平成23年度 薬理学PBL 急性リンパ性白血病 (Acute Lymphocytic Leukemia:ALL) 整理番号が24で割り切れるグループ 24大西竜平 48鈴木宏隆 72能瀬勇馬 96元生和宏 造血器腫瘍(血液がん) 白血病 – 急性白血病 • 骨髄性 • リンパ性 – 慢性白血病 • 骨髄性 • リンパ性 悪性リンパ腫 – ホジキンリンパ腫 – 非ホジキンリンパ腫 多発性骨髄腫 白血病治療の主要手段 1. 化学療法 – 抗白血病薬(いわゆる抗がん剤)を用いた治療。 2. 造血幹細胞移植 – 以前、骨髄移植と呼ばれていたが、現在では、骨髄以 外に、末梢血幹細胞や臍帯血による移植も一般的に なった。 3. 分子標的療法 – 特定の分子を標的としてスクリーニングする、あるいは デザインすることで開発された薬物を用いた治療。狭義 には、がんの治療薬として記載されているが、広義には、 さまざまな疾患に対して多数の試みがなされている。メ チル酸イマチニブ(商品名:グリベック)など。 化学療法 寛解導入療法 – 完全寛解を目指す • 完全寛解とは、骨髄で白血病細胞の占める割合が5%未満で正常の 白血球、赤血球、血小板の造血が回復し、体内を流れる血液中には 白血病細胞が認められず白血球と血小板が回復する状態。 寛解後療法 • 地固め(強化)療法 • 維持療法 – 一度達した寛解期間をできるだけ維持することを目指す • 体内に残っている微量の白血病細胞をできる限りゼロに近づけて、 再発を防ぐ。 • 中枢神経白血病予防治療 – 中枢神経白血病を予防する目的 • 腰椎穿刺による抗白血病薬の髄腔内投与(髄注)を行う。 寛解導入療法 急性リンパ性白血病(ALL) 急性リンパ性白血病とは… リンパ球系の前駆細胞が腫瘍化して発生した白血 病。増殖と浸潤が主に骨髄・末梢血であることによ り、リンパ腫と区別される。 原因 多くは不明。リンパ球系の前駆細胞に染色体異常 を含むなんらかの遺伝子異常が生じ、分化・成熟の 障害、そして増殖・生存の亢進が引き起こされた結 果、幼若細胞(芽球)が増加する腫瘍が引き起こさ れる。 急性リンパ性白血病(ALL) 臨床症状 白血病細胞の増殖によるもの 正常造血の抑制の結果起こるもの •赤血球減少による貧血症状(息切れ、動悸など) •血小板減少による出血傾向(歯肉出血、鼻血など) •好中球減少による感染症(肺炎、敗血症など) 腫瘍細胞崩壊に伴うもの(治療開始後に著明となる場合が多い) 予後因子 年齢 •小児、若年成人(15歳から20歳ぐらいまで)、成人、高齢者 初診時白血球数 染色体 •フィラデルフィア染色体陰性かフィラデルフィア染色体陽性か、など 治療反応性 シクロホスファミド(商品名:エンドキサン) アルキル化薬 主に肝臓の代謝酵素CYP2B6で代謝さ れ,活性化される。また,CYP2C8,2C9, 3A4,2A6も本剤の代謝に関与してい ることが報告されている。 シクロホスファミドは生体内で活性化 された後,腫瘍細胞、特にBリンパ球 のDNAをアルキル化して、DNA合成を 阻害し,抗腫瘍作用を現すことが認め られている。 シクロホスファミド(商品名:エンドキサン) 副作用 – – – – 吐き気や嘔吐、発疹、脱毛など 骨髄抑制にともなう血液障害 血小板減少による出血傾向 本剤の毒性代謝物による膀胱粘膜の損傷→ 出血性膀胱炎 – ショック、アナフィラキシー様症状 使用禁忌 • ペントスタチン(商品名:コホリン)との併 用 – 代謝拮抗薬 – 禁忌の明らかな機序は不明である。 – 本剤は用量依存性の心毒性があり,ペントス タチンは心筋細胞に影響を及ぼすATPの代謝 を阻害する。両剤の併用により心毒性が増強 すると考えられている。 ダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン) アンスラサイクリン系の制癌抗生 物質 細胞の核酸合成過程に作用し、直 接DNAに結合し、その結合部位は DNA二重らせんの間の塩基対の間 にあると考えられ、このためDNA合 成とRNA合成反応を阻害するととも に、フリーラジカルを生成してDNA の単鎖を切断する。 ダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン) 副作用 – – – – 吐き気・嘔吐、口内炎、脱毛 頭痛や倦怠感、発熱、寒気、発疹など 心筋障害更に心不全 強い骨髄抑制にともなう血液障害 使用上の注意 • ほかのアンスラサイクリン系の薬、 または胸部の放射線治療との併用 – 重い心臓障害を引き起こすことがある。 また白血病などの二次がんを発生す るおそれもある。 ビンクリスチン(商品名:オンコビン) 植物アルカロイド 本剤の作用機序の詳細はまだ明 らかにされていないが、紡錘体を 形成している微小管の構成蛋白 であるチュブリンに結合すること により、紡錘糸機能を阻害し、細 胞周期を分裂中期で停止させ、 腫瘍増殖抑制効果を発揮する。 細胞周期のM期に作用する。 ビンクリスチン(商品名:オンコビン) 副作用 – 便秘を起こしやすく、ひどくなると腸閉塞を引 き起こす。 – 末梢神経機能障害(神経麻痺・筋麻痺・ 痙攣等) 使用禁忌 • 脳脊髄腔への投与 – 致死的合併症を生じ得る。 使用上の注意 • 抗てんかん剤のフェニトイン(商品名:フェ ニトイン)、抗腫瘍酵素製剤のL-アスパラ ギナーゼ(商品名:ロイナーゼ)、アゾール 系抗真菌薬との併用 – 副作用が増強する恐れがある。 • マイトマイシンCとの併用 – 呼吸困難や気管支痙攣を発症しやすいとの 報告がある。 L-アスパラギナーゼ(商品名:ロイナーゼ) その他の抗悪性腫瘍薬 大腸菌から産生される酵素。血中の L-アスパラギンを分解し、アスパラギ ン要求性腫瘍細胞を栄養欠乏状態 にすることにより抗腫瘍効果を発揮 する。(正常細胞はアスパラギンを 合成することができるが、白血病細 胞はそれができない。) L-アスパラギナーゼ(商品名:ロイナーゼ) 副作用 – ショック、アナフィラキシー様症状→代替 薬として、エルウィニアL-アスパラギ ナーゼ(商品名:エルウィナーゼ)が多く の国で臨床使用されてきた – 脳出血、脳梗塞、肺出血等の重篤な凝 固異常 – 重篤な急性膵炎、膵内分泌機能障害 (膵ランゲルハンス島炎)による糖尿病 使用禁忌 • 本剤の成分に対し重篤な過敏症の 既往歴のある患者 プレドニゾロン(商品名:プレドニン錠5mg) ホルモン薬(化学合成ホルモンの一 種) プレドニゾロンは合成副腎皮質ホル モンで,抗炎症作用,抗アレルギー 作用,免疫抑制作用のほか,広範囲 にわたる代謝作用を有する。 副腎皮質ホルモンはリンパ球に対す る直接障害作用を有する。 プレドニゾロン(商品名:プレドニン錠5mg) 副作用 – いらいら感、不眠、消化不良、下痢、吐き 気、食欲増進など – にきび、むくみ、生理不順など – 脂肪の異常沈着(満月様顔貌など) – 副腎不全、感染症の誘発、血糖値の上 昇、骨が弱る、胃潰瘍、気分の落ち込み、 眼圧上昇、動脈硬化、血栓症など 使用を突然中止すると… 反跳現象や退薬症候群が現れるので、使 用量を少しずつ減少させる漸減法により、 他の薬で置換するように工夫する。 急性リンパ性白血病(ALL)(補足) フィラデルフィア染色体のでき方 9番と22番の染色体の一部が入れ 替わることによって、bcr-ablという遺 伝子ができる ミクロ像(HE強拡大):骨髄はN/C 比の高 いリンパ球系の異型細胞が高密度に増 殖ALL( FAB分類で L1 ) の像。 ご静聴ありがとうございました。 ≪参考文献≫ *医学書院「標準薬理学」 *医学書院「もっと知りたい白血病治療」 *中外医学社「専門医のための薬物療法Q&A 血液」 *塩野義製薬株式会社HP *明治製菓株式会社HP *日本化薬株式会社HP *協和発酵キリン株式会社HP *小児がん患児支援 NPO法人エスビューローHP内「白血 病サイト」http://www.es-bureau.org/contents/leukemia/ *社団法人 日本病理学会HP内「病理コア画像(骨髄・造血 器)」
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