士会 日本診療情報管理士会： 一般社団法人 日本病院薬剤師会 公益社団法人 日本放射線技師会 公益社団法人 日本理学療法士協 会 一般社団法人 日本臨床衛生検査 技師会 公益社団法人 日本臨床工学技士 会 一般社団法人 日本臨床心理士会 一般社団法人 日本病院会 • 患者会 あすなろ会 • 患者会 山梨まんまくらぶ チーム医療がもたらす具体的な効果 • 疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など 医療・生活の質の向上 • 医療の効率性の向上による医療従事者の負 担の軽減 • 医療の標準化・組織化を通じた医療安全の 向上 2010年3月：チーム医療の推進に関する検討会 報告書 「チーム医療」推進のための方向性 • 各医療スタッフの専門性の向上 縦方向 • 各医療スタッフの役割の拡大 横方向 • 医療スタッフ間の連携・補完の推進 2010年3月：チーム医療の推進に関する検討会 報告書 北里大学新病院プロジェクト 新病院棟 地下一階 地上14階 延床面積 93,000m2 病床数 新病院棟 761床 新棟 272床 屋上ヘリポート 2012年9月26日 現場の朝礼に参加 2012年10月16日現在 6階工事中 大村智 北里研究所顧問・北里大学名誉教授 が文化功労者に • 2012年度の文化功労者が10月30日付で発表され、大 村智北里研究所顧問・北里大学名誉教授が選ばれま した。 • 選考理由：数々の有用な微生物由来の生理活性物質 を発見し、人類の健康に貢献した。 • 抗寄生虫薬イベルメクチン： – 熱帯地方の風土病オンコセルカ症およびリンパ系フィラリ ア症に極めて優れた効果を示し、中南米およびアフリカに おいて毎年約2億人余りの人々に投与され、これら感染 症の撲滅に貢献している。 – 世界中で年間3億人以上の人々が感染していたが、これ まで治療薬のなかった疥癬症および沖縄地方や東南ア ジアの風土病である糞線虫症の治療薬としても威力を発 揮している。 学校法人北里研究所 北里大学病院・北里大学東病院 ー両病院併せて一つの病院機能ー 総病床数 1033床 1971年7月 開院 総病床数 580床→ 一般病床（運用） 367床 治験病床 30床 1986年4月 開院 北里研究所病院 （東京都港区白金 ２９４床） 北里研究所 (１９１４年創立） 北里研究所メディカルセンター病院 （埼玉県北本市 ４４０床） 学校法人北里研究所 北里大学 学校法人 北里研究所の歴史 学校法人 北里研究所とは どういうところか • 民間 • 公衆衛生上の貢献 – 感染症との戦い • 北里柴三郎：破傷風菌純粋培養、免疫血清療法の確立、ペスト菌の 発見 • 志賀 潔：赤痢菌の発見 • 大村 智：イベルメクチンの開発 • 北里研究所 生物材料研究所 「ワクチンの北里」 • 産学連携 – 臨床研究 First in Human, 第一相治験 • チーム医療 – 専門看護師 北里大学病院の理念 • 患者中心の医療 – 安全で信頼される患者さんのための医療 – 高品質な医療 • 共に創り出す医療 – 「チーム医療」 • 医療チームの一員として、お互いの立場を理解し 尊重する • 情報を共有し、目標に向かって協働する 北里大学病院を構成する職員 （平成24年度） • • • • • • • • • • • • • 医師 看護師 薬剤師 放射線技師 臨床検査技師 臨床工学士 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 （管理）栄養士 病態調理師 調理師 調理補佐 509名 992名 59名 63名 101+3名 32名 13+1名 5名 5+1名 25+3名 5名 14名 0+19名 • 視能訓練士 9+2名 • メディカルフォトグラファー 1 名 • メディカルソーシャルワーカー 6+2名 • 臨床心理士 3名 • 保育士 2+2名 • 医療技術員 6名 • 看護補佐 68+5名 • 事務職員 192+38名 • その他（技能職） 4+23名 • 合計 2114+99=2213名 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担当）ー – – – – 副院長（人事・治験・臨床研究担当） 副院長（教育・危機管理担当） 副院長（経営・新病院・広報担当） 副院長（CS・チーム医療担当） – 院長補佐（チーム医療担当） – 院長補佐（情報・システム担当） – 院長補佐（労働環境改善担当９ – – – – – – – 経営企画室 医療情報管理室（情報システム管理課 診療情報管理課） 臨床研修センター 医療安全管理室 感染管理室 キャリア形成センター 看護コラボレーションセンター • 北里大学健康管理センター 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担当） – 診療部 – 看護部 – 事務部 – 治験管理室 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担当）ー診療 部 – 総合診療部 – 内科系部 • 内科部 – – – – – – – – • • • • 消化器内科 内分泌代謝内科 循環器内科 腎臓内科 血液内科 神経内科 膠原病・感染内科 呼吸器内科 精神神経科 皮膚科 放射線画像診断科 放射線治療科 – 外科系部 • • • • • • • • 外科 心臓血管外科 呼吸器外科 整形外科 形成外科・美容外科 脳神経外科 眼科 耳鼻咽喉科 – • • 神経耳科 泌尿器科 麻酔科 – 心臓血管センター – 呼吸器センター – 脳血管センター – 母性系部 • • 産科 婦人科 – 小児系部 – 周産母子センター（産科部門 新生児 部門 産科麻酔部門） – 救命救急センター部 • • • • • • • • RST・RRT室 救命救急外来 救命救急病棟 ICU・CCU 熱傷センター 高気圧酸素治療 救急放射線診断 中毒センター – 中央診療系部 • • • • • • • 放射線部 臨床検査部 病院病理部 診療施設部 薬剤部 栄養部 患者支援センター部 – 移植医療支援室 – 保険診療指導室 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担 当）ー診療部 – 中央診療系部 • 放射線部 – – – – 放射線診断 放射線治療 各医学 技師 » 診断I担当係 » 診断II担当係 » 診断III担当係 » 診断IV担当係 » 核医学担当係 » 治療担当係 – 管理担当係（放射線管理・安 全管理） – 中央診療系部 • 臨床検査部 – 検体検査 » 検査情報室 » 緊急検査室 » 血液検査室 » 一般検査室 » 細菌・ウイルス検査室 » 染色体検査室 » 免疫化学検査室 – 生理検査 » 循環機能検査室 » 循環超音波検査室 » 呼吸機能検査室 » 腹部・血管超音波検査室 » 聴覚・平衡機能検査室 » 脳波検査室 » 神経・筋機能検査室 » 内視鏡検査室 – 技師 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担 当）ー診療部 • 病院長ー副院長（診療担 当）ー診療部 – 中央診療系部 – 中央診療系部 • 病院病理部 • 診療施設部 – 剖検病理 » 剖検係 » 人体病理係 – 外科病理 » 外科病理係 » 細胞診係 » 特別検査室 – 技師 – – – – 中央手術部 血液浄化センター部 輸血センター部 中央滅菌材料部 – リハビリテーションセン ター – MEセンター部 – 緩和ケア室 – 遺伝診療部 – 化学療法センター部 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担 当）ー診療部 – 中央診療系部 • 薬剤部 – 調剤課 » 入院調剤課 » 外来散剤課 » 外来錠剤課 » 調剤監査課 – 薬品管理課 » 薬品管理係 » 統計・麻薬係 » 病棟係 – 製剤課ー製剤係 – 医薬品情報試験課 » 医薬品情報係 » 医薬品試験係 – 中央診療系部 • 栄養部 – 臨床栄養科 » 栄養管理係 » 臨床栄養係 » 治療食調理係 – 予防栄養科ー栄養指導係 – 管理係 北里大学病院の組織 • 病院長ー副院長（診療担当） – 看護部 • 看護I系 (3A, 3B, 3C, NICU, 4A, 4B, 4C, 内視鏡検査室、患者支援センター部、中央滅菌 材料部、中央手術部) • 看護II系 (5A, 5B, 5C, 6A, 6B, 6C, 放射線部、外来化学療法センター部、外来) • 看護III系 (8A, 8B, 8C, 9A, 9B, 9C, 5S, 5N, 6S, 6N, 7S, 7N, 血液浄化センター部) • 看護IV系 (7A, 7B, 7C, 4S, 4N, 救命救急センター、ICU CCU、リハビリテーションセンター 部) • 教育担当 • 新病院担当 • 夜勤 – 事務部 • 総務課 （庶務係 文書係） • 広報課 • 人事課 （人事・労務係 教育研修係） – 職員募集センター （募集係） • • • • 給与課 (給与係 厚生係） 経理課 （司計係 出納係） 資材課 医事課 （入退院係 第一保険係 第二保険係 第三保険係 収入係 中央診療医事 係） • 環境整備課 （衛生係 搬送係 家政係） – 治験管理室 大学病院ー巨大病院というもの • 専門職が多数集まっている。 • 多数の部署に分かれている。 – 専門職ごとにそれぞれの部署がある • ラインが責任の所在を明らかにする。 – 情報伝達は基本的にラインに沿って行われる。 – 指示・実施 – 報告 • 関係部署は相互に連絡・相談に全体として円滑に業 務を遂行する • 報告・連絡・相談（縦と横） 北里大学病院の自慢 • 「沢山の患者さん」：豊富な症例 • 臨床の質の高さ • 特色のある医療 – – – – 内視鏡手術：外科、呼吸器外科、泌尿器科 救命救急医療 眼科 無痛分娩 – 集学的がん治療センター – 救命救急センター – 周産母子成育医療センター • 専門性の高い看護 – 専門看護師・認定看護師 北里大学病院ニュース2012年4月号 病院長就任挨拶(抜粋） • 「縦のライン」と「横のネットワーク」： – すべての職員が、病院の基本的な組織構造とその役割に関するより深い 理解に基づいて各部署での専門的な業務を行うこと。 – 巨大組織では、自らの業務に専念するあまり他の部署の業務に対する無 知、無関心が発生しやすくなりやすい。 – 病院は専門職の集まり。他の部署の専門家の活動について理解を深め、 相互に尊重しあい、潜在能力を活用することによって、仕事ははるかにや りやすくなり、より質の高い医療を提供することが可能になる。 – 「縦のライン」の大切さを理解しつつ「横のネットワーク」とうまくバランスを とることが必要。 – 病院として組織の活性化に取り組んでいきますが、職員各自が自覚的に 行動していく必要がある。 • 「チーム医療」の推進： – 「医療の質の向上」と「医療提供の効率化」は、病院運営において基本的 な前提となる目標。 – 限定的な人的資源を前提とする場合には、医療提供を効率化して、専門 職の負担を軽減することなしには、質の向上は現場負担増に直結する事 になりかねない。 – 業務分担の見直しを含め、積極的なチーム医療の展開を行うことが、新し い北里大学病院へと脱皮するために必要不可欠。 北里大学病院 平成24年度ー平成26年度の基本方針 • 業務分担の見直し: – 多職種の共働 collaborationにおける先進的な取り 組みによる診療の質 and/or 効率の改善 – チーム医療：相互理解 – 専門看護師：専門性の高い業務の試行的共働・委譲 – 診療アシスタント • 業務の適正な評価 – 過剰労働の適正評価 2012年4月 北里大学病院経営会議 専門看護師と認定看護師 （日本看護協会） • 専門看護師： – 複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水 準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野 の知識及び技術を深め、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護 学の向上をはかる。 – 11分野：がん看護・精神看護・地域看護・老人看護・小児看護・母性 看護・慢性疾患看護・急性・重症患者看護・感染症看護・家族支援・ 在宅看護 • 認定看護師： – 特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準 の高い看護実践ができ、看護現場における看護ケアの広がりと質の 向上をはかる。 – 21分野：救急看護・皮膚・排泄ケア・集中ケア・緩和ケア・がん化学療 法看護・がん性疼痛看護・訪問看護・感染管理・糖尿病看護・不妊症 看護・新生児集中ケア・透析看護・手術看護・乳がん看護・摂食・嚥 下障害看護・小児救急看護・認知症看護・脳卒中リハビリテーション 看護・がん放射線療法看護・慢性呼吸器疾患看護・慢性心不全看護 北里大学病院の専門看護師 21名 日本全体 所属セクション （795） 専門分野 がん看護 （12名） 327 患者支援センター・外来化学療 法センター・内科総合外来・外 科外来・放射線部・褥瘡管理 者・個室病棟・婦人科病棟・泌 尿器科病棟・耳鼻咽喉科病棟・ 血液内科病棟 精神看護 （1名） 116 精神科外来 （1名） 85 救命救急センター （1名） （2名） （2名） 14 38 73 個室病棟 産科病棟 小児科病棟 急性・重症患 者看護 家族支援 母性看護 小児看護 北里大学病院の認定看護師 30名 専門分野 所属セクション 救急看護 （4名） 看護部・ICU・救命救急センター 集中ケア （4名） RST・ICU・NICU 新生児集中ケア （4名） NICU・看護部 感染管理 （4名） 感染管理室・脳神経外科病棟 皮膚・排泄ケア （4名） 褥瘡管理者・外科病棟・泌尿器科外来 がん化学療法看護 （3名） 化学療法センター・血液内科病棟・消化器内科病棟 手術看護 （1名） 中央手術室 乳がん看護 （1名） 外科病棟 糖尿病看護 （2名） 内科専門外来 摂食・嚥下障害看護 （1名） 脳神経外科病棟 脳卒中リハビリテーション看護 （1名） 脳神経外科病棟 慢性心不全看護 （1名） 心臓血管センター 日本全体 10878名 代表的なチーム医療部門の構成と業務 患者支援センター部 • 医師 1名 • メディカルソーシャルワー カー 8名 • 保健師 2名 • 看護師 5名 • 事務職員 5名 • 入院支援、退院・転院支援 感染管理室 • • • • • 医師 専任1名 兼任1名 看護師 専従2名 兼任 1名 臨床検査技師 専従1名 薬剤師 兼任1名 事務職員 専従1名 兼任1名 • 院内感染ラウンド • 抗菌薬の届け出制度 • 院内感染アウトブレイク発生 時の対応 代表的なチーム医療部門の構成と業務 医療安全管理室 • 医師 3名（兼務） • 看護師（医療安全管理者） – 3名（2名） • 薬剤師 1名 • 事務職員 2名 • インシデント・アクシデント 対応、対策支援、 • 再発予防策の策定 • 医療安全研修 RST/RRT室 • Respiratory support team • • • • 医師 兼任1名 看護師 専従１名 理学療法士 専従1名 事務職員 専従1名 • 院内 人工呼吸器装着患者ラウ ンド・診療看護への支援 • RST講習会の実施 • BLS講習会の実施 • Rapid response team これからの北里大学病院と「チーム医療」 • 大学病院ー特定機能病院の役割は新しい医療を創 造し、それを提供する人材を養成し、社会に供給する こと • 多くの専門職養成を行っている北里大学は、わが国 のチーム医療推進の最先端を担うべき立場であり、 北里大学病院はそれを実践する現場。 • 各専門職種の専門性の向上と人材養成システムの確 立 • 相互理解に基づいた各業種の権限の拡大・相互補完 の推進 • 業務内容の適正な評価
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