「吃音のある、ST学生と STの集まり」の報告 鈴木 勉 (地域活動支援センターはるえ野) 要旨:吃音のあるST養成校の学生と、吃音の あるSTが、吃音についてのそれぞれの体験や 思いを語り合う機会を持った。学生にとっては、 吃音の不安を軽減し、吃音に向かい合い、将 来を見つめ直す機会となった。STは、吃音を 持ちながら仕事を続けてきた自己の経験を、S Tを目指す学生のために役立てる意義を認識 した。 1 「集まり」までの経過(1) • 吃音のあるST養成校の学生二人から、吃音者 でSTの鈴木と吃音について話したいという希望 が出され、2012年2月に話し合う場をもった。 • 学生は鈴木に、吃音のために、臨床実習やST になることについての不安を語り、鈴木はそれに ついて自身の考えを述べた。 • 話し合う中で、STが、吃音のあるST学生を支援 する必要性を感じた。そこで鈴木が、吃音を持つ 他のST学生や吃音のあるSTとの話し合いを提 案したところ、学生がそれを強く望んだので、鈴 木がその機会を作ることにした。 2 「集まり」までの経過(2) • 鈴木は東京都言語聴覚士会(以下都士会) 監事を務めている。鈴木が理事会でこの企画 を話題にしたところ、理事から、STをめざす 吃音のある学生の支援は、都士会が行うべき 重要な課題であるという意見が出され、都士 会の事業として理事会で承認された。 • 学生への呼びかけは、首都圏のST養成校を 通しておこなった。STについては、心当たり のある吃音のあるSTに声をかけた。 3 「集まり」の内容 • 参加者は、学生8名、ST5名、都士会理事1名で あった。 • 2012年8月25日、14時半~17時、東京都江戸 川区で行った。 • 進行は、この「集まり」のきっかけを作った二人の学 生が担当した。 • プログラムは、前半は、自己の吃音体験を中心に自 己紹介を、後半は自由な話し合いを行った。 • 終了後懇親会を行い、ほぼ全員が参加した。うちと けた雰囲気の中で、意見や情報の交換がなされた。 4 学生の感想(1) 自分と同じような悩みを持ちながら、同じ目標 に向かって取り組んでいる方々と出合い、お話 することができ、自分一人じゃないということを 強く感じ、不安な気持ちが薄れていったととも に、自分の頑張りはまだまだ足りないということ を実感しました。このような機会を得られたこと で、自分の吃音と将来を見つめ直すことができ ました。 5 学生の感想(2) みなさんとの出会いに期待を膨らませると同時に、吃 音がひどく出る時期と重なっていたこともあり、気持ち を切り替えるきっかけにしたいという気持ちでいっぱい でした。 お互いの経験を聞いたり、先生方から臨床で の貴重な体験をお聞きしたり… そのような時間を過ご すうちに、自分の将来の姿を具体的に想像できるよう になりました。ことばの状態には、波があると思います が、今まで通り、悩みながらも前に進み続けたら良い のだと心の底から思いました。 伝えることは最後まで、 自分の表現したいことを忠実に、たまには楽をしながら。 この集まりを通じて、吃音の輪を広げていけたらという、 小さな楽しみも出来ました。 6 「集まり」の意義 二人の学生の感想が、「集まり」の意義を十分に 表現している。整理すれば以下のようになろうか。 • 学生にとっては、「集まり」が自己の吃音と向かう 機会となった。 • 同じ悩みを持つ他の学生と出会うことにより不安 が軽減し、吃音とともに前に進む気持ちが強まっ た。 • 吃音を持ちながらST業務をしている先輩STの 経験を聞くことにより、自分の将来像が見えてき た。 7 今 後 • 学生が再度集まりたいと希望しているので、 国試の発表がすみ就職直前の、2013年3月 末に再び行う予定である。 • 次回は呼びかけの範囲を、首都圏より更に 広げることを考えている。 • ST養成校には、吃音以外の障害を持つ学生 も在籍しているようである。今後それらの学生 の支援も視野に入れる必要があると思われ る。 8
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